精霊小噺   作:マデリアン

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バイトから帰ってきて、風呂入って飯食って、ほうじ茶とやきとりを箸で突きつつこっそり投稿。


紙さまメンタル

 普段より早い朝食を食べ、朝のニュースをBGM代わりに家主の女性『(しきみ) 由々香(ゆのか)』は夢の中で出てきた自称神さま『ラー』とお話していた。

「夢の内容は覚えてないけど……つまり中途半端に起きてイライラしてたから、手当たり次第で襲おうとしたのね?」

『われをそんな非行少年のように言わないでくれるか』

「事実じゃないの?」

『そんな事実あってたまるか、だがなぜ主を選んだのか……我にもわからぬ、本当に気が付くとあの場で、あの状況であのしゃべりをしていたのだから』

「楽しそうだね、それは」

『楽しげにしゃべっていたのは、主だけだったがな』

 そうなの? そうだ。とぐたぐた話を続ける1人と1柱。次第に日が高く昇り、外から様々な人の声が聞こえ始める。

「……学校行かなきゃダメかなー?」

『学校がどのような場所かわからぬが……行かなければダメなのだろう?』

 なら行くべきだ。ラーは由々香へとズイと顔を近づけ外出を促す。

「えー……ねぇラーメン」

『我が名はラーだ、なんだ?』

「すっごい目がキラキラしてるね、行きたいの? お外」

『……………………別に、外など、まぁ主が? 外出するのだからな、危険が及ばないようにな?』

 部屋の中をグルグル歩くラー。神さまの威厳などその姿にこれっぽちもなく、そわそわしている犬のようで。ぶつくさと、言い訳じみた言葉を漏らしていく。

『…………で、主よ正直に言うとだな……主のそばから離れられんようなのだ、何故かはわからぬ。主はぼんやりしているからな、我が近くにおらねばな!!』

 グルグルしている間に、由々香は部屋に戻っていた。ラーはゆっくりとしゃがみこみ、頭を抱えて悶えた。

『ヌグァァァアアァ! あんのマイペース主がぁぁあ!!』

「……何か叫んでる。外に行くのがそんなに嬉しいのかな」

 

 

「さっき何叫んでたの?」

『……気にしないでくれ我が主よ』

「ラー油って太陽の神様だったよね」

『ラーだ、まぁそうだ太陽の化身だ』

「さっき叫んでたのって……なにかの儀式?」

『どうしてそうなる』

 通学路にて1人と1柱の会話。ふらりふらりと歩く由々香と、それを横目で見ながらゆったりと歩くラー。周囲の人間にラーの姿は見えもせず、聞こえもせず、感じることもできないらしい。ゆえに周りを気にせず堂々と歩いているのだ。

「だって神さまなんでしょ? 体金ぴかだけど」

『神だからと言って、毎朝叫ばんわ。あと体は、元々だ』

「叫ばないんだ、テレビで見たことあるよ? 1日5回すごい所に向かって土下座してる人たち」

『それは知らん、我の管轄外だ』

「何の管轄? 宗教的な?」

『そうだな』

 ふいと顔をあげ、遠い空へと視線を投げかけ思考を放棄する。となりでラーを中心に、人が円を組んで拝んでる姿を想像し、ツボに入ってる由々香のことはしばらく放っておくことに。

 地下鉄に乗り2駅、乗り換えて5駅。その間痴漢されること数度、そのたびにラーがその男の大事な部分をこっそり焼いておく。

『主に手を出すものは罰を、色目を使うものには死を』

「ぶっそうだね、どうしたの?」

『主が気にすることではない』

 地下から外に上がり、学校専用の送迎バスに揺られ数十分。ようやく由々香の通う大学『宮摘大学(みやつみだいがく)』へと到着した。

「うぇっぷ、酔った……」

『揺られながら本を読むからだ』

「だって続きが気になったんだし……とりあえず学食行こう学食」

 大学の敷地を歩きながら酔いをさます由々香、青い顔の主を横に周囲へと目を向けるラー。宮摘大学は海に浮かぶ人口島に作られた学園で、中心に位置する城のような前衛芸術的な建築の学舎、北と西にわたり大きな森と合宿用の宿舎が並び立ち、学園の入り口もある南側にはエアポートや埠頭など玄関口が広がり、東側にはテニスコートやグラウンドなどの広場がある。

 学食には東側から行くのが早いので、学舎を回り込むように歩いていく。広場ではスポーツに精を出すもの、黄色い声を上げる女子、デュエルに白熱する2人などなど、自由に青春を謳歌していた。

『ほう、決闘者か、ソリッドビジョンもあるのか』

「できたのは数年前だけどね、そのおかげでカードの値段が少し上がっちゃったんだ~」

『なぜ高騰したんだ?』

「自分の好きなカードがブワーって出るから?」

『ブワーっと?』

「バーッと!」

 

「おっしゃ、召喚!」

「あ、チェーンで超融合」

「ホープ・ザ・ライトニングゥゥゥ!!」

 

『楽しそうだな』

「だねー」

『主もするのか?』

「するよー、昨日作ってたのはラーを出すためのデッキだしー」

『我を出すための?』

「そーそ、ラー君ってば5年ぐらいだっけ、よわっちぃままでさ~使いづらかったんだよね」

『そうなのか? ……ん? 弱い? 我が?』

「確か効果が……1、ライフを100まで削ってその分を攻撃力にする。2、ライフを1000払って相手のモンスターを1枚破壊する……この効果は両方一遍には使えないだっけ。しかも神特有の魔法・罠無効効果がないから、ほかのモンスターを出した方が良いっていわれる始末……どうしたの? ハトがマシンガン浴びたような顔して」

『……………………なんだそれは。嘘だろ? 主! 嘘だと言ってくれ!!』

「……ところが、どっこい? これが現実?」

 真っ白になりその場に横たわる神さま、その姿に威厳などなく、レイプ目でぶつぶつと『我は……我は……』と繰り返す。9月半ばの風が冷たくなってきた季節のことであった。

 

 

「神様ってメンタル脆いの?」

『気にしないでくれ……というか放っておいてくれ、たのむから』

「……NDK?」

『なんだそれは?』

「…………ねぇいまどんな気持ち?」

『心が張り裂けそうだ、頼むからしゃべりかけないでくれ、今話かけられたら何かが決壊しそうだ!』

「涙声だもんね、よしよし」

 講義中、1人と1柱は後方の席でこそこそ雑談していた。学食についた後ラーにオシリスとオベリスクはどうなった? と聞かれ由々香が何も考えず真実を告げると、震える両前足を見つめ、顔にあて丸い球形態に変化した。その後ずっと由々香のそばでふよふよと丸い状態で漂う状態になっていた。

 どこが頭かわからないまんまるボディなので、てっぺん部分をポンポンと優しくたたく。30分ほどそうしていると、気分が少しおさまったのか発光しながら見慣れた姿へと変わっていき、キリッとした表情で

『いらぬ世話を取らせたな主よ、もう大丈夫だ』

「わ、戻ってしまった……自分がオシリスやオベリスクより弱い事実に?」

『やめてくれぇ……』

 球体にはならなかったが、頭を抱え丸くなる神さま。どうやら心に深い傷を負ったようだ。

「…………さっきの話の続きだけどね?」

『まだ続くのか!? 我の心のライフはもう0だぞ!?』

「ラーが強くなった話でも傷つくの? じゃあやめるね」

『いや! まて主よ!! き、聞きたい!! 聞かせてくれ!!』

 授業の終盤、ラーを元気づけようと話を振るが断られる。が内容を聞いて勢いよく迫ってくる。忙しい神さまだなと由々香は思う。

「ラーが出てきて5年、やっと強化されたんだ。球体形と不死鳥で」

『……どういう強化だ?』

「球体形は相手か自分の場のモンスター3体を生け贄にして召喚、でそれを生け贄にすることで召喚条件無視でデッキか、手札から攻守4000でラーが出せる」

『おぉぉぉおぉ!!』

「……で、ラーが破壊されると墓地から不死鳥を特殊召喚、不死鳥は神らしく、魔法・罠無効のこのカードの効果以外無効、1ターン中1000ライフ払えば何度でも使えるカード破壊……ってどうしたの? 無言で泣いて」

『何故かはわからぬが……涙が』

「よしよし……まぁそんなわけで、昨日デッキを作って完成したんだ」

 リュックをゴソゴソし、青い半透明のストレージを取り出す。どうやらその中にラーの入った、デッキがあるらしい。

「最近になって、いろんなタイプのデッキが作れるようになったからねー」

『デッキの内容はなんだ? 主よ』

「秘密です、デュエルするときに教えてあげるね」

『むぅ……なら今すぐ先ほどのデュエルリングへ!』

「あそこ予約制でさ~、今月いっぱいは予約で埋まってるんだよね~」

 食堂につき、またリュックをゴソゴソといじり弁当を取りだす。ワクワクといった顔でふたを開けるのを、横からラーも見ていた。

「今日のご飯です」

『……なぁ主』

「いただきます……なぁに?」

『これお主が作ったんだよな?』

「そうだけど……あむ、むぐむぐ……にゃにか?」

『女子っぽさがかけらも感じられんぞ!? なんだこれは!?』

「ンッグ……ぷふー、お腹いっぱい食べたいからこうなりました」

 長方形のタッパーに白ご飯をぎちぎちに詰め込み、ホウレンソウの胡麻和えをバランにいれいろどり良くし、押し込まれた主菜のから揚げ6個。女子っぽさが欠片どころか微塵もないドカ弁だった。

『いや……えっと、主ぐらいの年齢なら普通カロリーを気にするとか、小さくかわいいものにするとか……』

「それじゃあおなかが膨れないよ? あん……はぐはぐ……ごっく」

 から揚げを一口かじり、白ご飯を口の中にパンパンになるまで詰め込み、咀嚼し飲み込む。次いで冷たいほうじ茶をのどへ流しスッとさせる。

「ハァ~、口いっぱいにご飯を入れて、お腹にたまっていくこの感覚……一番幸せだよ」

『主の幸せの基準がよくわからん』

「幸せはその辺に転がってるもんだよー、あったかいお布団があって、落ち着ける家があって、お腹一杯ご飯を食べて、それが幸せなんです」

 ラーはもういいやと言わんばかりに、前足に頭を乗せくつろぎ始める。そこへ思いついたことを口に出す。

『幸せね……人それぞれとは言うが 私が出会ってきた中でも、一番の変わり者だよ我が主は』

「へ? なんでぇ?」

『 ……どうした? 汗びっしょりだぞ』

 外とは違い空調が効いてる室内で、由々香はどっと汗を流した。暑いからでも寒いからでもないのに汗を滝のように流していく。目は焦点が合っていないのか揺れ動き、小刻みに体が震えている。

「み、水を……の、のど、が……」

『おい、どうした主よ!? えっと……あ、主! はい水!!』

「………………ハァー、ありがとぉ」

『口に詰め込みすぎるからだ、頬が破けるかと思ったぞ』

「ありがと助かったよラー、でもやめないあの圧迫感がたまらないんだ」

 元に戻り、変わらぬ幸せそうな笑顔でご飯を口に入れていく。その横顔を見てラーは内心でホッと息をつく。

『……やっと名前で呼んでくれたか』

「何か言ったー?」

『別に、主をどうやって我を持つにふさわしい、立派な淑女にしようかと考えていただけだ』

「またいやなこと考えてるー……から揚げいる? 冷めててもおいしいよ」

『いただこう……あぐ、結構いけるな主よ』

「でしょー」

 そんな昼休み。




この世界ではゼアル放送中にソリッドビジョンが出来たようです。
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