これはフリーゲーム『光の目』の二次創作となります。
光の目本編や元となった史実に関する描写はほとんど無く
キャラクターが勝手な事を勝手に喋ってるだけの短編集となります。
正しいキャラクター像をお求めの方はゲーム本編をご覧下さい。
短編故、戦争、戦闘描写もほぼありません。
山も谷も無いダベりをゆるゆると。
とりあえず載せられてるのが全てで完結済みと思って貰って結構ですが、
書きたい時に書いて追加するかも知れません。
~更新履歴~
2016年2月21日執筆開始。
8月27日完全非公開にてテスト投稿開始。
同日公開開始
1:ナイナハリの本心
2:時斉の憂鬱
3:コーンウォリスの目的
後、信長と帝国勢の誰かしらを一個ずつ書く予定が未定であって決定ではない。
~ファルモサまで進出したオプティマトン東部軍IF~
「何故私が西方へまで進出せねばならんのだ」
魔族国家であるオプティマトン。
その東部軍司令であるサドラザム(大宰相)ナイナハリは、
東方大陸の中でも南東に位置するファルモサの地にあった。
ファルモサの中で最も大きな建物……西方からの侵略者であるアルビオン国が建てた総督府で、
アルビオン軍が残していったワインをちまちまと飲みながらナイナハリは窓の外を見やった。
配下の魔族兵、リッチー達が自ら召喚したアンデッドと共に瓦礫の片づけをしている。
アルビオン軍が植民地兵ごとロケット砲を掃射した為、町は東部軍や敵兵の死体で溢れかえっていた。
アンデッドの一匹が血溜りを踏んづけて転ぶ。
べしゃりとした音と共に、倒れたアンデッドの悲鳴が聞こえた。
ゾンビだとかスケルトンだとかの召喚獣も、一応感情らしきものはある。
不死者が今更血を恐れるのはよく分からなかったが、ナイナハリはそういうものだと認識していたし、
それ以上深く知る必要も無いと判断していた。
「……何故、私が西方まで行かねばならんのだ」
「何故二回言ったし」
ごく自然な口調で、飲みに付き合っている相方のリアムスが突っ込みを入れる。
彼女はナイナハリの同僚であり、親友であり、お互いの理解者であった。
と、いうのが以前までの話だとは自覚している。
ナイナハリは東部軍として東方大陸の部族を治める方法を探していたし、
個人的にも人間の生態や風俗に関心があった。
関心があるというだけで情が移ったわけではない。
事実、昨日の戦いでは人間の銃兵隊はかなりの損害を被ったし、騎兵隊に至ってはほぼ壊滅状態にあった。
騎兵隊長のウスタージャルーとかいう遊牧民の族長を使い捨て同然に突っ込ませ、
敵の三分の一をそれだけで削る事に成功した。
その代償として騎兵隊の新兵を始めとした大部分が敵の銃撃に倒れたが、
ナイナハリにとってそれは戦力の喪失以上の意味は持たなかった。
感情論で言えば、敵の魔法で吹き飛んだ自分の親衛隊約二名の命の方がよっぽど重かった。
されどナイナハリは東部総督として大きな人気を誇っていた。
例え学術的関心であろうと彼女は民の事を知ろうとするし、彼女の統治も平和的なものであった。
平和的、という曖昧な概念は魔族国家にとって普遍的なものである。
何故ならこの世界において、人間の国家が平和的であった試しが無いからである。
大抵の先進国は、ナイナハリ達魔族から言わせれば狂っているとしか言いようのない思想で溢れていたし、
その人間達と対立する魔族が平和的になるのも必然であった。
後進国や地方の部族はある程度穏便に事を済ませていたが、それは文化や思想の停滞でしかない。
だからナイナハリはそれらを統治する為に東へと平和的に進攻を開始した。
それが何という事だろう。
元友人であったリアムスが宗教家となり、軍勢を率いていたのはまだ良い。
彼女が遊牧民達の傀儡として動かされていたのも、まぁそうなるだろうとは思う。
だが……だが、それらを打ち倒した自分達が、
何故西方からの侵略者と戦い、逆攻勢をかけねばならないのか。
命を賭けて侵略者を撃退した事で民からの評価が上がっても、
戦場で死ぬのも徴兵された民という人的資源なのだ。
もちろんそこには人族だけでなく魔族も含まれる。
「なぁリアムス、私は東方の、南部民族の統治を目的に進軍してきたんだ。
領土欲の野心とかオプティマトン本国に対する翻意とかも……
まぁ、金銭的に支援されてる以上、無い。
そうがどうだ、お前の灰羊教団を潰した時点で目標は達成されたはずなのに、
アルビオン軍だかETPCだかが植民地欲しさに出てきてからは何もかもが泥沼だ」
「まぁそうなればそうなるやろー。
そもそもあれですよ、タメルラーノと争った時点で泥沼は避けられんでしょ」
「不戦条約を無視するのは判っていた。
ティムールは元から南部を取り返して統一帝国を築くつもりなのは明白だ、それはいい。
だが何故、我々はタメルラーノからもアルビオンからも挟撃されているんだ」
「挟まれてるからだろ常識的に考えて」
「せめて我々と協力してアルビオンを退けてから、とか考えなかったのか!
おかげでベンガル戦は気が気でなかった。
いつ後ろからタメルラーノが来るかと。
本隊が後ろを突かれる事が無くてほっとしたところに、このざまだ」
ナイナハリは面倒くさそうに書類をリアムスに手渡す。
そこには西部における対タメルラーノ戦線が崩壊し、
部隊が分断されつつあるとの報告が載せられていた。
「本隊奇襲じゃなくて、地盤を固めに来たってところね」
「あそこのイェニチェリ隊がやられれば、後はここの本隊だけだ。
それですら今回の戦いで大きな被害が出ている」
「でもアルビオンの軍勢はほとんど潰したじゃん?
このまま押し返せる戦力はまだあるでしょ」
「無いんだよ、タメルラーノ方面から瓦解しつつある。
あーあー、どこかにどっちかの勢力を単独で抑えられる人材が居ればなー。
あぁどっかに有能な魔法使いがいればなー!」
「いや無理っす。ラクシュミーとかグロスターを一人でどうにかしろと」
「そもそも何だお前のがらくたは。
第一にうちの騎兵隊に穴を開け始めたのはお前がやった事だぞ。
あのイモータルとやらはもっと出せんのか」
「あんたが全滅させたじゃないですかやだー!
そんなにね、ばんばん召喚出来るんだったら私負けてないですよ!」
リアムスは机をばしばしと叩きながら返す。
彼女はナイナハリと敵対していた際、古代兵器モノリスを蘇らせて戦線に投入した。
それは強靭な死霊を呼び出す事が出来る兵器であったが、
本体も死霊も極端に足が遅かった為銃弾の的となってことごとく撃ち倒されていったのだった。
最も、その弱点が判明する前に突出した東部軍騎兵隊がいくらか犠牲になっていたが。
「はぁ、味方にすると案外頼りないものだ」
「他人を単独で突っ込ませる奴の言う事ですか」
「感謝している。お前とお前の部下が先んじて数を減らしてくれなければ、今回は負けていた」
リアムスはグラスに口をつけたまま、ワインを少しだけ噴き出す。
ナイナハリはこういう事をする、と久しぶりに思い出した。
次いで、いつから自分達はこうなってしまったのだろう、と。
ナイナハリはくつくつと笑っていた。
「なぁ、リアムス。私達は親友だよな」
「ナイナハリが言うと含みがある様にしかきこえないね」
「なぁに、不幸な行き違いはあった。
それで得るものも色々だと認識している」
「例えば?」
「勘違いしていたんだ、私は。
お前の事を頭でっかちなだけだと思っていた。
やってる事に力が伴っていないとな。
だからお前には本国に戻ってもらって、学会で細々と暮らさせるつもりだった」
「ぶー」
「実際に見て気づいたのは、お前は私と似ているという事だ」
「顔が?」
「違う、役割だ。お前は当初傀儡だったとはいえ、良く民を治めた。
モノリスに洗脳されたからだとしても、宗教の名の下に軍を動かしていた。
そういう事が出来る人材をこの地から遠ざけるのは惜しい。
お前はタメルラーノ地方に関する宗教的民族文化的知識がある」
「へっ、いやですよそんなの。
あんた言ったじゃないですか、私には能力が無いって。
一度言った事を覆しておだてるのがナイナハリのやり方なんですね、それ」
「悪かったよ、本当に」
ナイナハリは真面目な顔で頭を下げた。
それはリアムスにとっては優悦に浸れる反応の、まるで正反対であった。
むしろ見下されているのはこっちであるとも感ずる。
頭を下げている相手が自分を見下してないと思えるほど彼女は馬鹿ではない。
馬鹿といえば馬鹿ではあったが、
精神的な馬鹿と社会的な馬鹿は一致しても知力的な馬鹿とは一致しないのだ。
彼女は知力的な意味では馬鹿ではなかった。
「……そうやって縛り付けようとする。
300年前から変わっていないのはナイナハリの方ですよ」
「じゃあ、私の隣に居てくれ、と言うのは?」
「それがー! そういうのがっ、やめろ!」
「本気だよ私は。お前は十字架にはりつけてでも私の隣に置いてやる。
お前とつるんでいたせいで、公費を使いこんだ後に出ていくなんていう責任は私に回るんだぞ。
あの後私が味わった苦しみを、倍返しにしてやる、異論は認めない!」
「……まぁ、私は神学さえやってられればいいですけどね」
リアムスはつまみに甘ったるいドライフルーツを口へ放り込みながら、
ナイナハリが割と本気なのを理解した。
教会によって現在進行形で虐殺されている魔族が、
十字架にはりつけてでもなどという冗談を口にするはずがない。
どのみち灰羊教団が滅びた今、自分が神学者として生きてゆくにはこの方法しかない。
仮に西洋国家へ寝返ったとしても、
上手くやればタメルラーノ地域への知識を活かす事で生き残れるだろう。
しかしそこにナイナハリや自分の部下達の居場所があるとは限らない。
元よりリアムスは君主だとかそういったものになるつもりはなかったのだ。
「それで、どうするんです?」
「お前は西部戦線に。
象兵を食い止めるくらいならイモータルでも出来るだろう。
私はとりあえず外海までアルビオンを追い出す。
それが終わったら私、タメルラーノを滅ぼすんだ……」
「アカン」
「さ、この一杯が終わったら仕事に戻るぞ」
「ねぇナイナハリ、何で今更私達が一緒に酒飲んでるのかな」
「決まっているだろう」
ナイナハリは、心からの笑顔を見せた。
その表情はリアムスが長年見ていなかったものであり、今回のサシ飲みで内心求めていたものであった。
「友人と飲むのに、理由がいるか」