私は暇つぶしに、こんなのを最近やりはじめた。
「はい、次の方はー」
私、洩矢諏訪子。幼児体型だからって、よく子供と馬鹿にされるけど、私はこう見えて神様なんだからね!?
それで、私は今何をしているのかというと・・・。
「えっと・・・貴方の転生先は───」
閻魔をやっているわけではないけど、外の世界でこの世を若くして去った人達の進路を決める仕事をやっている。仕事というより、遊びでやっている。もちろん転生先も適当だ。
だから相手によっては、わぁーいと喜ぶ方もいらっしゃるし、ウソだろ・・・と絶望に満ちる方もいたりする。
けど、相手の意見とかはちょっとだけ聞くよ?そうでもしないと、ふざけんな!って偉そうに怒鳴ってくる輩がたまにいたりするから、対応に困っちゃうのよね。
「そうね・・・話聞いた限り、"東方project"の世界がいいんじゃない?貴方に相応しいと思うの」
相手によるけど、こんな事を言うと大半の人は
「東方?あー確かにいいかもしれねえ!!」
と、急にテンションが高くなる人が多い。
幻想郷の過酷さがわからないからテンション高くなっているんだよね、わかります。
・・・え?死んだやつは私の姿を見て誰もテンション上がらないのかって?
さぁどうなんだろう。神様に幼女体型の方が多いからじゃないからかしら。といっても、ちゃんと男性の神様はいるんだよ?けど、男性の殆どは女性側の転生を手伝ってあげているけど。
神様神様言うけど、みんな匿名でやっているの。たまに私みたいに本当の神様が転生先の相談を受けていたりするから、あまり私達を舐めすぎないことね。
幻想郷の中じゃ、私以外にも神奈子がこれをやっているよ。うちの早苗は守矢の勧誘とか妖怪退治で中々神社を開けていることが増えてきたしねぇ。早苗までこんなのに巻き込んでしまったら、私達が色んな意味で力尽きてしまうわ。
「おはよう。しっかり眠れた?」
何も無い空間で寝転がっている少年に声をかけると、少年は起き上がるなりこんな事を口にした。
「ちょっと待って!?なんで俺、生きてんの?」
・・・自殺した子なのかな?この子の詳細はあまり知らないから、何があったなんてよく分からないけど。
「てか、あんた誰だ?」
ここで決めゼリフ発動。
『私は神様だよ!』
「・・・神様?ああ、そういう事ね」
(転生するのか、俺・・・)
何よそれ、生きたくないの?
「何かリクエストとかある?」
「いや、いい。地獄に行きてえ」
「地獄!?ちょ」
「なんなら、天国でもいいぞ」
急にそんな事言われてもなぁ・・・。地獄のお客様なんて久しぶりだよ。
「そんな若くして地獄に行きたいなんて勿体ないわよ!若者はしっかり遊んでなきゃ!」
「あ?もういいんだよ・・・俺は1回生きりゃそれで充分だ」
・・・出たこれ、この人病んでるわ。
「わかったわよ・・・じゃあこうしよう」
私がオススメする転生先は、やっぱ"幻想郷"よねぇ。だってあそこなら、人間とか妖怪とかなんでもなれるからね。でも強くなりすぎて失踪する人もいるしなぁ。
この人の転生先は・・・ここに決めたっ!
「地獄!どう?」
「なんだよ、急に」
「あなたはこれから、地獄で暮らすの。いいでしょ?」
「お、おう・・・」
「じゃあ決定!!飛んでけ~!!」
サポートなし、能力設定なし。こんな楽な人は初めてかも。
少年は"東方project"の旧地獄の下級妖怪という設定で、転生していった。
だっていいよね、地獄って名前が付いてるだけでも、結構地獄っぽいでしょ?
・・・そろそろ帰ろうかなぁ。今日はこんぐらいでいいかな。あんまりやると、今度は自分が死んで転生するハメになっちゃうからね。
今までそんな神は何回か見てきたけど、自分はまだそんな目にあった事はないかな。
帰ろう。
秋の守矢神社では、近くにある湖から蛙の大合唱が響き渡っている。私の夢は、いつか蛙の勢力を大きくして、神奈子に勝ってやるんだから。覚悟してなさいよ、あのくねくね蛇!
「いやいやぁ、今日もお疲れさん。早苗」
「お疲れー」
早苗が神社に戻ってきたので、すぐに夕食の準備だ。
しばらく経って夕食の時間となると、神奈子と早苗はよほどお腹がすいていたのか、かなり昔に見た早食い選手権のような光景が繰り広げられていた。
「そういや聞いてくださいよ!今日あの巫女がですね───なんと!私に何かくれたんですよ!」
早苗は嬉しそうに紙袋をテーブルにドカンと置いた。しかし、あの山の巫女からお土産か・・・一体どういう風の吹き回しなのかしら。
「ほう・・・お菓子か!私はあんまり好きでは無いんだけど・・・後で食べるか!」
「はい!諏訪子様もよかったらどうです?」
「いや、私は遠慮しておこうかな」
「ありゃー、残念です」
「なんだぁ?今日やけにノリが悪いな諏訪子は。どうしたよ?」
神奈子が心配そうに私を見てくるが、私は何ともない。
「この時期はあんまり食欲が無いから・・・」
「秋といえば食欲の秋って言うじゃないか!な?食べようよ一緒に」
「でもいいや・・・今日は色々と疲れててねぇ」
「うーん・・・ならしょうがないな!よし早苗!どっちが早く食えるか勝負だぞ~?」
「神奈子様、食べ物で争っては駄目ですよ」
「はっはっは~。冗談よ!」
こんな感じで、守矢の日常は大抵いつも神奈子のノリで盛り上がっているのだ。
神奈子がいない明るい日常なんて、中々ありえない。私なんて、この地を好き勝手弄って蛙を見たりしてるものだから、あまり人と会話する事がないのだ。だからどうやったら人と楽しくいられるのか、私にはわからない。
次の日。
私はまた外の世界の転生希望人たちの進路を決めに、ある場所へと向かった。
この場所は誰にも教えてもいないし、これを見てるみんなにも教えないつもりでいる。
ある呪文を唱えると、一人の少年が眠ったまま現れた。
そしてこの少年は、ゆっくりと頭を手で抑えながら起きる。
「あれ、ここは───そもそも死んだはずじゃ」
ここからは私の出番だ。
「ようこそ、あの世へ」
いっぺん、言ってみたかったのよねぇ。このセリフ。死神っぽくてかっこいいじゃん。
「だ、誰だ?」
「私は神様よ。いやぁ、さっきはごめんね?『あなたを間違えて死なせちゃって』。お詫びに好きな世界に行かせてあげるよ」
実際、これは嘘。人の運命というのは実に不思議で、信仰派によって考え方が違うのだけど、生まれる前からこうなると決まっているらしいのだ。
ではなぜ、そんな事を言ったのか?
理由は簡単。あんまり難しい事を言ってしまうと、相手がわけわかんないと意思表示するから、手間を省いているようなものだ。
「好きな世界?ってもねぇ・・・え?どこへでも行けるの?」
「うん。あなたが場所を教えてくれさえすれば」
「うーん・・・迷うなぁ!!」
うわっ、オタクだ。オタクって早く決めてくれないから面倒なのよねぇ。だからと言って私が勝手に決めたりすると文句ばっか言ってくるし。〇〇に会いたい!という理由だけでその場所を選ぶのだ。しかも、自分がその人と気が合う事前提で。
「もう一度赤ちゃんからって出来るか?」
へ?ってうっかり口に出そうになる。
「出来なくはないけど、難しいわねえその年だと。生みの親がまず生まれる前に先に死んじゃうわ」
「このままで転生させる気だったのかよ!?」
「それが私の使命だもの」
「じゃあ他に・・・」
あ、いい事思いついた。
「あっ!丁度いいのがあったわよ!」
「なんだなんだ!?」
「死人の体を使って転生というのも出来なくはないよ?」
「それじゃあゾンビじゃね?」
「違うよ。その人の葬式中にあなたの心で蘇らすの」
「へぇ、そんなこともできるんか」
「ほら、やるなら今のうちだよ?早くしないと火葬されて死ぬ羽目になるわ」
「くっそ~、ならしょうがねえ!それにするぜ」
「かしこまり~」
どうなっても責任を負うのは私じゃないからね。自分自身だから。
それでは、良い旅を───。
転生の手助けをしてくれている神様は多数いるけど、中にはマニアックな神様や、この世に存在しない架空の神様だっているの。
と言っても架空神の大半は、他作品からやってきた神様なんだけどね。
けど、私たちの姿は人間から見たら全く別の人物に見えるらしい。だから、私が"東方project"の洩矢諏訪子である事なんて、人間は誰も知る由がないのである。
ふふっ、甘いね。けどね、凄い人が先日かな?現れたのよ。
何故か知らないけど、私の正体を暴いた奴がいたの。なぜ私であるのか分かったのかというと、私の言動とか言い回しでわかったらしいよ。なんたって『あーうー』と言っただけで私だとわかるみたい。変態かよ。
でもその人から聞いた話だと、劇中の私のセリフ『あーうー』は東方projectの中でもかなりの人気なのだという。それより上位なのは「あなたが コンティニューできないのさ!」とかが有名らしい。一体誰なんだろう。
「あァ?んだよここはよォ・・・?」
うわっ!!突然話すな!びっくりするじゃない!
「・・・ん?」
不良っぽい男の人が私を細い目で睨みつける。な、何なのよ・・・?
「おい」
「な、なに?」
「ここはどこなんだよ?オメェ知ってんだろ?」
「知ってるには知ってるんだけどねぇ・・・言えないわ」
「は?」
「あー、うー・・・強いていうなら、うーん」
「まぁええわ・・・で?お前誰だよ」
『私は神様よ。あなたを転生させに来たの』
「てんせい?」
「ええ。なんでも聞き受けるよ」
「なんでもっつったな?逃げんじゃねえぞ?」
「わかったわよ・・・」
「・・・に会いたい」
・・・え?ウソでしょ?
「何?よく聞こえなかったわ」
「洩矢諏訪子!わかんねえか!?」
「わっ、わ・・・!?」
あああああーーーーーッッッ!!?私のバカ!自分から正体を明かすとか!!
コイツっ!不良と見せかけてオタクだったなんて!!卑怯なヤツめ・・・。
しかし私は、すぐに落ち着きを取り戻して話を再開する。
「もりやすわこ?わかった、調べてみるね・・・」
・・・自分の口から私に会いたいなんて人、初めてみたかも・・・。
「えっと、わた、その洩矢諏訪子という人?はね・・・「東方だ」そうそう」
つまりそこに行きたいのね。
「わかった。で、何かリクエストはありますか?」
「ねェ。ただそいつに会えればいい」
リクエストが無いなら、私がなんの力を与えようと関係ないよね。じゃあ会えなくしてあげよう。
「わかった・・・多分その子に会うのは難しいだろうけど、頑張ってねー」
はい転生ね。"東方project"の世界に飛んでけ~!
私は退屈していた。
誰にも知られていないこの場所に、一人でいるのがとても寂してたまらないという気持ちもあれば、最近やけにココに来たがる死者しか私の元にやって来ない。
やっぱり私が東方projectの洩矢諏訪子であるから、幻想郷の事しかよく分かってなさそうとか思われてるのかな。これでも"とあるシリーズ"の学園都市とか外の世界とか知ってるんだよ?なのに、なんでだろうか。
「お疲れ、諏訪子」
「あ、うん・・・神奈子」
「どうしたの?」
「・・・・・・あ、やっぱなんでもない」
「変な諏訪子。ほら、早苗が待ってるよ。行こう」
神奈子にこの事を相談したとしたら、神奈子、なんて言うのかなぁ。
「人手が足りてるんだよ、きっと」
恐らくそういうに違いない。
だったら別に聞かなくても良いかな、と私は思い込み、神社へ帰る事にした。
「諏訪子様、最近どうされたんですかね?」
私が部屋に一人でいると、隣の部屋から早苗と神奈子の会話が聞こえてきた。
少し気になったので、私は壁に耳を押し付けて会話を聞いてみることにした。
「さぁねぇ・・・いつもあんな感じだった気がするんだけど」
「たしかにそんな気もしますけど、いつもよりどんよりしてなかったですか?昨日もそうですけど、あんな諏訪子様久々に見ましたよ」
「ねー。いつもなら食べよう食べようって便乗してくるのに」
「そこでなんですが、諏訪子様の機嫌を良くさせてみませんか?」
「やめときな。あいつは下手に手を出すと引き篭るヤツなんだ。放っておいたほうがいい」
私ってそんな暗いイメージ持たれてたのね。まぁ引き篭るのは事実なんだけど、特に冬は引き篭ることが多いかな。
機嫌はこれでもいい方だと思うんだけどなぁ。昨日のお菓子の件は本当に食欲がわかなかった。
「そ、そうですか・・・私としては明るい諏訪子様が好きです」
「みんなそうよ。人は明るくなくちゃね」
まぁ、放っておいてくれるならよかった。私あんまりしつこくされるのは好きじゃないからね。
それから数週間後。
幻想郷に異変が発生した。そのため早苗に妖怪退治兼異変解決すべく、私か神奈子の力を貸してくださいとお願いされた。
力を貸すために私達は儀式を行い、それをしてから早苗はすぐに解決しに行くのだ。
私はその日を境に、転生の神様をする回数を減らした。
相変わらず神奈子は、あっちでお姉さんぶっており、フレンドリーな性格をしていることから、転生者から結構評判が良いみたい。
因みに私はというと、至ってサービスも普通で、平凡な神様らしい。これって、神が相当下に見られてるみたいだよね。神には逆らえないのにね、何が評判よ。
私は八百万の神なのよ。
諏訪子が神社から出ないというのは、恐らくこんな事をしているんだろうなーという発想から、この話が浮かび上がりました、歌 華です。
今回、初めて既存キャラ視点から作品を書いてみましたが、どうでしたでしょうか。それっぽくない?はは、異論は認めるぜッ!