私は暇していた。
もうすぐ私の苦手な冬が訪れる。そのためには、早めに越冬の準備をせねばと神奈子に提案してみた。
「もう1年が終わりに近づいて来たのねぇ・・・」
話を逸らされた。
さて、今年もどうやって冬を越そうかな・・・。前みたいにコタツとかストーブが使えないのは辛いけど、もう10年近くここに住んでて今更どうしようと考えるのもどうかと思う。
「そうだ神奈子」
「うん?」
「どうして今まで思いつかなかったんだろう・・・もっと早く気づけばよかった」
「なによさっきから」
「発電設備を河童に造ってもらって、この神社に電気を通せばコタツとか使えるじゃない」
「そうなのよね。けど、河童たちはまだ電気系の技術が発達段階にすら入ってないのよ」
「そっか・・・河童の造るやつって、殆ど水とか燃料を使っているから・・・おぉーっ!!」
神奈子ってば、何嘘ついてるのよ。
「なんなら、水を利用して発電すれば良いじゃない」
へ?と思ったような神奈子であったが、私の話を理解した瞬間、一気に顔がパァァと明るくなった。
「確かに!!流石は諏訪子ね!そうと決めたら、早速河童たちの元へ向かうわよ!!」
まるで子供のようにはしゃぐ神奈子に、私はついて行くだけでも大変な程であった。
私の手を強く引っ張って、私達は山の工場へ向かうこととなった。
結果は駄目だった。
河童曰く、確かにできなくないけどそんな大規模はできないのだという。別の世界から来た人で技術者ってあまりいないしなぁ。
顔つきの違う人間は言葉が通じないし・・・
さぁどうする?無理矢理にでも呼び寄せる?
・・・いや、そんな事しなくても自分から来てくれた。
突如、 二礼二拍手一礼をする人が目に映った。灰色のパーカー、ジーパンを履いていることから、外の世界から来た人だとわかる。
「お、客か」
神奈子はそう言うと、そこで手を合わせながらお辞儀してる人の元へ向かった。
「我の名前を呼ぶのは誰ぞ」
陰からこっそり覗くと、参拝客がとても信じられないものを見たような目で驚いていた。
「え...え........えええ!?」
「そこの青年か・・・?我は山の神だ。2つ願いを叶えてやろう・・・さぁ、願いを言え」
「か、神ィ!?ホントに、神!」
「願いは無いのか・・・?じゃあ何者だ?」
「あ、ありますよっ!え、えーと・・・」
どうするのよ神奈子のやつ。あの人慌てて何か考えているじゃないの。
「冗談よ♪そんな急に慌てんでも、夕方までなら待ってあげるわ」
「じゃあ夕方までここにいてもよろしいでしょうかっ」
あの人からいろいろ聞き出すつもりでいるのかな、神奈子は。
「もちろん。さ、上がって上がって」
「え・・・いいんですか?一般人がそこに入っちゃっても」
「居間ぐらいなら誰でも歓迎よ」
「あ、ありがとうございます・・・。それではお言葉に甘えて・・・お邪魔します」
正真正銘、日本の人だ。ここに入る参拝客にしては、珍しく靴を脱いでから上がってきた。
というか、そもそもここは参拝客が少ないんだけどね。さっきのは、それ前提の上で珍しくって言ったの。
まぁ何、大した事はないさ。
私達は感動していた。
実はこの青年、つい最近まで電気系の技術者をやっていたのだという。
しかし電気の研究をやめた青年は、実家へ帰る途中に電車に轢かれて転生してきたのだという。
私達がかつていた場所にも、汽車というものが走ってたのを思い出す。最近は蒸気より電気なんだねぇ。
電気についてどれぐらい知っているのかと聞くと、青年はロボットを動かしたりできるくらいの知識はある、と答えた。
では本題である、水力を使っての発電はできるか、と聞いてみた。
「詳しい事はあんまりわかんないけど、原理なら一応知っていますよ」
「お....おお..........っ!」
私と神奈子は期待の眼差し。コイツならできると確信したのだ。
「神だあぁぁぁぁぁぁっ!!!」
ガッツポーズ、歓喜の嵐。このとき、守矢神社は宴会騒ぎ並の盛り上がりようで、早苗がいるときより大いに盛り上がった。
「もうこれは尊敬に値するっすよ諏訪子!!」
「そ、そうね!」
ふと青年をちらっと見ると、背中丸めて顔がどんよりしていた。大袈裟すぎだよ神奈子。
原理を知り、それを中規模でも大規模でもいいからこの人並みに河童たちに指導させて頼んで発電所を造ってもらう。
けど河童って、あまり頼りにならないのよねぇ。神奈子が提案したダム計画なんて、ただの協調性皆無が原因で頓挫しちゃったじゃない。
けど、幻想郷で機械系の専門といえば河童しかいない。どうするかなぁ・・・
「それならお任せ下さい。それは僕
「「え?」」
僕達という言葉で二人して驚いた。もう一人誰かいるらしい。
「現在、僕達は幻想郷という場所と連絡を取り合えるか、という研究が行われているんです」
「何その研究!?」
バカバカしいのか、神奈子は笑っていた。しかし青年は気にせず話す。
「本当は僕は幻想郷側の担当ではないのですが・・・相方が恐らくこの世界?にいるかと」
「確かに幻想郷だよ?ここ。けど相方ねぇ・・・どこにいるかわかる?」
「それが・・・良くわからないのです。
絶対神奈子なんか、心当たりありそうだよね。地底かしら。それとも山?
「てか通信出来るのね。それの方が不思議でたまらない」
「今はそんなことどうでもいいでしょ神奈子」
「え?あ、そだった」
忘れんなよっ!!ここで神奈子は咳払いを一つ、気を引き締めた。
「人外がウヨウヨ?」
「正確には見た目が人間なんですけど、よく見たら羽根が生えていたそうです」
まてよ、益々難しくなってきたじゃないのよ。どうしてくれるの。
「も、もうちょっと詳しく!」
「んと、周りがなんにもなくて・・・確か、紅魔館?という所にいるそうです」
あの館か。私達だけじゃどうにも出来ないなぁ・・・。いや出来なくはないけど、力が弱まっちゃって何も出来ないかもね。
「ほう、あの湖のところね」
「どうするの?神奈子」
「え、そりゃあ、行くしかないでしょ」
そんな事言うけどさ・・・。
「てか、今起こってる異変ってなんだっだっけ?内容によっては、私達が危険な目に巻き込まれるかもしれないのよ?」
「私達は神よ?今こそ里とかのみんなから信仰を得て、力を強化するべきよ」
「そ、そうだけどっ!もし私達が出かけたとして早苗の邪魔になってたらどう責任取るつもりなの!?」
「邪魔しないように動けばいい。邪魔だったら謝ればいいだけの話でしょ?」
「そこまで急がなくたっていいじゃない!私だって少しぐらい我慢できるわよ!!」
青年の事を忘れたかのように2人だけの空間と化する神社で、私と神奈子の言い争いが始まった。
「なら今年も焚き火と酒と睡眠だけで冬を越すかい!?私はそれだけでも充分生活ができるわ!!困っているのは諏訪子、お主だけじゃぁぁぁ!!」
嘘おっしゃい!そんな神奈子の都合で冬を越すのはもう散々だわ!
「なっ─────!?そんな馬鹿な!!ま、まだ早苗がいるよ!」
「早苗は我の味方だッ!」
ざまあみろと言いたげな顔だね。だけど甘いよ!
「いいえ、私に決まってるッ!」
「我!」
「私!」
「わい!」
「うち!」
「儂!」
「あっし!」
「ネタ切れてんじゃないよ!」
「早苗は私のものよ!あんたなんかに渡すものか!」
「いやいやいや!お主のようなカエル小僧なんかに早苗は寄り付かないわぁ!!」
「誰がカエル小僧よ!この紐女!ろくでなし!」
「一言余計!諏訪子は異変が終わるまで何も出来ないんだー!よわーい!」
うわっ、な、なんちゅう低レベル!
「ぐぬぬ・・・!でも神奈子はあれよね、ババァ呼ばわりされてんじゃないのよっ!?ざまぁ無いわー!」
「うるさいこのロリババァ!」
「ブーメラン返ってきたよ!」
「私はロリじゃないしー」
私と神奈子が争ってる中、運命の人の声が心に突き刺さった。
『ただいま帰りましたー』
「おかえりぃぃ~~!!」
私は神奈子より一足早く早苗に抱きつく。どうだ神奈子め。
「ぬ、抜け駆けは・・・ぐはっ」
神奈子よわーい★
「わっ、ど、どうしたんですか諏訪子様・・・それに、この人は一体?」
アタフタする早苗に、私は期待しているんだ。早苗なら、あの南国のような暖かさが気に入ってるはずだから、私の意見に賛成してくれるはず!!
「この人!?あ、後で紹介するから、まずこの質問に答えて!!」
「は、はい」
こたつとたき火、酒。早苗は冬を越すならどっちがいい!!!?
「えと、どっちかって言いますとコタツ─────」
や、や・・・
「やたぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
早苗大好きだ!!死ぬまでいつでもどこでもずーっと一緒よ!!
「ザマー無ェな神奈子ォォォッ!!」
「ま、負けた──────? わたしが、このカエル小僧ごときにっ!」
「皆してどうしたんですか一体」
「早苗っ聞いて!実はこの青年と他の人が河童と協力して、我が家に電気が復活するのよ!!」
「え、ホントですか!?」
「多分」
「神奈子様良かったじゃないですか!またあの曲が聴けますよ」
早苗の言葉聞いた神奈子は、両手を頭に押し付けながら叫ぶ。
「うわ――っ!や、やめてくれ!アレを知られると、私が死ぬ・・・いやほんとに!頭振っちゃうから!」
「あの曲?」
「はい!デスメタルとあのアイドルグループをよく神奈子様と聞いてたんですよ昔」
だからさっきの叫び方が死にかけみたいな声だったのね。
しかし聞いた?あの神奈子が、アイドルグループが好きとか!!!
「ふっ・・・ふふふふふ」
ヤバイヤバイ、本当に笑いがおさまらない。ま、ま・・・
「あっハハハハハハハハッ!!!く~っ!!」
あー笑いが止まらない!!
「サナエぇぇぇぇぇ!!てめえ覚えてなさいよ!!呪ってやる!諏訪子と一緒にこの世から葬り去ってやるッ!!」
「酷っ!?」
だって神奈子、当たり前でしょう?普通の人はたき火と酒と布団だけで冬を越すなんてしたくないでしょうに。考えが古すぎなのよ、現代の技術に興味あるクセに!
「す~わ~こォ~!」
「はーい何でしょう神奈子様♥」
私がふざけて神奈子を様付けで返・・・
「じゃんけんぽっ!!」
いきなりジャンケンはあまりにも不意打ち過ぎるでしょ!?まぁ勝ったからいいけど。
「な───また負けただとっ!!?なんだ今日の我は!」
「それで・・・異変というものは終わったんでしょうか?」
青年が静かに聞いてきた。今までこの青年を忘れていたような気がしてたよ。ごめん。
「あの子が帰ってきたから、もう大丈夫だと思うよ」
「・・・もう夕方か。じゃそろそろお暇します」
青年は立ち上がり、私達に別れを告げた。もうすぐ夜だってのに、幻想郷の存在は知ってるくせにどんな所かはまだ分かってないのね。
「ま、待って!あの館に行くなら、もう外に出ない方がいいわ!今日はここで泊まっていくといいよ」
「え・・・マジですか?ありがとうございます。こんな僕ですが・・・」
「いやいや、一人増えたぐらいで大した事は無いわよ」
いやいや、私達は気にしないよ?あなたがデブだって事。
1日で異変を解決させるという偉業をやり遂げた早苗にご褒美───はあまり出来ないが、神からの肩もみをもれなく無料でサービスしてやろうじゃないか。
「「「「いただきます」」」」
「いやーお疲れ、早苗」
「ありがとうございます・・・おかげで毎日が楽しいです」
「ははは、異変があって楽しいとか、相当変態だなぁ」
「何を言います諏訪子様。私は至って健全です!」
「───それで、この人は誰ですか?」
・・・?あ、この青年のことか。そういや名前聞いてなかったかも。
「ああっ、あ僕は
パチパチパチ!!神奈子が謎の拍手、早苗も神奈子に便乗して拍手しはじめた。まあ私もしたけどね、拍手。
「いよっ!よろしく埜上!」
「よろしくお願いします埜上さん」
「よろしく埜上雅浩!」
「いよーし!そろそろゲーム始めるぞ!みんな早う食えっ!」
神奈子の命令、いつも楽しそうな雰囲気だ。
「「ラジャー!!」」
私と早苗でラジャーというと、神奈子はますますテンションを上げる。酒もそんなに飲んでないのに、よくもまぁあんなに気分が盛り上がれるものだ。羨ましいといや羨ましい。
ただ、唯一盛り上がっていない者がいた。
「ほらっ、埜上もだ!やるぞ、ゲーム!」
「あっはい・・・」
かなり無理をしているようにも見える。まさか、お酒を飲まないと気分が乗らないタイプなのだろうか。
まぁさっきから忘れ去られているように放置されてたからね、ショック受けてたのかも。
それとも、女だらけであるのが辛いのかな。
まぁいいや。そういうのは自分から言ってくれないと、どうすればいいかわからないもの。