ベルセリア・ゼスティリア転生(仮題)   作:飯妃旅立

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走る森も終わってない勝手にLCCも終わってないのに新連載!


ベルセリア編
dai iti wa pro lorg


 だだっ広い草原。

 怒れる程に青い空と、遠くに見える尖塔は岩石か。

 どうやら自分はそんな大自然に寝転がっていたらしい。

 

 このまま寝ていたい。 そんな欲求に駆られる。

 

 果たしてこのまま寝ていたところで、誰が起こしに来るだろうか。

 身体の底からダラダラしたい、のんびりしたいという欲求が湧きあがる。

 はて、自分は眠る前まで何をしていただろうか。

 

 思い出せない。 思い出せないが、至極どうでもいい事だった気がする。

 ならば、思い出さなくてもいいだろう。

 

 このまま寝ていよう――。

 

 

 

 

 

 

 

「ん? ノルミン族か? 珍しいな」

 

 ――誰?

 

「俺か? 俺は――――ってんだ。 お前は?」

 

 ――サムサラ。

 

「サムサラだな。 俺と一緒に来ないか?」

 

 ――持って行って。

 

「ものぐさな奴だな。 ホラ、乗れよ」

 

 ――どこ行くの?

 

「海の向こうだ。 海を越えた、その先だ」

 

 ――そう。

 

 

 

 藤色と白色の体色の、丸みを帯びた身体。 頭には海賊帽。

 眠そうな目と、一切開かない口が特徴的な、ノルミン族。

 

 サムサラ。 それが私の名前だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっちゃー……これも副長の死神の呪いですかね」

「さぁな。 旋回するぞ」

「アイサー!」

 

 眼下の甲板を、男たちが忙しなく走り回っている。

 船の前方には、直径20mを誇る巨大な大渦。 渦潮だ。

 先程までそんな予兆など無かったというのに、あの聖隷はとことん死神に愛されているらしい。 これであの聖隷が風属性であれば、少なからず舵の手助けができたものを。

 

 もっとも文句を垂れる自身もこういった物理現象への干渉には向かないのだが。

 

「サムサラ姐さんも手伝ってくださいよー! って寝てるし……」

「ベンウィック! 無いモンに縋ってねぇで手を動かしやがれ! 飲み込まれるぞ!」

「うわわわ、面舵いっぱーい!」

「限界までやってるよ!」

 

 船が左側に傾く。

 非常に寝心地が悪い。 早く脱出してくれないだろうか。

 

「サムサラ! どっか捕まってろ! 【エアスラスト】!」

 

 金髪の偉丈夫が渦に向かって聖隷術を放つ。 そんなもので収まる渦であるはずもないのだが、何をしたかったのだろうか。

 と、船が勢いよく渦とは逆方向へ進んだ。

 あぁ、反動を狙ったのか。

 

「おーい、誰も落ちてないかー?」

「落ちてたら返事できねーよ!」

「そりゃそうだ!」

 

 船体へのダメージは……そこまででもなさそうだ。 富を意味するこの船はこの程度の災難に負けるほど弱くないということだろうか。

 もっとも荒くれ者の多いこの船故に、甲板はいくつも修繕の痕があるのだが。

 

「やっぱあの海門のせいですかね、この渦」

「だろうな。 3年前は普通に航海できた場所だ。 あれが余計な海流を作っている」

「ちっくしょ、やっぱどうにかしてあの海門破壊しないとですね」

「……内部から直接行くか」

 

 ――近くに船がいる。 ヴォーティガンに向かってる。

 

「何? ……アレか」

「丁度いい、協力させましょうぜ」

「……死神と協力したい奴だといいがな」

 

 金髪の偉丈夫がコインを指ではじく。

 出目は見えないが、恐らく裏。 魔王ダオスだろう。 別にダオスはマーテルの敵ではないのに、可哀想な話だ。

 

 遠方に見える地味な船。 アレに、彼女たちが乗っている。

 残念ながらミーハー精神はないのだが、これから長い付き合いになる。

 第一印象が……まぁ、いつも通りでいいか。

 

 船が遠方の船を追い始める。

 威嚇射撃のつもりの癖に、あちらの船体に砲弾が当たっているのも死神の呪いか。

 

 ウチの砲撃手の腕が悪いとは思いたくないものだ。

 




そしてプロローグは短い法則。

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