ベルセリア・ゼスティリア転生(仮題)   作:飯妃旅立

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原作との乖離が大きいです。 
更に、独自解釈・捏造設定の度合いが大きいです。

ご注意。


dai jur yon wa imina no seishu

 

「なんにせよ、喰魔の確保は失敗じゃ。 今頃新しい喰魔が生まれてるじゃろうて」

「だな。 港に戻って新しい喰魔を探すぞ」

「……そうね」

 

 神の如き獅子の礎は、ここに眠れり。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ゼクソン港の商人から対魔士の情報。

 一行はタイタニアへ向かう。

 

「未完成とはいえ神依が実戦で使われた以上、アイフリードに拘る必要はなくなったな……」

「……」

「急いでタイタニアへ行こう、アイゼン。 僕も船の事手伝うよ!」

「あぁ。 急ぐぞ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――グリモワール。 聖寮の船が向かってるって。

 

 ――も少しはやければ……その情報も役に立ったかもねぇ……。 残念だけど、今港で轟音がしたわ。 隠れるにせよ逃げるにせよ、遅いわねぇ。

 

 ――全速で向かうから頑張って。

 

 ――他人事ねぇ。 ふぅ……ま、任された事は果たすわ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「密偵はお主じゃったか、ビエンフー」

「マ、マギルゥ姐さん!?」

 

 本当に甘いスパイだ。 術式に強制されていたとはいえ、甲板で話したら気付かれるだろうに。 私がいるんだし。

 

 鳥さん、ちょっと介入させてもらいますよ。

 

「不味い所を見つかってしもうた~。 儂が聖寮の密偵とばぁ~れ~た~か~」

 

 棒読み。

 

「身を焦がすほどの憎悪は……生きている実感を与えてくれるのか?」

 

 真剣。

 

 心とは壊れるモノに非ず。 死ぬ時に戻るモノだ。

 マギルゥの心は壊れていない。

 

 ――アイゼン。 グリモワールとオルとトロスが襲われてる。 先に仕掛けるよ。

 

 ――頼む。 俺達は飛び移る。

 

 頼まれた。

 

 ――腐食。 其は希望の終焉。 サイフォンタングル。

 

「何!?」

「くっ!」

 

「サムサラか! 行くわよ!」

「応!」

 

 避けられてはいないが、掠った程度だ。

 神依をすれば聖隷の命が加算されるだろうし、あまり意味は無かったか。

 時間稼ぎにはなったようだけど。

 

 対魔士は神依を発動させる。 しかし、弱いな……。

 

 すぐにベルベット達に倒された。

 自壊し、消える対魔士。 なるほど、霊力側に拡散させるのか。 メルキオルらしい。

 

「グリモワール、喰魔たちは?」

「わからないわ。 サムサラから交信を貰った直後に攻められて……散り散りになってしまったのよ……。」

 ――ベルベット。 クロガネとダイルとモアナとメディサは一緒にいる。 そこまで遠くない。 王子は少し地下だけど、周囲に人間はいない。

 

 ――わかった。

「解読はどうなった」

「ほとんどできたけど、肝心の最後がまだね」

「あんたたちはバンエルティア号へ。 喰魔たちは……私が連れ戻す」

「できるかのぅ……神依の集団を掻い潜って」

「嫌なら来なくてもいい!」

「サムサラはここで待て。 監視と連絡を頼む」

 ――任せて。

 

 ベルベットたちを送り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ギリギリだったわねぇ。 ま、助かったわ」

「わふ」

 ――グリモワールは気付いてる? この気配。

「えぇ……。 これがアルトリウスって対魔士?」

 ――あ、そっちはどうでもいい(・・・・・・)かな。

「へぇ……? 強気じゃない。 何か策でもあるのかしら?」

 ――別に。 感じ取れないならそれでいい。 古文書の解読、頑張って。

「あなたも読めるって……聞いたけど?」

 ――単語だけね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ガシャンガシャンと音を響かせて、首の無い鎧がやってきた。 他の3人もしっかりいる。

「ふぅ……着いたか。 途中から対魔士も聖隷も一切近寄って来なくなったのが幸いだったな」

「だなぁ。 だが、俺は見た事あるぜ。 サムサラ、お前の仕業だろぅ?」

 ――うん。 遠すぎて効果が薄くなっちゃったけど、一応結界。

「ありがとよ。 おかげで俺達は無事だぜ。 王子とははぐれちまったが……」

 ――グリフォンは強いよ。 それに、私が場所を把握してる。

「それなら大丈夫そぉだな。 ほらモアナ、バンエルティア号に乗りな」

「怖かったよぉ……」

「もう大丈夫よ。 だから乗りましょ?」

「うん……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「目視できない範囲に術をかけるなんて……聖寮の一等対魔士でも出来ないんじゃない?」

 ――感知範囲はイコールで視覚範囲だよ。 物質でも透かして見える。

「へぇ……それは便利そうね。 そいえば気になってたんだけど……あなたの感知範囲やら交信術やらって、生まれつき持っていたものなのかしら?」

 ――ううん。 生まれつきじゃないよ。 どっちも私の能力だし。

「ふぅん……? 生まれつき持っていたわけじゃないのに、‘私の能力’……ねぇ」

 ――好きに考察してもらって構わないよ。 私から正答を言うことはないけど。

「あ、そぅ……。 ま、いいけどね……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 む。 聖寮の船か。

 

 ――アイゼン。 聖寮がバンエルティア号に気付いた。 何隻か回り込んできてる。 迎撃してもいい?

 

 ――あぁ。 全て沈めてやれ。

 

 ――全部は……。

 

 

「あら、聖寮の船?」

 ――うん。 沈める。

「そ。 クロガネは一応飛んできたりしたものを受け止めてくれるかしら……」

「了解した」

 

 ――元始にて万物の生たる燐光。

 

 聖寮の船の真上。 海の水が引き寄せられ、収縮する。

 

「なんだァ!?」

「これはこれは……とても戦闘に向いていない聖隷とは思えないわねぇ」

 

 ――汝が力、我に示せ。

 

 収縮した物質は細かに砕け、さらに密度を上げる。

 こぼれ出る燐光はまるで太陽。 それが、聖寮の船の間近で脈動する。

 

 ――轟け。 ビッグバン。

 

 

 光が、溢れ――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あなた……やり過ぎって言葉、知ってるかしら?」

 ――知ってる。 久しぶりに周りを気にしないで良かったから、はりきっただけ。

「なるほど、戦わないのはそういう理由だったか……。 確かにこれじゃ、周りを巻き込みかねないわねぇ」

 ――それより、古文書。

「えぇ……えーっと……ふむ」

 ――そこはフォルトゥナ。 そこはエルレイン。

「なんだ、読めるじゃない……そう読むと……まさか、そんな!」

 ――カノヌシはもう、復活している。 

「……どうして言わなかったのかしら?」

 ――誓約。 だけど……。

「だけど?」

 ――何もしないとは、言ってない。

 

 

 

 

★★★★

 

 

 

 

「安心して。 この傷だって、すぐ治るんだ。 ――お姉ちゃんを食べればね」

 

 カノヌシが術式を展開する。

 ベルベット達の脚元に、地脈への入り口が現れる。

 

 そして、彼女たちはカノヌシの地脈(からだ)へと取り込まれていった。

 

 ――……。

 

「うぉ!?」

「くっ!?」

 

 シグレ・ランゲツとカノヌシが飛び退く。

 先程まであった地脈への入り口に生え咲いたのは、黒い水晶。

 

「……黒水晶……」

「んだぁ? まだ誰か仲間がいんのか?」

「……恐らくトラップだろう。 霊力に反応して励起するモノ。 メルキオルの報告にあったモノだ」

「へぇ、おもしれぇ。 そんな術があんのか!」

「取り逃がしたが……どうする」

「地脈へは入れた。 追いかけるよ」

 

 そういってカノヌシは地面に入口を開き、その中に身を落とした。

 

「海賊の奴らか?」

「いや、飛びぬけて高い霊力を持つ者はいなかったはずだ」

「ま、誰でもいいけどよ! お?」

 

 ――狭間の淵に生まれし、等価なる理。

 

 黒い靄のような――歪みが2人の周囲に顕れる。

 床と天井には広大な方陣。

 

「くっ」

「まだ仕掛けてきやがるか!」

 

 ――殲滅の力を以て、砕け。

 

 歪みの靄は次第に収縮する。 とてつもない引力とともに。

 床の方陣は赤く染まり、2人を引きずり込む。

 

「おら!」

「ふん」

 

 しかし、その程度にやられる2人ではなく。

 シグレ・ランゲツもアルトリウス・コールブランドも己が剣を地面に突きさし、耐えた。

 

 2人の視界の中心で、(ひず)みが最少にまで収縮する。

 

 ――エクステンション。

 

 そこに向かうような風流が生まれる。 歪み内部の空気が消えたのだ。

 

「おー、中々エゲツねぇ術使ってくる奴がいるんだな。 しかも姿は見えねぇときた!」

「知らぬ術だ。 何者か、調べる必要がありそうだな」

「ん? 金剛鉄(オリハルコン)が無ぇな……。 回収目的か」

「ふん、硬いだけではすぐ折れる。 放っておけ」

 

 

 

 

★★★★

 

「賭けは儂の勝ち……いや、サムサラの言った通りになるのかのぅ」

 

★★★★

 

 

 

 

 回収ではなく、消滅が目的だ。

 エクステンションはそういう術なのだから。

 

「……で? 戻るの?」

 ――ううん。 タイタニアにベルベット達はいないよ。

「ふぅん?」

 

 ――ベンウィック。 カースランド島へ向かって。 後、私は少し眠る。

「……よくわかんないッスけど、アイマム!」

 

 

 

 

★★★★

 

 

 

 

 

 人が聖隷に転生した事実はあるが、その原理は解明されていない。

 アイゼンは彼らにそう説明した。

 

 まぁ、その原理自体は簡単なものだ。 短くまとめるならキャリーオーバーか。

 

 それを起こせるのが、稀有な人間というだけの話。

 

 

 

 さて、今私の意識はバンエルティア号ではなく、地脈流の中にある。

 入口が開いた瞬間に前回のように介入させてもらったのだ。

 

 一度目はビーコンのような役割をする聖隷術を置いてくるまでしかできなかったが、今回はそれを頼りに意識ごと飛ばすことに成功した。

 勿論隠匿術もしっかりかけてある。 前のカノヌシならいざ知らず、今のカノヌシには見つける事はできないだろう。

 

 眼下に見下ろすベルベット一向。

 大地の記憶に惑わされているのか。

 

 私は私で天への階梯を見つけようと模索したのだが、未だ開いていない様子。 ほんとあのねこにんどうやって見つけたんだ。

 銭湯行きたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 地脈の裂け目の前まで彼女たちが来た時点で、大地の記憶がよみがえる。

 私には見えない(・・・・)ソレ。

 

 十二歳病か。

 十二歳病に罹るのは霊応力の飛びぬけて高いモノだけであり、更に傍に地脈点がある事が重要だ。

 彼らは融合してしまうのだ。 無意識に。 地脈と――地脈に流れる霊力と。

 

 聖隷の生まれ方を覚えているだろうか。

 清浄な霊力が清浄な場に集まり、生まれる存在。

 清浄な場とは、何も自然の中である必要はない。

 

 ライフィセットがいい例だろうか。 カノヌシの半分……つまり心はセリカ・クラウのお腹の子を憑代にして聖隷として生まれた。 それはお腹の子が飛びぬけて高い霊応力を持っていた事、そして清浄な場――セリカ・クラウの腹の中だった事に起因する。

 

 ライフィセット・クラウは亡き母の腹に居る時点で、清浄なる母親の腹に生まれた聖隷と無意識に融合した。 まぁ聖隷と言っても目視すら不可な矮小なモノだが。

 それはつまり、極自然に行われた神依だ。

 故に反発、拒絶を繰り返し、高熱を発する。 契約を通り越し、融合までしてしまったが為に。 ドラゴンになれないほど矮小な聖隷は地脈に還り、融合した魂も地脈へと引き摺られる。

 神依化のリターンは思考速度や閃きに顕れ、凡そ神童と呼ばれる類いにまで昇華させるだろう。

 

 とてつもない力の代わりに大きな代償。 神依らしいことだ。

 

 

 キメラ。 さて、私は私でやることをしてしまおう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「最後の穢れ……お姉ちゃんの‘憎悪’と‘絶望’を食べれば、僕は完全に覚醒する」

 

 これ見よがしな方陣。 ライフィセットのものによく似ている。 当たり前か、

 だが、他人の記憶を利用すると言うのは少々看過できるものではない。

 それはノルミンとしての仕事。

 

「そうすれば――世界の痛みは止められるんだよ」

 

 ――時。

 

「お姉ちゃんには、痛みの無い世界で幸せになってほしかったけど……化け物に成っちゃったんじゃ、仕方ないね」

 

 ――逆しまに

 

「一人目の生贄の転生体……君も僕の一部だ。 一緒に食べてあげるよ」

 

 ――還りて

 

 アイゼンが浮き上がるライフィセットの足を掴み、詐欺師(フラウド)で己を固定する。

 

「ライフィセット! この自惚れ屋に言ってやれ!」

「お願い……もう、手を……」

 

 ――其を

 

「うるさい! 黙れぇ!」

「え……」

「わかるわけないよ! ベルベットは! すぐ怒って! 怖くて! 僕を食べようとする!」

 

「でも、優しくて――こんなに、あったかい!」

 

 ――

 

「ベルベットの事なんて……全然わからないよ! けど、ベルベットは僕に名前をくれた! 羅針盤をくれた! 僕が生きてるんだって、教えてくれた!」

「……」

「だから僕は、僕の為にベルベットを守るんだ!」

「……フィー……」

「穢れてたっていい! 意味なんかなくたっていいよ! みんなが間違ってるっていうんなら、世界とだって戦う! ベルベットが絶望したって知るもんか!」

 

「僕は、ベルベットがいない世界なんて――」

 

 業魔手がライフィセットの腕を喰い掴む。

 その手を離せとカノヌシの一部として言っているのか。

 その手を掴めと喰われた彼女が叫んでいるのか。

 

「絶対に嫌だァァッ!」

「ダメよ……腕が、勝手に……」

「腕くらい食べてもいいよ。 でも、こっちは残しておいて」

 

 ――消し去らん

 

「ベルベットを泣かせたカノヌシ(あいつ)を、殴ってやるんだから!」

「あたし……大好きだったの。 ラフィもセリカ姐さんもアーサー義兄さんも……みんな。 だから、あの時を奪われた事が……あたしを選んでくれなかったことが……」

 

「悔しいっ!!」

 

 ――ディストーション

 

「絶望が……消えた!? くっ!?」

 

 方陣の上に歯車が出現する。 歯車の下部に時空の歪みが出来る。

 方陣は割れた。 あわよくばカノヌシを……!

 

 無理か! なら、シアリーズのための時間稼ぎをする!

 

 ――始まりと終わりを知らず時の狭間に遊べ、ストップフロウ!

 

「私の心にもあるのです。 あなたと同じ、消したくても消えない炎が」

「あなたの気持ち……やっとわかったわ。 ……でも私は、自分のためにしか戦えない」

「十分です。 それが生きると言う事ですから」

 

 感じた。

 しっかり戻ったね。 仕事はしっかり果たせたようだ。

 

 後は、彼女たちに任せよう。 この意識も、本体に流れる。

 

 

 

 

★★★★

 

 

 

 覚醒。 そして、ザ・カリスで『刻遺の語り部(メーヴィン)』が生まれた。

 遥か未来で、導師に真実を伝える子の名前。

 ただの姓名から、語り継がれる名前に変わったのだ。

 

「あら、起きたのね」

 ――うん。 ザビーダは?

「……ほんとに寝てたの? あの子なら、島の中へ入って行ったわよ」

 ――何かほかに変わった事ある?

「いいえ。 特に無いわね」

 ――そう。 あ、ベルベット達出て来たよ。

「……どこからそれを知り得たのか……気になるわねぇ」

 ――カノヌシも。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「灼陣、熱波! 焦がせ、ディバイドヒート!」

 

 熱風が一直線に巻き起こる。 しかし、これといったダメージはカノヌシには入らない。

 

「その程度で僕を止めるなんて言ったの?」

「うるせぇんだよ! あいつを……一緒にいきてぇつったシルバを!」

「シルバ……? あぁ、ドラゴンの贄の事か」

「瞬迅、旋風、業嵐、来な! ホライゾンストーム!」

 

 ザビーダの頭上の方陣から旋風が巻き起こる。

 

「ジルクラッカー」

「詠唱無しかよッ! ちぃっ!」

 

 避け切れない。 だが。

 

 ――大地、魂に無上なる祝福を与えたまえ。 ソウルオブアース。

 

「何?」

「こりゃ……」

 

 ――ザビーダ、加勢する。

 

 歳を経てのドラゴン化なら納得するが、故意でのドラゴン化は看過できない。

 前の、心が伴っていたカノヌシならばやらなかった事だ。

 その償いは目の前の存在に受けてもらうしかないだろう。

 

「どこに……ッ!」

詐欺師(フラウド)!」

 

 カノヌシを地面から生えた鎖が縛る。

 

「くっ!?」

 

 ――(ほむら)、其は魂を看取る幽玄の炎! 葬炎、ファントムフレア。

 

 実体のない、しかし確実にダメージを刻む炎が纏わりつく。 鎖のせいで動けないカノヌシは、それをまともに喰らう。

 ――ザビーダ。 カノヌシの弱点は火属性。

 

謀略者(スクイーズ)!」

 

 ペンデュラムが熱波を出し、カノヌシに傷を負わせる。

 

「この……!」

 

 無詠唱のシェイドブライト。 術名すら言わないとは。 以下省略でもそんなことできなかったのに。

 避ける事が出来ずにまともに喰らうザビーダ。

 

 ――紡ぎしは抱擁、荘厳なる大地にもたらされん光の奇跡にいま名を与うる。 リザレクション。

 

 本来広範囲回復のコレを、ザビーダの周囲のみに展開する圧縮術式だ。 その回復量はエリクシールに匹敵する。

 

「回復術……面倒な! なら、一気に叩く!」

「させるかよッ!」

 

 間に合わない。 秘奥義か。 なら――。

 

「世界の痛みも穢れも、これが最善の理なんだ! プライマリィ・キリング(しずまれ)!」

「ぐぁッ!?」

 

 ――聖光を(ごう)し、再誕願い奉る。 レイズデッド。

 

 この世界の詠唱ではない術。 四大の王がいてくれてよかった。

 

「はぁ……はぁ……ったく、人使いが荒い……」

「蘇生術……」

 

 ――ザビーダ、ライフィセットに策が或るみたい。 合流して油断させて。

 

「無茶な注文を……だが、やるしかねェ!」

「……逃げるの? いや、合流するのか」

 

 釣れた。

 ここまでプライドを傷つけられたのだ。 今のカノヌシなら、釣れないはずもない。

 

 

 光弾がザビーダに迫る。

 

 ――喰らった感じで前に倒れて。

 

「ぐあっ!」

「だから苦しむと言ったのに……」

「ザビーダ……」

 

 ――名演技。

 

 ――回復してくれねェのかよ……。

 

 ――あ、痛かった?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ライフィセットの機転により、シルバはカノヌシの一撃を受け、シルバの反撃にカノヌシは怯む。

 

 ――ザビーダ、立てる?

 

 ――逃げるんだな?

 

「うぁぁぁぁぁあああああ!」

 

 白銀の炎。 浄化の炎。 祈りの炎。

 それは、穢れを灼いた。

 

「退くぞ!」

「逃避行だ、頑張ったなライフィセット!」

「ザビーダ!? てめぇ、演技か!」

「それも後だ。 今は逃げようぜ、南の浜にいるバンエルティア号でな!」

「……あいつ……!」

 

 わーい怒られそう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 カドニクス港の宿屋。

 

「ライフィセットは起きんし、ベルベットも眠ったままかのー」

「だな。 それより、だ」

「何故バンエルティア号がカースランド島にいたのか……何故ザビーダが演技をしていたのか……」

 

『話してもらうぞ』

 

 ぶるぶる、私悪いノルミンじゃないよ。

 

「あー、副長。 カノヌシを引き剥がした時、加勢してくれたんだ。 そう邪険にすんなって」

「百歩譲って、そっちはいい。 お前の感知範囲に入ったのだと思えば納得だ。 だが、バンエルティア号がカースランド島へ向かうまでの間俺達は地脈の中に居た。 それをどうやって感知したんだ?」

「あ、そういえば地脈の中でカノヌシの術が不自然に砕けてましたし、その後もアワーグラスでも使われたかのように停止していましたね」

 ――地脈に意識を飛ばして、術を放っただけ。

「いやなンで俺に言うンだよ。 地脈に意識飛ばして術を放っただけだとよ」

「俺達の場所がわかった件は?」

 ――地脈の裂け目くらい感知できる。

「だからッ……っはぁ……地脈の裂け目くらい感知できるンだとよ」

「……そうか」

 ――あ、ベルベットもライフィセットも起きたみたい。

「2人とも起きたってよ」

 

 抗議も面倒になったか。

 

 面々はわざわざ気配を消し、2人を見に行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで? 何よ、こんな朝早く」

「……何かを感知したんだな?」

 ――アイフリード。

「何? アイフリードだと?」

「ンだと!? どこだ、あいつはどこにいる!」

 ――エンドガンド領。 リオネル島ベイルド沼野。 あの大角の業魔がそう。

 

 ちなみにベイルドは顎髭という意味。

 

「エンドガンド領……リオネル島のベイルド沼野か」

「チッ……俺は行くぜ、副長! 例え罠でもな!」

「あたしたちも行くわ。 手掛かりになるだろうし……後願の憂いは絶っておきたい」

「あぁ、リオネル島に急ぐぞ。 ベンウィック!」

「出航準備、整ってるぜ!」

 

 史実とは少し乖離(かいり)しつつも……一行はアイフリードの元へ向かう。

 




ベルセリアのイラスト集注文しました(まだ手元にない)



色々食い違ってるんだろうなぁ……。

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