ベルセリア・ゼスティリア転生(仮題)   作:飯妃旅立

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サブストーリー1つ目。
いきなり奴の回です。


独自設定・捏造設定・独自解釈が多く、捏造設定に至ってはオリ展開を少し含んでいます。
それでもいい方だけGO!






dai jur hachi wa 『phoenix』

「アイゼンさんに手紙ッス~」

 

 げ。 いつのまにノル様人形を集めていたんだライフィセット……!

 

「また例の手紙か。 『一筆啓上。 我の堪忍袋の緒は切れた。 怒りの鉄槌を今くださん! 監獄島に来るが良い』、『逃げても責めはせぬ。 うぬが薄情かつ臆病な愚兄と判断するのみ』」

「おいおい、こいつは果たし状じゃないか! 面白そうだなぁ、行こうぜ!」

 

 どうする。 ついていくべきか、行かざるべきか。

 あいつはあんなナリだが真実最強だ。 ベルベット達では万一もあり得る。

 殺しこそしないだろうが……。

 

「サムサラ、行くわよ。 ……サムサラ?」

 ――………………わかった……。

「? やけに嫌そうね。 別に、あんただけいつも通りバンエルティア号残ってても――」

 ――ううん、行くよ。 多分、避けられないし。

「そ。 ならタイタニアへとっとと行きましょ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「対魔士の姿は見当たらないわね」

「ここは用済みとて、完全撤退したようじゃな」

「それを知っていてここを果たし状に指定したのなら、侮れませんね」

「油断せずに行くぞ」

 

 ……うん。

 ソウダネ。

 

 ライフィセットの頭に乗ったまま、タイタニアを進んでいく。

 あぁ、ここからでも暑っ苦しい気配が……。

 

 

 

 そして、タイタニア裏側エントランスに着いた。

 

「なんだ? 誰もいないじゃないか……。 ん? 何だあの箱」

 

 

「盟約の……そして断罪の時は来たれり!」

「何……?」

 

 エントランスに置いてあった木箱が光り輝く。

 眩しい。

 

 そこから、重い音を立ててオレンジ色の物体が飛び出した。

 

「箱の中からノル様人形が!?」

「なに、あんた」

 

 

 ――天光満る処我は在り

 

 

「フ……冥途の土産に覚えておくがいい。 我が名は――」

 

 

 ――黄泉の門開くところ汝在り

 

 

「おー、ノルミン聖隷のフェニックスではないか~。 そうかそうか、どうりで手紙が暑苦しかったわけじゃ」

「びえ~ん! 自称ノルミン聖隷最強のオトコがこんなところに関わっていたんでフか~!?」

「自称に非ず! 我が名はフェニックス! ノルミン聖隷最強の漢なり!」

 

 

 ――運命の審判を告げる銅羅にも似て

 

 

「全部、先に言われてるんだけど?」

 

 

 ――衝撃を以て世界を揺るがすもの

 

 

「手紙をよこしたのはてめぇか! なんの真似だ?」

 

 

 ――此方(こなた)天光満る処より

 

 

「全ては天の導きなり。 過日、我は兄への想いが綴られた手紙を拾った。 差出人を探し出し、密かに訪ねてみると……そこには、1人の可憐な少女が居た。 兄からの贈り物と、出せなかった手紙の山に囲まれて、な」

「出せなかった手紙……?」

「一文字一文字に込められた兄への想い。 便箋(びんせん)へ落ちた涙の痕に、我も涙した」

「てめぇ! 拾った手紙勝手に読んだ挙句、人の部屋に勝手に入りやがったのか!」

 

 

 ――彼方(かなた)黄泉の門開く処生じて

 

 

「我が道徳に反したことの非は認める。 だが、我の正義が貴様の非情を許さぬ! 使い古しの手袋を握りしめ、広い海に兄の無事を祈る、少女の瞳にかけて!」

「わけがわからん。 てめぇは何がしたいんだ!」

「その言葉、汝自身に問うが良い!」

「なんだと……?」

「上っ面の言葉を重ねた手紙とおまけのガラクタで、何が伝わると言うのだ!」

「それは贖罪の……」

 

「笑止! 妹を心配する汝も、海賊と共に行きたいと望む汝も、どちらも本物であろう! ならば何故、それを正直に伝えてやらぬ。 それが、汝の流儀なのだと何故言わぬ! 兄の流儀を許せぬような器の小さい女なのか、汝の愛する妹は!」

「てめぇに説教される筋合いはねえ!」

 

 

 ――滅ぼさん。

 

 

「ならば、力を示して見せよ!」

「何が‘ならば’だ!」

「我が勝った暁には、即座に妹と会ってもらう。 だが、我が敗れた時は、我になんでも命ずるがよい!」

 ――久しぶり。 そして喰らえ、フェニックス。

「む!?」

 

 

 狭い室内の床と天井に幾何学模様の描かれた方陣が展開される。

 幾何学模様の間には文字。 言語はプライマル・エルヴン・ロアー。

 原初の力にして最大の幻想が込められた文字だ。

 

 方陣は回転を繰り返し、幾層も幾層も重なっていく。

 

 回転するごとに方陣は光り輝き、その光が視認できぬ程になった瞬間に――。

 

 

 ――インディグ・ネイション!

 

 

 

 轟音と共に、神の怒槌(いかづち)がフェニックスを貫いた。

 

 

 

 

「なんだかいつもより容赦なくないか、サム……」

 ――ロクロウ、終わってないよ。

 

 そう、終わっていない。 わざわざ完全詠唱したのは、あいつに秘奥義を使わせるためだ。

 早々に使わせておかないと、後が面倒だから。

 

 

 

 

 

「ここで果てるわけには……いかんのだ! 今復活のォォォォォオオオ! 羽ばたきの時なりぃぃぃぃいいいいい!」

 

 

 

 

 

 轟雷の中から生まれた火の鳥が、方陣を喰い割った。

 

 

「あれで倒れないのか! 面白い奴だな!」

「笑いたくば笑うがいい! だが、最後に笑うのは我なり!」

「泣きっ面を拝ませてもらうぞ!」

 ――全開で術を使うから、巻き込まれないでね。

「あぁ、勝手に避ける!」

 

 

 ――滅びの時……ディメンジョナル・マテリアル。

 

 突如空間に光をも吸い込む真黒(しんこく)の球体が生まれる。

 球体は膨張し、フェニックスを潰しにかかる。

 

「ぬぅぅぅううう!? 懐かしいぞ!」

 

 フェニックスは体に炎を纏い、ピュイイイイイという甲高い鳴き声を発しながらそこを離脱した。 面倒な……!

 

「ハハ! 前に聞いた時からやりあってみたかったんだ! あいつが認めた最強、フェニックス!」

「そうだ! 我は最強の漢フェニックスなり!」

 

 ロクロウの斬りかかりもあわや、フェニックスは天井すれすれまで飛びあがる。

 そして巨大化。 ロクロウ目掛けて落ちてきた。

 

 ――誘惑の罠張り巡らせ、我が懐中へ! トラクタービーム!

「ぬぉああああ!?」

崩牙襲(ほうがしゅう)!」

 

 落ちてくる前に敷いたトラクタービームによって天井に押し戻されたフェニックスを、ベルベットの蹴りが襲う。 しかし有効なダメージにはなっていない。

 

「『喝!』」

「くっ!?」

 

 ベルベットが弾き飛ばされた。 

 

 ――無垢な魂よ。 癒しの庭に集え。 煌け、イノセント・ガーデン。

 

「助かる!」

「久しい感覚だ! 久しく……懐かしい、我が――」

 

 ――デスクラウド。

 

 真黒の雲が生まれる。

 その雲は、容易くフェニックスを取り込んだ。

 

「エレノア、下がれ! あれに触れるのは不味い!」

「はい! ……見た事も無い術ですが……アレは、なんなのでしょうか……」

「知らん! だが、アレから奴が出てきたら一斉に叩くぞ!」

 

 

「ぬぅぅぅぅぅぉぉぉおおおおお! 我が栄光の軌跡、見切れまい! 我こそが天翔オォォォォォォオオオオ!」

 

 雲がはじけ飛ぶ。 ち、一度倒れた癖に蘇ったか!

 

「響け! 集え!! 全てを滅する刃と化せぇぇぇえ!! ロストフォン・ドライブ!!」

「明日はいらねぇ! 今お前を仕留める、詰みの一手だ! ドラグーン・ハウリング!!」

 

 穢れの炎と超振動がフェニックスを襲う。

 

 ――マギルゥ、私の術を吸って。

「なるほどのぅ……スペルアブソーバー! ハイドロシュトローム!」

 

 地水属性がフェニックスを巻く。

 私が詠唱しかけた術をマギルゥに蓄積させ、秘術を発動させたのだ。

 

「瞬撃必倒! この距離なら、外しはせん! 零の型・破空!」

「善なる白と悪なる黒よ! 混ざりて消えろ! ケイオス・ブルーム!!」

 

 ロクロウの突きとライフィセットの白黒(びゃっこく)がフェニックスを貫く。

 

「一撃じゃ、生ぬるい! 絶破滅衝撃!!」

 

 止めとばかりにベルベットの2段……いや、三段の攻撃がフェニックスを灼いた。

 

 

 

「まだだ……鳳凰百烈――」

 ――沈め。 元始にて万物の生たる燐光。 汝が力、我に示せ。 轟け、ビッグバン!

 

 

 

「ちょぉぉおお! 明らかにそれは室内で使う術じゃないじゃろぉぉぉ!? 退避じゃ退避~!!」

 ――てへ。

 

 光が、満ちた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……強かったね」

「あぁ、最強と言われるだけはある」

「だが、死神に喧嘩を売った落とし前はつけてもらう」

「え? アイゼン何を……」

 

 アイゼンが構えると、倒れていたフェニックスは目を見開き立ち上がり、ポーズをとる。

 どこからか聞こえる鳥の鳴き声。

 

「やはりな……貴様の力は『不死鳥』。 俺の『死神の呪い』と真逆の性質を持つ加護の力」

「ふっ、気付いていたか」

「じゃあ、フェニックスの不死鳥の力があれば、アイゼンの妹を守れるって事?」

「我は敗北した。 なんなりと好きに命ずるがよい」

 

「断る」

 

「何故だ!?」

「自分で自分の舵を取る。 それが俺の流儀だ。 そのせいで妹にさびしい思いをさせている事も、それが身勝手な流儀だということも分かっている。 だが、俺はこういう生き方しかできない」

「……」

「お前に命令する事は、俺自身を否定する事になる。 だから命令はしない。 だが――」

「だが?」

「出来るなら、お前の力で妹を守ってやってほしい。 業魔や穢れ……そして、いつかあいつを襲うであろうドラゴンから」

「ドラゴン!? 汝はそこまで……!」

 

 ……。

 

「命令じゃなく、お前に頼みたい」

「友よ、その願いしかと受け止めた。 ならば、友として我も汝に頼みがある」

「なんだ?」

「汝の妹に手紙を書いてやってほしい。 汝の想いを正直に綴り、伝えてやってほしい。 手紙を書き終えるまで我は待つ」

「その必要は無い。 出しそびれている内に随分と汚れちまったがな……」

「友よ、この手紙我が名に懸けて妹に届けよう。 そして、必ずあの娘の笑顔を’蘇らせて’みせる」

 

「何故なら、我は不死鳥。 我が名はフェニックス!」

「頼んだぞ、フェニックス」

「さぁ、我を送るがよい。 来たれかめにん!」

「どもっす! フェニックスさんは、自分が命に代えても届けるっす!」

 

 

 

 

「さらば友よ! そして……我が半身、サムサラよ!」

 ――はいはい。 またね、フェニックス。 私の半身。

 

 

 

 

 全く同時に……全く同じ場所で生まれた最初のノルミン。

 それが私とフェニックスだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なぁ、サムサラ」

「あの、サムサラ……」

「サムサラ」

「ちょっといいかな、サムサラ」

「サムサラ~? 何か隠しておる事があるんじゃないかぇ?」

「サムサラ、知っていたんだな」

 

 ロクロウ、エレノア、ベルベット、ライフィセット、マギルゥ、アイゼンの順である。

 

 ――エレノア、口になって。

「あ、はい。 口になります」

 ――それで、何が聞きたいの。

「何を聞きたいのですか?」

「そりゃ勿論、フェニックスとお前の関係だよ」

 ――あいつは私の半身。 私はあいつの半身。

「フェニックスはサムサラの半身で、サムサラはフェニックスの半身……だそうです」

「それがどういうことかって聞いてるのよ。 双子って事?」

「双子のノルミンなんて聞いた事ないでフが……そもそもフェニックス兄さんはイヌ系、サムサラ姐さんはネコ系でフよね?」

 ――別に。 フェニックスみたいなのをイヌ系、私みたいなのをネコ系って呼ぶようになっただけだし。

「フェニックスのようなノルミンをイヌ系、サムサラみたいなノルミンをネコ系と呼ぶようになっただけ、だそうです」

「びぇぇぇええ!? サムサラ姐さん達が発祥だったんでフか!?」

 ――ノルミン諸島で、石版見付けてきたでしょ?

「ノルミン諸島で石板を見つけましたよね」

「あぁ……四聖主とカノヌシが描かれた石版か」

 ――アレの左上がノルミン。 誰をモデルにして描いてあるのかは知らないけどね。

「えぇ!? あ……。 その石版の左上部分がノルミンなのだそうです」

「……成程、あの欠け方はそういう理由か」

「確かに、もう1つ絵が入ると考えた方が自然だな」

「で? あんたたちは双子なの?」

 ――人間で言う双子とは全く違う。 けど、原理としては一卵性双生児に近い。

「人間の双子とは全く違うけれど、原理は一卵性双生児に近いそうです」

「一卵性双生児……つまり、何らかの要因で別たれた元は同じ存在というわけじゃな?」

 ――そう。 私が(いん)ならあいつは陽。 私が影ならあいつは光。 私が戦う医学生ならあいつは四大の主。

「そうです。 サムサラが陰ならフェニックスは陽。 サムサラが影ならフェニックスは光。 サムサラが戦う医学生ならフェニックスは四大の主と言っています。 後半は良くわかりませんが」

「フェニックスの力は『不死鳥』だった……なら、サムサラの力は『死神の呪い』なの?」

 ――違う。 『不死鳥』と『死神の力』は真逆だけど、あいつと私は表裏一体。

「『不死鳥』と『死神の力』は真逆ですが、フェニックスとサムサラは表裏一体だそうです」

「んー? 切っ掛け次第でどっちにもなる、って事か?」

 ――ロクロウの解釈で合ってる。

「そういう事のようです」

「それで? あんたの力は教えてくれないわけ?」

 ――うん。 教えない。

「教えないそうです」

「……なら、いいわ。 そんだけしても言いたくないなら、無理に言わせる気はないし」

「だな。 しっかし、負けたのに偉そうな奴だったなぁ」

「でも……思ったよりいい聖隷だったね」

「ストーカーじゃがの~」

「……やはりもう一発殴っておくべきだったか……」

「ですね。 ストーカーはいただけません」

 

 

 

 

 

 

 ――じゃ、千年後に。 ばいばい。

 




そろそろサムサラのノルミンとしての名前に当たりが付いている人もいるんじゃないでしょうかねぇ……。

真名の方も意味は結構すんなりしているので、グリンウッド語に造詣が深い人はパッとわかっちゃうと思います。





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