ベルセリア・ゼスティリア転生(仮題)   作:飯妃旅立

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今までの話の中でも最も大きな捏造設定・独自解釈があります。
その点に注意してお読みください。



あと京都弁はどす→ですに変えてあります。 原作がそうなっていたので。
御見苦しい京都弁でしたら指摘ください。 難しい……。


dai jur Q wa 『Genesis』

 

「探索船から連絡が入った。 恐怖の島が見つかったらしい」

 

 お。

 グリモワール、ビエンフーに視線を向ける。

 グリモワールはそっぽ向き、ビエンフーはニヤニヤしている。 それじゃ何かを隠してますよと言っているようなものだよビエンフー。

 

「恐怖の……ですか? なんなのですか、それは」

「前にアイゼンが言ってた、動く島だね」

 

 まぁ動けなくなる島でもあるが。

 

「そう、太古から異海を彷徨いつづけていると伝わる、奇島中の奇島だ。 森羅万象、あらゆる力を吸い取るとも言われている」

「その力……カノヌシと何か関係が!?」

 

 二つの事実が重なってるだけなのに、まるで恐怖の島みたいに聞こえるから不思議だよね。 アタマデッカチ族とか馬鹿にしてたくせに。

 

「これ以上は行ってみなければわからん。 まずは、イズルトの船着き場にいる仲間と合流するぞ」

 

 島に行くのは何年ぶりだろう……。 数千年ぶりかなぁ。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ぼよん、ぽよん。

 

「こ……ここは……!」

「わ~、珍しいなぁ~、またお客さんや~」

「ノルミン島へようこそ~。 遠いとこ、疲れはったやろ~? まずはぶぶ漬けでも~」

 

 うわー、知らない子だ。 新しく生まれた子かなぁ。 知識としては知ってる子だけども。

 

「ノルミン島……だと……」

「そうでフ。 ここは僕達ノルミン一族の故郷でフよ~!」

「懐かしいわねぇ……帰省なんて千五百年ぶりよ」

 

 ……グリモワールですらそんな最近に来てたのか……。

 

「ほぁ~! グリモ姐さんやんか~! お久しぶりですぅ~」

「はぁ~い」

 

 ……私もゆっくりなライフスタイルだけど、ここはちょっとベクトルが違うよなぁ。

 というか、諸島生まれって今何人いるんだろう。

 

「あなた達……ここの正体を知っていたなら、何故教えてくれなかったんですか?」

「アイゼンが『神秘に挑むのがアイフリード海賊団だ』とかかっこよく言ってたから、いいだせなくて……」

「男のロマンを邪魔するのは野暮でしょ? それが、どんなに無駄な夢だとしても……」

「ぬぅ……」

 

 あ、迎えに来てくれた子と目があった。

 手を振ってみる。 首を傾げられた。 デスヨネー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はじめましぃや~、あんさん見た事ない顔ですけどぉ~」

 ――私がここ最後に来たのは、多分8千年くらい前だからね。

「ほわぁ~、どこぞらからか声が~」

 ――ちょっと事情があって、この方法でしか喋れないの。

「へぇ~、そないなんか~。 やて、八千年前って島が動き始めた時とおまへんですか~?」

 ――うん。 私はノルミン諸島出身だよ。

「ほなすごいおねーさんはんやな~」

 ――そうだね……。 ミヤビはどこ行ったの?

「ミヤビはんは~、まや帰っておこしやすおりません~」

 ――そっか。 業魔化してないといいけど。

「どーもないと思いますよ~。 それより、あんさんの名前をおせておくれやす~」

 ――サムサラ。 一応……あなた達の、先祖になるのかな。

「ご先祖様でしたか~。 ……どないなことですか?」

 ――気にしないでいいよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 いつのまに戦う医学生や四大の主に会っていたんだろう。

 

「ジュード……ミラ」

「どうした、こんなところで」

「ひょっとして……あんたたちが‘’終末の使者‘’!?」

 

 うーん、この2人がいるとなると……精霊(・・)術は使わない方がいいかな。

 

「いや、違う」

「僕達は‘’終末の使者‘’から託されたんだ。 裁きの戦いを」

「裁きの戦い!?」

 

 ……私が彼らを送り出せばいいんじゃないだろうか。 適当に送り出しても、ミュゼ辺りが拾ってくれるんじゃ……。 こう、エクステンションあたりで。

 

「あんたらに敗けたら、この世界が滅ぶって言うんじゃないでしょうね?」

「察しが良いな。 その通りだ」

「‘’終末の使者‘’が、勝利すれば元の世界に戻してくれる、とでも約束したか?」

「僕達は……リーゼ・マクシアでやり残している事があるんだ」

「そうなのね。 ……けど、そんなのも、こっちにだってあるわよ!」

 

 そう、こいつらを追い出せばペンギョンを簡単に獲る事が出来る……?

 

「一人と一匹で、儂らとやる気かえ?」

「一匹じゃない……」

 

「マギンプイ!」

 

 そ、その呪文はッ!

 

「2人だよ!」

「な、なに!? 儂のどーでもいい呪文が驚きの効果を!?」

「‘’終末の使者‘’の力だ。 この戦いの重要さがわかっただろう」

「本気で――」

 ――ちょっと待って、ジュード・マティス。

「ッ!? 誰!?」

 ――ライフィセットの頭の上に乗ってる。

「……この声は、君が?」

 ――うん。 それで、物は相談なんだけど……もし、私があなた達をリーゼ・マクシアかエレンピオスに送り返したら、どうなるかな。

「ッ……どうして、その名前を」

 ――識ってるから。 そっちの世界の事。 あなたと、四大の主が何を背負っているのかも。

「ふむ……ジュード、先程から誰と話しているんだ?」

「ミラには……聞こえないの?」

 ――私の交信術は1人ずつにしか繋げられない。 不便でごめんね。

「今、ライフィセットの頭の上に乗ってる……人形? と話してるんだ」

「この子はサムサラだよ」

「……ねこにんやかめにんのようなモノか」

 ――そんな感じで捉えて当たり。 はじめまして、四大の主。 ミラ・マクスウェル。

「頭の中に声が……精霊術ではないようだが……」

 ――交信術っていうの。 これでしか喋れなくてごめんね。

「いや、気にしていない。 それで、ジュードと何を話していたんだ?」

 ――私が術で、あなた達をリーゼ・マクシアかエレンピオスに送り返したらどうかなって。 ミュゼに拾ってもらうか……運が悪くてマグナ・ゼロ。 運が良くて次元の裂けた丘辺りに出ると思う。

「ほう……? やけにこちらの事情に詳しいな?」

 ――識ってるから。 私は世界とか、次元とかいったものに干渉できる。

「そうか……だが、それは無理な相談だ。 ‘’終末の使者‘’に、自身の方法以外で帰ることは出来ないと聞いている。 信用していないわけではないが……私は確実な手段を取りたい」

 ――そう。 じゃ、本気であなた達を消し飛ばすよ。 この世界から。

「望むところ、だ」

「……長話は終わった様ね。 サムサラ、もういいの?」

 ――うん。 待たせちゃってごめんね。 私も戦闘に参加するよ。

「えぇ。 それじゃ、とっととやりましょ」

 

「本気で戦わないと、僕達には勝てないよ!」

 

 重々承知の上だ。 対フェニックスと同じ勢いで戦わせてもらおう。 精霊術も込みで。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「終末の使者に代わって!」

「いざ裁きの戦いを!」

「何様のつもりよ!」

 ――(しょく)を知り来れ、死を纏う黒蝶……フラッターズ・ディム。

 

 闇色の蝶々が空中に顕れ、巨大な剣を形成する。

 

「これは!?」

「エリーゼの!」

 

 ティポがいないが、誰かさん(わたし)のおかげで剣の大きさは最大だ。

 

「くっ、オーバードライブ!」

 

 ミラ・マクスウェルが光と共に剣先から離脱する。

 

「弐の型!」

 

 その先にロクロウが地雷型の特技を設置した。 あれどういう仕組みなんだろう。

 

「ミラ! このっ! 獅子戦吼(せんこう)――」

「あんたの相手はこっちよ! 魔王炎撃波!」

 ――薙ぎ払え葬送の鎌、(めい)は煉獄。 ブラックガイド。

 

 ミラ・マクスウェルから溢れ出る精霊のおかげで、こういった小規模の精霊術を使うことが出来ている。 いや本当に小規模の術は使いやすくて良いね。 

 

「くっ……何故精霊術が使えるッ!?」

詐欺師(フラウド)! 何を言ってやがる?」

 

 精霊術を使うと動揺するか……。 なら、これを見せたらどうなるかな?

 

 ――黒白(こくびゃく)は螺旋に溶け……陰陽合一層。 ケオティックフューザー!

 

「共鳴術義!? そんな、リンクもしてないのに!」

「隙を見せたな! 今じゃーっ!」

 

 マギルゥが天高く式神を掲げる。

 

「伸びろ……伸びろーっ!」

 

 ぎぎぃ、ぎぃぃぃいと音を立てて、式神が伸びる。

 

「光翼天翔くーん!」

 

 それを思いっきりジュード・マティスへ振り降ろした。 良い技だ。

 

「ちょ――っ!」

 

 そこに完成したケオティックフューザーがのしかかる。 1人撃破。

 

「ジュード! ……この! 集え、地水火風!」

「くっ!?」

 ――出でよ、原罪の特異点。 虚無と永劫を交え、弾けて潰せ、イベントホライズン(劣化)!

 

 流石に秘奥義は扱えない。 だから、形と効果だけ(あやか)らせてもらった。

 スプリーム・エレメンツとイベントホライズンが衝突する。 四大はともかく、微小な精霊すらもいないこの世界では本来の威力は出せまい。

 

「ミュゼの……!」

「余所見してんじゃねえ! 躱せる物なら躱してみな! ウェイストレス・メイヘム!」

 

 アイゼンの拳がミラ・マクスウェルに全弾ヒットする。 痛そうな音だ。

 

 ふぅ。 協力秘奥義を出される前に終わってよかった。

 

 

 

 

 

 

 

「くっ……」

「終わりよ」

 

 ベルベットがミラ・マクスウェルにブレードを向ける。

 

「ミラ!」

 

 それを、ジュード・マティスが盾になる事で止めた。

 

 さて、と。

 後はベルベットに任せるとしよう。

 私は私で、ちょっと話したい奴がいるんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――で? 何の目的があったの?

「ふむ……バレていたか。 お前が彼らを送り出すと言った時は、少し焦ったぞ」

 ――隠したいなら声を変えなよ。 どれだけ時間経ってても、わかるよ。

「私はそこまで万能ではない。 彼らを呼び出すことが出来たのも、ブリュンヒルトのおかげだ」

 ――その呼び出した目的を聞いてるんだけど。 ノルミン・ジェネシス。

「創世の名前が今や‘’終末の使者‘’だ。 普通にミヤビと呼んでくれ、サムサラよ」

 ――で?

「そう急くな。 ……あの場で言った通りだ。 ジークフリートとブリュンヒルトと共に旅をし、世界を見て……私の心は荒んだ。 穢れこそしなかったものの、裁きを行おうと思うくらいにはな」

 ――進歩しない人間を見て絶望でもしたの? 少しはフェニックスを見習ったら?

「フェニックス……。 あれは聊か行きすぎだろう? もし見習うとすれば、サムサラのほうだ」

 ――私はフェニックスの半身だよ?

「だが、混じっているだろう? 全てを見てきたノルミン・――――よ」

 ――もう、島の子達には会ってあげないの?

「相変わらず唐突だな。 ……残念だが、今の私はノルミンでもペンギョンでもない曖昧な存在だ。 既にキンギョンの身に落ち着いて幾年か経つ。 ……もう、この島に戻ることもノルミンに戻る事も無いだろう」

 ――そっか。 それじゃ、次会う時までに心は残しておいてね。 ノルミンだって、戻るんだから。

「お前に言われるまでも無い。 どんな姿になろうと、私は私だ」

 ――うん。 じゃあね、創世のノルミン。

「さらばだ、はじまりのノルミン」

 


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