ベルセリア・ゼスティリア転生(仮題)   作:飯妃旅立

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ちょっと解り辛い表現が多いです。

独自解釈・独自設定・捏造設定が沢山です。


dai ni jur ichi wa hoshi wo miru mono

 ようやくねこにん達が天への階梯に繋がる封印された地脈を見つけたようだ。

 というよりは四聖主が起きた事で地脈のズレが生じ、丁度近くにねこにんがいただけ、と見るべきなのだろう。

 地脈内部に入り、更に天への階梯へ出た。

 今回は私もライフィセットの頭の上にいる。 ズイフウに会うため2割、癒しの銭湯へ行くため8割だ。

 

 

「そそっかしい仲間を助けてほしいニャー」

「ふむ……」

 

 考え込むベルベット。

 そして、私の交信術によく似た気配が湧く。

 

『およしなさい』

「誰!?」

『世界の仕組みを識る者、とでも言っておきましょうか』

 

 天台のズイフウ。

 吠える者(ムルジム)と同じく、星に関係がある聖隷。

 

『進んでも無駄です。 この奥には、絶望しかない……。 せめて自分の世界で生をまっとうなさい。 進めば、それすらできなくなるでしょう……。 それと』

 

 光が強まる。

 ん、それと?

 

「サムサラ!?」

 

 なんだいライフィセット。

 あれ、トラクタービームでも使っているかのような浮遊感。

 

「サムサ――」

『あなたには、こちらへ来てもらいます』

 

 わぁ、まぶしぃ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 つるりとした床。 材質はよくわからない。

 壁面や天井に描かれた模様は、古代アヴァロストの物に似ている気がする。 いや、マーリンドの物にも……。

 

 ――それで、何用?

「地上で生まれた、永久を生きる天族(・・)。 あなたは何者ですか?」

 

 光に包まれたと思ったら、空飛ぶブウサギの前にいた。

 地上で生まれたって言ってるのに天族ってどういう事だろう。

 まぁ私は聖隷でもないんだけどさ。

 

 ――サムサラ。 初めまして、ズイフウ。

「……再度問います。 あなたは何者ですか?」

 ――norman(ノルミン)だよ。 降りてきた聖主ではなく、凡百としてそこにある聖主。 隷属物ではない意識。 故に凡霊。

 

 ノーマンとは異端者の事であり、同じ意味でベルセルクの事だ。

 ミヤビのように他者の力を引き出す事に特化した者を中心に、地水火風無の聖隷では引き起こせない事象を操る事が出来る。

 全て、色々なという意味の凡だ。

 

「ノルミンであることは知っています。 しかし、あなたの使っているその降神術(・・・)は、本来聖主との契約者の中でも限られた人間のみが使えた術。 天族にも、聖隷にも使うことはできないはずです」

 ――私は契約しているから。 聖主とね。

「天族と聖主が契約を……? それは、ありえない事です」

 

 誰かさん(わたし)聖主ノルミン(わたし)が契約しているのだ。

 だから私には真名がある。 誰かさん(わたし)サムサラ(わたし)に付けて上げた、つけてもらった名前が。

 

 ――星を識る天台のズイフウ。 あなたは本当に、世界を識っている?

「……少なくとも、私は全てを見てきたつもりです。 そして……世界に絶望しかない事も」

 ――あなたが見てきたのは、一端だよ。 世界の仕組み全てじゃない。 だって、ドラゴン化は呪いじゃないから。

「……なんですって?」

 

 と、そこで。

 空間内に、とてつもない穢れの気配が顕れる。

 まぁベルベットの事なのだが。

 

 私が連れられてからそう時間は経っていないと思うのだが、やっぱり地脈内部の時間の流れは信用できない。

 

「……驚いたわ。 まさか天界の門にまでたどり着くなんて」

「サムサラは、いないのね」

「その声は……まさか、世界の仕組みを識る者!?」

 

 あら? 変な感じすると思ってたけど、もしかしてここ異相?

 

「えぇ。 元天族……今は聖隷ズイフウです」

「その姿……まさか呪いって、ブウサギに成る事なのか?」

「違う、ムルジムと同じだ。 こいつはこういう聖隷なんだ」

 

 星に関係する聖隷はこうなるようで。

 しかし……青いブウサギは流石に、食欲湧かないな。

 

「人間と聖隷にかけられた呪いとは、業魔化とドラゴン化の事じゃろう?」

「その通り……地上に降り立った聖主と聖隷は、心ある人間と手を取り合って世界を支えようとしました。 でも、協力は呪いのせいで早々に崩壊しました。 ささいな諍いが穢れを生み、業魔とドラゴンが溢れた。 業魔は人間を愛する聖隷を引き裂き、ドラゴンは聖隷を信ずる人間を喰らった。 ほとんどの聖隷は共存の希望を捨てて、人間から離れて暮らすようになったのです」

 

 ズイフウは語り紡ぐ。 世界の仕組みを。

 カノヌシが安全弁であり、番外の聖主である事。

 ドラゴン化が呪いであるということ。

 

 

 だが、おかしいじゃないか。

 

 

 

 

 だってほら、カノヌシは。

 最初からドラゴンの姿をしていたよ。

 

 

 

 

「ふざけないで」

 

 安全弁として遣わされたというカノヌシ。

 どこから遣わされたのだろう。 天界から?

 地上を壊滅させたい天界が、安全弁を遣わした? 穢れを溢れさせない様に?

 ズイフウは語っていた。 カノヌシが地上の穢れを鎮静化しなければ、人間も聖隷も息絶えていたと。

 好都合じゃないか。

 

 あの数え歌。

 四つの聖主に裂かれても。

 カノヌシと四聖主は敵対していたような文。 しかし、史実の最後の時のように、カノヌシに居なくなられるのは四聖主も困るらしい。 だが、恐らく四聖主にとって必要なのは鎮静化ではなく、別の作用。

 カノヌシ……天之御中主神は、一番最初に顕れた存在だ。

 それが忌み名であるはずも、番外であるはずもない。

 

「なんて人たち……」

「うん。 怖くて、勝手で。 変な人たちだよ。 でも、僕はみんなが……みんなが生きている世界が、嫌いじゃないんだ」

「何万年後に……あなたがドラゴンになっても、同じことが言えるかしら」

「それは……わからない。 けど」

 

「言えるように、一生懸命生きてみるよ」

 

 ライフィセットが去っていく。

 私を探したり場所を聞いたりしないんですかね皆さん。

 少しくらい心配してくれてもいいと思う。

 

「……あんな聖隷と人間たちがいたなんて……。 この希望は、あなたが育てたのかしら?」

 ――あんな子供、私はいらないよ。 そういうのはゼンライが得意でしょ?

「……ドラゴン化が呪いではないと。 そう言いましたね」

 

 さっきからスルーし過ぎだよズイフウ。

 サムサラちゃんだって傷つく……事は無いけども。

 

 ――呪いは等しく業魔化だけ。 信仰よりも穢れの方が密度が高いから、基本的にドラゴンはみんな業魔化しちゃうけどね。

「……最後に問います。 あなたは何者ですか?」

 

 ――ノルミン・――――――。 世界の仕組みの一端を司るノルミンだよ。

 

 

 さて、先程から感知している待望のアレへ行こう。

 いざ行かん癒しの銭湯へ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オドロキの癒し効果を、保証しますニャ♪」

 

 間に合った!

 ――誘惑の罠張り巡らせ、我が懐中へ! 出力最大トラクタービーム!

 

「ん? うぉ! サムサラ!?」

 ――銭湯に行こう。

「呑気な奴だなぁ。 今までどこに居たんだ?」

 ――ズイフウの隣にいたよ。 見えなかったと思うけど。

「ズイフウの隣? ……まぁよくわからんが、とりあえず銭湯に行くか」

「この転移陣に入れば、一気に銭湯までいけるニャ~」

 

 わーい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほほ~~……こりゃいい湯じゃわ~~」

「はぁ……気持ちいいですねぇ……」

 

 うわぁ。

 良い湯なのは確かなんだけど……私の性質上、抜け出かかっている魂が見える。

 どうしよう。 留めておいた方がいいのだろうか。

 私の魂は既に処置済みだけど……っていうか、やらないと後で怒られそう。

 

「ホント……魂が抜け出しそうなくらい……」

 

 はーい戻ってねー。 元の体に戻ってねー。

 

 あ。

 

 ねこにんの魂いっちゃった。

 そして……ビエンフー、イン!

 

「……」

 

 目を限界まで見開いているビエンフー。

 

「ふぅ……戦いの傷が消えていくようです……」

「じゃのう。 泉質も見事じゃし、湯量も湯加減も文句のつけようがないわい……」

 ――ねぇ、ベルベット。 ねこにんを見てみて。

「ふぅ……ねこにん? ……やけに視線が強いけど……何?」

 ――ソレビエンフー。 銭湯の効果で、ねこにんと中身が入れ替わってるみたい。

「はぁ? ……あんた、本当にビエンフーなの?」

「ぼ……アタシはねこにんニャフ!」

 

 ノルミンとしては裸を見られても特に問題は無い。 というか、常に裸だし。

 ただまぁ……マギルゥを除いて2人はトシゴロの乙女だ。

 

「……ほほぅ? のぅ、ねこにん。 お主が本当にビエンフーだった場合、今すぐに湯を出て行けば許してやるぞぇ? ここで出て行かずに、後であっちのビエンフーに確認を取るまで黙っているのであれば……相応の仕打ちが待っているぞ?」

「……ビエンフー、最低です」

「びぇぇぇぇえ!? 直ぐ出て行きまフ~――あがっ」

 

 いつのまに移動したのか、ニャスタオルを胸にまで巻いたマギルゥがねこにん(ビエンフー)の頭を掴む。 何故湯室にバスタオルを持ってきているんだろう。

 

「乙女の柔肌を見た罰は……何がいいかのぅ……」

「コレ、今ビエンフーにダメージを与えると痛みはねこにんに残りそうですよね。 とりあえず私達が上がるまで目隠ししてどこかに縛り付けておきませんか?」

「……そうね。 サムサラ、何かいい術とか無い?」

 ――始まりと終わりを知らず時の狭間に遊べ、ストップフロウ。

「びぇ…………」

 

 持続版ストップフロウ。 エターナルスロー並の霊力を消費する、私の持つ術の中でも最大コストの術だ。 原理としては、切れたらかけるを繰り返しているだけなのだが。

 

 ――これで大丈夫。

「おぉ~、恐ろしい術じゃあ~! あわれビエンフー。 ま、どーでもいいがのー」

「そうでした、サムサラ。 先日ジュードとミラが言っていたのですが……サムサラの扱うその術は、聖隷術ではないのですか?」

「ふぅ……これでゆっくりできるわね……」

 

 ベルベットは術に興味なしか。 

 さて、どうやって答えたものか……。

 

 ――他の体系の術を、霊力と私のノルミンとしての能力で補って形作っている。 本質的には聖隷術……の、亜種かな。

「だから知らない術ばかりだったのですね……。 すみません、ゆったりしている時に……」

 ――構わない。 私はカノヌシの元へ行く気は無いし、聞きたいことがあれば聴くといい。

「そうですか……え?」

 

 ザバァ! とエレノアが立ち上がる。

 良いスタイルですね。

 

 

「エレノア、静かにしなさいよ。 みっともないわよ?」

「す、すみません。 ですがサムサラ……カノヌシの元へ行かないというのは、どういうことですか?」

「……怖気づいた、わけでもないじゃろうがのぅ……」

 ――もしあなた達(・・・・)がカノヌシに負けた場合に……やらなきゃいけない事がある。 あなた達(・・・・)を信じてはいるけれど、保険としてね。

「そんな……」

「何、来ないの? ま、それでもいいわよ。 最初からアンタは私達についてくる理由無かったんだし。 アイフリードの諸々が片付いた今、アンタはアイゼンとも繋がりが無いんでしょう?」

 ――あれ、わかってた? うん。 今はもう、私はアイフリード海賊団でもないよ。

「そ。 ……さぁ、十分浸かったし……上がりましょ」

「……はい。 サムサラも……」

 ――私はもう少し浸かっていくよ。 あ、ねこにん忘れないでね。

「……はい」

 

 

 あぁ、本当に。

 

 いい湯だなぁ。

 




オメガエリクシールと斬魔剣とトロールとキッシュと暴食とモアナは飛ばします。

サブストーリーはこれで終わりです。

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