ベルセリア・ゼスティリア転生(仮題) 作:飯妃旅立
独自解釈と捏造設定が有ります。
カノヌシの鎮静化が解除され、喧噪を纏いつつも一応の『元通り』が大陸を覆った。
業魔の被害こそ一時的に増えるかもしれないが、それは今まで通り……いや、カノヌシの鎮静化で一度無に戻されかけた事により、他人を信用する気持ちが澱みなく備わっているだろうから業魔そのものが減るかもしれない。
カノヌシの鎮静化は、やはりどこまでも人間のためを……。
空に……
――ベルベット。
――……何?
――さよなら。
――……。 えぇ、さようなら。
彼女は既に、自身のやることを決めている。
もう戻ってこないということを。 身を喰らい続ける八となる事を。
20にも満たない娘が、素晴らしい気概だ。
同時に酷く哀れでもある。 あの少女が、そして未来の導師たる少年が全てを背負わなければいけない程、この世界は絶望に塗れているのだから。
さて、彼女が彼女の役目を果たすなら、私も私の役目を果たさなければ。
ふわーん。
ぽわーん。
ごぼごぼ。
真っ暗闇の中で、泡が沢山浮かんでいる。
黒く染まった泡。 あまりにも眩しい泡。
それらが下から上へと上がっていくから、この場所での上下がわかる。
カノヌシの鎮静化によって、灰色の泡が急増した。
泡は分裂し、小さな泡となって上へと昇る。 まぁ、それは良い。
私がやるべきは、下の方でもたついている真っ黒な泡を上へと上げてやることだ。
さぁ、戻ってきたのだから、そんな所で燻っていないで。
また出ていくために、キレイになりなさい。
神の贈り物。 神の如き獅子の槍。 収穫の聖女。 絹の乙女。
賢き者。 天狼。
クロガネ。
さぁ。
カノヌシとアルトリウスの完全神依。
皮肉な物だ。 舵を取るための翼が、理想のための翼であるとは。
奇しくも、同じライフィセットを元に生まれたカノヌシとフィーは、まるで照らし合わせたかのような真名を持つ事となったわけだ。
それはやはり、アルトリウスとエレノアの性格がとても似ている事に起因するのかもしれない。
もし、アルトリウスが絶望を持たなければ……。
しかしエレノアとアルトリウスでは、得て非なる部分が或る。
その尊さは、しっかりと未来の従者に引き継がれたのだろう。
あの戦いに、私が手を出す必要は無い。
彼女たちは十分に、十二分に成長しているから。
しかし……秘剣・覇道絶封か。
やはりアルトリウスの弟子たるベルベットが絶破滅衝撃を秘奥義とするのもよくわかるというものなのだろうか。
あ。
今。
アルトリウスが……この世で最も清浄で、最も穢れた人間が。
戻った。
そして、鎮めの力が暴走を始める。
さて……。
領域を、ちょっとだけ広げましょうねー。
うすーく、ひろーく。
大地を覆えるくらい。
まぁ、そんなのは一瞬で。
直ぐに鎮めの力は治まっていく。
ここに封印が生まれる。
そして……四聖主が、我が物顔で現れた。
一応器……というか生贄は対魔士たち4人なので、声もそのまま使っているらしい。
――じゃあね、カノヌシ。
世界に白銀の炎が顕れる。
ライフィセットに向けられていた、ベルベットの信仰。
その全てが、今或る穢れを浄化する。
――おはよう、マオテラス。
――サムサラ……?
意識を浮上させる。
「ん、起きたのか? サムサラサン」
――さんはいらないって。
「んじゃ、サムサラ」
――行こうか、ザビーダ。
「ベルトに括りつけられてるだけの癖に行くってな変じゃねぇか?」
――それじゃあ。
――持って行って。
「ものぐさな奴だな……」
――うん。 それが私。
nave=hi=erem (ネブ=ヒイ=エジャム)
nave=de=alas
nave:舟を漕ぐ
de :の
alas:翼
舟を漕ぐための翼。
だと思うんだけどなぁ。