ベルセリア・ゼスティリア転生(仮題)   作:飯妃旅立

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捏造設定・独自解釈がかなり多いのに短いです。
あと茶番ばっかです。
いつもでした。


dai ni jur nana wa kaikou suru otome to kaze

 

「……ッは!」

 ――中に空気が残ってたんだね。 それにしてはやけに清浄だけど。

「っはぁ……。 みたいだな。 つーか、風の動きがある。 どっかに繋がってんのか?」

 ――水没した王国に繋がる水道みたいな場所だからね。 もしかしたら、どこかに空気の供給源があるのかも。

「はーん。 さって……ここまで来ると、俺でも分かるなァ」

 ――カリバーンを辿って復活したからかな? 火の気配が強いね。

「あぁ……。 それに、生まれたばっかとは思えねえ程(つえ)え」

 

 未来の水道遺跡たる区画に辿り……というか、泳ぎ着いた。 ザビーダが。

 そして、その遺跡の中に充満する濃密な炎の気配。 クリムゾンは後片付けが出来ない奴だったが、その影響だろうか。

 

 ――辿れる?

「そりゃ問題ねぇが……結局、会って何すんだ? 再封印するとかなら協力しないぜ。 カノヌシの残滓だかなんだか知らねぇが、そいつは生まれたばっかなんだからよ」

 ――私もそんなことしないよ。 それに、会う意味も特にないかな……。 私は彼女に何もできないし。

「……一瞬やる気失いかけたが、なんだ、カノヌシの残滓なのに女の子なのかよ。 カワイコちゃんか?」

 ――まぁ、造形はシアリーズを真似ているだろうし……ライフィセットも女顔だったから、美人なんじゃない?

「俊足流転軽快爆ぜるぜ! クイックネス!」

 

 移動速度を上げる聖隷術。

 あれ、ザビーダってあんまり若いのには興味ないんじゃなかったっけ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 巨大な剣の突き刺さった祭壇。

 見た目はくすんだ石剣だが、本来であれば最高峰の清浄な器となる剣、カリバーン。

 はじまりの顕師(けんし)ジークフリート、大聖隷ブリュンヒルデ、そしてその旅を助けたミヤビやクリムゾン達の大切な(つるぎ)だ。

 

 そんな祭壇の前に、1人の乙女が座り込んでいた。

 

 ――アレだね。 

「おぉ……後姿だけでカワイイな」

「……あら?」

 

 乙女が首をこちらに向け……ようとして可動域に詰まり、一度立ち上がってからわざわざ座り直して再度こちらを見た。

 律儀っていうか天然っていうか……。

 

「えっと……」

「初めまして、カワイコちゃん。 俺はザビーダってんだ。 風のザビーダ。 よろしくな」

「あ、これはどうもご丁寧に。 私はライラと言います」

 ――ザビーダ。 とりあえず私の事は黙っといて。

「いいねェ……名前もかわいいと来た。 んで、ライラちゃんはこんなトコで何してンの?」

「特に何をしていたというわけでもないのですが……。 何故か、この場所とこの(つるぎ)が気になってしまって……」

「何故か、ねェ。 どうよ。 この後予定が無いんなら、これから俺とお茶しない?」

 

 古い。 あ、今はゼスティリア時代から見れば古代か。

 ならいいのか……?

 

「それはお断りしますが……ザビーダさんこそ、何故ここに?」

「うぉ、さらっと流された……。 いや、なんつーかな……。 ここで生まれた気配がしたンよ。 ――カノヌシの残滓が、な」

「!」

 

 目に見えてうろたえるライラ。 あと、それを感知したのは私であってザビーダじゃない。

 

「けどまァ、それは勘違いで、いたのはカワイコちゃんだったってわけ。 流石にこのザビーダ様の女になるにゃ1050年くらい足んねェが……。 どうよ。 この場所から出て、外の世界を見に行かねェか?」

「いえ……すみません。 誘っていただいてありがたいのですが、私はもう少しここにいますわ」

「あちゃー、フラれちった。 んじゃ、俺も行くぜ」

「あ……あの!」

「なンだい? やっぱ俺と――」

「その腰に付けている人形……よく見せて頂く事は出来ませんか!?」

 

 おっと。

 とうとうこの愛らしいぼでーに気付いたか。

 ビエンフーはいなくなっちゃったから、グリモワールとアタックと私だけが奇抜な帽子被ってるんだよ! レアリティが高いよ!

 

「ン、あ、いやこれはだなライラちゃん……」

 ――はじめまして。 私はサムサラっていうの。 よろしくね。

「? 今のは……もしかして、ザビーダさんの腹話術ですか!?」

「何言ったか知らねェが(ちげ)―よ! めんどくさいから動いてくれ」

 

 心底面倒くさそうに言われたので顔を上げる。

 ライラと目が合った。 わぁ、なんて純粋な目。 どれほどカノヌシの記憶を引き継げているかしらないけれど、心と体が分離した状態じゃない様でなによりです。

 

「もしかして……のるみん、ですか?」

 ――そう。 ノルミン。 知識に在った?

「はい……会ったことはありませんでしたが、識っていました」

 ――そう。 でも、その知識は穴があるから、それだけを頼りにしないようにね。

「はぁ……? わかりました」

 ――うん。 それじゃあね、ライラ。

「あ、あの……触らせてくれたりは……」

 ――安心して。 いつかあなたが外へ出た時に、沢山集まってくるだろうから。

「それはどういう……?」

 ――ザビーダ。 行こうか。

「またアンタ意味深な事言って煙に巻いたのかよ。 ま、いいけどよ。 そんじゃ行きますかね……。 んじゃあな、ライラちゃん」

「あ、はい……。 さようなら、ザビーダさん、サムサラさん」

 ――バイバイ。 頑張ってね。

「……? はい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あー、こりゃひでェな……」

 ――仕方ない事だよ。 それに、一応聖隷(みんな)が術の準備をしてる。

「術? あぁ、地盤を平定させる奴だったか?」

 ――うん。 アルディナ草原に術の起点を撃ち込んで、どうにか力を外に逃がすみたいね。 だけど……アルディナ草原が平気でも、他の所に余波が来るのは確実、かな。 見えはしないだろうけど……別れに見ておきたい人間がいるなら急いだ方がいいよ。

「いや……いいさ。 もう100年以上経ってんだ。 アイツらはもう死んでるか、生きてたとしても爺さん婆さんだろうよ」

 ――タリエシンは崩落すると思うよ? いいの?

「ッ……。 知ってて聴く辺りがサムサラだよな……。 アンタ実はアイゼンより良い性格してねェ?」

 ――褒め言葉、かな。 人間が全員死ぬって事は無いだろうね。 そんな直ぐに起こる事でもないだろうから。 でも、猶予もそれほどないよ。

「つっても俺が何か出来るってわけでもねぇだろ? なら……いいさ」

 ――そう。 それじゃ、いいね。

 

 ライラと会ってから150年程経っただろうか。

 地殻変動は激しさを増し、各地で地震や噴火などの所謂天変地異が起こり続けている。

 ロウライネは上層部が完全に落ちた。 こう、がしゃーんと。 そこに募っていた聖隷こそ無事だったものの、訓練所としての機能は果たさないだろう。

 まぁ元々が聖隷に物を言わせた突貫工事だったのだ。 維持のための聖隷術も消えた今、アレを再建しようと言う物好きもいないだろう。

 

 たった150年でかなりの大陸移動もあったし、沈む島や浮き上がる島などでてんやわんやだ。 アイフリード海賊団の作り上げた地図も、既に使い物にならなくなっている。 

 一応完成版は保存させてもらっている。 未来の導師様が見たら喜びそうな一品だなぁ。

 

「ちなみにサムサラは手伝わねェの? その術」

 ――私は手伝えないんだよ。 ノルミンはそういう自然を動かす術には長けないし。

「あンだけ大規模な術使っといてよく言うぜ……」

 ――アレは聖隷術擬きだからね。 聖隷術で形作っただけ。

「……ソレ、アンタ以外に真似できる奴は?」

 ――いないんじゃない? 遥か未来の譜術士(メガネ)とか、少し前に来た四大の主(へそだし)とかなら使えただろうけど。

「……よくわかんねェな」

 

 ザビーダの腰に括り付けられるようになってからは滅多に使わなくなったが、本来トラクタービームやらソウルオブアースやらはこの世界にない術だ。 それを私はとある誓約によって無理矢理持ってきている。 これだって福次効果的な使い方なのだけれど。

 その分、というわけではないが、この世界の聖隷術はほとんど使えなかったりする。

 魂に類するものやスレイブ系、結界術は別だが。

 

 それなりに大きい誓約を払っているのがつらい所だが。

 

「ロクロウもビエンフーもエレノアも居なくなっちまったな……。 アイゼンの野郎も……」

 

 ザビーダはアルディナ草原の北を見る。

 凄まじく高い山。 霊峰レイフォルク。

 まだあそこにアイゼンはいない。 まだ、だが。

 

「ベルベットとライフィセットは上と下なんだろ? あぁ、マオテラスって呼んでやんないとな」

 ――マギルゥはマオ坊って呼んでたし、マオ坊でいいんじゃない?

「マオ坊……。 結局子供っぽくなってねェか?」

 ――マギルゥだもん。 生きてるのはマギルゥとグリモワールだけだし、マギルゥに合わせるのも一興、でしょ?

「そういうモンかね」

 ――そういうモンだよ。 

 

 人間は直ぐに死んでしまう。 聖隷として、その別れは何度も味わって来た。 それはザビーダとて同じだろう。 若いとはいえ、この心優しい聖隷は幾度とない別れを経験したはずだ。

 だからこそ、呼び方や名前は大事にする。

 それは記憶(こころ)の中にずっと残るから。

 

 と言うことで。

 

 ――マオ坊にけってーい。

 

 ――この姿にマオ坊は似合わないでしょ! サムサラ!

 

 

 なんか聞こえた気がするけどキコエナーイ。

 




マオ坊って初めに言いだしたの絶対マギルゥだと思うんだよなぁ。

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