ベルセリア・ゼスティリア転生(仮題)   作:飯妃旅立

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年末忙しくて更新遅くて許してちょんまげ。

ゼスティリア編です!

原作既プレイ推奨なんで、かなり刻んでます。

いつも通り捏造・独自設定・解釈があります!!


ゼスティリア編
dai san jur ichi wa reihou de no dekigoto


 

「こりゃ、一雨来そうだな……」

 

 ボールス遺跡。 元鎮めの森だが、イーストガンド領とミッドガンド領が大陸移動によりグシャッと合わさったことによって、カノヌシの封印されていたかつての祠はその一部分のみしか姿を残していない。 しかし、植物はむしろ青々と茂っている。 千年の時によりかつてないほどの速さで適応と絶滅を繰り返した木々は、元のアバルで見られた紅葉はどこへやら、一年中青々強い葉を付ける林と化した。

 

 アルトリウスの辿り着いた祠が、ボールスの名を冠するのは……。

 

 ――雨は来ないと思うよ。 これは領域による雷だから。

「領域? ……あぁ、あっちの山の上か? どんだけ広範囲に影響してんだよ……」

 ――本来の意味での天族だからね。 四聖主へも匹敵しうるんじゃない? 

「マジかよ。 でも、なンでそんな奴が今まで出てこなかったンだ? そんなすげぇ奴ならカノヌシ相手でも色々出来たんじゃねェの?」

 ――ゼンライもズイフウも人間との和解を無理だと断じたんだよ。 ゼンライはどちらかと言えばそういった聖隷……天族を守る為に引きこもった、って方が正しいんだろうけど。

「勝手に諦めて勝手にひきこもったってワケね……」

 ――ゼンライは存在として『永遠に変わらない幸福』を求めると思うから、そういう意味では閉ざされた天族だけの楽園は理想の土地なんじゃないかなぁ。

「……つまンなそーな理想だな、そりゃ……」

 ――人に寄りけり、だよ。 天族だけど。

 

 しかし、このバチバチとした雷の領域の気配に混じる……姑息な気配。 そして、久しく感じる事の無かった……かつてメルキオルに使役されていた、特殊な幻術を扱う聖隷の気配。

 彼女は結局のところ、自らを支配(せいぎょ)してくれる存在を求めてしまうのだろう。

 

 果たしてメルキオルはそれを……いや、詮無きこと、か。

 

「ま、なんにせよとっととマーリンドまで行っちまうとするか。 雨降りそうな時はアイツ、いねェからな」

 ――わざわざ水の近くで生活しようとする地の天族は早々いないからね。 どっかの誰かさん以外。

「違いねェ」

 

 レイフォルクを見上げる。

 そこには既に重い穢れの領域は無い。 だが、大きな穢れの気配も無い。

 それでも、もう少しで帰ってくるだろう。

 

 何故なら――、

 

「ん? どうしたよ、サムサラ」

 ――……。

 

 一瞬だけ見えた、走るように去っていくピンク色の鎧。

 貴き者の子孫にして、星を冠する清浄な者。

 

 災厄の時代の始まりだ。

 

 そういえばマギルゥが言っていた私の面白おかしい伝承……多分あの娘に伝わってるんだろうなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 大樹の街マーリンド。 かの大魔法使いの名を冠するこの街は、元の名をアバルと言う。

 そんな、私にとっても縁深いこの街は今、澱んだ空気に満ち溢れていた。

 

「んだコリャ……穢れてやがんな」

 ――分かるでしょ? 何の気配か。

「あぁ……あの野郎と比べると随分とよえーが……ドラゴン、いやドラゴンパピーか?」

 ――正解。 自分より強いドラゴンが帰ってこようとしているのを察知してか今はいないけど……。

「随分と長くここにいたみてェだな。 これはちとヤバイんじゃね……ん?」

 ――どうしたの?

「いや……あそこにいる人間に見覚えがあるような気がしたんだが……気のせいか」

 ――まぁ、光り輝く者が光を齎す者になったからね。 外見はともかく、雰囲気や人となりは少しは似てると思うよ。

「……何の話だ?」

 ――この世で2番目に強い剣士の話。

 

 穢れた魂は戻りきるのに時間がかかる。 しかし、最初から一切の穢れが無い魂はこうして短いスパンで出ていくことがあるのだ。

 その意味で言えば、ロクロウやクロガネは特異な例と言えるだろう。

 

 そういえば遥か過去にクロガネの意思を受け継いだ人間が世襲制を取って続いていたような。 確か名前は千回……じゃない、サウザンドーンだっけ?

金剛鉄(オリハルコン)は私が消滅させたので、現存する最硬は輝銀鉱(ミスリル)となるだろう。

 

 エクステンションの内部がどこに繋がっているかしらないので、もしかしたら次元の裂けた丘とかフォスリトスあたりに落ちてる可能性もあるけど。

 

「おー……人間のくせにやるじゃねぇの」

 ――でも、人間じゃ殺せない。 今現在何匹いるのか分からないけど……。

「とりあえず今は、目の前の奴のプライドを守ってやるべき、だよな」

 ――そうだね。 足止めするから、ジークフリート撃ち込んで。

「わーってるって」

 ――腐食。 其は希望の終焉。 サイフォンタングル、ミニ。

 

 眼下、木立の傭兵団と闘うハウンドドッグの足元を絡め取る。 霊応力の無い人間には犬が泥沼に躓いたように見えただろう。

 その隙を狙って剣を叩き込む傭兵。 同じくそのタイミングを狙ってザビーダがジークフリートを撃ち込んだ。

 

 伝承を起こした術式通り、意思の力を撃ち込まれたハウンドドッグは無理矢理魂を剥がされ、その生を閉じる。

 

 大切な2発を数えなくても、残り少ない銃弾。

 ビエンフーがドラゴンとなった事で、新しい意思の弾丸を創る事が出来なくなってしまったのだ。 

 それでも、ザビーダも私も躊躇なくジークフリートを使う。 憑魔へと堕ちた者への優先度など存在しないからだ。 例え弾丸が尽き、ドラゴンを殺す事が出来なくなったとしても――。

 

 ――ないすしょっと。

「任せときなって。 んじゃ、明日くらいにゃ向かうとするかね……アイゼンの野郎の元に」

 ――その前にレディレイク行かない? タリエシンがぐしゃっとなったせいで、元のねこにんの里への入り口が潰れちゃってたんだけど……さっき開いたみたいなの。 

「……」

 ――最高級心水、奢るよ?

「はァ……。 行くか」

 ――うん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で? どこだって?」

 ――……開いてない……だと……。

「口調変わってんぞ。 心水が飲めないのがそんなにショックかよ」

 ――1100年待ったのに……。 割合楽しみにしてたのに……。

「割合かよ」

 ――おかしいなぁ……。 さっきダークかめにんの気配がここで消えるのを感じたんだけどなぁ……。

「んじゃタイミングが悪かったって事だろうよ。 よくある事だろ? サムサラサンよ」

 ――さんはいらない。 そうだね、よくある事だね。 なんか聖堂の方がやけに穢れの気配が強いのも、よくある事だよね。

「そーそー……って、そりゃあ……あぁ、よくある事だな。 特に最近は」

 ――ソウダッタネ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一日経って、ゼンライの領域の余波だった雷雲が完全に引いた。

 

「さてぇ……行くとしますかね」

 ――うん。 ザビーダ、分かってると思うけど……。

「アイゼンの野郎との戦闘なら参加しない、だろ? わーってるって」

 ――私が手を出す事が出来ない存在は他にもいるから、基本的にはザビーダ1人で戦ってもらうことになるかな……。 回復はするけど。

「むしろストラップに徹してくれてもいいんだぜ? 俺はそんなに弱くねェよってな」

 ――ふふ、そうだったね。 それじゃあ。

「……あぁ。 うろちょろしてる(やつ)もついでに……な」

 ――うん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『ルズローシヴ=レレイ』!」

 

 叫び声ではないけれど、しかし辺りに響き渡る声。

 人間と天族の声が全く同一に重なった――私達からすれば、凡そ700年ぶり程聞いていなかった懐かしい響きだ。

 霊峰へと続く細い崖道の中腹辺り。 かつて……約200年程前までは信仰対象だったこの霊峰を祀る祠の辺りで、荒れ滴る水の気配と燃え盛る火の気配、そして――行っては戻るを繰り返すこの世界の中で、極めて稀なケースと言える……新しい気配。

 

 魂の根底に、一切の穢れ無き文字通りの純粋である人間。

 

 導師の姿が、そこにあった。

 

 対峙するはマウンテントロール。 腹を出した血色の悪いゴリラ憑魔だ。

 ちなみにこのトロールは唯一種。 レイフォルクにはベルグフォルクという割合血色のいいゴリラっぽい憑魔がいるが、マウンテントロールと呼ばれる種はこいつだけ。

 

「ちっ……見てらんねーぜ、ボーヤ達ィ!」

 ――アイゼン、捕捉。

「このザビーダ兄さんが、お手本って奴を見せてやるぜぃ!」

 ――きゃー、ザビーダ兄さーん。

 

 ちなみにとても今更ではあるのだが、ジークフリートを頭に打ちこむのは『意思を増幅させる』という効果があるからだ。 天族と人間では脳の創りが多少違うが、意思を持つのが頭である事に変わりはない。 

 兎にも角にも増幅されたザビーダの霊力は、実際に風となって周囲に余波を齎す。

 

「ルードネスウィップ!」

 

 特に呼びかける事も無く、単にダメージを入れるザビーダ。

 そして、

 

「――」

「いけません!」

 

 ライラが叫ぶ。

 装填、完了。 ふぉいあー。

 

 ジークフリートとブリュンヒルデを別たった伝承のように、魂を剥ぎ取る弾丸がマウンテントロールに直撃する。

 そのまま、マウンテントロールは力なく生を閉じた。

 

「殺……した……?」

「貴様ッ!」

 

 ところで、私は今ザビーダの腰に括り付けられているわけで。

 先のルードネスウィップが目の前で荒れ狂うわ、今はミクリオとスレイに睨み付けられているわ。 まぁ見ているのはザビーダなんだろうけども。

 あとライラの視線が一瞬たりとも私へ向かないのは、もしや忘れてる、なんてことは無いよね。

 

「サムサラ、手ェ出すんじゃねェぞ?」

 ――え? あ、うん。

 

 ボソっと囁かれた声に驚いて反応する。

 聞いてなかった……。

 

 いつのまにか導師御一行との戦闘が始まっていた。

 

 しかしまぁ、手加減も手加減という所か。

 いつかの戦い……アイゼンとベルベット達の戦いと、奇しくも同じような立場にいる私だが……なんだろう。 あの時は視界にすら入っていなかったという点で気づかれないのは当たり前(まず自分から視界に入ろうとしていなかった)だったけど、今回はがっつりと視界に入って且つ本当にストラップと思われているのだろうか……。

 

 まぁそう誤認させるようにだらーんと四肢を投げだしているせいもあるのだろうけど。

 

「双流放て、ツインフロウ!」

「へぇー?」

 

 ミクリオの杖の先から水流が放たれる。 が、ザビーダは少し横に移動する事でそれを避けた。

 

「てぃ! はぁ! (つるぎ)の牙!」

「ほぉー?」

 

 虎牙破斬。 どこぞの腹出し猟師のモノに似ているソレは、しかし儀礼剣では然程の威力は出ない。 何故行く先々に儀礼剣を売る店があるんだろう。

 

「ライラ、変わって!」

「我が火は灼火! フォトンブレイズ!」

「おぉっと、そりゃ不味い!」

 

 ライラの天響術はしっかり避けるザビーダ。 まぁ、史実と違ってライラの力は1000年を生きぬいたソレだからなぁ。

 そもそもザビーダは風の天族。 火には弱いわけで。 まぁ弱点としては描かれなかったけど。

 

「『フォエス=メイマ』!」

 

 しかし、ザビーダが避けたのを好機に思ったのかライラとの神依化を行うスレイ。

 pahoes(フォエス)=malma(メイマ)。 カノヌシの残滓であるならば、妥当な真名と言ったところか。

 

 炎の聖剣を大きく奮うスレイ。

 

「『燃ゆる弧月』!」

「『剥ぐは炎弾』!」

「『朱の新月』!」

 

 連撃。 熱い熱い。 こっそり自分にだけ結界を使う。

 

「タァンマ! タンマ! わーるかったわーるかったって!」

「!?」

 

 小物臭のする声でザビーダが言う。 演技派ダナー。

 

「もうこれくらいにしようぜ?」

「そっちが仕掛けてきたんじゃないか……」

「だから悪かったってば。 俺は敵じゃないって。 もういいだろ、な?」

「はい。 私達が争うのは無益ですわ」

「さっすがぁ、話が分かる。 俺たちが目指している事そのものは同じなんだし、な?」

 

 まぁ、この連鎖を断ち切るという意味では……いや、そうじゃないか。

 彼らは鎮めて救いたい。 ザビーダは殺して救いたい。

 私は戻したい。

 

 あれ、私だけ違うじゃないか。

 

「知りません」

 

 心の声を否定された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「青いねェ……。 昔の自分でも見てるみたいだ」

 ――そう? 今のザビーダも十分若いよ。

「アンタと一緒にされちゃあ構わねえよ! ってか、ライラちゃんお前の事見てなかったよな」

 ――ザビーダも気付いた? ……忘れられてるのかな。

「ま、1000年前の事だしなァ。 あれ、っつーことはライラちゃんはまだニャバクラ入れねェんだな」

 ――ザビーダは入れるでしょ? ほら、ねこにんの里探しに行こうよ。

「まだあきらめてなかったのかよ……」

 




なんで年末出かけようとする人が多いんですかね……。 寒いんだからこたつでゆっくりしてればいいのに……。

余計な仕事があああああああ()

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