ベルセリア・ゼスティリア転生(仮題)   作:飯妃旅立

35 / 60
6日に更新します(キリッ


もう7日なんだよなぁ……。 



サムサラが導師組にインするまで、サムサラの行動+導師組の動向(スキット)という形でお送りします。


dai san jur yon wa kireta shato

 

 凱旋草海。 元の名をアルディナ草原というココは、地脈円や地脈のラインが集中しているせいで非常に起伏の激しい地形に成ったり、逆に平坦で何もない地形になったりと忙しい場所だ。 現在はある程度平坦……でもないかなぁ。 まぁねじまき岩みたいなのが無いだけ平坦と言えるのだろう。

 そして大地に刺ささった斜塔。

 

 思い出されるは700~800年程前にかけて地脈の集中が激しくなり、大地が割れかけた事があった。 まぁ正確に言えばしっかりと割れているのだが。 他の場所が。

 ともかく、その大地が割れる寸前まで来てしまったココを、当時の聖隷が集って特殊な聖隷術を用い、結合……もう少ししっかり言うと引き合わせるような作用を起こしたのだ。

 

 その名残である支柱こそがこの斜塔の正体であるのだが……。

 

 すっぱりと。

 

 それはもう見事に切断されている。 これほどまでの太刀筋は、それこそシグレ・ランゲツ程の剣豪でなければ造り出せないだろう。

 

 聖隷術を使ったりしなければ。

 

 まぁ、御分かりであろう。 この切断面と広域加減は、私とザビーダの天響術による物だ。 

 現在眼下で目を輝かせながら騒いでいる導師と若い天族には非常に申し訳ないのだが、とくに意図があって崩したというわけではなく他の目的の余波で起きた事なので……こう、あれだ。

 

 知らない方がロマンは大きいというものである。

 

 

 

 さて、ここにはノルミン・プライムとノルミン・ゲインがいる。 その内ゲインの方は発見されたのだが、プライムは珍妙な場所にいるせいで彼らに発見されていない。

 や、まぁ発見されないならされないで良いのだが。 49人見つからなければフェニックスは動き出さない……と、思うし。 多分。

 

 プライムもプライムで、ノルミンらしいノンビリとした性格もあってかのほほーんと日向ぼっこしているだけのようだし……。

 とはいえ無視して去る程、私は目的に追われていない。 丁度導師一行は穢れの坩堝に夢中のようなので、少しだけ周辺の噂なんかを聞いてみようと思った次第だ。

 いつも通りトラクタービームでいい感じにフワっと降り立つ。

 

「あれー? 空さかいおねーさんはんが降ってきたんや~」

 ――こんにちは、ノルミン・プライム。

「なっと聴おいやした事んおす声が聞こえます~。 もしかしかててサムサラはんですか~?」

 ――あれ、私会った事あったっけ。

「1000年程前に歓迎ん挨拶をどしたんどすけど、覚えとりませんか~?」

 ――覚えてる。 アレ、プライムだったんだ。 ううん、島を出てからプライムになった……のかな?

「わかるんですか~? 流石ですなぁ~」

 ――あの島に居た子達はニュートラルが多かったからね……。 ともかく、久しぶり。「お久しぶりです~!」

 

 

 ノルミンというのは非常に奇特な存在だ。 いつかライフィセットが母について問うた時にも触ったが、他の地水火風の天族とも無の天族とも生まれ方が違う。

 天族は清浄な場に清浄なる霊力が集う事で世界に顕れる存在だ。 霊峰だったり人の寄り付かない森の奥地だったりと様々だが、往々にして地脈の上であることがあげられるだろうか。

 

その『清浄な場』の最たる場所が天界だったというのはまぁ今語るべき事ではない。

 

 

 そんな天族の中の種族の一つとしてノルミンも数えられる。 しかしながら、ノルミンの生まれ方は所謂『普通の』からは離れたモノであるのだ。

 

 ビエンフーの例がわかりやすいだろうか。

 彼は人間の勇気が集結した存在であり、同時に人間から勇気を引き出すという役割を持っていた。 他のノルミンも同じことだ。

 ノルミンは人間の願いの結果生まれる。 彼らが踏み出す勇気を持った時にブレイブは生まれたし、無くした時にブレイブはいなかった。 遥か過去に持っていた時ブレイブはいたけれど、それはビエンフーではなかった。

 

 私達の個体名はそういう事だ。 だからこそ、このプライムもまた……何代目かはわからずとも、今代の人間から引き出された存在という事である。

 プライムに個体名が無いのは、特に気にしていないと言う事だろう。 ミヤビやビエンフー、グリモワールのような存在でもない限り、わざわざ名前を付け直そうと思わない性質であるともいえる。

 

 諸島や島に居た、ディフェンスやアタック達以外の何者でもないノルミン達は、引き出される前の存在……つまるところのなんにでもなれる(ニュートラル)なのだが、それすらも気にしないでほちゃほちゃしている辺りが彼らの『ノルミン具合』が窺い知れるだろうか。

 

 

「あれ、どなたかがこっちゃに来はるみたおすよ?」

 ――ん……。 エドナだ。

「ほぁ~……あれ、サムサラはん?」

 ――それじゃ、またねプライム。 それ置いていくから……口止め料。

「??」

 

 トラクタービームで浮き上がる。 エドナの接近に何故気付けなかったんだろう。

 そういえばラストンベルでもそうだった。

 

 導師他天族やロゼは気付けるのに……エドナだけ、自然と私の近くに来る気がする。

 

 謎だ。

 

 

 

 

 

 

 

「……チッ」

「いきなって舌打ちなんて、どないん?」

「……ここに、さっきまで他のノルミンがいたでしょう。 隠しても無駄よ」

「あれ~……もしかしてサムサラはんとお知り合いですかぁ~?」

「知り合い? ……そうね。 ストーカーの腰巾着としてなら知っているわ」

「へえ。 よおわさかいへんやけど、これどないぞ~」

「……また酒ね。 そうだ、アンタの名前は?」

「プライム言います~」

「そ。 じゃ、地の主の元で役立ってもらうわよ」

「はいなー」

 

 

《!》スキット 『赤い薬草』

 

「あれ、エドナ。 どこか行ってたの?」

「散歩よ。 穢れの坩堝は?」

「ん、しっかり浄化出来たよ。 けど……」

「溜まっている穢れの量が多すぎるらしくてね。 一度浄化しただけでは浄化しきるに至らないみたいなんだ」

「そ。 ライラはどこ?」

「ライラ? うーん、ライラー!! どこー!?」

「いきなり耳元で叫ぶなスレイ! ライラならさっきロゼ達とサフランを摘みに――」

「今、戻った。 スレイ。 これを食っておけ」

「……何? この赤い葉っぱ」

「レッドセージだ。 身体に良い」

「スレイさん? こっちも食べてください」

「……ほんとに身体に良いの? その……明らかに明るすぎる色なんだけど」

「食べなってスレイ。 慣れないと変な味に感じるかもだけど、結構高いんだよ?」

「……はぁ。 ま、デゼルとライラが言うんなら間違いないだろうし……。 ん」

「ミボ。 水を出してあげるといいわ」

「? なんでだ?」

「んんー!?」

「もの凄く苦いから」

「んんんー!!」

 

 

 

《!》サブイベント 『空飛ぶノルミンを追って2』

 

「……エドナ。 その手に持っている物は……」

「コレ? さっき見つけたノルが持っていた物よ。 ノルに渡したのもノルだけれど」

「……その赤い瓶。 その赤い液体……『緋髪の魔王』か」

「えぇ!? 赤葡萄心水の中でも最高級酒である『緋髪の魔王』ですか!?」

「あ、それ私も聞いた事あるよ! 確か赤葡萄酒は『イリアーニュ』と『緋髪の魔王』が双肩を並べているんだ、って」

「あぁ……。 青い瓶が特徴の『荊の人柱(フローラ)』という特殊な炭酸水で割ると、何とも言えない……まるで2000年の愛が込められているかのような錯覚を覚える酒だ」

「『いばら姫』に勝るとも劣らない、存在自体が芸術として讃えられている最高級酒ですから、異海と呼ばれる今はもう地図も残されていない島々の1つ、『海上火山ソーマ』の麓にある村でしか造られていないというのです。 先日の『菱鉱心水(インカローズ)』といい、そのノルミンさんはどのようにしてコレを手に入れているのでしょうか……」

「ね、エドナ。 そのノルミンがどういう特徴あるのか言ってくれればセキレイの羽で……って、そうか。 天族だからみんなには見えないんだった……。 最近普通の事になりすぎてて、忘れてたよ」「一応特徴を言っておくと、藤色の体色に海賊帽を被ったノルね。 ……海賊帽?」

「藤色の体色……? ……どこかで……」

「藤色……。 海賊帽……。 いや、そんな記憶は俺にはない」

「アタックもそうだったけど、ノルミンって変な帽子被ってる事多いよねー」

「そうしないと個性がないからよ。 流石凡霊ってトコかしら」

「……エドナさん。 そのノルミンさんの名前……もう一度言っていただけますか?」

「ノルの名前? 確か、サムサラって名乗っていたはずだけど」

「サムサラ……藤色……海賊帽……」

 

「ミクリオ! もっと水出してくれ!」

「もう十分飲んだだろ! というか、水を飲むより味の濃いご飯とか――」

「ライラー!! ごめん、おやつ作って! さっきの薬草の味が抜けないんだ!!」

 

「ご飯……ライラ……。 はんら?」

 

「半裸? あぁ、前に言ってたザビーダの事? そういえばさっきスレイとミクリオが風の天響術がどうのって言ってたけど、そのザビーダってのもデゼルと同じ風の天族なんだよね?」

「……そうらしいな」

「じゃああの斜塔はザビーダってのが斬ったものだったりして。 って、そんなワケないか」

「……少なくとも、あの切断面からして1人じゃ無理だろうな。 当時の風の天族が全員で行ったか……。 だが、真相は謎だ」

 

「ザビーダさん……腰……。 あ!!」

 

「どうしたのライラー。 おやつ作ってくれないかー?」

「……スレイ、これ食べる?」

「エドナ。 えっと……何、この黒い物体」

「お菓子よ。 暗黒物体と書いてダークマターと読むおやつ」

「あはは……い、いただきまーす!」

 

「思い出しましたわ! サムサラさん……ザビーダさんの腰に付いていたストラップですわ!」

 

「……哀れね、スレイ。 そんなもの明らかに誰がどう見ても食べ物じゃないのに……」

「……」

「君が食べさせたんだろ!? スレイ! 気をしっかり持て!!」

「ストラップ? サムサラってノルミンじゃないの?」

「ノルミンの形をしたストラップですわ」

「……それって、エドナの傘についてるのと同じ感じって事?」

「概ね、間違ってないわね。 空飛ぶけど」

「……ホントかなぁ……」

 












しごと・・・つかれ・・・

かゆ・・・うま・・・

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。