ベルセリア・ゼスティリア転生(仮題)   作:飯妃旅立

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いつもの2倍くらい長いです。
あと歴史のおさらいみたいなのが入ってます。

捏造設定・独自解釈多目です。


dai san jur go wa attachment get !

 皇都ペンドラゴ。

 オスカー・ドラゴニアを失った王都ローグリンの名門貴族ドラゴニア家。 

しかしそれでも、当時のドラゴニア伯が跡継ぎであったオスカー・ドラゴニアの兄・ペン=ドラゴニアへと家督を譲る。 

 時のアスガード王家……まぁ簡単に言えばパーシバル王が、ペン=ドラゴニア伯へガリス湖道及びアルディナ草原の攻略を命じた。 結果、ペン=ドラゴニア伯はこの攻略……多大なる戦いと血が流れたものの、勝利。

 とはいえ平和を象徴するアルディナの名は流血の中に消え、人々はその光景と広大さから凱旋草海と呼ぶようになったようだ。

 

 また、ガリス湖道は地殻変動により遺跡の入り口が露出していたり、その名の通り当時のローグレスの水源だったガリス湖の半分を埋め立ててドラゴニア領となした。

 

 湖を、ローグレスと隔てるかのように。

 そして見せつけるように――領の中心に、ローグレスと全く同じ構造の噴水を据えたのだ。 ローグレスの水道技術をそのままに、その威を見せつけるかのように。

 

 また、埋め立てた地は牧草地として活用。 結果ドラゴニア領は凄まじいまでの生産量を誇る土地となった。

 さらにペン=ドラゴニア伯は周辺の地を攻略し、最後にはローランス帝国始祖皇帝という名にまで登り詰める。

 皇都の名をペン=ドラゴニア伯からとってペンドラゴと改めた。

 

 聖隷というモノに関して、そして聖隷を天からの遣い……つまり天族である、と言い出したのがオスカーを慕っていた者達(霊応力がそれなりにあって、天族も見えた)である事からか、1100年経った今でも天族信仰の色濃く残る場所だ。

 

 これは憶測だが、マオテラスの加護が効いていた時代なので憑魔へと落ちる者の数は激減していたし、福次効果として絶望しづらい、言い方を簡単にすればやる気の出やすい時代だった事もこの行動の原動力となっていたのかもしれない。

 

 そして、ローランス帝国にとっては最良の、ローグレス王家及びローグリン王国にとっては最悪のタイミングで……ヘラヴィーサやビアズレイ、メイルシオが一塊となった集団、つまるところ北方の遊牧民扱いだった彼らが南下。

 これにより、水源を絶たれ、食事情までもをとられたローグリン王国は敢え無く滅亡。

 

 これを見たローランス帝国が懐柔目的で遊牧民の王、元・商船組合組長に公爵位と領地を与え、北の大国スラガ公国の成立となる。

 

 

 なれば、パーシバル王は、アスガード王家はどこへと消えたのか。 ローグリン王国ごと滅亡した?

 

 ところがそうは問屋が卸さない。

 パーシバル王とつながりの深かった血翅蝶、そして他ならぬ私達の仲間、エレノアが逃亡に手を貸し、パーシバル王、エレノア、血翅蝶、そしてパーシバル王(・・・・・・)()エレノアの子(・・・・・・)は隣の大陸――まだ地殻変動で繋がりきっていない頃――へと亡命した。

 

 その場所は当時のブルナハ湖畔――つまり、現在の王都レディレイクだ。

 

 タリエシンの人々はブルナハ湖畔の水抜きを成功させており、しかしそれを持て余していた所にエレノア達が亡命。 タリエシンにいた血翅蝶が情報操作や印象操作を行い、彼女らがどういう人物で、どのように悲劇的な事情で逃げて来たのかを埋め込んだ。

 結果、彼女らはブルナハ湖畔に沈んでいた試練の神殿含む水道遺跡近辺を使い、ハイランド王家を再興。 近辺をレディレイク(提案者はレディにライクされるレディライクと言っていたが)と名付け、都とした。

 

 その際心優しい3人の人間、アーヴェル、バード、フゥや、獣医の青年(何故か名は残されていない)がエレノアを手伝ったらしい。

 

 ザビーダ曰く、春風の家……ザビーダとテオドラに縁の深い家の孤児3人だったそうな。

 

 

 話を戻そう。

 

 その後、エレノアもパーシバル王も老衰で亡くなり、その子供こそ純真で良き王であったものの――その子供が2人の子供を為してしまった事から、激しい政権争いが勃発する。

 即ち、どちらを次期王とするか。 

 本人たちの思惑も無視して、政治腐敗と共に悲しき争いが起きた。

 

 その時に2人の子供の内1人が民間へと姿を消し、結果残った1人が王となったのだ。

 

 姿を消した方の子供はエレノアから引き継がれた槍術に長けていて、それを惜しんだ者もいたらしいが……。

 

 そこから腐敗はさらに進み、ローランス帝国もハイランド王国も穢れに染まりかけ、首の皮一枚という所で――アイゼンが災禍の顕主と相討ち、ドラゴン化。

 これを受けたマオテラス……心境的にはライフィセットだったのかもしれないが、ほころびかけていたマオテラスの加護が途切れてしまう。

 

 その時代をデス・エイジと呼ぶ。

 

 その後100と80~90年……今から数えて10数年前、ローランス帝国とハイランド王国の戦いに飲まれてカムランが滅び、マオテラスが憑魔化。 同時に導師ミケルの呪いで災禍の顕主が生まれた。

 

 この際キララウス火山が突如噴火。 スラガ公国とローランス帝国は停戦条約を結び、スラガ公国は北方へと去って行った。

 

 

 

 

 と、この1100年間のおさらいをざーぁぁぁあっとしてみたわけだけれど。

 

 私は今、ペンドラゴ教会神殿にいる。 もっと言えば、最奥に。

 カノヌシ信仰を当時の聖隷及び聖寮が捨て去り、手の平クルーとマオテラスを信仰し始めた頃に出来た物だから、壁面に描かれた紋様はマオテラスを顕す。

 

 光と闇……ケイオス・ブルームでも使って見せたのだろうか。

 

 ペン=ドラゴニア伯は地脈点の事を知っていたのか、はたまた当時の対魔士や聖隷がそれを教えたのか、この教会神殿にも地脈点が存在している。

 ローグレスの地下にあった物に比べれば大分小さいが、やはり地脈点。

 

 マオテラスの穢れがそのままじわりじわりと流出し、この皇都自体が穢れに塗れている。

 

 こんな場所にいては普通のノルミンでは憑魔化してしまいかねないので、なーぜかここにいるノルミン・バーニングにちょっと細工をしにきたわけなのだが、まぁちょっとした寄り道で最奥まで来てしまった。

 

 壁画もさることながら、ここには今なお人間の姿で枢機卿をしているフォートン三姉妹が末女、リュネット・フォートンである憑魔メデューサと……メデューサによって石に変えられたセルゲイの弟、ボリスがいる。

 

 石化は非常に面倒……というと言い方が悪いのだが、私からすると厄介な分類で、戻ってもいないがここにいるわけでもない、という曖昧な状態だ。

 

 原初の物語においても石化した人間は出てきたが……状態異常の分類としては、本当に奇妙なものだと思う。

 何せ硬直している、とかではなく……本当に石化しているのだから。

 

 ボアなどを石化したら食べられなくなるのだろう。 なんとも酷い状態異常だ。

 

 

 さて、寄り道を終えて……バーニングの元へ行く。

 バーニングという名前からどこぞの半身を思い出すが、そんなことはない、普通にはんなりしたノルミンだ。

 

 

 

 

 

 ――ノルミン・バーニング。 何故こんなところにいる?

「ほわぁ~頭の中に声が~?」

 

 といういつも通りのやり取りを経て。

 

「なんかな~? こん神殿を創ってる時さかいうちへーたにゃけれど、扉ん方にけったいな霊力埋め込まれたせいで出れなくなってしもたんや。 やさかいここでんんべべたこしいやおいやしたんです~」

 ――あぁ……そういう。 出る気はある?

「穢れと憑魔がいてる事以外は困ってへんさかいどもないや~」

 

 それが一番困る事なのでは。

 

 ――加護を受けし衣よ名を示せ。 ホーリィヴェイル。

「あれ、なっとキラキラどしたんが出てきたんやけど~?」

 ――それ、弱い憑魔や薄い穢れなら弾いてくれるから。 

「へぇ、便利ですなぁ。 おおきにでした~」

 ――ううん。 もうすぐ、導師がここを根本から祓ってくれるだろうから……それまで頑張ってね。

「はい~」

 

 やることをやって、先程見つけた赤黄青緑の石版の霊力周波数を真似たものを扉へぶつける。

 開く扉。

 

 ――じゃ。

 

 私が出ると扉は閉まる。

 

 シルフモドキの使っていた意思疎通の改良版だ。

 これがもしヴィヴィア水道遺跡のような物理的なしかけであれば私は無力だっただろうが、霊力的な仕掛けだったおかけで素通りする事に成功しているわけだ。

 

 む。

 

 その時、サムサラに電流走る。

 

 すぐさまトラクタービームで身体を天井へと貼り付ける。 ついでにいつかバンエルティア号に掛けた物と同じ、隠蔽と形状変化の入り混じった聖隷術……天響術で、自身の周りのみに展開した領域を隠す。

 

 直後、導師一行が入って来たではないか。

 エドナがキョロキョロと辺りを見渡している辺り、司祭を追っているにも拘らずノルまっしぐらしているようだ。

 

 あ、スレイに手を引かれていった。

 

 しかしまだ油断しない。

 スッと教会神殿を出て、直後。

 恐らく導師一行が秘力の碑文の後ろに消えた直ぐくらいに、強大な領域が発生する。

 

 リュネット・フォートンの領域だ。

 ついでとばかりに乗せられたサイモンの幻術もある。

 

 とりあえず自身の領域内にトラクタービームを敷き、離脱。

 

 一足先に(別に導師一行の旅に同行したいわけではないのだが)カンブリア地底湖へと身を躍らせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 カンブリア地底湖。

 この場所はベルベット達と共に在った時代――まぁ1100年前には終ぞ見る事の適わなかった場所だ。 とはいえ、この場所自体は遥か昔から存在していた。

 

 具体的に言えば、私が生まれる前から。

 

 最初のノルミンたる私とフェニックスは、あくまで人間と共に生まれ出でた存在だ。

 だからこそ、この地に化石として残る……誰かさん(わたし)曰くアノマロカリスという名のどっちが前なのか後ろなのか分からない生物(誰かさん(わたし)曰く、くるっとした触覚のあるほうが前らしい)は、私の記憶にはない。 見た事も無い。 美味しいのだろうか。

 

 コレが今の人間の姿へと転じたらしいのだが……そのあたりの詳しい記憶は持っていなかった。

 正直コレ、憑魔とさして変わらないような気がする。

 

 

 さて、ここにもノルミンはいる。

 というか多分どこにでもいる。 導師の行く先々にはイヌ系が多いようだが、ネコ系もそこら中に居るんだろう。

 

 

 

 ――ノルミン・テンペスト。 ……あれ。

 

 

 

 あれ?

 

 いない……と思った瞬間、ガシィ! と。

 

 

 

 私の身体が掴まれた。

 

 

 

「やるわね、ミボ。 そして捕まえたわよ、ノル」

 バシャッという音がして、私の背後にいきなり気配が出現する。

 導師一行だ。

 

 目を輝かせている導師スレイ。 両手を頬に当て、まぁ! という様子を全身で表している天族ライラ。 両ひざに両手を付き、肩で息をしている天族ミクリオ。 そんなミクリオの肩に手を置いている従士ロゼ。 こちらを凝視する天族デゼル。

 

 私の身体をがっちりと掴む天族エドナ。

 

 

 ……霊霧の衣か……。

 

 

「ほんとに浮いてた! 君が空飛ぶノルミン?」

 

 導師スレイがキラキラした目で聞いてくる。

 Oh……別に飛んでいたわけじゃないでーす。

 ――何用、導師スレイ。

「え? ……今、誰か喋った?」

「何を言ってるんだ? スレイ、君が今自分で問うたんだろ?」

「いや、そうじゃなくて……頭の中に声が」

「このノルの声よ、それ。 その方法でしか喋れないって言ってたわ」

 ――交信術っていうの。 1人ずつにしか繋げられないから、この声は他の人には届いてないよ。

「へぇー……へぇー……! すっごいな、これ!」

「いや、僕には何も聞こえないんだが……」

「まぁ、まぁまぁまぁ! お久しぶりですわ、サムサラさん!」

 ――久しぶりだね、ライラ。 知識の穴は埋められた?

「……はい。 それでも、知らない事はありますが……」

 ――そういうものだよ。 それじゃ、私はこれで……。

 

 ガシッ、グイッ、ぐえっ。

 

「何? 逃げられると思ってるの?」

「……おい、エドナ。 締まってるぞ」

「エドナエドナ、力強すぎだって……」

 

 おぉ、この掴む力加減……アイゼンそっくりだ。

 今回こそ霊霧の衣が原因だったが、エドナの接近に私が気付けないのはそういう理由だ。

 

 つまり、似ているのだ。 霊力の質も……気配も、アイゼンと。

 

 アイゼンと共にいた時間が長すぎたのだろう。

 多分ザビーダの兄妹……居ないとは思うが、同質の気配が現れても私は対応できないと思う。

 慣れが弱点になる……まぁ、エドナが敵に周る事はない……だろうけど?

 

 ――何用、エドナ。

「ノルとしてアンタの力を貸しなさい」

 ――援護射撃すればいい?

「出来るの? ただのノルが?」

 ――無属性天響術なら。

「……アンタの名前は?」

 ――教えない。

 

 そろそろ手、離してくれないだろうか。

 ずっと振り向き続けるのは首が苦しかったりしなくもないのだけれど。

 

「……ま、いいわ。 はいこれ」

 ――……遠慮しておく。 

「じゃあどうやって付いてくる気?」

 

 差し出された結い紐を断わり、視線を巡らせる。

 

 ぴこーん。

 

「ミボ? ……まぁ、2つも付けたらバランス取りづらいかしら」

「え、僕がどうしたんだ? エドナ」

 ――ミクリオ。 肩に乗せてほしい。

「頭の中に声が……」

「それがコイツの声よ」

 ――安心して、重さは無いから。

「いや、肩にって……」

「肩に乗せるのね。 それじゃ、はい」

 

 !アタッチメント:いつでもサムサラを取得しました。

 

「……案外、軽いんだな」

「いけませんよミクリオさん! それではまるで、重いと思っていたようです! 女性に体重の事を言ってはいけません!」

「これだからミボは」

「えーと……上手く飲み込めてないんだけど、その藤色のノルミンが仲間に加わった感じ?」

「……どうやらそうらしい」

「よろしくな! サムサラ!」

 ――よろしく。

 

 

 

 

 

 《!》サブイベント 『空飛ぶノルミンを追って3』

 《!》サブイベント 『受け継がれた二刀小太刀1』

 

 ――ロゼ・バスカヴィル。

「うわっ!? ……って、サムサラか。 驚かせないでよー」

 ――渡すものがあって。

「何? っていうか、バスカヴィルって誰?」

 ――あなたのご先祖様。 ま、気にしないで。 それよりコレ……。

「うわ!? え、帽子から剣が出てきた! どこにしまってたんだ? そんな長さ……」

 ――これを渡したかった。 あなたの手に馴染むはずだから。

「……何、それ……黒い短剣……? ううん、それよりも……」

 ――穢れが漏れる事のないようにしてある。 銘を、『二刀小太刀クロガネ』。

「『二刀小太刀クロガネ』……? 明らかに業物……それに、素材がわからない……」

 ――世界で最も純粋な憑魔が最高の腕で叩き上げた小太刀だよ。 もし、今使いこなす自信が無くても……あなたに使ってほしいんだ。 他ならぬ、ランゲツ流を継いでいるあなたに。

「ランゲツ流……?」

 ――あなたが無意識に叩き上げた剣術の元になった流派だよ。 

「いやいや、これはほとんど我流だし、ってなんでそんな事知ってんの?」

 ――年季の候。

「……えと、サムサラっていくつ?」

 ――云万。

「……天族ってすごいんだね」

 ――そうね。

 







我慢ならなくてゼスティリア公式設定資料集も買いました(







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