ベルセリア・ゼスティリア転生(仮題)   作:飯妃旅立

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真名考察はほとんど違うと思ってみてください。
会ってる部分もあるけど、主にGW語関連が違います。

独自解釈・捏造解釈多目です。
また、原作乖離が入ります。


dai san jur roku wa thousand done

 

「あれ、大地の記憶じゃないか?」

 

 ミクリオの肩に揺られて地底洞を行く。 杖を主武器として扱うミクリオは華奢な見た目とは裏腹に足腰と重心がしっかりしていて、揺れが少ない。 意図的に身体を揺らす事でペンデュラムをより複雑に動かしていたザビーダとは大違いだ。

 まぁ、それはそれで揺り籠のような振動が心地よかったのだけれど。

 

 今私達がいるカンブリア地底洞は、元々海だった場所が地殻変動で一度地上に露出、その後また地下に沈み、更に再度露出したことで形成された土地だ。 だから内部の洞窟は所々が浸食されているので非常に崩れやすい。 下手をすれば空でも飛べない限り生きては戻れない深さまで落ちる事もあるだろう。

 そう言うことをわかっているのか、いないのか……まぁ、エドナやデゼルがいれば平気と思っているのかもしれない。

 

 ちなみにこのカンブリア地底洞は小規模な地脈湧点であり、湧き出る水には多分に霊力が含まれている。 ザマル鍾洞はこのカンブリア地底洞のほぼ直上に存在し、今はその一部がイデル鍾洞と名を変えて、過去の様相を見せている。

 今にして思えば、ドラゴンと化したビエンフーがザマル鍾洞へ向かったのもこれが理由だったのかもしれない。

 

 あと、ストーンベリィの純心水も……恐らく、ここの湧水が関係しているはずだ。

 

「追放された、って事かな。 軍や国から」

「戦争に負けたんじゃない? 多分だけど」

「あんなに声援を受けてたのに……なんだかね」

 

 過去、ベルベット達を追って地脈に意識を飛ばした時もそうだったが……私は大地の記憶、というものを見ることが出来ない。

 正確に言うなら、それに込められた記憶だけを見る、ということが出来ないのだ。

 

 私はあくまで交信術でのみ会話を行い、意思の、意識の疎通を行う。

 集められ固められた意識の塊のような存在である大地の記憶は、その全てが地脈に通じている。 だから、コレに交信術を繋げると地脈に術を繋げている事と同義になってしまうのだ。

 まぁより簡単に言えば、検索結果が膨大過ぎて知りたい情報を知り得ない、と。 誰かさん(わたし)の言葉を借りた。

「サインドと申します。 導師スレイ」

「ラストンベルを加護されていた方ですね?」

 

 天族サインド。 優雅な乙女。

 彼女と、彼女の持つ人間に対しての想いは私にはどうする事も出来ないモノだ。 ああいう人間も、そうでない人間も、全てひっくるめて人間だから……もしそれに彼女が気付いた所で、彼女が心を改めるとも思えない。

 

 サインドへの交渉を一旦諦め、一行は一度ラストンベルへと戻るようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――腐食。 其は希望の終焉。 サイフォンタングル。

「無属性の天響術!? いえ、これは……サムサラさん!?」

「おどろおどろしい術だ……だが、今は目の前に集中しろライラ!」

「唸れ旋風!」

 

 住民を襲ったルーガルーを追ってラストンベルの外に出てみれば、そこにいたのはルーガルーを喰らうブリードウルフ。

 このPTの弊害は総じて憑魔が見えてしまうという事であり、彼らの人間として、獣としての姿は穢れを払わないと見ることが出来ない。

 

「『ルズローシヴ=レレイ』!」

 

 loose(ルズ) law(ロー) save(シヴ)lorrei(レレイ)

 執行者ミクリオ。

 かのアルトリウス・コールブランドの真名たるloose law save = hi(ハイ) = pahoesy(フォウェスィ)――清浄のための執行者を汲んだ……スレイが、導師であっても未熟である事を補っているかのような、彼の親友たる良い真名だと思う。

 

 ――開口、無窮に崩落する深淵。 グラヴィティ。

「風と地属性の天響術……? いや……」

「デゼル! 考察は後にしてよ!」

 

 確かに風と地属性の天響術にもグラヴィティは存在するのだが、こちらは霊力で形作っただけの無属性天響術だ。 消費する霊力はこちらのグラヴィティよりはるかに大きいものの、威力は私の物の方が大きい。 範囲も大きい上に気を付けないとフレンドリーファイアするのだけれど。

 

 浄化の力がブリードウルフを灼き、その姿が元に戻る。

 ルーガルーは少女マーガレットに。 ブリードウルフは子犬のワックに。

 

 2つの命の灯火は小さく、消えてしまいそうだった。

 

「サインドさん……?」

「憑魔の気配を感じて来たんです。 何故か懐かしい感じがしたから」

「サインドの……声が聞こえる……」

 

 本当にふざけた話だ。

 私はアイゼンと闘う事は出来ないが、彼女達なら――治癒してやれる。 カノヌシを殺すことは出来なくても、彼女達なら助けてやれる。

 

 それが私の誓約であるから。

 

 だがまぁ……知らぬのならば、それも幸せだろうか。

 

 

 ――大地、魂に無上なる祝福を与えたまえ。 ソウルオブアース。

「……あったかい……?」

「マーガレット? 今のは……」

「私じゃないわ」

「僕でもない。 多分……」

 

 この世界のものでないこの術は、しかし詠唱も形も……ひどくこの世界にマッチしている。 私の性質上扱いやすい術であるし、元の世界も私に合致するところの多い世界だ。

 

「マーガレット……」

「なんだか……眠く……なっちゃ……た……」

「くぅん……」

 ――眠っただけ。 この状態なら、母親もこの子を憑魔とは思わないよ。

「……そう、だけど……」

 

 そう。 これは現状維持にもならない回復だ。

 だからこそ私はこの子を掬えたのだし、だからこそ私の誓約はしっかりとこの身を縛っていると言えるだろう。

 

 だが、そこを切り開くのも人間だ。

 

「マーガレットはただ……「聖堂に天族はいない」と言っただけなのに」

「その発言が……イジメへとつながった」

「そう。 国同士の対立が激しくなる中で、教会は信徒の統制を強めていきました。 彼らは、価値観を違える者に対し、強硬に反発するようになったのです。 例え、子供の戯言であっても」

 

 でも、それが人間だ。

 人間から生まれたノルミンでさえ、イヌ系とネコ系では埋めきれない溝があるように。

 

 いつかのヘラヴィーサで、メディサの娘が殺されたように。

 

 何も変わらない。 ただ、生きていくのに価値観が違う者は邪魔であるという……ただそれだけの事。

 カノヌシやアルトリウス、メルキオルだって人間と聖隷のためを思って鎮静化を行っていたし、それに反抗したマギルゥやエレノアもその根底にあるモノは人の為だ。

 それでも対立するのは価値観が違うためであり、もし全ての人間が全ての価値観を受け入れるようになったとしたら……それは、人類が滅亡したその時の事を指すのだろう。

 

「導師スレイ。 私に、あの町をまた加護させてもらえませんか?」

 

 マーガレットは天族は聖堂ではなく、あの大鐘楼にいると言った。

 遥か昔、青年ラストン達が創り上げた鐘。 ストーンベリィの民の名を汲んだ街の象徴に。

 もし、サインドがこのままラストンベルを放っていけば……真実、あの鐘楼に天族はいない……つまり、マーガレットが嘘を吐いている事になってしまう。

 

 それが、彼女の出した答えだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺、霊応力が在るのは、良い事だって思ってた。 けど、そうとは限らないのかな……」

「見えるようになると前と後じゃ、全然違う世界だもん。 人に寄っちゃ悪い方に転がる事もありそう」

 

 それが全ての人間に起こったのが降臨の日(ガイダーズ)導師の光輝(ヴェスペリア)

 とはいえほぼすべての聖隷は使役され、その矛先が向くはずの対魔士は国家権力となった。

 文句の言えない存在となったのも、あの時代に穢れが蔓延っていた理由の1つだろう。

 

 

 

 

 

 さて、一行はこのままカンブリア地底洞へと地脈間ワープを用いて移動するようなのだが。

 

 ――スレイ。 私は地脈間ワープできない。

「え? ど、どういう事?」

「どうかしたのですか? スレイさん」

「いや……サムサラが、地脈間移動が出来ないっていうんだ」

 ――だからここでお別れかな。 楽しかったよ。

「ちょ、ちょっと待って! ミクリオ! 抑えて!」

 

 ぐえっ。

 

 ――何?

「だったら陸路で行くよ。 それほど遠いってわけでもないし……みんなも平気だよな?」

「正直あたしはあの感覚苦手だったから、全然かまわないよ。 でも、サムサラも天族なんでしょ? なんで使えないの?」

 ――私はライラと繋がってないからね。 あなた達が同じ場所に移動できるのは、主神と陪神、もしくは導師と従士って関係で繋がってるからだよ。

「えーっと……つまり、ライラと陪神契約だっけ? を、結べば使えるって事?」

「あぁ! そう言えばサムサラさんとは繋いでいませんでしたね!」

 

 ちなみにフェニックスはエドナに加護を与えているという繋がりを持っている。

 

 ――でも、私はすでに契約済みだから……ライラとは結べないよ。

「契約済み? 誰とです?」

 ――誰か、だよ。

 

 誰かさん(わたし)だから、嘘ではない。

「ま、歩いたほうがスレイも鍛えられるしね。 道中の憑魔も浄化出来て、一石二鳥だ。 それに、君の天響術について……歩きながらで構わないから、教えてほしい」

 ――私は歩かないけど?

「僕が、歩きながらだ。 そういえば最初に君が言った通り、本当に重さが全然ないから疲れないが……ノルミン天族はみんなこうなのか?」

 ――私は異常に軽いけれど、そうだね。 基本的には重みはほとんどないよ。 アタックみたいに重い物を被っているなら話は別だけど。

「……確かにアレは重そうだ」

「ミクリオー? 行くよー?」

 

 自然な流れで置いて行かれる作戦、失敗。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《!》サブイベント 『空飛ぶノルミンを追って4』

 

「……お前の、自身を浮かせていた術は……どういう術なんだ?」

 ――トラクタービームの事?

「いや知らんが……。 風の気配は感じなかった、と思ってな」

 ――原初の術の構成は、上から持ち上げる術だったけれど……時代を経て、下から押し上げる術に変わって行ったの。 どっちも無属性だったけどね。

「無属性か……」

「無属性の術なのか? そういえばライラ。 マオテラスも無属性の聖主だったよな」

「え? キャトルミューティレーションですか? 怖いですよね!」

「いや、そんなこと一言も言ってないが……」

 ――まぁ、意味で言えば合ってるよ。

「合ってるのか!? ……って、デゼル。 何しようとしてるんだ!」

「いや……風で再現……無理そうだな」

 ――でもエドナは傘で浮遊してるよ?

「……! 地の天族は浮けるのに……風の天族が出来ないはずがない、か……?」

「え? 地の天族って浮けるの? エドナ!」

「何馬鹿な事言ってるのよ。 浮いている物を叩き落すのならやってあげるけど?」

「……! これは、私にウケを取れと言う暗示ですね!?」

「いやライラのそれは滑空だから。 滑ってるから」

 ――浮きたいなら、浮かせてあげるよ?

「いやいい、いい! ほら、デゼルとの神依だって半分浮いてるようなもんじゃん?」

「あー……確かに浮いてるよな。 というか、飛んでる気がする」

「……言われてみれば、低空だが……飛行しているな」

「スレイさん! 熱を利用すれば、私達でも浮けるはずですわ!」

「いやぁ……無理だと思うけど……?」

 ――気球のバーナー代わりに神依を使うなんて、贅沢だね。

「何故僕に言う……。 正直、そこまでして空を飛ぶ価値が見いだせないな。 僕達の住んでたイズチは雲より高い所にあったわけだし……」

「いやいやミクリオ! 森の奥深くとか、高い所からじゃないと見えない発見があるかもしれないだろ? もしかしたら遺跡があるかもしれない!」

「……確かに、偵察という意味では……空を飛べるってのは、重要だね。 どれだけコソコソしてても、空から見たら一目瞭然だろうし」

「戦略的にも……戦場を俯瞰できるというのは大きい。 戦争なら相手の陣形や作戦までわかるわけだからな」

 ――あと、空は風が気持ちいいよ。

「うん、それはわかる。 イズチだってとてもいい風が吹いていたし……」

 ――ゼンライは風属性の中でも雷の天族だからね。 立地的にも、加護的にも、あそこほど風の天族にとって住みやすい場所は無いと思うよ。 勿論、他属性でもだけど。

「ジイジを知っているのかい?」

 ――面識はないけど、識ってるよ。 ゼンライの友人のズイフウとも顔見知りだし。

「……改めて問うけど、君は何者だ? 見た事の無い天響術もそうだけど……どうにも、今まで会って来たノルミンとは違う気がするんだ」

 ――あなた達が今まで会って来た子はイヌ系だからね。 私はネコ系。

「……真実も話しているけれど、話していない事もある、って感じだな……」

 

 わぉ。 鋭い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《!》サブイベント 『受け継がれる二刀小太刀2』

 

「……! 嬢ちゃん! そこの嬢ちゃん! ちょっと止まってくれ!」

「? あたし?」

「あぁ!」

 

 ラストンベルを出ようと支度している最中、ロゼが呼びとめられる。

 彼女を呼び止めた相手は男。 武器屋の男だ。

 

「えっと……何?」

「頼む! 後生だ!!」

 

 そう言って、往来で土下座する男。

 既にロゼは引き気味だ。

 

「何なになに! 一応聞くだけ聴くから顔あげて! っていうか恥ずかしいから声小さくして!」

「あぁ!! すまねぇ……! つい、興奮しちまって……!」

 

 男は涙を流しながら言う。

 

「で? 引き留めた理由は? あたしに何を頼みたいわけ?」

「あぁ……嬢ちゃん、短剣を持ってるだろ? いや、二刀小太刀を」

 

 その言葉が出た瞬間、ロゼは少しだけ腰を下げていつでも抜刀できる姿勢に入る。

 彼女の姿は今はセキレイの羽の物であり、風の骨の頭領の物ではない。 だから、短剣だって見える所に置いていないはずなのだ。

 

「あ、あぁ、すまねえ。 隠してるんなら悪かった。 ただ、俺達は職業柄わかっちまうんだ。 隠し持っていても……その武器の発する声、って奴が」

「……それで?」

「あ、えーと。 まず自己紹介だ。 俺の名前はラスリートン。 伝説の鍛冶職人サウザンドーンの息子が四男で、特殊武器を学んだ。 それで、嬢ちゃんの持ってる小太刀から……あり得ない声が聞こえたんだよ」

「あり得ないって?」

 

 10年前、その類い稀なる技術を独占しようとしたローランスとハイランドの抗争に巻き込まれて死亡した鍛冶職人サウザンドーン。

 そう、業魔でありながら……一切の穢れを生む事の無かった、彼の……。

 

「親父の声だ。 死んだはずの親父の声……いや、親父その物の声じゃなくて、親父が打った武器と同じ声がしたんだ。 親父の武器は、もうそのほとんどが失われているはずなのに……。 だから嬢ちゃんを呼び止めたんだ。 別にそれが欲しい、って言うつもりはねえ! けど……少しだけ、見せてもらう事は出来ねぇか!」

「だから声が大きいって……。 ま、見せるだけならいいけど……」

 

 そう言って、どこへ隠していたのやら『二刀小太刀クロガネ』を取り出すロゼ。

 その黒い刀身。 赤黒いライン。 私の処置によって穢れこそ生まなくなったとはいえ、やはりおどろおどろしい外見。

 しかし、それを見て男は、

 

「……見える」

「へ?」

「……この武器は、それだけで凄まじい武器だが……まだ、先がある」

 

 目をこれでもかと見開き、耳をヒクヒクと動かし、刃物である二刀小太刀に鼻先が付くのではないかという勢いで食い入るように見つめながら言う。

 

「ちょ、ちょっと近いって!」

「あ、あぁ……すまん。 だが、嬢ちゃん。 この武器は……まだ未完成だぜ。 材料さえあれば、俺達六兄弟が……これを真の刀へと昇華させられるはずだ」

 

 これが、1000の時を経て受け継がれる技術。 そして、魂だ。

 

「材料って?」

「この小太刀と、同じ材質の……何か、だな。 嬢ちゃんはこれが何で出来ているのかしらないのか?」

「いやぁ……これ、もらい物だから……」

 

 そう言ってラスリートンには見えないであろうミクリオ……の、肩に乗っている私をみるロゼ。 当然、ラスリートンからしてみればその視線の先に居るのは、

 

「お前さんがこの小太刀の元の持ち主か!?」

「へ? な、何!?」

「教えてくれ! この小太刀は……何で出来ているんだ!?」

 

 ぼけーっとしていた、スレイへと喰い気味に迫るラスリートン。

 当然事情を掴んでいないスレイは答えを持っていない。

 

「……サムサラ。 アレは何で出来ているか教えてよ」

 

 小さな声で話しかけてくるロゼ。

 

 ――緑青林マロリー。 そこに、残りの材料があるよ。

「……それが何かは自分で見つけろ、って事?」

 ――うん。

 

 唾を飛ばす勢いでスレイに詰め寄るラスリートン。

 スレイがロゼへと救難信号を出したところで、ロゼがラスリートンの肩を叩いた。

 

「おじさん。 確証はないけど、残りの材料の手がかりはあるんだ。 だから、もし材料が見つかったら……」

「あぁ! 俺達兄弟、死力を尽くして……そいつを完成させる! いや、俺達に完成させてくれ!」

「だから声がデカいって。 ま、そん時はよろしく頼むよ」

「あぁ……! ありがとう!」

 

 深々と礼をするラスリートン。

 この二刀小太刀が、真の姿となる日は近い。

 

 今から私も楽しみだ。

 











ベルセリアでばら撒いた伏線回収ぅ~(ばら撒けてない)

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