ベルセリア・ゼスティリア転生(仮題)   作:飯妃旅立

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大分刻んでます
独自解釈・捏造設定多目です。
結構時間が空いてしまいました


dai san jur nana wa hi no shinden igrain

 

 ラストンベルにサインドの加護が戻り、いざ憂いなしとカンブリア地底洞を進みゆく導師一行。 地脈の塊たる大地の記憶を動かしたので、穢れが溜まり出していたが今は関係の無い事なのかもしれない。 恐らく次に訪れるときには異形の宝珠あたりと共鳴して、変異憑魔が現れている事だろうけど。

 

 暗く湿った洞窟を抜けると、久方ぶりの太陽が彼らを照らした。

 

「よっし! 出られた~! お日様最高!」

 ――焔、其は魂を看取る幽玄の炎。 葬炎、ファントムフレア。

「ちょ、いきなり何!?」

 

 彼らを強風が襲う前に、無・火属性の術を前方に放つ。

 相殺されない炎は風をすり抜け、その身を焼く。

 

「! 憑魔ですわ!」

「こんなところにグリフォンがいるとはな!!」

 

 ……。

 ホグホグは、既に老衰で戻っている。

 それは他ならない私が確認した。

 

 だから、この憑魔は憑魔グリフォンでしかない。

 

 彼は子を残さなかったから、何の繋がりも無い。

 

 例えここが、かつてのローグレス離宮の地に程近い場所であっても――。

 

 ――開口、無窮に崩落する深淵。 グラヴィティ。

「火属性・地属性が効くようです! お任せを!」

「漆海、集う、二十の明けに! グラヴィトリガー!」

 

 関係ないのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 マギルゥが十全に開発した神依は、ひょっとすると史実よりも高い出力となっているかもしれない。

 そして、私の蒔いた種がもし、しっかりと芽吹いてくれるならば……。

 少しばかりの希望を持っても、いいのかもしれない。

 

「ん? どうしたんだ、サムサラ。 ライラが気になるのか?」

 ――ライラなら、この程度の憑魔には遅れは取らない。

「僕もそう思ってるよ。 でも、それならなんで穢れの坩堝を凝視していたんだ? 何か見えるのかい?」

 

 現在、バイロブクリフ崖道にあった穢れの坩堝にライラが挑戦中だ。

 

 穢れの坩堝。

 その機構は、やはり第四種管理地区を思い出してしまう。

 

 私はほとんど付いて行かなかったが、律儀な事にベルベット達はその全てを攻略していた。

 これが導師一行となってみれば、カースランド島の物含めてどれか1つを見逃す、という事は有り得ないのだろう。

 

 ――再封印が出来ないか見てただけ。 でも、私には無理みたい。 というか、封印術を私が知らない。

「……知らないのにどうやって出来る出来ないを判断したんだ?」

 ――ミクリオだって、火は出せなくても燃えそうか燃えなそうかはわかるでしょ?

「……成程?」

 

 実を言えば、物語の歴史の中には封印術に相当する物がいくつかあった。

 だが、それを用いても穢れの坩堝を封印する事は出来ないだろう、というのが今回の判断だ。

 それに、封印したところで……意味があるとは、思えないし。

 

「ん、ライラが出てきようだね。 流石はライラ、傷一つ負ってない」

 ――近接攻撃・中距離攻撃・術。 どれをとってもハイレベルに使えるからね。 紙葉使いはみんな強いよ。

「他に紙葉使いを知っているのかい?」

 ――2人。 どっちも、今のヘルダルフより強かったんじゃないかな。

「そんな強い天族が……でも、亡くなったのか」

 ――ううん。 戻ったわけじゃないよ。 でも……。

「でも?」

 ――終わらない連鎖と、限りない悲しみの中にいるから、明るい所に導いてあげて欲しい。

「?? ……よくわからないけど、導くのならスレイに任せるといいさ。 なんたって、スレイは導師なんだから」

 ――うん。

 

「おーいミクリオー! おいてくぞー?」

「今行くよ!」

 

 導師。

 導く者。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ゴドジンに着いた一行は、とりあえず情報収集をするために散開した。

 

 この村は赤精鉱……過去、ネクターと呼ばれていた赤精鉱水をエリクシールと偽って販売、収入を得ている村だ。

 村長スランジはマシドラ教皇その人であるが、心から村の為を想って偽エリクシールを販売している故、穢れは割合少ない。 負い目があるため、どこぞの大司祭よりかは少ない物の、どうしても穢れは生み出してしまうようだが。

 

 また、その依存性と中毒性を知っているが故に、村人には一切赤精鉱水を与えていない様だった。

 

 勝手に酒蔵を覗いてみた結果以上の事がわかった次第である。

 

「あれ? サムサラ、こんなところでなにしてるの?」

 ――食物庫を見ていた。 分かった事は、この村は質素ながらもかなりの農産・海産物を外部から仕入れているって事かな。

「サムサラも収入源が気になってたのか」

 ――そうだね。 まぁ、一個人がどれだけ努力したって……村全体の人間のお腹をいっぱいにするのは、とても難しいはずだよ。

「うん……やっぱり、何かあるんだろうな。 この村は」

 ――そう言えば、村の奥にバクス・メリオダス王朝時代の遺跡があるみたいだね。

「え? アヴァロスト調律時代じゃないの? さっきエドナが、クローズド・ダーク以前の物だって言ってたけど……あ、バクス・メリオダス王朝もクローズド・ダーク以前の事か」

 ――アヴァロスト調律時代が、どれほど前の事だと思ってるの?

「確か2300年前……だったよな! そんで、バクス・メリオダス王朝時代が1800年前!」

 ――バクス・メリオダス王朝時代が2300年前だよ。 そして、アヴァロストの調律時代は……確か、8万年前だったかな? 確かにアヴァロスト調律時代の遺跡が残っている場所はあるけれどね。 まぁ、ここの遺跡はバクス・メリオダス王朝時代に秘密裏に再建された物っぽいから、原基はアヴァロスト調律時代の物であるかもしれないね。

「……それ本当? なら、今までの説が沢山覆される事になる……大発見だよ!」

 ――なんなら、宿屋に泊った時とかに聴かせてあげる。 神代の時代(フォーチュン・オブ・ファンタジア)から、今に至るまでを。

「う……聞きたい……けど、それ聞いてたら多分俺、眠れなくなっちゃうよ……。 ヘルダルフを倒して、穢れを鎮めて――その後、ゆっくり時間が取れたら聴かせてほしいな」

 ――……そうだね。 ゆっくり……その時は、ゆっくり話そうか。

「うん! ……所で、サムサラっていくつなの?」

 ――神代の時代(フォーチュン・オブ・ファンタジア)と同い年かな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 巨魁の腕。

 エドナの力を乗せた下突きであり、巨大な岩や壁を粉砕できる。

 力を使う時には霊体としてエドナがスレイの中に入っている上、私はそれを見ることが出来る。

 もうまんまアイゼンを見ている様で、なんだか懐かしい。

 

 見た目だけで言えば超強力な腹パンなんだけど。

 

 アイフリードへの一撃が思い出される威力だ。

 

 おそろしおそろし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 遺跡そのものはバクス・メリオダス王朝時代の物だが、秘文はマギルゥが残した物だ。

 

 火の試練神殿イグレイン。

 

 マグマ煮え滾る、産霊(ムスヒ)の力震う場所である。

 ちなみにだが、かつてベルベットが四聖主を叩き起こした時に立ち昇ったムスヒの零柱はこの神殿から出た物だ。

 

 今見えているところはバクス・メリオダス王朝時代に造られた物。 恐らくマグマの奥底にアヴァロストの調律時代の地脈への出入り口がある事だろう。

 メリオダス王は災禍の顕主であったから、時の天族が秘密裏に海底に創り上げたのだろう。 

 

 2300年前と言えば、確か私は双子島ディオメルで箪笥を漁っていたような……。

 

「ミボ、冷たい水を出しなさい。 私じゃない、スレイとロゼ用よ」

「ああ。 この暑さの中で、水分補給を怠れば最悪死につながるだろう。 2人とも、喉が渇く前に水を飲むんだよ」

「……」

「デゼルさん? 風の天族であるあなたには、ここはお辛いでしょうか……?」

「……いや、気にするな。 大丈夫だ」

「サムサラも、辛かったら言ってくれ」

 ――それじゃ、お酒を。

「そんなものは出ない!」

 

 基本的にカンブリア地底洞のようなじめじめした所の方が好きな私にとって、こういう空気の乾いた場所はあまり得意ではない。

 まぁ史実においてフェニックスがここへ誘いを出したように、多分本能的にココを苦手だと思っているという可能性もある。

 

 先程から云々と頷いているフェニックスを見るに、コイツにとってここは最良の雰囲気であるのだろう。

 

 誰かさん(わたし)の記憶ににある火の試練神殿イグレインのBGMを思い出しつつ進む。

 とてもどうでもいい事であるが、私の交信術は音楽であれば伝える事が可能だ。

 

 誰か1人の脳内にBGMを流すことが出来るわけである。 やらないけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて、私は導師の試練に手を出す事は出来ない。

 だから、サラマンダー(エクセオ)の領域展開に合わせて傍観のために離脱させてもらった。

 

 

『俺が灼くのは――こんなことを誰かに強いる、憑魔だ!!』

 

 葛藤こそあれど、既に信を持っているスレイはライラの言葉もあって、すぐに答えを掴みとった。

 神依による秘奥義。

 ようやく、手に入れたというわけだ。

 

 エクセオの人柄……天族柄? もあってか和気藹々とした雰囲気のまま、一行はこの場を後にする。

 

 残ったのは、亡骸たる人だった頃のエクセオと、護法天族エクセオ。

 

「さて、いつまでそこにいるつもりだ? お前は彼らの仲間では無かったのか?」

 ――転生を果たしたあなたに、問うことがあって。

「……驚いたな。 天族が独力で神依を使っているのか。 それも、ノルミン天族が」

 ――独りではない。 私は、誰かさん(わたし)と契約している。

「……! なるほど、お前はどちらかといえば……人を纏っているのだな?」

 ――考察は勝手にしてくれていい。 ただ、私の問いに答えてほしい。

「よかろう。 五大神――否、四聖主が一、火の聖主ムスヒに仕える天族エクセオに、答え()ることならば、だがな」

 ――六聖主が六、ノルミン。 司るモノは――。 即身仏となりて天族へ成った者。 

 

 ――あなたは、私を覚えていますか?

 

 一瞬の静寂。

 

「……すまない。 人であった頃の記憶は無いのだ。 いや、趣味嗜好や大切な物は覚えているが――」

 ――知っている。 けど、知らないのならそれでいい。 

「……ノルミン。 お前たちは、何だ? 何を目指して生きている?」

 ――閉じた輪を破る事。 それじゃ、エクセオ。 ムスヒによろしくね。 今度は叩き起こされない様に――目覚ましでも、かけときなって。

 

 隠蔽の術式を解除して、小さくエクセオに手を振る。

 あ、隠蔽の術式と共に熱気遮断も解いちゃった。

 

 あとぅい。

 

 速く出よう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ、サムサ――」

 ――黙って。

「!?」

 

 まるい腕をミクリオの口に突っ込む。

 そのまま、術を張った事を気付かせないレベルで隠蔽術を発動した。

 

 ――ミクリオ、私の声が聞こえる方に念じるようにして。

 

 ――こ……こうかい? それより口を……。

 

 ――今からあなたを転ばせる。 何もない所で転んだ演技をして。 私をいないものとして。

 

「んん!?」

 

 ――えいっ。 以下省略、トラクタービーム。 ミニ。

 

「うわっ!?」

 

 ミクリオの右脚側面に展開したトラクタービームが彼の足を取り、ミクリオは尻から転倒した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――もういいよ。

「……ふぅ。 なんだったんだ? さっきのは」

 ――監視されていた。 私はまだ見つかるわけにはいかないの。

「……監視? 誰に?」

 ――導師一行を監視するのなんて、限られてるでしょ? ヘルダルフとサイモンだよ。

「……! まさか、ゴドジンを――!?」

 ――やる気があるなら、もうこの地は更地になっていると思う。 単純に様子を見に来ただけだと思うよ。

「一応、スレイ達にも言っておかなきゃだな。 気を引き締めないと……」

 ――うん。

 

 

 

 

 

 

 

《!》サブイベント 『受け継がれる二刀小太刀3』

 

「お、アンタが親父の……。 うんうん、可愛い子じゃねえか!」

「何? いきなり……新手のナンパ?」

「あり? 連絡通りの格好だったからそうだと思ったんだが……違ったのか?」

「だから、何が? ていうかおじさん誰?」

「俺はゴドワン。 このゴドジンで武器屋をしている、伝説の職人サウザンドーンの次男だぜ」

「ああ! 二刀小太刀の! でもごめん、まだ素材手に入ってないんだ。 また今度来るから――」

 ――コレ。

「え? ……なにこれ。 真っ黒い……ううん、鎧の破片……?」

「うぉっ!? 嬢ちゃん、いまどこからそれを取り出し――……」

「ん? おじさーん?」

「……嬢ちゃん、親父と同じ声がするその二刀小太刀と……この破片を、俺にくれねぇか。 一日だ! 一日かけて……こいつを、強化する!」

「ええ? いや、私達ちょっと急いでて――」

「ロゼー! 今日はゴドジンで一晩泊まってから出発するから、そのつもりでー!」

「……なんてタイミングのいい……。 おう! 今日は疲れたろうから、スレイは早く寝なよ!」

「ロゼも、だよ!」

「あー……いい年したおっさんにそんなキラキラした目で見られてもね……。 ま、アンタらの腕は聴いてるし……任せるよ、おっさん!」

「おう! 俺は鍛冶の腕を受け継いだゴドワン! 最高の仕事をしてやるぜ!!」

 

 

 

 二刀小太刀クロガネ+2を取得しました。

 














イグレインBGM『試されし焔の絆』

いい曲ですわぁ……。
椎名曲最高ですわぁ。

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