ベルセリア・ゼスティリア転生(仮題)   作:飯妃旅立

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大分遅れたのに短い上に少し説明不足ですが、伏線みたいなものだと思ってください(伏線とは言ってない)


dai yon jur wa ti ni ueta tachi

 

「……領域!?」

「……違うよスレイ。これは……殺気だ」

 

 緑青林マロリー。

 元の名を、ダヴァール森林。

 一行はこの場所へ来ていた。

 

 既に変異憑魔クジャクオウは浄化した彼等だったが、少し奥へと足を踏み出した途端――気が付いたのだ。

 気を抜けば首が落ちたとでも錯覚するほどの、濃密な殺気に。

 

「これは只者じゃないわね」

「ええ……並居る憑魔ではこれほどの殺気は出せませんわ。 彼の者のように、強い執念が無ければ……」

「……不気味なほどに風が静かだ。 まるで、風そのものが死滅しているような……」

 

 警戒しながら奥へ進む一行。

 憑魔は出現しない。 言葉をも解さなくなった憑魔とは言わば剥き出しの本能であり、欲の権化だ。

 つまりそれだけ、生への渇望も強いと言う事。

 普段であればより強い物を倒し、さらなる高みへ上がる事で生存率を高めんとするその憑魔が、己では太刀打ちできないと判断して近寄ろうとしないのだ。

 

 そして、辿り着く。

 

「……剣?」

 ――太刀だよ。 大太刀。

 

 

 それは地面に刺さるようにして立っていた。

 それは地面に刺さりながらもその長大さを見せつけていた。

 

 それは、血に濡れていた。

 

「サムサラ……もしかしてあれが、目的の素材?」

 ――うん。 二刀小太刀クロガネを強化するための素材。

「やっぱりかー……。 でもアレ、近寄ったらなんかヤバそうじゃね?」

「はい……周囲にこそ撒き散らしてはいませんが、アレはとてつもない穢れの塊。 触れたらロゼさんでも瞬く間に穢れてしまいますわ」

「スレイ、浄化できそうかい?」

「わからない。 だけど……オレにはあれが、此処から出たいって叫んでいるように思えるんだ。 出来るなら浄化して……外に連れて行ってあげたいよ」

 

 呼吸を必要としない身でも、思わず息を飲んだ。

 蠍はしっかりと戻った事を私は確認したし、数百年の妄執もまた戻って行ったのを確認したのに。

 それでもまだ、騒ぎ奉る導師(スレイ)に助けを乞う存在があるのだとすれば――。

 

「! みんな、下がれ!」

「憑魔化する……!?」

 

 その存在は業を蓄積し続けた――業魔と、そう呼ばれる存在だろう。

 

「これは……まさか、刀斬り!?」

「1100年くらい前はたまに見かけたヤツね。 今はめっきり見なくなったけど」

「名の或る刀匠や剣豪もとに現れてはその者達が持つ刀を軒並み斬り折っていくと言われる憑魔です! その剣筋、実力は達人に引けを取りません! 何より、憑魔自身が刀よりも硬いと言われています!」

「剣は弾かれそうだな……みんな! 術で対応してくれ! サムサラも……サムサラ?」

 ――……。

 

 私は動けなかった。

 エドナの傘についたまま真ん丸と目を見開いているフェニックスを見るに、恐らくは私と同じ気持ちであるはずだ。

 

 私は、私達は今……感動しているのだ。

 

「くっ! 『フォエス=メイマ』!」

「『風神招来』!」

「ちょっとミボ! 速くそのノル起こしなさいよ!」

「無茶を言うな! レリーフヒール!」

 

 何度も言う。

 クロガネは確かに戻った。

 この世界に来ていたクロガネの魂は一度は業魔化してこの世に留まったものの、最後には執念を遂げて確実に戻った。

 

 にも拘らず、ここでこうしてスレイ達と闘っている憑魔は――クロガネの身体から出た穢れで、クロガネの姿をしている憑魔には――。

 

 魂がある。

 

「『炎舞繚乱! ブレイズスウォーム!』」

「『竜の裂華』!」

 

 素晴らしい。

 やはり人間は……素晴らしい存在だ。

 ずっと、この輪を断ち切るのは導師の仕事だと思っていた。

 思い込んでいた。

 

 だがまさか……業に宿ろうとは。

 

「『火神招来! 我が剣は緋炎! 紅き業火に悔悟せよ! フランブレイブ!!』」

 ――我が呼びかけに応えよ。 我が力、解放せよ。 灼熱と、業火の意思よ。 焼き尽くせ……フランブレイブ。

 

 神依を行う2人に重なるようにして灼熱の魔人が現れる。

 その剣は、その腕は……確実に刀斬りを捉える。

 

「『千の毒晶』!」

 ――葬送の制裁、蹂躙せしは怒涛の暴風、テンペスト。

 

 暴風が刀斬りを押さえつけ、縫いとめる。

 

 ――スレイ!

「『うぉぉおぉおぉおおおおおおお!!!』」

 

 私が呼び掛けるまでも無く、スレイは駆けだしていた。

 浄化の炎をその剣に宿し、刀斬りを斬らんと。

 

 しかし、刀斬りはそれを受け止めた。

 自らの腕を犠牲に、だがしっかりと止めた。

 

 ――直後、足元の破裂にバランスを崩す。

 

 幻針・土竜。

 名こそ違えど――それは、彼の使っていた弐の型・醒地(だいち)と合一。

 

「『とどめだ』!!」

 

 未だ解除されぬフランブレイブの炎がバランスを崩した刀斬りに襲いかかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「穢れが無くなってから見ると……相当の業物だねコレ。 芸術的価値も高そう」

「アルベイン大陸由来の技術が見えますね……どうしてこんな業物がこんな場所にあったのでしょう」

「なんでもいいけど、目的の物は手に入ったんでしょ? ならとっとと帰りましょ。 ここ、辛気臭いのよ」

「だな。 そいつの殺気が無くなったことで憑魔も集まりつつある……とりあえずは宿に戻るべきだろう」

「ロゼ! ライラ! 帰るよ!」

「おう! ……なんだかよくわかんないけど、お前はしっかり役に立ってもらうよ」

「ロゼさん? 行きますよ?」

「はいはいっと! あれ? ミクリオ、どったの?」

「……まただ。 またサムサラがいないんだ……」

「ほっときなさいミボ。 流石にもう逃げたりはしないでしょ。 心水とツマミでもちらつかせれば戻って来るわよ」

「……予想に難くないな」

「エドナー! ミクリオー! おいてくぞー!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――あぁ。

 

 そうだ。 思い出した。

 この場所は過去……ライフィセットの友達の、リーヴのための……。

 

 世界樹の葉があった場所。

 

 オメガエリクシール。

 なら、あの憑魔は……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《!》サブイベント 『受け継がれる二刀小太刀5』

 

「お嬢ちゃん……こりゃあ……」

「それで足りる? 小太刀の強化」

「……これで足りなきゃ、サウザンドーンの息子の名折れだぜ。 他の街……ローグリン、マーリンド、レディレイクの兄弟たちの所にもいってやってくれよ?」

「はいはい、わかってるって!」

 

 二刀小太刀クロガネ+6を手に入れました。

 













ちょっと忙しいです・・・


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