ベルセリア・ゼスティリア転生(仮題)   作:飯妃旅立

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捏造・独自設定過多です。
私はワーデルさんが好きです。


dai yon jur ichi wa hukisusabu kaze no tou

 

 ――じゃ、頑張って。

「へ?」

 ――イグレインに関しては成り行きだったけれど、本来陪神でも無い天族(わたし)が導師の試練に手を貸すのはおかしいからね。 ついでに言うと、私はここの天響術を使用した仕掛け……特に転送系は効かないから、置いてけぼりになっちゃうんだよ。

「転送系の仕掛け?」

 ――それは入ってみればわかるよ。 私は適当にその辺でぶらぶらしてる。 終わるころを見計らって合流するよ。

「……確かに、これは僕達が秘力を得るための試練、か。 わかった。 スレイ達にも言っておくよ」

 ――応援してる。

 

 

 そんな感じで一行から一時離脱中。

 言った言葉に嘘は無い。 瞳に見られると最初に戻される仕掛けは私には効かないのも事実だし、陪神云々も事実だ。

 ただ、私は水の試練が終わったら合流するとは一言も言っていない。

 試練が終わった頃を見計らって合流するとは言ったけどね。

 

 彼らが私を待ち続ける、という事が無いように、入口辺りに古代語でメモ書きをしておく。

 『全テノ秘力ヲ得タ時、私ハ現レル』、と。

 うん。 ラスボス感が出ていいんじゃないかな。

 

 まぁ行きたくない理由は上に上げたものだけじゃなく……ここには異質なる法(maltran)が居る。 ヘルダルフの手先たる、それ。

 ゴドジン然り、ここ然り……ヘルダルフの目につかない様に行動しているのにはワケがあるのだ。

 それは、1100年をかけた……自らの誓約を欺く仕込み。

 精微さの為に、それそのものを考えないようにする仕込み。

 

 輪に、亀裂を――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ひゅごーっと風が吹き荒れる、高い高い塔の上。

 これほどの高さに会ってもなお黒々しい雲は、しかしその隙間から陽光を覗かせ、幻想的な光景を造り出していた。

 眼下に見える灰色の森はリヒトワーグ石灰林。 元の名をワァーグ樹林と言い、この森が化石化したのは霊力を吸収する花、サレトーマが原因だと思われる。

 

 その奥に見えるのはプリズナーバック湿原。 元の名をノーグ湿原。

 名前が変わった理由は単純で、タイタニアからの廃棄物……溺死、ないしは使われなくなった囚人が流されて漂着した。 監獄(プリズナー)からの帰還者(バック)の湿原というわけだ。 

 奥地に或る、今は滅びたロディーヌという村。

 恐らくは……というより確実にレニードであり、滅びの原因とされた『石の病』は地脈点ゆえの物なのかもしれない。 フォートン三姉妹による石化はあくまで近年の物であり、それを隠れ蓑にした黒水晶化が進んだと考えられなくもないだろう。

 

 更にその隅……異様な力場を放つ、アルトゥス遺跡。

 バクス・メリオダスの眠る、最高峰の技術によって創られた遺跡。

 完全なる左右対称と、呪いを齎さなかった鏡。

 ノルミン・ヴォイド、そして変異憑魔・無。 共に私が感知しづらい存在トップ。 五指に入る。 指無いけど。

 まぁ2100年も前の話だ。 戻ったのは確認しているし、あそこ自体に特に大きな力は無いだろう。

 

「ほう……こんな所にノルミンがいるとは。 初めまして、小さなご婦人(リトル・レディ)?」

 ――久しぶりだね、導師ワーデル……護法天族ワーデル。 私はサムサラって言うんだ。

「おや? 君は生前の私と会った事があったのかな。 それはすまなかったね」

 ――生前の貴方にも、今の貴方にも会った事は無いよ。 

「……? よくわからないが、それは私が知るべき事ではないという事だろう。 サムサラ、君はこの塔をどうして登ってきたんだい?」

 ――トラクタービームで。

「……理由を、聴かせてくれるかな」

 ――高い場所は、時間が遅いからね。 その点ここは、イズチ程じゃないけど……ゆったり世界を眺められる。

「つまり、試練とは関係ないと?」

 ――私は主神でも陪神でもないし、風の天族でもないから。 ただ、この場所は……戻れなかった子が集まる場所。 彼らが秘力を得た後に、少しだけ仕事をさせてもらおうと思って。

「……なるほど。 君は死……それも、死後に纏わる天族だね?」

 ――うん。 フェニックスは不死(しなず)。 サムサラは輪廻(めぐる)。 どちらも同じ願いに生まれた天族だよ。

「私が君と会ったのは、人としての肉を捨てた直後だね?」

 ――当たり。 こういう問答、好き?

「謎を紐解くのは好みかもしれないな。 と……若き導師達が来たようだ。 君の事は黙っていた方がいいかい?」

 ――なるほど。 それは面白いね。

「ははは、君もね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「彼らに付いて行かなくていいのかい?」

 ――ここに縛り付けられている子を解放しないとだから。

「デュラハンは浄化された。 君に浄化の術はあるのかい?」

 ――無い。 けれど、存在そのものを押し潰して……強制的に戻す術なら持っている。

「……なるほど。 君にとって、導師としての想いや数刻前に居た風の天族の誇りさえも、眼中にはない、という事だね」

 ――浄化は良い事だと思う。 浄化されれば、自らの意思で戻ることが出来るから。 割断も良い事だと思う。 魂をジークフリートで引き剥がされれば、その魂は戻ってくるから。

「憑魔化は?」

 ――仕方のない事だと思う。 それはこの世界に根付く仕組み。 世界を根本から崩すか、天界への総攻撃を仕掛けて誓約させ直すなりしないと絶対に紐解けないから。 

「天族の、ドラゴン化は?」

 ――それが本人の、意思ならば。

「……君は存外残酷だね。 いや、平等というべきかな?」

 ――少なくとも私は一個人に肩入れする事が多々あるから、平等では無いよ。 言ってしまえば世界には憑魔が溢れているのに、私は今ここにいるコ達だけを戻そうとしている。 選んで戻しているんだ。

「それは平等じゃないね」

 ――うん。 平等じゃない。

 

 ――デスクラウド。

「……これは」

 

 紡ぐ文字は、プライマル・エルヴン・ロアー。

 原初の物語の最も力のある文字。

 

 発生するのは、ギネヴィアの塔頂を残す全てをすっぽりと覆い隠すほどの……巨大な黒球。 物理法則に適応されないソレは、地形をも貫通して球を描く。

 

 最大まで達したそれは、呆気なささえ感じる様相で萎んでいった。

 

「……即死天響術、だね」

 ――強制回帰術、と言ってほしいかな?

「なるほど……塔の中の憑魔の気配が、消え去りましたね」

 ――消えてない。 戻っただけ。

「ははは……元導師として思う所もあるけれど、なるほどこれは……不平等だ」

 ――ただの剪定だからね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《!》サブイベント 『受け継がれる二刀小太刀6』

 

「聞いたぜ! 俺は拵えの技術を学んだレディファイ! さっそく見せてもらってもいいか?」

「いいけど……おっさん達ほんと似てるねー。 同一人物じゃないかって疑っちゃうくらいだけど、本当に兄弟?」

「親しみを持たれやすいようにわざと似せてるのさ! ……っていうのは冗談で、各町で順当に育ったら何故かそっくりになっちまっただけだぜ!」

「へー……それで、拵えって何するの?」

「基本的には刀の外装だな! 鍔の部分、鞘の部分……この大太刀の外装部分を解体してこっちの二刀小太刀用に作り替えるんだ!」

「なるほどー……ちょっと見てても良い? 手入れする時とか、参考になりそうだし」

「おうよ! 嬢ちゃん、若いのに見る目もある上、結構なお手前だからな! 小太刀も嬉しがってるぜ!」

「っ! ……そういうのも、声で?」

「あぁ。 だが安心しな。 顧客の情報を漏らすなんて事は、商人としても職人としてもあり得ねえ! 俺達は最高の逸品を造るだけさ!」

「んー、じゃあウチ……セキレイの羽を今後ともよろしくぅ! ってね」

「おうよ!」

 

 

 

 二刀小太刀クロガネ+8を手に入れました。

 











マルトランについて。
マルトランさんの綴りは公式でmaltranとされていて、姓は記載されていません。
そのままだとよくわからん名前なんですが、憑魔化やら何やら裏切られて斬られてPON!な人なので、もしやコレGW語なんじゃにーのかと思って無理矢理解読してみました。

mal = sut =方法
tran= 異形な

つまり、異形なる法……憑魔化の事やアリーシャの利用の事かなーというこじつけです。

また、アルトゥス遺跡についてですが、
アルトゥスってのはまぁアーサー王の事でして、しかしながらこの世界既にアーサーが居ますわけで。 アルトリウスさんがしっかりと。
なんで、このアルトゥスってのはどっちかというと演目、及びアーサーの由来となった……もっと前の人物をそう評した場所なのではないかと。
副葬品の鏡から眠っているのは女性。
ヴァックスだと男性名ですが、vacs……バクスだと女性名なので、バクス・メリオダスは女性なのではないかと推察。 
で、まぁこれだけだと弱いので。

アルトゥス遺跡自体は左右対称になっていて、壁画も対称形が数多く使われています。

数万年前:アヴァロストの調律時代の彫刻・遺跡の特徴は
『自然物と人工物の調和』『白色が基調』『天響術を用いて作成(技術的に異様な物が多い)』。
よって、アルトゥス遺跡には当てはまらない(自然物が一切無い、白色が使われていない、天響術の痕跡が少ない)。

2000年前:メリオダス時代は天族の力を借りなかった。 他大陸の文化の影響が混入。 恐らくここでアルベイン流が流れてきたか?

1500~1900年前:クローズド・ダーク。 記録なし。 メリオダスの影響からカノヌシの鎮静化があった?

1400年前:ウェイストランド(グリンウッド)解放時代の遺跡は『僅かながら天族の文化が復興している』
恐らくアルトゥス遺跡が創られたのは(作り終わったのは)ココ。 バクス・メリオダスが王位を引いてから作ったにしては時期が開きすぎている上バクス・メリオダスは災禍の顕主だったらしいので、恐らく鎮静化、他何らかのことがあって(凶暴化?)討伐された後にその遺功をたたえて祀られたか。

1300年前:アスガード時代初期。 この時代の遺跡の特徴は、『華やかで力強く』『過剰な彫刻』『動植物をモチーフ』『おおらかで自由』と、恐らく最も会わない作りをしているので論外。

1200年前:グレイスフル・アスガード(アスガード統一期)の遺跡は、『他大陸の文化の影響が消えた』『実用を重んじた合理的でシンプル』『名を馳せた将軍が憑魔』。
左右対称はシンプルだが、その作りをかんがみるに合理的とは言えなそう。 当てはまらない理由としては薄いが、これは所謂ベルセリア時代近年である事と大規模な地殻変動が起きる中この規模の遺跡を造るのは無理ではないかという観点から外しました。

1100年前:ベルセリア。 恐らくこの時代に造られた遺跡は穢れの坩堝と凱旋草海に刺さってる杭だけ。

此処から後はさらに地殻変動・戦争などが続いているので遺跡は作られていない(ペンドラゴ教会、カムラン除く)かと。

つまるところ、1400年程前のウェイストランド解放、ないしはその以前に造られた遺跡で、祀られた女性はバクス・メリオダスだろう、っていう考察です。

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