ベルセリア・ゼスティリア転生(仮題)   作:飯妃旅立

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いつも通りの捏造設定、独自解釈、独自設定です。
戦闘してます。


dai go jur wa roku dai shin norman

 

 ――や、ペネトレイト。 久しぶり。

 

「あれ、サムサラお姉はんではおまへんですか~。 どうもお久しぶりですな~。 かれこれ7000年ぶりですか? いやー、懐かしおすね~」

 

 ――うん、久しぶり。 早速で悪いんだけど、イグレインに向かってもらえるかな。 フェニックスが、なんかやるんだって。

 

「ありゃま、兄さんが? わかりました~、向かいます~」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――やぁ、シールド。 初めまして。

 

「あれー? どこぞらともなく声が~」

 

 ――フェニックスが呼んでいるから、イグレインに来てほしいんだ。

 

「兄さんが? どなたか知らんやけど、おせてくれておおきに~」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――プリペンド。 ちょっと痩せた?

 

「そりゃあこんな閉ざされた空間にずっといたら痩せますわ~。 そやけども、相変わらず唐突ですね~、サムサラ。 久しぶりです~」

 

 ――ちょっと今代の導師をね、私とフェニックスで力試し、してみたいんだ。 フェニックスは違う理由があるみたいだけど。

 

「おお~、伝説んコンビん再来ですな~。 どこでやるんですか~? 見に行きます~」

 

 ――火の試練神殿イグレイン。 ミケルの家、見守ってたの?

 

「さぁ、どうですやろね~? 忘れてしもたんえ~」

 

 ――そっか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――流石だね、インヴァリド。 この災禍の中、穢れを寄せ付けないなんて。

 

 ――それがうちん得意分野やからね~。 さ、今回はなん用~?

 

 ――話が早くて助かる。 自力でそこから出られるなら、イグレインに向かってほしい。 そこに、フェニックスがいるから。 みんなも向かってる。 一応私達もほら、聖主だからさ。 四象の聖主が力試しをしたんだ。 私達も、試練を与えなきゃ。

 

 ――果たしいやわてたちが聖主である事を知っとるノルミンが、一体幾人おるんやら~? まぁ、いいわ~。 付き合って上げる~。

 

 ――ありがと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 火の試練神殿イグレイン。

 その最深部に沢山のノルミンが集まっている。

 エドナが見つけた呼び出しの手紙に書かれた「指定の場所」スレイ達がに来てみれば、そこにいた沢山のノルミン達も呼び出されたというではないか。

 

 中には数人ほどスレイ達が出会った事の無いノルミン達もいて、ペネトレイト、プリペンド、インヴァリドは素知らぬ顔、シールドは顔は見えなかったとスレイ達に話す。

 結局呼び出したのは誰なんだ? と一行が首をひねっていると、どこからか声が聞こえた。

 

 

 

「盟約の……そして、解放の時は来たれり!!」

 

 

「な、なんだぁ!?」

 

 

 エドナの傘に付けられていた、オレンジ色のノルミンのマスコット。

 それが急に輝き、膨らみ、本物のノルミン天族になったのだ。

 

 そのオレンジ色のノルミンはポーズを取り、名を名乗――、

 

 

「あぁ~、フェニックス兄さんやんか~」

 

「おひさしゅう~。 元気しとったか~?」

 

「そら元気やろ~。 フェニックス兄さんはノルミン最強の漢やし~」

 

「兄さんから元気とったら何も残らんしな~」

 

 

「我が名はフェニックス! ノルミン天族最強の(おとこ)なり!!」

 

 

「全部先に言われてるけど」

 

 ロゼの鋭い(?)ツッコミに項垂れるノルミン・フェニックス。

 しかしスレイの「俺達を呼び出したのはフェニックスなのか?」という問いに気を取り戻し、静かに語り始めた。

 

 

「そうだ……我はマスコットに身を窶し、密かに汝らの力を測ってきた……」

 

「気付いてたけど」

 

「実はウチもやねん。 フツーにバレバレやんか~」

 

 

 静かな語りはエドナとアタックに阻止される。

 さらには、

 

「せやけど、言うたら兄さんの立場ないやんか~」

 

「せやな~、兄さん、形から入るお人やし~?」

 

 

 同胞であるはずのノルミン達に滅多刺しにされる。

 余りに可哀想だ。

 それを見兼ねた……のかはわからないが、先程素知らぬ顔をしていた3人、ペネトレイト、プリペンド、インヴァリドが口々に話し出す。

 

 

「それに、姐はんから聞いとったしなぁ~」

 

「姐はんが、フェニックス兄さんがイグレインにやはるから向かっておくれやすって~」

 

「かな伝説んコンビを再結成しはるなんて聞おいやしたら、居ても経ってもいられおへんどしたよ~」

 

「伝説のコンビ?」

 

「姐さんって……まさか」

 

 

 その「事情を知るらしい3人」の言葉の端々に出てきた単語に反応するロゼとミクリオ。

 彼らの脳内に浮かぶのは、”ノルミン天族最強の漢”などという称号を持つノルミンに比肩しうる、コンビとなり得る女性の姿だ。彼らの知り合いに、まるで照らし合わせたかのように、この熱血漢と正反対の性格や体色をしているノルミン女性が1人。

 

 

「ええい、もういい! かくなるは……今こそ、伝説の再来の時!! 我がノルミン天族最強の漢なら、此奴はノルミン天族最強の漢女(おんな)なり!!」

 

 

 構えを取りながら距離を取ったフェニックスが、イグレインの天井へ向けて手をかざす。

 そして、叫んだ。

 

 

「出でよサムサラ! 我が半身よ!!」

 

 

 ――テンション高すぎだよ、私の半身。 あとその当て字だとオトメにみえるからやめて。 私、そういうのじゃないから。

 

 

 イグレインの天井から、1人のノルミン天族の女性がゆったりと降りてくる。

 青紫の身体に、海賊帽がトレードマークのノルミン。

 サムサラだ。

 

 

「……今こそ、鳳凰星座の(フェニックス)――」

 

 

 ――だからやめてってば。 黒歴史だって言ってるじゃん。 スレイ達の前に、フェニックスを落とすよ?

 

 

「――の、名に懸けて!! 導師よ、貴様が’渡す’に値するかどうか、確かめさせてもらおう!!」

 

 

 どこからともなくピュィィィイイイイ! と鳥の鳴き声がする。 

 同時に、コポコポコポ……という水泡の音も鳴り響いた。

 

 

 ――スレイ。 ノルミン(わたしたち)は、アメノチ、ムスヒ、ハヤヒノ、ウマシア、そしてマオテラス達五大神と同じ、神の1つ。 ノルミン総体で1つの神。 故に今から行うのは、ノルミンという聖主(・・)からの試練だと思いなさい。 他者の力を引き出すことに長けた凡霊(ノルミン)。 その中で、私達が持つ力を見極めて。

 

 

「……わかった。 サムサラ、そしてフェニックス!! 何を渡すのかはわからないけど、今のオレ達の全力をぶつけさせてもらう! 2人を倒せない程度じゃ、ヘルダルフも倒せるわけがないしな!」

 

「いいねェ、そうこなくっちゃな! スレイ、気を付けろよ? 相手はあのサムサラが相棒として認めるノルミンだ、弱いはずがねぇ!」

 

「とにかく全力でボコるわよ」

 

「サムサラは術の発生の兆候が無い! 常に動きに気を付けるんだ!」

 

「じゃあライラ! カンだけど、あっちの黄色いのは火属性効かなそうだから……サムサラは私とライラで!」

 

「はい、ロゼさん!」

 

 

 火の試練神殿・イグレイン。

 ここで、火の試練とは一切の、全くの、なんら関係の無い試練が今、始まった。

 裏で余波を考える度に頭を抱える護法天族が居たことなど、誰も知らぬ事である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うおおお! 天滝破!」

 

「出でよ、絡み舞う荘厳なる水蛇! アクアサーペント!」

 

「ふん!」

 

 

 その見た目から火を扱うと判断したスレイとミクリオが、水属性で攻める。 スレイは逆巻く水流を、ミクリオは絡み合う水の蛇を撃ち出した。

 だが、フェニックスはそれを飛びあがることで避ける。 さらには巨大化し、スレイの上に落ちてきた。

 

 

「うわっ!?」

 

偽善(フラッター)! 油断すんなよ、スレイ! 速い上に攻撃力がたけぇ!」

 

「た、助かった!」

 

 

 寸前にザビーダがペンデュラムをスレイに巻き付けて引っ張ることで、フェニックスのストンピングを回避する。 見た目はプニプニしていそうなのに、その衝撃でイグレイン全体が揺れた事から威力はお察しだ。

 

 

「瞬迅剣! ここだぁ!」

 

 

 スレイの高速の踏み込みから突きが放たれる。 それは確かにフェニックスにヒットしたが、意にも介さぬ様子でフェニックスは儀礼剣を拳でそらし、連続の拳をスレイにお見舞いする。

 

 

「ぬぅん!」

 

「辛苦潰える、見紛うは現世……ハートレスサークル!」

 

「ぐ! 悪い、助かったエドナ!」

 

 

 すかさずエドナによる回復が入ったものの、先程の百連撃を何度も喰らうのは不味いと直感するスレイ。 こちらの攻撃に臆すことなく踏み込んでくる上で、最強の名に相応しい攻撃力を持つのだ。 理性の無い憑魔というわけでもないのに、である。

 

 

「どうした、その程度か! 喝っ!」

 

「うォ!? っとと、チッ! 確かにコレと比べられちゃあ、認められないのも納得ってぇモンだぜ……」

 

 

 近づき、攻撃を加えようとしたザビーダを吹き飛ばすフェニックス。

 空中で姿勢を立て直したザビーダは独り言ちる。 こんな相棒がいたのでは、アイツに認められるのは至難の業であると。

 

 

 ――解き放たれし不穏なる異界の力、目の前に邪悪の裁きを。 ヴァイオレットペイン。

 

 

 瞬間、イグレインの床に深い黒紫の円が現れる。 そこからゆったりと’黒い流体’が現れ、範囲内にいたスレイ、ミクリオ、そしてフェニックスに襲い掛かった。

 

 

「うあっ!?」

 

「これは、サムサラか!」

 

「ぬおぁー!?」

 

 

 発生兆候の無い術の行使。

 喋ることができない、を逆手に取ったサムサラの戦法は、敵に周ると果てしなく厄介だ。 欠点であるはずの機動力は、トラクタービームによって自身を上に打ち上げながら攻撃すると言う方法で補われていた。

 

 

「だが、こりゃあラッキーなんじゃねぇか? 上手くサムサラの術を野郎にぶつけていけば、確実に力を削り取れるってこった!」

 

「ハートレスサークル! その前に、誘導役が倒れないって前提が必要よ」

 

「そこはエドナちゃん、回復任せたぜ!」

 

 

 エドナに全幅の信頼を置いて駆けだすザビーダ。 先程のヴァイオレットペインに晒された2人にハートレスサークルを掛け、戦局に集中する。 回復術はどちらかといえばミクリオの仕事なのだが、接近戦という点ではエドナはミクリオに劣る。 故の判断だ。

 

 

「『剥ぐは炎弾!』」

 

 一方こちらはライラとロゼ。

 手数で攻めようとしたロゼだったが、サムサラが宙へ逃げた事を受けてライラと神依を行い、遠距離攻撃で詰めようとしている。

 今も炎弾を生み出し、絶妙なコントロールで落ちては上がるを繰り返すサムサラにソレを直撃させるが、

 

 ――大地、魂に無上なる祝福を与えたまえ。 ソウルオブアース。

 

 瞬く間に回復されてしまった。

 今までの旅でわかっていた。 サムサラの真価は術の兆候が見えない事だけではないのだ。

 この、驚異的な回復術。 一行もその恩恵に与かったことがあるのだが、回復量が異常なのだ。 一度の術の行使で万全の状態に戻るなど、敵に回すにあたって面倒な事この上ない。

 

 

「『あぁ、もう! 上にいるからスレイ達の動きも読まれちゃうし、なんとかならないの!?』」

 

(ロゼさん、落ち着いて。 如何にサムサラさんが強力なノルミン天族だとしても、永遠に尽きぬ力を持っているわけではないはずです。 慎重に、しかし確実に削って行きましょう)

 

「『だといいけど!』」

 

 

 もう一度炎弾を撃つロゼ。

 ロゼには懸念があった。 即ち、「本当にサムサラは霊力が尽きるのか?」というもの。

 以前スレイとサムサラが穢れの坩堝に入った時、確かにサムサラは気絶して出てきた。 その時症状を診断したライラが、「霊力切れ……に、似た症状ですわね。 霊力は有り余っていますから、霊力切れそのものではないようですが……」と言っていた事を覚えていたのだ。

 

 あのノルミン天族・フェニックスはサムサラの事を「半身」と呼んだ。

 「相棒」や「兄妹」ではなく、「半身」。

 それはつまり、サムサラもフェニックスと「同じ」能力をもっているということにならないだろうか。

 

 それは今、ザビーダとスレイの神依による秘奥義『シルフィスフィア』の直撃を喰らったにも関わらず、直撃を貰う直前よりも傷の無い――戦い始めた時と同じ状態で再び地に降り立ったフェニックスと、同様の力を持っているという事に、なるのではないだろうか。

 

 

「『だからどうした、って話だけど、さ!』」

 

 

 ――死の顎門(あぎと)、全てを喰らいて闇へと返さん。 ブラッディハウリング。

 

 またも大円。 今度は、ロゼとエドナ、フェニックスが効果範囲内だ。

 神依を行っているロゼはともかく、エドナに自衛の手段は無い。

 

 

 

「『瞬転流身! ゲイルファントム!』」

 

 

 

 そのエドナ目掛けて真空刃が飛ぶ。 それに触れたエドナとスレイの位置が、入れ替わった。 風の天響術の中でもとりわけ原理の解らない術である。

 

 

「『くぅ!』」

 

「『ぐあっ!!』」

 

 

 冥府の門から放たれる獣の叫びに硬直する2人(+2人)。

 その背を目掛け、ブラッディハウリングの効果中にも関わらず動き出す漢が1人。

 言うまでも無く、フェニックスだ。

 

 

「我が栄光の軌跡、見切れまい!」

 

 その小さな体躯で回し蹴りを行い、煌く光弾を拳と共に放ち、

 

「我こそが天翔オオオッ!!」

 

 巨大化し、その身体に炎を纏ってスレイ達を吹き飛ばした。

 

 

 

「くそがっ」

 

「う、ぐ……」

 

「ちょっとヤバイね……」

 

「力、至らずです……」

 

 

 その威力に溜まらず神依を解除し、膝を突くスレイとロゼ。

 流石に神を名乗るだけはあると、スレイは1人気合を入れ直す。

 

 

「『ルズローシヴ=レレイ!』」

 

「エドナ、回復お願い! 私はなんとか1人でやってみるよ!」

 

「言われなくてもやってるわよ!」

 

 それはスレイだけではない。

 ロゼも、そして生かされたエドナも諦める事無く、すぐに次の行動に移る。

 

 

 ――そうこなくてはな! だがサムサラよ、昔のようにもっと盛大に術を使え! 奴らは本気で我らを倒そうとしているのだ、貴様が本気で無くてどうするというのだ!

 

 ――珍しい。 フェニックスと意見が合うなんて。 フェニックスこそ、なんで技を制限しているの? ベルベットたちの時はもっといろいろ使ってたでしょ?

 

 ――未だ友との盟約は続いているが故に。

 

 

 ロゼと神依化したスレイに応戦するフェニックスとは対照的に、まるでエドナの回復を待ってあげるとでも言いたげに動かないサムサラ。

 それは油断や慢心ではなく、誰かとの交信中(しゃべっているあいだ)は詠唱が出来ないという、知る者の少ない欠点による結果でしかないのだが、当たり前の様にエドナ達は「舐められている」と受け取った。

 

 

「サンキュな、エドナちゃん。 そんで……あんまり舐めてくれンなよ、サムサラサンよ!」

 

 

 ジャラッ! と鋭い音とともに伸ばされたペンデュラムが浮いているサムサラの身体に巻きつく。 引き戻していては反撃されると考えたザビーダは、ペンデュラムごとサムサラを地面に叩きつけた。

 そのままにしておけば確実に回復術を使われるだろう。 故に、ライラとザビーダの回復を終えたエドナが、

 

 

「氷海凍てる果て行くは奈落、インブレイスエンド!」

 

 

 堕ちたサムサラを氷漬けにする。 無論サムサラのソレは口を動かしているわけではないので凍りついたままでも使えるが、動きは確実に止めた。

 

 

「ロゼさん、今です!!」

 

「オッケー! 『フォエス=メイマ!!』」

 

 

 その氷山へ向けて、フェニックスと闘っていたはずのロゼが踵を返し、ライラと神依を行う。その勢いのまま、

 

 

「『火神招来! 我が剣は緋炎! 紅き業火に悔悟せよ! フランブレイブ!!』」

 

 凍りついたサムサラを、焔纏う剣が砕き斬った。

 

 

 

 

 その瞬間ロゼは、サムサラと目があった事実に恐怖を覚えた。

 

 どこからか、コポコポという水泡の上がる音が聞こえる。

 

 剣を振り抜き、振り向いたロゼの視界。

 その氷山に埋まっていたはずのサムサラの姿は、どこにもない。

 

 

 

 ――元始にて万物の生たる燐光。 汝が力、我に示せ! 轟け! ビッグバン!

 

 

 

 直後、視界が――いや、イグレインの内部が全て”白”に染まる。

 フェニックスの攻撃を見極めながらその体力を削っていたスレイとミクリオも、そのフェニックスも。

 連携によってサムサラを仕留めたはずだったザビーダもエドナもロゼとライラも。

 そして頭を抱えながらも戦闘をヒヤヒヤしながら見つめていたどこぞの護法天族や、観戦に来たノルミン天族達も、全て。

 

 全てが、それに飲み込まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――……終わりか。

 

「ふん、我らに奥義を出させた事は褒めよう。 だが、その程度では、」

 

 

 一応イグレインに保護を掛けた上で放たれた、サムサラが今まで放ってきた中でもトップクラスのビッグバン。 巻き込まれたフェニックスは当然のように一度体力を消し飛ばされるも、不死鳥の力で蘇っていた。

 光の収まっていくイグレインの最奥部。

 倒れている、四象の天族達。 目を回すノルミン天族達。

 

 短剣を構えたまま、立っているロゼ。

 

 

「――む?」

 

「七星天昇……、集気法ォォオ!」

 

 ――驚いた。

 

 

 そのロゼの背後で、地面に手を叩きつけた導師が僅かばかり――だが、立ち上がれる量の体力を回復する。

 ロゼがふらりと倒れ、スレイは駆けだす。

 

 

「仲間を盾にするか! それは我らに勝つためか? それでは渡すことなど到底――」

 

「盾になんか、してない! サムサラ、答えはこうだ!」

 

 

 ふらりと倒れたロゼ。

 その手に持つのは、直前に強化していた真刀・黒鋼ではなく――ただの、アンフィダガー。

 前のめりに倒れるロゼは、しかし寸前で目を見開き、駆けだす。

 アンフィダガーの基本スキルは、リリーブだ。

 

 

「終わらせる!」

 

「ぬぅ!?」

 

 

 そしてスレイの持つ剣は、ミスリルソード。

 

 二手に分かれたスレイがフェニックスを斬り付け、

 

 

「斬り抜ける!」

 

 

 イグレインの壁を蹴ったロゼがサムサラを斬り落とす。

 

 

「合わせるぞ!」

「オッケー!」

 

 

 さらに追撃。 既に答えは出ている。 ならば、迷う事はない。

 

 そのままジグザグに2人纏めて斬りつけていくスレイとロゼ。

 

 

「「駆け抜ける!」」

 

 

「そうだ、それでこそ……それでこそだ!」

 

 ――そう。 私達に最も効くのは、それ。

 

 

 斬り抜け、駆け抜けた先に切っ先を向ける。

 向う先にいるのは2つのカタチ。 人間の願いによって生まれたノルミンの、一番最初のカタチ。

 

 

「「万感の想い……放たん!」」

 

「それでこそ! 人間だ!」

 ――それでこそ、人間。

 

「「アルティメットエレメンツ!!」」

 

 

 その2つに、想いによって象られた光弾が、突き刺さった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……認めよう。 エドナを託すに値する漢だと」

 

「エドナを?」

 

「やっぱり、そうだったのね」

 

「そっか……フェニックスって、エドナのお兄さんが遺した形見」

 

「アイゼンに頼まれて、エドナを守っていたのか。 その能力(ちから)で」

 

「……ドラゴン化した、アイゼンからも」

 

 

 当然のように起き上がったフェニックスと再出現したサムサラだったが、素直に負けを認めた。 フェニックスにはその力と想いを見せつけ、サムサラへは答えを叩きつけたからだ。

 

 

「……もはや、語ることはなし」

 

「漢じゃねぇか」

 

 

 その手段はともかくとして、フェニックスのソレがなければエドナが早々に憑魔化していたのは事実だ。 あの霊峰レイフォルクは既に並みの天族では長時間いるだけでも憑魔化するほどの穢れに満ちており、その中でエドナが清浄でいられた最も大きな要因である。

 

 

「エドナさんをスレイさんに託した今、フェニックスさんはこれからどうされるのですか?」

 

「知れたことを……我は独立闘争を再開する! ……と、言いたいところだったのだがな」

 

 

 またも気炎を揺らめかせ始めたフェニックスにツッコミを入れようとしていた周囲のノルミン達が停止する。 そのノリで来る事はわかっていたために、肩透かしを食らった気分だった。

 フェニックスはチラりとサムサラを見る。

 

 

「我もサムサラも、元を辿れば同一の願いによって生まれ出でたノルミン。 もしこの戦いで汝らが『死にたくない』だの『まだやることがある』だのとほざく様では独立闘争も考えたが……」

 

 ――いいよ。 言っても。

 

「汝らは『今を生きる』事を選んだ。 我らに頼らぬというのならば、独立もなにもないだろう」

 

 

 その言葉に、ペネトレイトやプリペンド、インヴァリドが頷く。

 この3人に共通することは、生まれ出でてから一度も死んでいない、という事だ。

 つまり諸島生まれのノルミンである。

 

 

「……なんか、ノルミンってあたしらが考えてるよりずっと複雑な生態してんだね」

 

「そう? ノルはノルよ。 どうせ、何も考えてないわ」

 

「……ねぇ、サムサラ」

 

 

 スレイが問いかける。

 

 

 ――何、スレイ。

 

「もし……さ。 俺達が、オレ達以外の所に何も願わなくなったら……ノルミンは消えちゃうのかな」

 

 

 それは、スレイが導き出した答えによる想像。

 それが如何に難しいかなどは重々承知だが、聞かざるを得なかった。

 

 

「もし俺達が、無欲になったら――」

 

 ――逆だよ、スレイ。

 

「え? どういうこと?」

 

 ――私達の生まれは確かに「願い」。 そこは合っている。

 

 ――けれど、私達の死は「願いが無くなること」ではない。 それは、逆。

 

 ――私達が死ぬ事で、「人間の願いが無くなる」んだよ。 

 

「……それって」

 

 ――けれど同時に、人間が「願う」度にノルミンは生まれる。 私達とあなた達は常に表裏一体。 だから、ノルミンを無碍に使っちゃあダメだよ? 

 

「む、無碍になんてしないよ! って、あぁ。 だからノルミン天族はオレ達に力を貸してくれている、のか?」

 

 ――そう。 大半の子は無意識だろうけどね。 私達にとっても、あなた達は生命線なんだよ。

 

「……そっか」

 

 

 

「スレイ。 そろそろ何を話しているのか教えてくれないか。 サムサラとの会話が僕達に聞こえないなんて、分かりきっている事だろう?」

 

 

 何か納得したらしいスレイにミクリオが問いかける。

 しかし、スレイは「後で話すよ」と言って話を切ってしまった。

 

 ザビーダは「どうせ小難しい話でもしたんだろうなァ」と文字通りどこ吹く風。 エドナもあまり興味が無いようで、ライラに至っては恐らく知っているだろう話だ。

 ここで自分だけがせがむのも格好が悪いと、ミクリオは我慢した。

 

 

「サムサラが汝らに力を貸しているとなれば、我も地の主に従い、汝らに力を貸そう。 今まで通り付いていくことはないが、我が不死の力、必ずや汝らの翼となるであろう!」

 

「おう、ありがとな、フェニックス!」

 

 

 話が纏まった。

 さぁ、事も終わりだ。

 帰ろうか、という所で。

 

 

 

 エドナがポツりと呟いた。

 

 

 

「……そういえば、結局サムサラの能力(スキル)はなんなの? 何故サムサラだけ、力を貸そうとしないのよ。 半身さえもが力を貸すって言ってるのに」

 

 ……。

 ……。

 

 

 ――誘惑の罠張り巡らせ、我が懐中へ! トラクタービーム!

 

 

「あぁ! 逃げた!」

 

「しかも出力最大にしてやがンな……ありゃ追いつけねェ」

 

「そこんとこどうなの? サムサラの半身とか言ってたけど、フェニックスはなんか知ってるんじゃないの?」

 

「……多分だけど、サムサラの能力は俺達には意味が無いんじゃないかな……。 もっと言うと、’今の’オレ達には。 違う? フェニックス」

 

「その通りだ、導師。 今の汝らにサムサラの加護を与えた所で、何も起きん。 サムサラの真価は死むがもご」

 

「へーへー、本人んへん所でそんな事バラすんやめような~、フェニックス兄さん~」

 

「ま~た怒られて黒水晶漬けにされへんんかなんでしょ~?」

 

「アレ、見えなくなっても罠みたいに効果残り続けるから怖いんです~。 自重しておくれやす~」

 

「むがもごもがむぐ」

 

 口を塞がれ、ペネトレイト、プリペンド、インヴァリドに運ばれていくフェニックス。

 ちなみに彼らもそのまま地の主に従ってくれるとのことで、晴れて(図らずとも)スレイ達はサムサラを除く50人のノルミン天族を集めた事になった。

 

 

 その後も、事情を知っているらしい3人にいくら聞いても情報が出てくることは無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――傷付けてないから、許して?

 

「……」

 

 そんな会話が、イグレインのどこかであったとか、無かったとか。

 











石碑全然見てないのになんでフレンドリンク使えるねん、とか
どうやってインヴァリドとかプリペンドあっこから出てきたねん、とか


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