ベルセリア・ゼスティリア転生(仮題)   作:飯妃旅立

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PS4のアプデ時間の合間に執筆
全編スキットです。


独自設定・捏造設定のほか、

オリ設定があります。お気を付け下さい。

さらに、少し猟奇的というかグロテスクな表現もあります。
お気を付け下さい。


dai go jur ni wa futatsu ga umareta sono Re you

 

 ――そっか。 フォートン三姉妹の長女と次女は、何か言っていた?

「ううん。 今までの記憶もほぼ無くしているみたいで……。 だけど、サムサラのくれたお酒を渡したら、涙を流して……大事そうに抱きしめてたよ」

 ――……ならよかった。 

「アレは……フォートン枢機卿の領域に降り注いでいた雨、だよな?」

 ――うん。 あれは彼女の涙でもあるからね。 本当は清酒(すみざけ)が良かったんだけど、この世界……というかこの大陸にはないから、代用。

「エドナのお兄さん……アイゼンのお墓の前でザビーダと飲んでたのも、それ?」

 ――あっちは純心水っていう、昔の仲間達との思い出のお酒だね。 スレイに渡したあれは弔い酒だけど、こっちは祝い酒になるのかな。 無事に戻ってきた事と、新しい船出を兼ねて。

「――……アイゼンと話したの?」

 ――うん。 誓約も流儀もかなぐり捨ててアイゼンをアイゼンのまま転生させようとしたら、ぶっきらぼうに断られちゃった。 余計な世話だ、だって。 勿体無いよね。 私が一個人に対してこれほど親身になってあげる事なんか過去何万年を通しても無かったのにさ。

「……寂しいの?」

 ――寂しかったら、良かったんだけどね。 生憎現世(こっち)にいる時はそういう感情は湧いてこなくて……。 ま、笑って行ったから……嬉しいかも。 最近の戻ってくる子達はみんな嘆いたり悔んだりして散らばることが多かったから、あれだけ満足した声でお礼を言われたのは……久しぶりだったから。

「はは、今日は結構答えてくれるな。 サムサラ、いつもはぐらかしたり誤魔化したりばかりだから、オレも嬉しいよ」

 ――もう、大丈夫。 誤魔化す意味も、はぐらかす意味も無くなったから……聞きたい事、なんでも答えて上げるよ。

「……はは……それは、俺達を気遣って?」

 ――もしかしたら、それもあるのかもしれない。 けどこれは、役割(ロール)の問題。 ゼンライの代わりに、私が答える。 

「……サムサラは、一度会った事がある存在と交信が出来て……その所在地がわかるんだったよね」

 ――そうだね。 

「……ジイジの手紙。 読んだよ。 ……サムサラの態度は、そう言う事……なのかな」

 ――希望が無いわけじゃあないんだ、スレイ。 そのために私は1100年前、とある仕込みをしたのだから。

「仕込み……?」

 ――1つは、ジークフリート……魂剥の銃の構造を時の導師一派に解析させなかった事。 今の時代まで伝わっているジークフリートの術式は、スレイが持っているソレにしか込められていない。 故に、ヘルダルフはその術式の詳細を知ることが出来ていない。 同時に、彼の神依も完全ではない。

「……」

 

 ――そしてもう1つは、サムサラ(わたし)という存在。 本来私の身体は地の奥底で眠りに就き、戻ってくる魂たちを清浄にするというだけの世界の機構(システム)に過ぎなかった。 けれどサムサラ(わたし)誰かさん(わたし)を迎え入れた事で、こうして出会うはずの無いあなた達と接している。 だから私はヘルダルフやサイモンたちから己をひた隠しにしてきた。 決戦の地で、文字通りのイレギュラーとなるために。

「サムサラはシステムなんかじゃ」

 ――フェニックスを見たでしょう。 私とフェニックスは真実対照的。 フェニックスは活動家で行動力があり生命力に満ち溢れる存在。 私は不動にして不変にして死の影を帯びる存在。 彼が動き回れば動き回る程、私はじっとして眠りに就いているのが”本来の姿”だった。 世界のシステムだった。

「それでも……サムサラは、オレ達の仲間だよ。 システムなんかじゃあない。 1人の女性だ」

 ――ふふ、ありがとう。 でも、そんなシステムでしかなかった私はとある男に出会って、海賊に出会って、業魔や喰魔、聖隷や天族や導師に出会って……ようやく最近、誰かさん(わたし)が言っていた’情’という物を理解できるようになった。 人間を群体としてではなく、個として捉えられるようになったのよ。 これは凄い進化で進歩。

「……」

 ――だからね、スレイ。 サムサラ(わたし)も、誰かさん(わたし)も……昔の仲間である彼女たちと、今の仲間であるあなた達のためにこの命を燃やし尽くす事に迷いはないわ。 誰かさん(このこ)のためにも、ね。

「……こうやって、ちゃんと話すのは初めて……だよな。 君がサムサラ、なんだね」

 ――ええ、そうよ。 誰かさん(このこ)はあくまで代理。 輪廻のノルミンとは、私の事を指すわ。 よくわかったわね? 

「はは……。 きっかけはこの前、フェニックスとサムサラを倒した時。 サムサラはザビーダのペンデュラムで雁字搦めにされて、エドナの氷で固められて、ライラとロゼの炎剣で斬られたのに……どこからともなく(・・・・・・・・)現れた(・・・)よね。 オレ、最初はサイモンの使う幻術に似た物じゃないかと思って、領域を広げる感覚で探ってみたんだ。そしたら……」

 ――ふふ。

「……あの時サムサラは、2人いた。 幻術によって創られたソレじゃあなくて……オレがいつも感じている『サムサラ』が、元々重なっていた部分が一枚一枚になったみたいに。 そしてその時、サムサラの帽子は無かった」

 ――凄いわ……そこまでわかったのね。 帽子の方はそれこそ幻術で隠していたのに、バレちゃうなんて思わなかった。 中身は見たかしら?

 

「――――――……ちゃんと見たわけじゃないけど……多分あれは、小さい子の手の骨……だったと、思う」

 

 ――半分正解よ。 正確に言えば、アレは誰かさん(あのこ)の’身体になるはずだったモノ’。 といっても人間のモノかと問われれば微妙な所ね。 指は3本しかないし、手首から先もないから。 ただ、サムサラ(わたし)という存在が生まれた時……即ち”初めの人間”が未練(ねがい)を持った時、すぐそばにあったものだから……少なくともルーツは人間なんじゃない?

「アレがサムサラの器なんだね。 あの骨に君が宿って、君とサムサラは常に神依をしてる。 あの時最後に現れてビッグバンを使った方が……君だ。 神依を解いて、俺達に攻撃した……違う?」

 ――90点。 私達が行っているのは神依じゃなくて、降神術……神依は天族を人間に降ろす術だけど、降神術は人間を天族に落とし込む術。 あの子の魂は狭間から引っ張ってきているから、死して自身を認識でき得る存在……即ち霊力を持つ存在となら、その魂を通じて交信が出来る、という仕組みね。 

 

「……オレ達がいつも話しているサムサラは、誰……なのかな」

 ――さぁ? 私だってあの子の事については……私より幼くて、お酒とおつまみが大好きで、未来を知っている。 それくらいしか知らないもの。 本人も知らないんじゃないかしら。

「……そっか。 あれ……何の話をしてたんだっけ?」

 ――ゼンライの話よ。 いいえ、ヘルダルフの話かしら。

「……一つだけ、いいかな」

 ――ええ。

「オレは……オレ達は、例えジイジに何があったとしても……もう起きてしまっているとしても、サムサラに犠牲になれとは言わない。 オレ達がいつも話しているサムサラにも、君にも、だよ」

 ――酷いのね。 折角死に場所を見つけたっていうのに、死なせてくれないの?

「やっぱり、そういうつもりだったんだな。 多分だけど……全てをサムサラに任せて、君は消えるつもりだった。 違う、かな」

 ――満点よ、導師スレイ。 基本的に私はダウナーなのよ。 私みたいなのをネコ系と呼ぶようになるくらいには、ダウナーで面倒くさがりなの。 魂のお掃除だって、面倒と言えば面倒だし……もう持って行ってくれる人間もいないわ。 移動の為に筋肉を使うのも、術を使うのも面倒。 だから、曲がりなりにも史実(みらい)を変えようと行動できるあの子にこの身を明け渡した方が楽でしょう?

「今のままじゃダメなのかな。 今だって、サムサラが君の身体を動かしてるだろ?」

 ――別に構わないわ。 けれど、消えたがっていて且つ使える魂があるのなら、使った方が効率良いじゃない。 魂の剥離にお仲間のソレを使うくらいなら、私のを使った方が心情的にも楽じゃないの? っていう話よ。 この子に影響はないのだし。

「……ごめん。 それは、オレが嫌だから……」

 ――馬鹿な子。 ライフィ……マオテラスと神依を行って感覚を閉じる、って考えも相当馬鹿だけど……わざわざ茨の道を選ぶなんて、やっぱり理解しがたいわ。

「はは……けど、これがオレだから」

 ――……馬鹿だけど、素敵な子ね。 ふふ、そんなあなたにサービス。 さっき言った事、嘘じゃないのよ。 聞きたい事があったらなんでも聞いて。 全部答えてあげるわ。 あの子が覚えていないような大昔の事も、ね。

「……それは魅力的だけど、遠慮しておくよ。 ミクリオと約束してるからさ……オレが目覚めたら、一緒に世界を回るって」

 ――……良い笑顔ね。 悲しい程、良い笑顔。 そういえばベルベットも笑っていたわね……。 結局永遠に戻らない存在になってしまったけれど……。

「ベルベット? って……サムサラとかザビーダの話にちょくちょく出てくるような」

 ――1100年前の、災禍の顕主の名前よ。 20にも満たない女の子だったわ。

「オレと同い年か、ちょっと上くらいか……。 その子がザビーダとサムサラの昔の仲間、だったんだよね」

 ――他にもいっぱい居たけどねぇ。 私は直接話す事はほぼなかったけれど……首輪を付けた天族、人斬り憑魔、吟遊詩人、従士擬き、そして海賊。 トカゲの憑魔や首なし鎧の憑魔、植物憑魔や蛇女の憑魔……バラエティー豊かだったわ。 一国の王子殿下もいたし、ね。

「……なんだろ、言葉が出ないや」

 ――でも、そうね……’情’を理解した今ならわかるけど……あの時は確かに、私も”楽しかった”のかもしれないわ。 今の気持ちと、あの頃の気持ちは酷似しているもの。

「……そっか」

 

 ――そろそろ、行くのかしら?

「うん。 正直、今でも心の整理はついてないけど……立ち止まってはいられないから」

 ――そ。 じゃあ、私も眠るわ。 あの子によろしくね。

「……うん。 おやすみ、サムサラ」

 

 ――おはよう、スレイ。

「おはよう、サムサラ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よォ、フェニックス。 ちぃっとばかし聞きたい事があるんだが……いいか?」

「我に問う事? ふん、問う事があるのならばまず! 己が内に問いかけて見よ! さすれば答えは己ずと――」

「アンタとサムサラの事だ。 正確には、アンタとサムサラとアイツ(・・・)の事を、聞きてェ」

「……聞いてどうする。 聞いたところで、汝に何が出来る」

「なンもできねェな。 だがよ、一応1000年はアイツと一緒にいたってのに、アイツは何も話しちゃくれねェ。 だったら一番アイツを知ってるアンタに聞くしかないだろ?」

「答え得る質問と、答え兼ねる質問があるだろう。 それでも良しとするならば、エドナと……そして我が盟友に免じて答えてやろう」

「恩に着るぜ。 まず1つ目だが……アイツはこのままで大丈夫なのか? 全部を知ったワケじゃねぇが、語り草からして相当な無理をしてるって事は、俺でもわかるぜ」

「それについて我は答えを持ち合せておらん。 我も我が半身も同じ場所で生まれ、その時既に彼女はいた。 とはいえ、彼女と我が半身の繋がりが強固である事はわかる。 故に多少の事でその繋がりが千切れる事はないだろう」

「……同じ場所で生まれた、ってのは……アイゼンとエドナの関係とはまた違うのか?」

「違うな。 エドナと我が盟友は同じ地脈点から生まれ、その魂の形質や性質が似通っているという意味での兄妹。 我と我が半身は全く同時に生まれた、元は一つの願いの片割れ同士だ」

「あぁ、そりゃどっかで聞いた事あンな」

「どちらも死にたくない、という願いから生まれたノルミン。 だが、願った者が違った。 全く同時でありながら、な」

「要領を得ねェな。 アンタらは初めの人間から生まれた、とか言ってなかったか?」

「そうだ。 初めの人間……始まりの女。 女は自身に”寿命が存在する”という事を理解しておらず、死の際になってようやく願った。 その未練(ねがい)を受け、生まれたのが」

「……不死のノルミン。 つまり、アンタか」

「いいや、違う。 女が願ったのは、『我が子を抱きしめたい』だったのだ。 女は身籠っていた。 女は寿命が来たにも拘らず『まだやりたい事がある』と未練(ねがい)を意志にした。 ――その願いを受け、我が半身……サムサラが世界に出現した」

「……誰の子になるンだ? 初めの人間なンだろ?」

「男もいたのやもしれんが、それは我らの知ることではない。 少なくとも、男は未練(ねがい)を残さずに死んだのだろうな。 ……そして、女の腹に宿っていた命。 死にゆく母体では満足に子を産み落とす事は出来なかった。 命は『まだ死にたくない、生きたい』と願った」

「……それが、アンタを産んだ」

「そうだ。 そして願いを受け、我が半身は女の魂を転生させた。 我は赤子を蘇らせた。 ……だが、我らにはその赤子にしてやれることなど何もなかった。 母親のいない赤子は、間も無くして再びその命を散らしてしまったのだ……」

「……おい、まさか」

「その赤子に宿っていた……宿ろうとしていた魂こそが、我が半身の中にいるサムサラになる。 目の前で死んだ、『未練(ねがい)を持った最初の魂』。 我が半身は旅立とうとするソレを自身に引きずり込み、生まれ切る事の出来なかった赤子の身体を器とした」

「アイツの器は人骨かよ……」

「我が半身の器は、だ。 汝らに接しているサムサラという少女は、あくまで人間の魂に過ぎぬ。 情動も感情も確かと存在する、幼い少女だ。 初めの頃は面倒くさがって早々に眠りに就いた我が半身の代わりに色々やったものよ……。 我の一挙手一投足に段々と反応を示すようになった少女に、我は”父性”というものを感じた! それがエドナを見守る事に繋がったのだ……!」

「……アイツの誓約に関して、何か聞いてるか?」

「ぬぉぉ……! 何故こうも最近の若者はノリが悪いのだ! 全く、嘆かわしい……。 それで、誓約か。 少女の誓約に関しては何も知らぬ。 あの誓約は『人間の少女の魂』が行ったモノ。 我も我が半身も、それに干渉する事は出来ぬのだ」

「……結局わかったのは、アイツが長生きのフリしたちびっこ、って事だけかよ」

「まぁ、安心しておくがいい。 我が半身は面倒くさがりではあるが、面倒見も良い。 あの少女を見捨てる、ということはしないはずだ。 何より、契約者であるからな」

「そォかい。 ……そいや、アンタとサムサラが組んでたコンビ……コンビ名はなんだっけな?」

「おぉ、よくぞ聞いた! 我とサムサラ(・・・・)が結成した伝説のコンビ!! その名も、鳳凰星座の(フェニックス)輪廻(リーオン)、」

 

 ――時、逆しまに帰りて其を消し去らん。 ディストーション!!

 

「ぬぉぉぉおおおぁぁああああああ!?」

「うぉっとぉ! ……なんつー危ない術を至近距離で使ってんだよ……」

 ――黒歴史なの。 フェニックスがあんまりにも楽しそうだから、ちょっとだけ乗っちゃっただけなの。 だから忘れて。

「全く……照れ隠しなどする必要はないぞ、我が半身! さぁ、何度でも言おう! フェニ」

 

 ――デスクラウド。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ゼンライの手紙を読んだ一行は少しだけ休憩をはさみ、マビノギオ山岳遺跡へと向かう。

 その先に有るカムラン、そしてアルトリウスの玉座を目指して――。

 







普通に話している時のフェニックス口調の安定しなさね

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