ベルセリア・ゼスティリア転生(仮題)   作:飯妃旅立

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お久しぶりのです()
捏造多目。


dai go jur go wa megane to me ga ne !

 

 ――はろう、はろう。 マルクト軍大佐殿。 ここの異相にブウサギはいるよ。

「おや、これはこれは。 見た目から察するにチーグル族の近縁種でしょうか?」

 ――そんなものと思ってくれて構わないよ。 ソーサラーリングがなくても喋れるけれど。

「はは、いえ失礼。 何分、いきなり異界の地へ放り出された身。 ガラにもなく気を張ってしまっていたようです」

 ――いきなり話しかけたのは私だもの。 礼を欠いたのはこちらだから、大丈夫。 あなたが気にする必要はないよ、ジェイド・カーティス。 フォミクリー技術発案者のバルフォア博士と言った方がいいかな?

「……どうやら、随分とこちらの状況に詳しい様子ですね。 出来るのならば、貴女のお名前と所属をお教え願いたいものですが」

 ――私はサムサラ。 一応、この世界の神様の位置かな。 100の分体の内の1でしかないけれど。

「ほう。 ならば、もしや私達をここに呼んだのはあなた、でしょうか?」

 ――違うよ。 あなたをここに呼んだのは私でも、私の仲間でもないし、あなたのところの親善大使のせいでもない。

「本当ですか? いやぁ、こうも此方の事情に詳しいと、胡散臭くなってきてしまいますね」

 ――あなたの常套手段を真似てみたのだけれど、胡散臭さの部分だけは再現できていたみたいだね。 よかった。

「では本題に移りましょうか。 サムサラさん、あなたの力で私達を元の世界へ戻すことは可能ですか?」

 ――三分、とだけ。 あなたの世界は’外’が狭いから、よくて譜石帯か魔界(クリフォド)、悪くて音譜帯のどこか、もしくは地核の中に放り出されると思う。

「それは恐ろしい。 では、先程話に出てきた貴女のお仲間ならどうでしょう」

 ――あなたの世界とは役割が違うけれど、こちらの世界にも導師がいる。 彼なら、あなた達をこの地へ縛り付けている流れを解き、あなた達を元の世界へ戻してくれる。

「ふむ。 どうやら本当に口先だけではないようですね。 いやぁ~、いきなり出てきて私は神だ、なんて言うから疑ってしまいましたよ~」

 ――あなたも、最初から自分たちの現状は分かっていたでしょ。 ソフィ・ラントに適当言って自分から離していたのは……ああいう、純粋すぎて話の通じない子が苦手だから?

「はは、それもありますね。 ですが、辺りにいる強い存在を打破してほしいというのは本音ですよ。 この空間の力場を崩すには、それが一番手っ取り早い。 ……尤も、この力場はこの空間以外の場所へ供給されるためにあるようにも思えますが」

 ――そうだね。 この空間に出来上がってしまった力場はあくまで副次的な物に過ぎないから、この空間で何をしても無駄だよ。

「おっとはっきり言いますね。 もっとはっきり言ってくれてもいいのですよ?」

 ――あなた達にできる事は何一つない。 座して待て。 さすれば導き救われん。

「残念ですが、それが出来ないのが研究者というものです」

 ――でしょうね。 まぁ、この空間で何をしても無駄ということは、何をやってもあなた達が帰るのに影響しないという事でもある。 命を落とす様な真似をするならまだしも、研究や調査に勤しむ分には何の問題もないかな。

「それはそれは、魅力的な事を聞きました。 ところでサムサラさん。 何故私とソフィがここに引きずり込まれたのかわかりますか? ガイやティアではなく、私が」

 ――この世界にも超振動を扱える人間がいる……いた、からね。 ファブレ公爵息子と縁が深すぎる人間は引きずり込めなかったんじゃない? 縁は互いを引っ張り合うから、力場程度の引力では千切れない程に強い縁があったんだよ、彼ら彼女らには。

「私には無かったと? それは酷い話ですね~」

 ――あとは、あなたがより死の影を帯びていたから……だと思う。

「……」

 ――この世界に満ちる力は、穢れと言ってね。 死の影が、陰鬱の気が形になったものなんだ。 穢れを取り込みやすい者は穢れに好まれる。 葛藤と後悔は、穢れの温床だよ。

「ははは……なるほど、確かにあの面々の中では私が一番引き込まれやすそうですね。 なら、彼女は?」

 ――彼女には逆に、死の影が全くない。 恐らくだけど、現状の彼女は機能停止以外で死ぬことはない。 故に、あなたとプラスマイナスゼロ。 あなたは力場が引き込んだ存在で、彼女は世界が抑止にくっつけた存在。

「……つまり、彼女が巻き込まれたのは私があまりにも多くの葛藤と後悔を抱えているせい、だと?」

 ――とかだったら納得が行く?

「はっはっは、それなら面白いですね」

 ――でしょ? やっぱり私のセンスも捨てたものじゃあないよね。

 

 沈黙。

 

「さて、そろそろ貴女のお仲間がここに到着するようです。 簡単なテストも兼ねて手合せをするつもりですが、サムサラさんはどうしますか?」

 ――勿論、戦うよ。 死霊使い(ネクロマンサー)ジェイド・カーティス。 魂を扱う者としては、見逃せない存在だからね。

「その仇名は私の使う術とはあまり関係がないのですが……いえ、魂を扱う者でしたか。 それなら、私も戦う理由がありますね」

 ――フォミクリー技術。 魂の複製。 それがあなたの後悔であったとしても、生命あるべき等しい死から逃れる技術を見逃すわけにはいかない。

「やれやれ、過去の行いばかりが今の自分の首を絞めますね~。 というより、サフィールの行いが、というべきでしょうか?」

 

「サムサラ!」

 

 テレロレレロレロレーレーローレーロ、レーレローレー!

 記憶にある戦闘曲を思考の縁に流しつつ、私の横に立ち並んだミクリオの肩に乗っかる。

 

「全く君は……」

「おやおや、団体様のご到着ですか」

「!? 気ィつけろ、コイツ俺達が見えてやがる!」

 

 ちなみにジェイドと交信を繋げられるのは彼に霊力があるからだ。

 ヒューマノイド(プロトス1)であるソフィには、霊力が存在しない。

 

 ジェイドが構えを取る。

 

「来るぞ、みんな!」

「多対一とは卑怯ですね~……なら、こちらも本気で相手をしましょうか」

 

 ついでに言うと、恐らくジェイドには彼らの姿が見えているわけではない。

 私を見た目で判断出来たのは、私が私に幻術をかけていたからだ。 私は学んだのだ。 見えない相手からどこからともなく声が飛んでくると、警戒されるということを。

 ……今、外側でサムサラが溜息を吐いた気がするのは気のせいだろう。 彼女に息をすると言う機能はないはずだし。

 

「狂乱せし地霊の宴よ……ロックブレイク!」

「天響術!? 天族なのか!?」

「赤土目覚める……ロックランス! 天響術はこっち。 あれは違うわ、スレイ」

 

 彼の身体から溢れる音素(フォニム)から、術の構成方法を真似していく。

 随分と幾何学的というか、過去の四大の王のそれとは明らかに構成方法が違う。

 やはり譜術は学問なのだな、ということがよくわかる。

 

 ――魂をも凍らす魔狼の咆哮、響き渡れ。 ブラッディハウリング。

 

 闇色の奔流が、地面から噴き出す。

 

「これは……第一音素? いえ、構成は酷似していますが……」

「潜りドラゴン! 何!? またサムサラ!?」

 

 ロゼ酷い。

 

「ふむ……では、受けよ、無慈悲なる白銀の抱擁! アブソリュート!」

「氷海凍てる果て行くは奈落! インブレイスエンド!」

 

 ロゼの足元が凍りつく瞬間、それを食いつぶすようにエドナの氷が発生する。 だが、エドナの氷ではジェイドの氷を止める事は出来なかった。

 一瞬で来た隙を縫ってロゼがその場から離脱する。

 

「今のは完全に違う術ですね。 ならこっちはどうです? 焔よ、業火の檻にて焼き尽くせ……イグニートプリズン!」

「火神招来! フォエス=メイマ!」

 

 一瞬の判断。

 自らの周りに出てきた炎に、ライラとの神依を果たすスレイ。

 だが、その選択はFOF変化を扱うジェイドを相手にはまずかった。

 

「煮え湯を飲ませてあげましょう……レイジングミスト」

 

 熱された大地に大量の水が降り注ぐ。

 そして盛大な蒸気が発生した。

 

「うわっ!?」

「どォやら属性の縛りなんてものはねぇみたいだが……」

 

 ――壮麗たる天使の歌声。 シ・ド・レ・ソ(ヴァ・レイ・ズェ・トゥエ)・ラ・ソ・ミ・ソ・ファ(・ネゥ・トゥエ・リュオ・トゥエ・クロア)

 

「回復……サムサラか、ありがとう!」

「今度は譜歌ですか……こちらに合わせてくれているのか、おちょくられているのか、謎ですが……天雷槍!」

「仕込み槍!? おっさんアンタ暗殺者か何か!?」

「ロゼさんが言えた事ではないと思うのですけど……」

 

 ジェイドを術師タイプと踏んで接近戦を持ち込んだロゼに槍を突きつけるジェイド。

 おっさん……彼はまだ35歳である。

 十分におっさんとか言わないで上げてほしい。

 

「多勢に無勢ですねー。 なら、これはどうです? 旋律の戒めよ、死霊使い(ネクロマンサー)の名の下に具現せよ……ミスティック・ケイジ!」

 

 譜術の球体がスレイやロゼだけでない、天族達全員を完璧に包み込み、収縮、ジェイドの手中で爆破した。

 

 ――天地に散りし白き煌華よ。 運命に従い敵を滅せよ、

「なるほど、突然見えなくなったといってもいなくなったわけではないのですねぇ。 ティアの術を真似ようとしたようですが……使わせてもらいましょうか。 墜牙爆炎槍!」

 

 私の詠唱を察知したのか、はたまた別の理由か。

 攻撃と回復を兼ねたティア・グランツの秘奥義を再現しようとした隙を縫って、ジェイドは私を槍で撃ち上げる。

 その槍は私に刺さる事は無かったものの、極至近距離で膨大な熱量と共に爆発を起こした。

 光はわかるけど……火はどこから。

 

 ――神々の御使いの祝福を今ここに。 エンジェルブレス。

「おや……まだ術を詠唱する元気がありましたか。 いえ、どちらかと言えば……誰かが肩代わりした、という感じでしょうか。 しかし、フィールドオブフォニムスも使わずに、よくもまぁそうポンポンと次から次へ譜術が使えるものですね。 しかも今度は厄介な補助術ですか」

 ――本当に譜術を使っているわけじゃあないからね。 あなたから溢れる音素を真似て、形だけを似せて術を作っているにすぎない。 その点あなたの複雑怪奇な術より、ナタリアやアニスの真っ直ぐな術の方が真似しやすいかな。

「はっはっは、確かにあの二人の使う……使える譜術はそこまで難しい物ではありませんからね。 とはいえ、私の記憶違いでなければ譜歌はそれなりに複雑な構成をしていたと思うのですが? そこのところは?」

 ――真似しやすいか真似し難いかってだけで、出来ないなんて言ってない。

「これは一本取られました~。 あ、降参です。 流石にあなた達と三度も交戦できる若さは私にはありませんからね」

 

 なんとか起き上がったスレイ達を前にしてあっけらかんと言い放つジェイド。

 流石にリヴァイヴのかかったスレイ達6人を相手取るのは面倒と感じたようだ。

 

「さて、おふざけはこのくらいにして……あ、申し遅れました。 私、ジェイド・カーティスというものです」

「あ、俺はスレイって言います……じゃなくて、ジェイドさんは……天族が見えている……んですか?」

「いえいえ、見えませんよ? 見えませんが、そこに何かがいる、というのはわかりますので……それを見られるようちょちょっと工夫してみたら、声くらいは聴けるようになりました」

「ちょちょっとって……」

 

 実際、ジェイドは少なからず霊応力がある。 正確に言えばこの世界に引きずり込まれる際に出現した、というべきなのだろうが、身の内に現れたその異質な力を辿って天族の声が聴けるような細工を自身に施したのだろう。

 メガネ云々は関係ないはずだ。

 

「とりあえずこの空間の事はお仲間のサムサラさんにお伺いしましたので、原因があなた方に無い事もわかっていますから、安心してくださいね」

「じゃあなんで攻撃してきたんだ……」

「こちらの世界の導師がどのような物か試してみたかったのですが……藪蛇でした」

「こちらの世界……? 違う世界から来た、っていうのか? いや、それよりも! 違う世界にも導師がいるのか……?」

「こちらの世界とは役割も意味も全く違いますけどね」

 

 何やら感動しているスレイは置いて於いて、ロゼがメガネのおっさんに話しかける。

 

「さっきの女の子となんか関係あんの?」

「彼女もまた違う世界……私とも違う世界の出身のようです。 その辺りの事情は全てサムサラさんが知っていると思われるのですが……聞いていませんか?」

「またこのノルなの? 秘密主義もここまでくると尊敬ね?」

「ま、言わなかったって事はなンか意味があったンだろ。 どうせ聞いてもどうしようもねぇ事だろうよ」

「……庇うじゃない」

 

 どちらにしろスレイは全カリスを回る必要があるのだ。

 そうしなければ、シルバの遺体がドラゴンゾンビに至れないのだから。

 それに、答えを私がポンと用意しても、スレイは納得しないだろうし。

 

「それでは、私はこの辺りで。 もう少しこの辺りを調べてみたいですし、あのお嬢さんの事も気になりますからね」

 

 去っていくジェイド。

 短時間ならともかく、長時間この空間にいると……彼は穢れを取り込んでしまいそうで、少しだけ心配だ。

 ホーリーヴェイル、かけておこう。

 

 

 

「サムサラさん……」

 ――うん? どうしたの、ライラ。

「あの方は、顔色が全く窺えませんでしたね……」

 ――……面が無ぇ(メんガネぇ)って事?

「はい!」

 

 






ジェイドの術は本来ゼスティリアでは使って来ないモノも混ぜてあります。

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