オーバーウォッチ・オンライン~next generations~ 作:セラり
そう、この世界はOWOであってもSAOではないのです!えー、ゆえにソードスキルの見せ場はそんなに作れないかもしれないです。
始まりの街 at 草原
「ほへー、これが仮想世界かよ。現実と全く変わらないなー」
OWがサービス開始となったその時間、一も二もなく俺たち3人はログインした。
気の抜けた声が出るのも無理はない、ナーヴギアを被って足を踏み入れたその世界は正に現実世界そのものだった。
今俺がいるのは周りが草原のフィールドで、目立ったオブジェクトと言えばぽつりぽつりと生えている葉緑樹くらいだ。けども、風が吹けば三次元的に草木はさざめいて揺れるし、木をよく見れば小鳥が巣を作ってたりする。
「こんなのどかな場所が戦場になるなんて、考えられないよなー。やっぱり、ログインした最初のステージだからなのか?」
戦いの気配なんて微塵も感じられないのはそのせいだろうと適当にあたりをつけ、さてこの後どうしようかと考え始めた。
「ま、当たり前だけどまずはレイとチョウと合流するか。
とりあえずフィールドに出てみたはいいけど、武器はしょぼい短剣1本で心許ないし、なによりこの世界はオーバーウォッチの世界で、もしリアルに沿っているのなら銃を持ったロボットとか平気で出てきそうだしな...。」
そう、この世界は史実が存在する。いつ血と硝煙のフィールドと化すか分かったもんじゃない。なまじっか身内に関係者がいるせいで、ログインしたユーザーの大多数よりかはこのゲームの背景に対して半端以上に知識を持ち合わせてしまっている。
まぁゲームだし、死んでもリスボーンでいるのは気が楽だな。
圏内と呼ばれるセーフティエリアに戻る道すがら、俺はこのゲームにログインして初めて戦闘に出くわした。俺が当事者ではないが。
片方は男性プレイヤーが1人と、近くで傍観している男性プレイヤーがもう1人。
対するは、体長が人間ほどある大きなイノシシだ。
初期装備の短剣を右手で逆手に持ち、臆することなくイノシシに切りかかっていく。
「せあっ!」
と掛け声が何度も聞こえ、数分の後、最後は短剣が青白い光を放ちながらイノシシを切り裂き、イノシシがポリゴン化したところで俺の初バトル(観戦)は終了した。
「いやー、すごいな!初めて戦闘みたけど、やっぱすごいな!うん、すごい!」
別に俺は人見知りでもないので、戦闘が一段落して会話してる2人に興味津々といったふうに突っ込んでいった。
「そ、そうかな。でも今のは他ゲームでいうところのスライムみたいなやつだし...」
「まじかよキリトよぉ、俺は今のが中ボスと言われても納得なくらいビビっちまってたんだけどな!
そんで、途中から見てたお前さんもこういうゲームは初めてのクチか?」
「そうなんだよ!あんまりにもリアルすぎて思わず興奮してたんだよ。
あっ俺はクリスって言うんだ、よろしくな!」
「おー、仮想空間って言ってもさすがに現実には負けるって思ってたが、こう体感させられちゃあな。こっちが現実ですって言われたら区別つかなくなるかもな!
んでもって、俺がクラインで、今戦ってたのがキリトってんだ。キリトの方はβ版プレイしてたらしくてな、俺もさっきたまたま会って、戦闘のレクチャーをしてもらってたんだよ」
そうなんだ、ともう一方のキリトと呼ばれた青年のアバターの方に振り向くと、
「レクチャーって言っても、今俺たちが持ってるのは初期の短剣だし、護身術くらいにしか使えないさ。βのときは8層まで進んだけど、ほぼほぼ遠距離から銃ぶっ放したり、タンクにカバーしてもらいながら近距離でぶっ放す戦い方だったな。さっきみたいなイノシシだったりリザードマンとかだったら、剣でも戦えるんだけどな。」
とのことらしい。ちょうど良いので、俺もこの際聞いてみることにした。
「てことは、やっぱりロボットも出てくるのか?」
キリトは軽くうなずくと、
「あぁ。オムニックって呼ばれてるロボットなんだけど、かなりな数出てくるぜ。さっきの生物と違って、機械だからな、固いのなんの...クラインもクリスも、もしフィールドで運悪く出くわしたらとりあえずは逃げるか、集団で戦うことをお勧めしとくよ。
ここで知り合ったのも何かの縁だし、他なんか聞きたいことある?」
と、このゲームの先駆者らしい老婆心を発揮してくれた。
キリトによると、このゲームでは大まかに言えばオフェンス・ディフェンス・タンク・サポートの4つのジョブに分けられるらしい。そして、別にどのジョブを選んでも自由だが、ボス戦とかで戦闘メンバーのジョブに偏りがありすぎると、あっけなく敗北することも珍しいことではないらしい。特にサポートは戦闘の要なのだがそのサポートの性質上、味方の後衛から支援することが大半なのでβではピック(選ぶ)するプレイヤーは数える程しかいなかったそうだ。
ちなみにだが、レイはオフェンス、チョウはタンク、そして俺はサポートをおそらくピックするだろう。...いろいろと親譲りダシネー。
その他、フィールドに点在する回復用のライフパックの存在だとか、各プレイヤー独自に発現するらしいultと総じて括られている必殺技についてなどをキリトにレクチャーしてもらった。
「やべっ!俺17時にピザ予約してるんだった!」
クラインがそんなこというから俺もふとユーザーインターフェース(UI)の右下にある時計を見てみると、時刻は17時まであともう一進みといったところだった。確かログインしたのが昼ごはんを3人で食べた後だったから、既に4時間は経ったことになるだろうか。
「あ...俺も一緒にログインした友達をほったらかしにしてるの忘れてた。」
まぁあの2人なら問題ないだろう。軽く愚痴をこぼされるくらいはあるかもしれないが。
「じゃあ一旦はまた解散だな!具体的には俺がピザ食い終わるくらいまで!
噂によると、本物の元オーバーウォッチのメンバーもログインしているらしいから、後でしらみつぶしに探してみようぜ!」
おいおい、キリト苦笑いしてるじゃん。
てか、元オーバーウォッチのメンバーも混ざってるのか!俺も日本に来る前は旅行と称して母さんとかレイの母親にオーバーウォッチのメンバーへの息子自慢に付き合わされたものだ。
でも、こういったVRのゲームとかに興味がありそうな人いたかな...。トールビョーンやラインハルトのおじいさんは無理そうだし(身体的に)。メイおばさんとかザリアのねーちゃんとかかなー。でもあの人たちもゲームできる時間なさそうだしなぁ。
最悪、冒険と称して現在居場所不明のレイの母親が来ることも考えとこう...うん。いや、むしろそれが一番可能性が高い気がしてきた...。
「オッケー、とりあえずフレンド登録しとくか。何かあったとき便利だし。あ、俺から飛ばすから2人は承認してくれれば完了だよ。」
と、キリトが右手でメニューウィンドウを操作し始めるとすぐに通知がきたので、俺もキリトに習ってメニューを呼び出してみた。見ると、クラインも同じような動きをしていたからおそらくフレンド依頼が届いたのだろう。
俺はそれからクラインにもフレンド依頼を飛ばし、自分の空白だったフレンド欄に2人の名前が新しく刻まれるのを1人感慨深く眺めていた。
「あれ、っかしーな。ログアウト出来ないぞ?」
「そんなわけないだろ、ほら、このメニューの下の方に...あれ、ないな...。致命的なバグとかか?」
はは、まさか。俺もリアルでデバッグのバイトをしてたから分かるが、ゲームでログアウトが出来ないなんてS級バグにも程があるぜ。即クライアント、この場合はOWの発売元のアーガスだが、連絡して緊急メンテナンス待ったなしだ。
「とりあえず、GMコールしてみたら?サービス開始したばっかで運営もPCに張り付いてるだろうし。」
俺がとりあえずそう提案したところでそれは唐突に始まった。
アバターが急に白い光に包まれた始めたのだ。
俺とクラインは状況が把握できていないためかなり慌てているが、キリトにはこの現象に心当たりがあるのか多少の驚きがありつつも事の成り行きを静観していた。
画面がホワイトアウトした後、目を開けるとそこはログインした直後にユーザー全員が訪れる圏内エリア、その中心に位置する時計台のある場所だった。
そしてこの瞬間、1万人が囚われ、死ぬことが許されないデスゲームが宣言されるのであった。
キリトにはソルジャー、クラインの兄貴には刀使いらしくゲンジみたいに戦場を駆け回ってほしいです(希望)