オーバーウォッチ・オンライン~next generations~   作:セラり

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英雄と卵

 in 第1層主街区~トールバーナ~

 

 「へぇ~、ボス攻略会議の割には結構人数集まったんだな」

 

 「これでも少ない方だと思うぞ?βの時はフルレイド(48人)組んでボス戦順番待ちとかざらだったからな。」

 

 今俺たちがいるのは円形の野外劇場のような施設だ。

 

 始まりの街を飛び出し、ホルンカの村へ寄った後そこからはひたすらクエストを受注したりモブ狩りをしてレべリングに励んでいた。

トールバーナに到着して早1週間は経過するだろうか。どこからかキリトが近々第1層のボス攻略会議が開かれるという噂を仕入れてきて、オーバーワーク気味なレベリングの甲斐あってそれなりにレベルが上がっていた俺たちは、攻略会議に顔を出すことにしたのだ。

 

 「私たちって、結構いろんなところでクエスト受注してたけどこんなにプレイヤーと会ってない気がするんだけど。」

 

 「そうね、フィールドで狩ってた時もあまり見かけなかったわね。ひょっとしなくても、私たちってこの中でもレベル上位なんじゃない?」

 

 現状、俺のレベルが11、チョウが13、キリトとレイは15と、第1層の割には比較的高い気はする。

 

 一緒にパーティを組んでるはずなのにどうしてレベルの開きがあるのかといえば、単純に敵に与えたダメージ量が関係してたりする。サポートジョブの関係上どうしても攻撃機会は少なく、ヒールに専念しなきゃいけない。一方で、キリトとレイの適正はアタッカーだったようで、『トレジャーボックス』から得たアタッカー用の銃を手に片っ端から敵をポリゴン化させていくのでおのずと経験値は2人に優遇されて入っていく。チョウはやはりタンクが適正だったらしく、所持しているのは片手で持てるくらいのハンドガンだった。それでも俺よりレベルが高いのはゲーマー故としか言えない。

 

 ぶっちゃけて言えばこのパーティ、非常にバランスがいい。

 

 ちなみに、キリトが持っているのは一般的なアサルトライフルで、粗製のM1A1といった感じだ。

レイは小ぶりながらも発射レートが比較的高いマシンピストルを2丁、いわゆるデュアルとかトゥーハンド(2丁拳銃)と呼ばれるスタイルだ。

 

 チョウが店売りのエネルギーシールドを購入しタンクらしくなったのはトールバーナに到着する前で、それからはレイが初期でAGI(敏捷)にスキルポイントを振っていたビルドを生かし敵を攪乱、キリトはチョウと並ぶ形でアサルトライフルを持ち正面から攻勢に出る戦術を取っている。

 

 俺?俺はさらにその後ろから体力が減ったメンバーを片っ端からヒールしている。

今装備しているのは杖のような形をしたアイアンスタッフで、複数あるサポートスタイルの中でもマンツーマンでのヒールに特化した装備だ。1人にヒールをしている間は他のメンバーにヒールが出来ないので、割と周囲の状況把握だったり、パーティメンバーのヘルス管理だったり、することがいっぱいある。

 

 特にレイはAGIに振りすぎて基本の体力が最低値に近いのでちょっと食らっただけでもすぐ体力のゲージがイエローになったりするから忙しいったらない。

 

 

 

 「みんな、聞いてくれ!」

 

 劇場の舞台に目をやると、青い髪をした好青年が1人立っていた。どうやら、攻略会議が始まるらしい。

 

 「みんな、今日は俺の呼びかけに応じてくれてありがとう!

俺の名前はディアベル。気持ち的にナイトやってます!」

 

 周囲から幾分か笑い声が上がったが、元ネタが戦争に絡んでいるこのOWだと、ナイトはわりと浮いてるんじゃなかろうか、などと俺は考えていた。

いずれにせよ、つかみとしては効果があったらしい。

 

 「数日前、俺たちのパーティはついにボス部屋を発見した!

俺たちはボスを倒し、第2層へ到着してこのゲームがクリア不可能なんかじゃないってことを、始まりの街で待つみんなに伝える義務がある!それが、今ここに集まってくれた攻略メンバーだ!そうだろ、みんな!」

 

 周りもディアベルの演説に感化されたのか、最初はまばらだった拍手もかなり大きなものへと変わっていた。

 

 「それじゃあ、本格的な攻略会議に移りたいと思う。

みんな、6人のパーティを組んでみてくれ!」

 

 Oh,これが日本で有名なボッチシステムか...

 俺が日本に来たのは高校生になる年齢からだから、さすがにクラスでそんなことはなかったな。

 

 キリトを見ると、冷や汗が流れていた気がしたがおそらく自分が今パーティを組んでいるのを思い出したのだろう、ほっと一息ついたのがよく分かった。

 

「んー、今私たちは4人パーティだから、少なくともあと1人か2人は必要ってことね。」

 

「ん、ならあそこに1人でいるフード被ったやつなんかどうだ?まだパーティ組めてないみたいだし。」

 

 キリトの指さす方には、確かに1人ぽつんと座っているフードを被ったプレイヤーがいた。

 

「いいぜー、キリト連れてきてくれよ。」

 

 キリトは軽くうなずくとそのフードを被ったプレーヤーに近寄り、二言三言会話した後、揃って戻ってきた。

 

 「ボス戦の間、よろしくな。俺はクリス、こっちがレイとチョウ、んで、今あんたを呼びにいったのがキリトだ。

パーティの申請するから、ジョインしてもらえるか?」

 

 フードを被ったプレイヤーはメニューを操作し、俺はパーティメンバーに新たに名前が加わったことを確認した。

えーと、ASUNA...アスナでいいのかな。ひょっとしなくても、女性プレイヤーな気配がする。

 

「私、レイっていうんだけど、もしかしてアスナさんって女性ですか!?」

 

「あ、...はい、そうです。」

 

「きゃーっ!私、このゲーム始まってからチョウ以外の女性プレイヤー初めて会ったかも!ぜったい、ぜーったい、仲良くしようねアスナさん!」

 

「私も、女性プレイヤーの人が他にいるなんて初めて知りました!

あ、私のことはさん付けいらないですよ。」

 

「なら、私もさんつけなくていいから、レイって呼んでね!それから、こっちはチョウね!」

 

なんとまぁ姦しいもんだな。3人女性が集まればわーきゃー凄いもんだ。デスゲームってのを忘れてるんじゃないかこの3人は。文字通りの姦しさだな。

 

 

 

 

 

 

 

「おっけー、パーティ組み終わったみたいだね。

次に、このデスゲーム攻略の第1歩に、頼もしい助っ人が名乗り出てくれたから紹介したいと思う!」

 

 助っ人?βの有名プレイヤーとかでも参戦したのかな。

 

 ディアベルに声をかけられると、舞台の袖からその姿が露わになった。

瞬間、空気が変わるとはこのことだと思い知らされるように、その人物から放たれる威圧感は周囲のプレイヤーを固まらせた。

 

 違う、あの人は助っ人なんて言葉で形容していい人じゃない。

そして、俺はあの人のことを知っている。おそらく、レイもチョウも...。

 

 ガシャンガシャンと音を鳴り響かせている鎧はまだ第1層のはずなのにどこか重厚さを感じさせる質量感と、自らの存在を主張するかのような光沢を持つ黒色に染まっていた。

 母さんがよく聞かせてくれたオーバーウォッチのメンバーのなかで、必ずと言っていいほど面白い逸話を残していた人物。紛れもないその人物。

 

 

 

「我輩は、今は無きオーバーウォッチのかつての戦闘員、ラインハルト・ヴィルヘルムである!現実ではないといえ、久々の戦場!老いた老体なんぞ関係なしに滾るわい!」

 

 やっぱりだ。あのラインハルトのおじさんだ。隣を見ると、レイもチョウも口を開けて固まっていた。キリトはというと、ほんとにオーバーウォッチのメンバーがこのゲームにログインしていたんだという驚きが現れている。

 俺たちはというと、

あの人、こんなデジタルなことできたのか...といった意味合いで愕然としていた。

 

 以前母さんに連れられてドイツのラインハルトおじさんのとこに行ったときなんて、

 

『最近の若者は流行だなんだ...。クラシックのどこが悪い?ハッセルホフを知らんのか!Night Rockerを聞いてみろ!』

 

 なんてことをがなってたのを覚えている。

 

 まさか本物の元オーバーウォッチがいるなんて...とたぶん攻略会議一番の騒ぎになっていただろう。進行役のディアベルの場を落ち着かせるのに苦労していたが、ようやくと話が次に行くらしい。

 

「ラインハルトさんには、俺たちA隊に入ってもらい、タンク隊のリーダーをやってもらいます。ボス戦なんだけど、みんな、この街の道具屋で無料配布しているガイドブックのことは知っているよね。」

 

 え、俺知らないぞ?そんなものがあったのか

 

「これは元βテスターたちによって作られたもので、OWの基礎知識だったり、戦術の基本が書かれてたりする。

最新号の情報によると、ボスの名前は≪イルファング・ザ・コボルドロード≫。それを守るように多数の≪ルイン・コボルド・センチネル≫という取り巻きと試作型偵察ロボット兵が何体か配置されているらしい。ボスの武器は木製の盾と斧を装備し、4段ある体力のバーがのうち、最後の1本になると腰にぶら下げているショットガンを使いだすらしい。」

 

 ガイドブックに載っていたボスの情報をあらかた伝え終えると本を閉じる。

 

「これらの情報を踏まえて、明日のボス戦に挑もうと思う!作戦の流れとしては、取り巻きのセンチネルが多数いるとのことだから、各隊タンクを前衛に散開しつつ前線を押し上げ、アタッカーが隙をみて射撃、もしくは剣による攻撃を行う。ディフェンスはタンクのシールド残量とアタッカーのリロードのタイミングに気を配りながら援護を頼む。サポートは、全体回復系の武器を装備しているプレイヤーは自分の隊だけではなく、余裕があれば他の隊のヒールもするよう心掛けてくれ。個人回復系のヒーラーは自分の隊のサポートに徹してくれ!」

 

 つまり全体回復持ち優遇ってことですね分かります。

 

「以上で攻略会議を終了したいと思う!明日は迷宮区の入り口に朝10時集合でよろしく頼む!」

 

 解散!との声で野外劇場に集まっていた攻略組はすぐに解散するところもあれば、パーティ内で明日の綿密な打ち合わせをしているところもある。

 

 

 

 

 

 

 

 俺は、というと、キリトとアスナにはちょっと用事があるからまたあとで合流しようと伝え、レイとチョウを連れ、舞台の袖に引っ込んだラインハルトの姿を探すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そう、もう何年も会ってなかったな。その久しぶりの再会がまさかこんなデスゲームでだなんて、いったんなんて言われるのだろうか...。




キバオウさん、メイン盾さんの登場により出るタイミング逃したみたいです()

マーシーのゲームでの立場がルシオに押されて低いので、心苦しいですね。
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