オーバーウォッチ・オンライン~next generations~   作:セラり

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時系列は今後ばらばらになるかもしれません。


ナイトメア・メリークリスマス

In 第49階層~ミュージェン~

 

 

 

 

 

「おいクー坊、ほんとに行くのカ?」

 

「まぁな。けどまぁ、なにも一人で撃破しようってわけじゃないんだからさ。そう心配すんなって。

顧客に肩入れするなんて情報屋らしくないぞ?」

 

もう日はとっくに傾き、石造りのこの街が夕闇に包まれ始めた時間、俺はこの世界でも腕利きの情報屋のアルゴと取引の真っ最中だった。キリト経由で知り合ったのだが、一度死んだらリスボーンできないこの世界事情もあって情報は時として一番高い買い物になるときもある。その点、アルゴがもたらしてくれる情報は質も精度も高く、信頼を置いて情報を買い取っている。

 

その分、ぼったくられることも多いのだが。

 

「お姉さんの心配くらいありがたく受け取ってくれないかナ?

・・・NPCから集めた情報曰く、ヒイラギの月の24日の午前0時ちょうど、とある森にある巨大なモミの木の下に≪背教者ニコラス≫なる怪物が出現する。もし打ち倒すことが出来れば、怪物が担いだ巨大な袋に収められている数々の財宝を手にすることが出来るだろう。とまぁ、こんな感じの噂が先月頃からしきりにNPCの口から聞こえてくるんだナ。

 けど、クー坊が気にしてるのはもう一つの噂だロ?」

 

そう、単にイベントボスなのであればアルゴからこそこそと情報なんて買わず、堂々と他のプレイヤーとイベントボス攻略に興じればいいだけの話なのだ。

 

「なんでも、≪背教者ニコラス≫から手に入るお宝の中には死者を甦らせるアイテムが混じっているらしいからナ。インスタントクー坊ってところだな、ニャハハ。

・・・やっぱり、第一層でのこと気にしてるのk」

 

「はい、そこまでー。それ以上突っ込むのなら安くない情報料貰うからな」

 

「チッ、お姉さんともあろうことがドジ踏んじまったナ。

見当はついてるのカ?」

 

当てがあるかと聞かれれば、ある。

確信があるわけでもないが、レベリングの合間にふと目に留まった大きなモミの木があったのだ。

 

「それこそ、黙秘権を行使するさ。

A secret makes woman woman...ってね」

 

クー坊は女じゃないだろうに・・・とも思ったが、アルゴはしっかりと情報料だけ受け取り、茶々も入れず取引を終えるのだった。

 

 

 

 

 

In 37層~ミーシェ~

 

 

 

 

さて、舞台は整った。この層にある木がイベントフラグの起点のモミの木で間違いないだろう。

 

「それで、だ。

俺はサポートなわけだから、直接の削りはレイとチョウに任せた。間違っても死なせないから、安心して攻撃に集中してくれ」

 

この35層の迷いの森に来ているのは、俺を含めたいつもの3人。本当にドロップするかも分からないが、確実に手に入れるためには人数をかけるわけにもいかない。本当ならキリトにも頼みたかったのだが、頼まなかった。

アルゴにはああ言ったが、俺が噂のアイテムに固執しているのはもしかしたら第1層で失った『彼』を甦らせるかもしれないという淡い期待を抱いているからだ。

それをするのは、俺たち3人じゃなきゃダメだとも思っている。

 

「やっぱ思うんだけど、クリスって人使い荒いよね」

 

「今に始まったことじゃないけどね」

 

全員が全員に対して人使いが荒いわけでもないんだけどなぁ。

ただ、この2人だとどうしても扱いがこうなってしまう。気が置けない仲と言ってしまえばそれまでなんだけども。

 

 

 

 

 

 

 

 

あと少しで目的のモミの木が着こうかという時、後ろからやってくる気配を索敵スキルで捉えた。どうやらつけられてたらしい。

 

「これはこれは、風林火山の皆さんではないですか」

 

顔が視認できる距離まで近づいてきて見えたのは、クラインがギルマスを務める『風林火山』の面々だった。

厭味ったらしく言うが、クラインたちとは別に険悪というわけではない。よりにもよって後をつけてきたのが顔見知りのクラインだったことに苛立ちを隠し切れなかっただけなのだ。

 

「クリスよぉ、みずくせぇじゃねーか。イベントボスなんだからみんなで倒せばいいだろ?」

 

「こっちにも色々と事情があってね。今回ばかりは共闘する気はないよ。

だから悪いんだけど、手は出さないでもらえないかな」

「お前さんが第1層でのことをずっと気に病んでるのは攻略組のやつなら大体が知ってる。それを何も1人で解決しようとしなくてもいいだろうが」

 

「知った風な口を・・・」

 

俺たちが元オーバーウォッチメンバーの2世なのはまだ誰にも教えてはいない。

クラインのことだから善意100%で共闘を持ちかけてくれているのだろうが、この時の俺に限っては有難迷惑以外の何物でもなかった。

 

「ドロップ品はゲットした奴のもの。もし本当に蘇生のアイテムがドロップしたんなら、ドロップした奴があの人を蘇生すればいいだけの話じゃねぇか!」

 

ダメなんだ・・・それじゃダメなんだ。

 

分かりあうのが難しいと判明し、レイたちに交戦準備を指示しようとしたその時、新たな気配が無数感じられた。

 

「・・・どうやらクラインたちもつけられてたらしいな」

 

俺たちと風林火山の人数を足した以上の人影が現れた。新たな集団は既に各々武装を展開しており、敵対する気満々のようだった。

 

「ちっ、青竜連合のやつらかよ・・・こっちとも仲良く共闘、ってわけにはいきそうもないな。あまりいい噂も聞かねーし」

 

その名前は俺もよく知っていた。このゲームにおける最大ギルド『血盟騎士団』と並ぶ巨大ギルドだ。

イベントボスやレアアイテムの為なら手段を選ばないという噂もある連中か。風林火山ならまだしも、万が一こいつらにドロップしてしまった場合どうなってしまうかなど考えたくもない。

 

今度こそ交戦準備を指示しようとしたタイミングでクラインがこちらに背を向け、青竜連合と相対するように陣取った。

 

「クソッタレがっ!!」

 

クラインは背中に吊るしていた鞘から剣を抜き背中を向けたまま怒鳴った。

 

「ここは風林火山が責任持って引き受けた。誰一人として通しやしねぇ!お前らは行ってさっさとボスを倒しやがれ!!」

 

もうイベントの刻限まであと数分といったところ。

俺たちはクラインに背を向け、礼を言わず目的の地点へと走った。

 

 

 

 

 

 

モミの木の周辺には誰もおらず、俺たちだけしかいないことに安堵した。

現実に換算したら樹齢何年くらいの木なのだろうか、存在するだけである種の威圧感を感じる巨木だ。

 

 

 

日付が変わった。

 

 

 

 

今まで止んでいた雪が微かに降り始めると同時に、遠くから鈴の音が響いてきた。

音の方向を見れば、上空に何かが見える。その何かは次第に近づいてきて、モミの木の上空辺りに差し掛かった時、ここまで乗ってきたソリのようなものから飛び降りてきた。

 

それは、まさしくソリをトナカイに曳かれたサンタクロースだった。ただ、悪趣味なモデリングがされており、形容するならばとても大きい壊れたサンタクロースのマリオネットのようと言えるだろう。

 

「細工は流々、ホワイトクリスマスに現るサンタクロース、プレゼントは弾丸の雨って感じだな」

 

「同じサンタでも昔映画で観たサンディ・クローズさんのがまだ可愛いわ」

 

「あっ、その映画私も観たかも!」

 

まったく、緊張感の欠片もないな。

 

壊れたサンタはこちらの発言が気に障ったのか、担いでいた白い袋からガトリングガンと総称される物騒な獲物を取り出し構え、円形の銃口を空転させ始めた。

 

「そのプレゼントはいらないから、お前を倒してその袋ごといただこうかな。

2人とも、準備はいいな?今はまさにナイトメアクリスマス、油断してるとブギーマンに食われちまうぞ!」

 

 

 

--------------------イベントボス≪背教者ニコラス≫と戦闘を開始しました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クラインはクリスたちと別れた場所で、青竜連合と一戦交えた後留まっていた。

多勢に無勢だったのでクラインは青竜連合にタイマンを持ちかけ辛くも勝利し、クリスたちのもとへ連中が追いつくのを防いだのだった。

 

しばらくしていると、奥へと向かったクリスたちが戻ってきた。

クリスは戻ってくるなり、クラインに向かってアイテムを放り投げた。

 

「これは・・・?」

 

「噂の蘇生アイテムだよ。

が、意味なかった。対象のプレイヤーのHPが0になってからポリゴンが消滅するまでの間に使用しなければ効果がないらしい。今度、風林火山でもしもがあったときにでも役立ててくれ。俺には不要だ。」

 

クリスたちの顔は、イベントボスを倒したのに暗く、クラインは声をかけるのが憚られた。

 

「・・・ある程度は予想してたさ。

この世界はデスゲームだ。簡単に命が蘇るなんて、茅場が許すはずなさそうだからな。」

 

「クリス・・・・・・」

 

「なぁクライン、人の命ってやっぱり重いな・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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『アインクラッド新聞 12月某日号』

 

「賽は投げられた。俺は、俺たちは、理不尽なこの世界で殺し合わせてきた茅場晶彦を許さない。共に立て。そして共に戦おう。俺は今、この世界『オーバーウォッチ・オンライン』に宣戦布告する。

 

一体どれだけの血が流されたろう、どれだけの涙が流されたろう。一緒に戦った仲間たちは、この1年で大勢殺されてしまった。だけど世界から悪が滅びないように、俺たちもまた決して滅びることはない。俺たちは知っている。現実では一握りの大人たちが、一握りの国が、世界中の平和や自由を勝手に決めていることを。この世界では茅場晶彦が皆の生きる術と目的を決めてそれに従うしかないことを。だけど俺たちが生きるこの世界は決して1つなんかじゃない。そこにはあたりまえに生きる1万の人間がいて、1万の暮らしがあり、1万の平和、1万の正義、1万の戦争と悪があった。誰も戦わずに勝ち得た平和なんてない。平和の裏には沢山の血と汗と涙が染みついている。もし人が、その歴史から目をそらし、忘れてしまうなら、そんな平和なんか犬の糞だ!俺たちはオーバーウォッチ・オンラインという世界で孤独かもしれない。でも孤独を恐れるのはもうやめよう。共に立て。そして共に戦おう。俺たちは今、旧い靴を脱ぎ捨てて、今よりももっと遠くへと走り出す。俺たちから自由を奪い、抑えつけてきたゲームマスター茅場晶彦に向けて、あえてこのメッセージを送ります。遅ればせながら、メリークリスマス。

 

『ワイルド7』、ギルドマスター クリス」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここに、クリスがリーダーとなったギルド『ワイルド7』が誕生した。




新聞の演説内容は、知ってる人は知ってるかもです。
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