インフィニット・ストラトス―失われた未来― 作:レイブラスト
「あれ、セシリア? 何でIS外してるの?」
エネルギーを回復させた鎧武は生身で出てきたセシリアに首を傾げ、地面に降り立って問いかける。
「それは……こういうことだからですわ」
戦極ドライバーを一夏だけではなく観客達にも見えるように翳すセシリア。案の定、他の生徒達はまたもや驚いていた。
『ち、ちょっと! アレって織斑さんが使ってたのと同じじゃない!』
『嘘! じゃあオルコットさんって、専用機を2つも持ってるってこと!?』
「……どうして『そっち』を?」
「一夏さんと戦うのなら、こちらの方がいいと思いましたの。それに私も……私の変身を、皆さんに見て欲しいんですの」
セシリアは腰に戦極ドライバーを宛がって装着すると、バナナロックシードを解錠してくるりと回す。
「変身!」
『バナナ!』
上空にバナナアームズが出現して降下し始める。セシリアはバナナロックシードを戦極ドライバーにはめ込んで施錠し、ファンファーレのような音楽が流れる中カッティングブレードを倒して輪切りにする。
『ロック・オン!』
『カモン! バナナアームズ!』
頭部にバナナアームズが覆い被さり、アンダースーツが装着……されたのはいいが、それを見ていた女生徒の1人が思わず口走った。
『え、バナナ!? バナ、バナナ!?』
「……バロンですわ!!」
『Knight of Spear!!』
ムッとしながら叫んだ直後、アームズが展開して鎧となって上半身に装備。仮面ライダーバロン バナナアームズに変化した。
「さあ……行きますわよ、一夏さん!」
「わかってる。いつもと同じで、全力だよ!」
大地を蹴って2人が走り出す。勢いよく振られた大橙丸とバナスピアーがぶつかって火花を上げ、鍔迫り合いになる。
「くっ……はああっ!!」
バロンは力を込めて押し返すと、バナスピアーで鎧武の装甲を連続で斬りつけていく。
「きゃっ!? まだまだぁ!!」
無双セイバーを取り出した鎧武は素早く弾丸をチャージするとバロンに発射。バナスピアーで防御した隙を突き、大橙丸と無双セイバーで攻撃していく。
(やりますわね……ですが!)
『カモン! バナナスパーキング!!』
カッティングブレードを三回連続で倒してバナスピアーにエネルギーをチャージすると、勢いよく地面に突き刺す。瞬時に足下から無数のバナナ状のエネルギーが現れ、鎧武はバックステップで回避する。
『カモン! バナナスカッシュ!!』
再びバロンの戦極ドライバーから音声が流れ、武器を捨てたバロンが足を開いてゆっくりと腰を落とす。
「っ!」
『ソイヤッ! オレンジスカッシュ!!』
それを見た鎧武も同様にカッティングブレードを倒し、バロンと同じような構えをつくる。そして―――
「「はっ!」」
足を揃えて勢いよくジャンプすると、空中で一回転しながら鎧武は右足を、バロンは左足を前に突き出す。
「やああああああああああっ!!」
「はああああああああああああ!!」
空中で2人のキックがぶつかり合い、余剰エネルギーが波動のように溢れ出る。拮抗し続け、無限に続くと思われたこの対決は溢れたエネルギーの爆発で終わり、観客達が気づいた時には鎧武とバロンは先ほどとは真逆の位置で立っていた。だが……
「っ……!」
膝をついたのはバロンの方だった。直後にスピーカーから試合終了の声が発せられた。
『試合終了! 勝者、織斑一夏!!』
万雷の拍手が、戦い終えた鎧武とバロンを包み込んだ。
その後ピットに帰還した一夏とセシリアを、簪達は暖かく出迎えた。
「2人とも、お疲れ様」
「今回は一夏の勝ちだったようだな」
「正直危なかったけどね」
「でも、次は負けませんわよ」
「それはそうとして、些か決着の付け方が早くないか?」
「「だってセシリア(一夏さん)と2人でゆっくり休みたかったんだもん(ですもの)」」
疑問を述べた箒に2人はあっけからんと答え、マドカは半ば呆れたように左手で首元を仰ぎながらため息混じりに言った。
「はいはい。そういうのは自分らの部屋でやってくれ。やたら雰囲気が甘くて仕方ない」
「え、そんなに甘い?」
「十分甘いよ。お姉ちゃんだって、最近じゃからかうより先にダウンするぐらいだし」
「相当だな……」
一夏とセシリアの放つラブラブオーラの凄まじさに驚愕しつつ、皆は談笑しながらピットを後にした。
(セシリアまで……仮面ライダーに……!)
反対側のピットで鎧武とバロンの試合を見ていた春也は、内心呟きながら呆然としていた。
(この世界に仮面ライダー鎧武は存在しない。あれを作ることができるのは―――間違いなく『アイツ』しかいない)
自分と一緒に転生し、今まで一度も会ったことのない親友を思い浮かべ、彼は拳を握り締めて同時に歯ぎしりした。
(きっと一夏姉さんもアイツが助け出したんだ。クソッ、前世でも度々邪魔して来たと思っていたらこの世界でも邪魔をするか……!)
怒りが頂点に達しようとしていた時、彼はハッとして深呼吸で心を落ち着かせると、冷静に状況を判断していく。
(戦極ドライバーをセシリアが持っていたということは、おそらく他のヒロインや束さんとも関わっている筈だ。おそらく目的は原作の展開を起こさせないつもりか……だが甘い! そっちがその気なら、こっちにも考えがあるんだからな)
携帯電話を手に取ると、春也はあるところへ電話を掛けた。
「それでは、一年一組のクラス代表は織斑君に決定です」
翌日。山田先生は朗らかな笑顔と共にそう告げた。しかし話を聞いていた春也は疑問に思い尋ねた。
「あの、すいません。僕、負けましたけど……何故?」
「それは私達が辞退したからですわ」
疑問に答えたセシリアに、春也ははたと思い至った。原作ではこの試合が結果でセシリアが一夏に惚れたのだ。同じ白式を駆る自分にも、万に一つの可能性があるのなら―――
「貴方はまだ実戦経験が少ないのでしょう? クラス代表になれば、試合回数が増えて経験を積むことができる筈。それに個人的な事情なのですが……私達のどちらかが代表になると、プライベートで一夏さんと会える時間が減ってしまうでしょうし」
―――残念だが、その僅かな可能性さえ打ち砕かれたようだ。
「いやぁ、わかってるねセシリア!」
「せっかく世界で1人しかいない男子がいるんだから、同じクラスになった以上持ち上げないとね~」
「織斑君は貴重な経験が積めるし、他のクラスの子には情報が売れる! 1粒で2度おいしいね!」
クラスメイト達からは好評で、自分の株が下がっていないことにまずは安堵する。とはいえ、セシリアが自分のものにならないことが確定したのは彼にとって痛手だった。
(あの身体を好きに出来ないのは惜しいが……まあいいか。他にヒロインは幾らでもいるし、仮に全員がダメでもその時は二軍の奴らを口説けばいい)
「クラス代表は織斑春也に決定。異存はないな……では、授業を始める」
授業が始まる直前まで、春也は誰にもわからぬようニヤニヤしながら考えていた。
更に翌日。
「それでは織斑君! クラス代表決定おめでとう!」
「おめでとう~!」
クラッカーが放たれ、一斉に乾杯をする。春也のクラス代表就任パーティーが始まったのだ。当の春也は女子達に囲まれて騒がれ、大いに戸惑っていた。
「……うわぁ。私、代表にならなくて良かったかも」
「揉みくちゃにされるのは御免ですものね。そうなるなら、一夏さんとこうしている方がずっと楽しいですし」
苦笑する一夏に、セシリアは言い終えると「はい、あーん」とお菓子を食べさせた。
「ったく、姉さん達は安定してるな」
「むしろはっちゃけてとんでもないことになるかもしれん」
「マジか。私、とても耐えられる自信ないぞ?」
甘々な雰囲気の2人を見ながら、箒とマドカはソフトドリンクをぐいっと飲み、近くの生徒達と適当に話をする。元より春也のことには興味が無いので、純粋にパーティーを楽しんでいた。
「はいはーい、IS学園新聞部でーす。本日は話題の新入生、織斑春也君の特別インタビューをしに来ました~!」
その時、教室に1人の女生徒が入ってきた。話の内容から察するに新聞部に所属する上級生がインタビューに来たのだ。彼女は春也に一通りインタビューをすると、メモを取って一夏達のところへやってきた。
「失礼。織斑一夏さんとセシリア・オルコットさんかしら?」
「そうですけど?」
「私は二年の
「はあ……それでどういったご用件で?」
「私事なんだけど、2人のこと……応援してるから。風当たりが強くても、負けないでねっ」
それだけ言うと、薫子は一組を去って行った。
((((……いい人だな(ですわね)、あの人))))
この瞬間、4人の心は一つになった。