インフィニット・ストラトス―失われた未来―   作:レイブラスト

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第13話 中国からの転校生

「転校生? 今の時期に?」

 

クラスメイトから聞いた情報に、一夏は怪訝そうな顔をした。だが次の一言で彼女はあることに思い至った。

 

「うん。中国の代表候補生らしいよ」

 

(中国? てことは……あの子かな?)

 

懐かしむような表情に、セシリアは一夏が昔の友人のことを思い浮かべているのだろうと思い、尋ねた。

 

「一夏さん。もしかして今度の転校生、一夏さんの知り合いではないのですか?」

 

「え? ああ、確証は無いけど。中国の友達と言えば1人しか居ないから」

 

「織斑さんの友達ってことは、織斑君の友達でもあるの?」

 

「まあね。それなりに良い付き合いはしていたよ」

 

「何にせよ、頑張ってね! 織斑君が勝つとクラスみんなが幸せになるんだから!」

 

「ああ、スイーツパスのことか」

 

みんなが盛り上がっている原因を悟ったマドカが頷く。正直なところスイーツパスにさして興味はない。ただ、織斑春也が手も足も出ずに負ければいいと思っていた―――その時。

 

 

 

「その転校生って……私のことかしら?」

 

 

 

教室の入り口から1人の女子の声が聞こえた。それは一夏と春也にとっては聞き覚えがあり、懐かしい人の声であった。

 

「生憎だけど、二組の代表を変わって貰ったの。だから楽に勝てるとは思わないことね」

 

宣戦布告の言葉を投げかけつつも、彼女の視線は一夏を向いていた。そして……

 

「まあそれはともかく……久しぶりね、一夏」

 

「鈴…やっぱり鈴なんだね! 久しぶり!!」

 

「やっぱりって何よ~? 私が凰鈴音以外な訳無いっしょ?」

 

近づき笑顔で握手をする一夏と、活発な印象の女生徒の(ファン)鈴音(りんいん)。久しぶりの再会に2人の心は躍っていた。

 

「思った通りでしたのね」

 

「あ、うん……鈴。彼女達は―――」

 

「皆まで言わなくてもいいわ。みんなのことなら聞いているから」

 

「え?」

 

"聞いている"……その意味を問おうとしたが、寸前で邪魔が入った為言えなかった。

 

「やあ鈴、久しぶり。一夏とばかり話してないで、僕とも話してよ」

 

「……何よ織斑春也。アンタなんかに用は無いわ」

 

目に見えて鈴の機嫌が悪くなった。だが春也はめげずにいつもと変わらぬ表情で、鈴に話し続けた。

 

「冷たいなぁ。それに呼び方も、前みたいに春也って呼んでよ」

 

「冷たいですって? そりゃあ、アンタが一夏にしたことを見たら誰だってそうなるわよ」

 

鈴の放った一言は、春也だけでなく一夏達にも衝撃を与えた。彼女はセシリア達同様、一夏が春也から受けた仕打ちに気づいていたというのだ。

 

「……何が、言いたいのかな?」

 

「ふん! しらばっくれちゃって……まあいいわ。今更アンタに根掘り葉掘り聞くつもりはないし。でも覚えておきなさい。どうしても秘密にしたいことってのは、完全には秘密にできないものなのよ」

 

睨みながら言うと、時間が無いのもあってか鈴は二組へ戻って行った。一夏達は顔を見合わせていたが、春也はため息をついて落胆していた。

 

(どこかで見られていたか……僕としたことが、徹底さを欠いたな。お陰で鈴まで離れてしまった……アイツが絡んでることを考えると、このままだと本気でメインヒロイン達が落とせなくなるかも。ま、僕の手に入らないのならいらないから消せばいい。幸い女は周りに幾らでもいるし)

 

落ち込んだ思考をポジティブなものに切り替えると、彼は皆と共に授業に取り組んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「待ってたわよ、一夏」

 

「あ、鈴」

 

昼休み、食堂に訪れた一夏達を出迎えたのはラーメンを手に持った鈴であった。一夏達は食券を出してそれぞれトレーを持ちながら、鈴と共に近くの席に座った。

 

「本当に久しぶりだね…鈴。また会えるとは思ってなかったよ」

 

「中国に帰った直後は私もそう思っていたわ」

 

「……ところで鈴。私達、幾つか鈴に聞きたいことがあるんだけど……いいかな?」

 

「ええ、いいわよ。答えられる範囲内だったらだけど」

 

その場に居る面々を見渡して言うと、真っ先にマドカが小さく手を挙げて聞いた。

 

「では私から。凰鈴音「鈴って呼んで」……鈴と言ったな。私達のことは聞いていると言っていたが、一体誰からだ?」

 

「そのことなら……これを見ればわかるんじゃないかしら?」

 

がさごそと鈴は懐からある物を取り出した。それは一夏やセシリア、箒に簪が持っているのと同じ戦極ドライバーだった。

 

「そ、それ……! 何で!?」

 

「ちょっと前にスコールって人に変なとこに連れられた時、プロフェッサーから貰ったんだ」

 

「なるほど……貴女が噂の新人だったのね」

 

「「「「「「うわっ!?」」」」」」

 

唐突に聞こえてきた声に揃って驚く。いつの間にか『納得』と書かれた扇子を持った刀奈が、席に座って話しかけてきていた。

 

「い、いきなり現れないでよお姉ちゃん……」

 

「ごめんごめん。でも顔合わせぐらいはしておきたいと思って」

 

「その口ぶりからして、楯無さんは彼女について気づいていたんですか?」

 

「ちょっと前に耳に入れたのよ。新入りのアーマードライダーが腕を伸ばしているって。どんな人かはわからなかったけど、貴女だったとはねぇ」

 

「それよりもう一つ気になることがある。お前も亡国機業(ファントム・タスク)に入ったと言うことは、春也の本性を知っているのか?」

 

「あっ……!」

 

箒の疑問に、一夏は目を見開いて鈴を見る。すると彼女は肩を竦めながらため息混じりに語った。

 

「まあね。最初は単に良い奴と思ってたんだけど、中学の頃だったかしら……一夏を虐めているのを偶然見て言ってることを盗み聞いたのよ。で、弾と数馬と協力してできる限り一夏を1人にしないように心がけたわ」

 

「ち、ちょっと待って。今なんて言ったの? まさか、弾達も気づいてるの!?」

 

「そうよ。ただアイツが一夏に口止めしてるところも聞いてたから、知ってることは内緒にしてたの。……結果的にそれが裏目に出てしまったけど」

 

「迂闊にばらしたら一夏姉さんが危険な目に遭っていたのは間違いない。その判断は間違っちゃいないさ」

 

暗い表情になる鈴にマドカがフォローを入れる。気分を落ち着かせて「ありがとう」と述べると、一夏を見て言った。

 

「何にせよ、これからは同じアーマードライダーとして一緒に戦っていくから、改めてよろしくね一夏!」

 

「うん…よろしく!」

 

最初こそ戸惑いを感じていた一夏だったが、今は嬉しさが勝り笑顔で答える。鈴はそんな彼女とセシリアを交互に見るとこう言い出した。

 

「でもこっちも驚いたわ。私の知らないところで、一夏ったらこんな綺麗な子を恋人にしてるんだもの」

 

「色々とあってね……」

 

「まあその辺の事情は深く聞かないけど……これからも一夏のこと、頼むわ。セシリア」

 

「はい。お任せ下さい、鈴さん」

 

大事な親友を頼むことを真剣な面持ちで告げられ、セシリアは彼女を名前で呼んで頷いた。

 

「さてとっ。挨拶も済んだところで、さっさと昼食を片付けるとしますか」

 

「そうだな。食べ遅れて千冬姉さんに叱られるのだけは御免だ」

 

苦笑しつつ言うマドカに全員が似たような表情をすると、それぞれの食事を口へ運んでいった。

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