インフィニット・ストラトス―失われた未来―   作:レイブラスト

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第14話 乱入!クラス対抗戦!

クラス対抗戦―――それはアリーナ毎に各学年別で行われる一対一のクラス代表同士のトーナメント戦である。

毎年かなりの人気を誇るこの戦いは、今年は開始前からより一層盛り上がっていた。一年生の部に専用機持ちの代表が2人おり、内1人に世界初の男性操縦者がいるからだ。予想以上の盛り上がりを見せる観客席の様子に、映像を通して見た楯無は感嘆の声を出した。

 

「それにしても、今年は凄い人気ね……」

 

「イレギュラーなことが重なりましたからね。……ところでお嬢様。何故そんな浮かない顔を?」

 

「え? ああ、ちょっと……何となく嫌な予感がして……」

 

杞憂であって欲しいと彼女は思っていたが、こういう時の予感は的中するものである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻、ピットの片側では鈴が出撃準備を進めていた……のだが―――

 

「凰鈴音専用IS『甲龍(シェンロン)』。第3世代型で連結可能な青竜刀を武器とし、特殊兵装の衝撃砲は360度狙い撃つことができる、か……中々良い機体じゃないか」

 

「そりゃどーも。でも一言言っていい? ……アンタ達ホントは一組側でしょ」

 

何故か一夏達一組の専用機持ち達が挙って二組側のピットに来ている為、半ば呆れたようにツッコんだ。

 

「確かにそうだが、奴の応援ができると思うか?」

 

「それもそうね」

 

「え、こっちに来といてなんだけど納得しちゃうの?」

 

「彼の本性を知れば誰だってそうなりますわよ。一夏さんの応援なら全力で致しますけど」

 

「一夏が代表か……もしそうだったら結構楽しめたかもね。でも、織斑春也が代表なら何度でも叩き潰せるメリットがあっていいけど」

 

「フッ、良い性格してるな」

 

好戦的な表情に、傍で聞いていたマドカも実にいい笑顔になる。「まるで悪人がする顔だよ」と一夏はこっそり思っていた。

そこへ鈴と春也の出撃を求めるアナウンスが流れ、それを聞いた箒は鈴に声を掛ける。

 

「そろそろだな。全力で挑めよ」

 

「ったく、素直に受け取っておくけど、一組の人達が聞いたら怒るわよそれ」

 

とは言いつつも笑顔で正面を見据え、カタパルトで試合会場へと発射されていった。

 

「さて、私達は試合の様子を見るとするか」

 

見送った後、箒達はモニターの前へ歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(さてと……いよいよね)

 

アリーナの中央付近にて、鈴は白式を纏った春也と対峙した。こちらを見くびっているのか腕に自信があるのか、春也は笑みを浮かべていたが彼女にとってはどうでもよかった。

 

「始める前に言っとくけど、私は一切遠慮なんかしないから」

 

「上等。そっちこそ、僕の腕を見て腰を抜かすなよ?」

 

「フン……(ま、最初はお手並み拝見といきますか)」

 

『それでは両者、試合を開始してください』

 

試合開始を告げるアナウンスと同時に、鈴は青竜刀型武器『双天牙月』を強く握り締めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

試合内容は客観的に見ても中々良い展開だった。

より練習したのか、春也の動きはクラス代表決定戦の時よりも良くなっており、雪片弐型を振るってフェイントを混ぜながら鈴に近づく。

しかし鈴は双天牙月を使って攻撃を防ぎつつ、龍砲と呼ばれる衝撃砲から不可視の砲身から空気弾を放ち、春也を吹き飛ばす。すぐに態勢を立て直すと、今度は瞬時加速(イグニッション・ブースト)で急接近する。

雪片弐型による一撃を入れられるも、双天牙月を駆使して徐々に押し返していく。たまらず距離を取る春也だが、すかさず柄同士を連結させた双天牙月をブーメランのように投げ、回避したところに衝撃砲を叩き込んだ。

 

「わー、フルボッコだぁ……」

 

「完全に叩き潰す勢いだな、あれは」

 

序盤から怒濤のラッシュに一夏は顔をやや引き攣らせ、マドカは腕を組んで試合を眺め続けた。

 

「私からすれば、いい気味ですけど」

 

「あんな人、何も出来ずに負ければいいんだ」

 

「言われまくりだな。私も同意見だが」

 

辛辣なコメントに嘆息をつく箒だったが、内心は2人と同じだった。

そんな彼女達の前で、鈴はいよいよ決着をつけようと春也と向き合っていた。龍砲にエネルギーをチャージし、何故か春也がほくそ笑んだその瞬間―――アリーナに衝撃と爆発音が走った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鈴と対決していた春也は、内心毒づいた。

 

(チッ、本当に容赦が無いな! だがこの試合で墜とされる訳にはいかない!)

 

序盤の連続攻撃でシールドエネルギーが減ってしまった為、彼は一旦回避行動に専念する。そして『その瞬間』を今か今かと待ち構えていた。

 

「世界初の男性操縦者と言っても、この程度か……」

 

「(言ってろ。……さて、そろそろかな)……フッ」

 

そろそろかと笑みを浮かべ、鈴が怪訝に思った直後。アリーナのバリアを粉砕しながら何かが上空から降ってきた。

 

「攻撃!? どこから!?」

 

センサーで周囲を確認した鈴は、爆煙が晴れる中に襲撃者達の姿を見つけた。

全身装甲(フルスキン)に通常のISより一回り大きな駆体。全部で二体居る内の一体は両腕がビーム砲になっており、もう一体は両腕が鋭利なブレードになっている。

 

「データに無い機体……何者なの、コイツ等?」

 

(フフ…ショーの始まりだ!)

 

困惑と警戒が混じった感情で襲撃者達を見る鈴の傍で、春也はこれからの立ち回りを想像してニヤリと笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突如として現れた侵入者に、一夏達は息を呑んだ。と同時にいつでも出撃できるように準備をすると、まずマドカが千冬に通信を行った。

 

「織斑先生、聞こえますか?」

 

『織斑妹か。ああ、聞こえるぞ』

 

「状況の説明と今後の指示をお願いしたいのですが」

 

『わかった。だが、どうにもまずいことになっていてな……各アリーナの遮断シールドがレベル4で固定されて解除不能な上、ピットのドアには全てロックが掛かっている。加えて織斑と凰の居るアリーナ以外にも、同様の襲撃者が現れているんだ』

 

「なんですって!?」

 

『今からお前の端末に座標を送る。全員で見てくれ』

 

千冬が言い終えると同時に、マドカは回線を繋いだまま端末を操作してIS学園のマップを表示させる。侵入者と思われる赤い点がいくつか点滅していた。

 

「二年と三年のアリーナに一機ずつ。グラウンドに三機。そしてここに二機か……どうする?」

 

「そうだな…ここの敵は一夏が鈴と合流して戦えば問題無いだろう。二年側にはセシリアと箒、三年側には私と簪が行くとして残るグラウンドはどうするか……」

 

『教師達が量産型で応戦しているが、状況は芳しくないようだ。何、心配するな。既に私と楯無が向かっている』

 

「了解しました。……さて、各々のポジションはさっき説明した通りだが、何か異論は?」

 

「無いよ」

 

「ありませんわ」

 

「「特に無い」」

 

一様に言う4人を見渡して、マドカは無言で頷く。4人も頷くと、一夏を残して走って行く。一夏は1人ピットの扉へ向きを変えると、オレンジロックシードを右手で持つ。

 

「ふう。まずはここを突破しなきゃね……変身!」

 

『オレンジ!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二年生が代表戦を行っていたアリーナに紅椿を纏った箒とブルー・ティアーズを纏ったセシリアが突入した時、応戦していたと思われる女生徒2人のISはエネルギー切れで戦闘不能になっていた。

 

「タイミングとしては良かったみたいだな」

 

「そうですわね。後は……」

 

目前に佇む黒いISをセンサーで調べていく。

 

「生体反応がない? まさか無人機か?」

 

「無人機の開発は未だ為し得ていない筈ですが、今はそんな疑問より撃破することに専念しませんと」

 

「ああ。だが無人機となると好都合だ……全力を出し切れる!」

 

言うが早いか箒は刀剣型武器『雨月(あまづき)』と『空裂(からわれ)』を手に、敵ISに接近する。敵はビーム砲の銃口を向けるが、既にビットを展開しスターライトmkⅢを構えていたセシリアの牽制攻撃で動作が中断される。

 

箒は一瞬生じた隙を見逃さず、振るった空裂から放たれたエネルギー刃でビーム砲が搭載されている腕の内、右腕を切断。瞬時加速(イグニッション・ブースト)で肉薄すると雨月で残る左腕の銃口に突き刺しレーザーを発射。破壊して丸腰同然にする。

トドメにセシリアが全方位一斉射で頭部を撃ち貫き、機能を止めた。

 

「呆気ないな。無人機だからと期待していたが、こんなものか」

 

「動きが単調でしたもの。仕方ありませんわ」

 

破壊した敵機の残骸を見下ろしながら、2人は息を切らした様子もなく顔を見合わせしばし話をしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

三年側のアリーナピットの扉を破って突入したマドカと簪は、二年側に現れたのと同型の敵ISを目にした。

 

「コイツが襲撃者か。無骨な奴だな」

 

「マドカ。あれ、多分無人機だよ。生体反応が無い」

 

「何? そうか……それは遠慮がいらなくて都合がいいな!」

 

「同感!」

 

会話を区切ると、素早く左右に分かれる。黒い敵ISは砲門をそれぞれ2人に向け放つ。回避したものの、ビームはアリーナのシールドを振動させた。

レベル4のシールドすら破られる可能性がある……短期決戦しかない。図らずも離れたところで簪とマドカは同じことを考えていた。

 

ビームを再チャージする間に、簪は自身の専用機『打鉄弐式』の背面に搭載された荷電粒子砲『春雷』を、マドカのサイレント・ゼフィルスは専用ライフル『スターブレイカー』を構え、同時に斉射。装甲にダメージを与えて仰け反らせた瞬間に全ビットとマルチミサイルランチャー『山嵐』から、計6つのレーザーと48発の誘導ミサイルを放つ。敵ISはビーム砲で迎撃するも、数発しか防げずほとんどが命中。駆体のあちこちから火花を散らせ、敵機は倒れて機能停止した。

 

「他愛もない相手だったな」

 

「ただのプログラムだもの。人の底力には勝てない」

 

ライフルで既に動かなくなった敵ISを小突き、彼女らは顔を見合わせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

専用IS『ミステリアス・レイディ』を装着した刀奈が到着した時、戦況は敵側に押されている状態だった。敵ISはビーム砲装備が二機にブレード装備が一機の組み合わせで、機械的だが連携を取りつつ戦っており、性能差もあって教師側は攻勢に出られなかった。

だが簪達とアーマードライダーとしての訓練を行っていた刀奈にとって、敵の動きはさして驚異的には感じられなかった。

 

(これも特訓の賜物って奴かしらね)

 

「!? 貴女、生徒会長の……!」

 

「ここは私に任せて下さい。ああ、心配は無用ですよ。学園最強の名は伊達ではありませんから」

 

学園最強―――その言葉に納得した教師達は一時後退する。彼女は他者を見下すような性格ではないが、教師達の動きを見てむしろ足手纏いになるだろうと感じていたので都合が良かった。

 

「さあ、掛かって来なさい。機械人形」

 

ブレード装備のISが突っ込んでくる。しかし遠くから行動パターンを見て無人機だと察した彼女に、遠慮も何も存在しない。故に―――

 

「ゼロ距離……貰ったわよ」

 

―――ランス型武器『蒼流旋(そうりゅうせん)』をブレードのリーチ外から先んじて突き立て、内蔵されたガトリングガンをぶちかますという、相手を確実に殺す戦法を取れる。

 

「怯んでるところ悪いけど、後ろのお仲間共々お陀仏にさせて貰うわ」

 

指をパチンと鳴らすと、突如として三機のISが爆煙に包まれる。ミステリアス・レイディのナノマシンを応用した必殺技『清き熱情(クリア・パッション)』を食らった敵機は、ビーム砲装備はギリギリで回避したもののブレード装備はまともに食らい破壊された。

二機の敵ISは状況が変わったと見たのか、自分達の任務を果たしたのかどこかへ移動しようとした。刀奈は追いかけようとして、やめた。何故なら―――

 

「どこへ行く気だ?」

 

世界最強がその進路に立ち塞がっているからだ。想定外の事態に敵IS達は立ち止まる。

 

「人が乗っている気配がしないのを見ると、無人機か。なら通常モードのテスト相手にうってつけだな」

 

左手で取り出したゲネシスドライバーを腰に当てると銀色のベルトが伸張し、装着される。千冬はマドカが使っているのと同系列の、通常型より性能が高いエナジーロックシードの1つである『E.L.S.-04』と書かれたメロンエナジーロックシードを取り出してロックを解除する。

 

「変身」

 

『メロンエナジー!』

 

頭上に斬月のそれとは違い夕張メロンを模した、メロンエナジーアームズが現れる。その後素早くゲネシスドライバーにメロンエナジーロックシードを固定し、施錠した。

 

『ロック・オン!』

 

音声と同時に重低音が鳴り響く。相手を見据えたまま、千冬はゲネシスドライバー右側のハンドル・シーボルコンプレッサーを握り押し込んだ。

 

『ソーダ! メロンエナジーアームズ!!』

 

メロンエナジーロックシードのカバーが展開してアームズが頭部に被さると、白と黒の二色のアンダースーツ・ゲネティックライドウェアが全身を覆い、同時にアームズが展開して上半身に鎧となって装着。彼女の姿を次世代型アーマードライダー、仮面ライダー斬月・真 メロンエナジーアームズへと変えた。

 

「あれが織斑先生の新しい力か……」

 

そう呟いたのは刀奈で、他の面々は皆驚きのあまり声すら出ない。織斑一夏と同じ力を彼女が持っているとは、さすがに想像もつかなかったのだ。

その時、二機の敵ISがビーム砲を同時に放った。

 

「はあっ!!」

 

斬月・真は右手に持ったマリカのと同じ武器『ソニックアロー』を振り、ビームを縦に切り裂いて避ける。続けてソニックアローから光矢を連続して放ち、敵ISの装甲に当てて火花と共に怯ませる。

 

「次はこれだ」

 

ゲネシスドライバーからメロンエナジーロックシードを外すと、ソニックアローにある窪みにセットしてロックを掛ける。

 

『ロック・オン!』

 

一歩一歩敵ISに斬月・真は歩み寄る。その様はさながら死刑執行人と言ったところか。AIが恐怖を覚えるとは思えないが、まるで恐怖を感じたかのように敵ISは再びビーム砲を構える。が、

 

『メロンエナジー!!』

 

「はああああああああああああああっ!!」

 

エネルギーがチャージされたソニックアローを振り抜き、斬撃を横一文字に飛ばす。斬撃はISを二機纏めて上半身と下半身を泣き別れさせ、破壊した。

 

「さすがは織斑先生だわ」

 

「これがゲネシスドライバーの力か……」

 

二機のISを相手に勝ってみせた斬月・真に刀奈は感嘆し、変身を解除しながら千冬は新たな力を噛み締めていた。

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