インフィニット・ストラトス―失われた未来― 作:レイブラスト
マドカ達が散らばって行ったのと同時刻。鈴は緊急事態に見舞われていた。敵IS達のカメラアイが光った瞬間、甲龍が機能停止してしまったのだ。
「ジャミング装置……! 味な真似してくれるじゃないの!」
即座に原因が何なのか察した鈴は今後どうするか考える。だが隣に居る春也はそんなことはおかまい無しだった。
(よし。後は奴らを倒せば僕の株は急上昇だ! そうすれば……フフフッ!)
より一層ニヤリと笑うと、白式の零落白夜を発動させ一気に近づこうとした。
『オレンジスカッシュ!!』
ドォォォォン!!
しかしそれは、耳に入った音声と共にビットの扉を破壊して駆け寄ってきた鎧武によって注意を削がれ、中断してしまった。
「なっ!?(一夏姉さんめ、またか!)」
「鈴! 大丈夫!?」
「この通り無事よ、一夏。でも状況は良くないわ……奴らのジャミング装置でISが起動できなくなってるのよ」
「ISが? じゃあ―――」
「こっちで行くしか無いってことね」
懐に仕舞っていた戦極ドライバーを取り出して腰に当て、フォールディングバンドを伸張させ装着する。
(戦極ドライバーだと…まさか鈴も!?)
内心驚く春也の前で、鈴は表面がブドウを模しているブドウロックシードを取り出し、スイッチを押してロックを解除した。
「変身!」
『ブドウ!』
頭上にブドウの形をしたブドウアームズが現れて降下する。次にブドウロックシードを戦極ドライバーに装填し、施錠をする。
『ロック・オン!』
銅鑼や二胡による中華風のミュージックが流れる中、カッティングブレードを倒してロックシードを輪切りにする。
『ハイーッ! ブドウアームズ! 龍・砲・ハッハッハッ!!』
一気に落下したアームズが頭を覆い、全身が緑のライドウェアで包まれるとアームズが展開して鎧となり装着。鈴の姿を仮面ライダー龍玄 ブドウアームズに変えた。
「これが鈴のアーマードライダー……」
「そっ。龍玄って言うの。さあ…行くわよ一夏!」
「うん!」
「え? ちょ……」
春也が何かを言う前に2人は行動を開始した。鎧武が大橙丸を持って先行して接近し、突進してきたブレード装備型と刃をぶつけ合い火花を散らす。後方からビーム砲装備型が援護しようとするが、それより前に龍玄がブドウの意匠が施された専用銃『ブドウ龍砲』を撃ち、援護を許さない。
「はっ! たあっ! ……っと、次はこれで!」
『パイン!』
敵ISとの距離を開けると、鎧武はオレンジロックシードを戦極ドライバーから外し、代わりに取り出した表面がパイナップルを模し『L.S-05』と書かれたパインロックシードを解錠。オレンジアームズが消え、頭上からパインの形をしたパインアームズが降下して来る中、パインロックシードをドライバーにセット。ロックを掛けてカッティングブレードを倒して輪切りにした。
『ロック・オン!』
『ソイヤッ! パインアームズ! 粉砕・デストロイ!!』
落下して展開したアームズは上半身に装着し、鎧武をパインアームズへと形態変化させた。
「纏めてやっつける!」
フレイル型武器『パインアイアン』を振り回し、龍玄と共に二機の敵ISに同時にダメージを与えていく。
「よし……これで決めるよ、鈴!」
「任せなさい!」
『ソイヤッ! パインスカッシュ!!』
『ハイーッ! ブドウスカッシュ!!』
2人は戦極ドライバーのカッティングブレードを素早く倒し、まず鎧武がパインアイアンを敵ISに蹴飛ばす。ビーム砲装備型は間一髪避けたが、ブレード装備型は巨大化した鉄球部分に動きを封じられる。鎧武と龍玄は勢いよく跳躍すると空中で一回転し、それぞれ右足と左足を突き出してキックを放った。
「セイハァァァァァァアアアアアアアアアアーッ!!」
「はぁぁぁああああああああああああああッ!!」
必殺のダブルライダーキックが炸裂し、ブレード装備型を木っ端微塵に吹き飛ばした。その様子を見ていたビーム砲装備型は形勢不利と判断、上空へ移動し脱出を謀る。
「逃がさないわよ、コイツ!」
『ハイーッ! ブドウスカッシュ!!』
カッティングブレードを再度倒した龍玄は、ブドウ龍砲後部のレバーを引いてエネルギーをチャージ。トリガーを引きブドウの粒を模した弾丸を連射して動きを止めると、龍型の大型弾を発射して敵ISを爆散させた。
「一丁上がり!」
「やったね、鈴!」
「ふふん、どうよ? 中々のモンでしょ!」
得意気に言いながら、龍玄は鎧武と共に変身を解除する。そして敵ISの残骸からISコアを抜き取りピットへ戻ろうとして、チラッと春也が視界の端に映った時、ある違和感を覚えた。
(そういえばジャミング装置が働いていたのに、何でアイツのISだけ解除されなかったんだろ?)
「2人とも、お疲れ様」
ピットへ戻った一夏と鈴を待っていたのは、労いの言葉を掛けた刀奈を始め各方面の敵ISを担当しに行っていた面々だ。表情から見て他の敵ISも撃破することができたのだとわかり、安堵する。
「みんな無事で何よりだ。疲れているだろうから本当ならゆっくり休んで欲しいが、生憎聴取や報告書の提出に敵ISの解析が残っている。すまんが今暫く付き合ってくれ」
申し訳無さそうに言う千冬に皆快く頷くと、遅れてやってきた春也と共にピットを出て行った。
その日の夜。本部の食堂で束達と食事を摂っていた凌馬は、タブレット端末に表示された情報を見て「うーん」と唸っていた。
「何か悩んでるけど、どうだったの?」
「ざっくり言うと敵は無人機でコアは全て未登録のもの。一夏ちゃん達の前に現れた個体はISの展開を阻害するジャミング装置を持ってたけど、何故か白式は正常に動いていた。……悩む要素がわんさかだよ」
「ちょっと見せて」
隣に座る束がひょいとタブレットを取って目を通す。するとその表情がみるみる内に険しいものへと変わっていった。
「おかしい……このIS、私が設計図の段階で開発中止にした筈なのに」
「何だって? てことは、誰かが設計図を盗んだってことか? んなことできる奴いんのか?」
「居るわよオータム。私達がマークしているあの男が」
その言葉にオータムはハッとし、凌馬と束は頷いた。
「そう。天才的な頭脳を持つ彼なら、ISのコアを作れても不思議じゃあない。最も1人じゃ限界があるから、協力者が居るのは間違いないだろうけど」
「協力者ねぇ。今の世の中、心当たりがありすぎるぜ?」
「しばらく泳がせて、尻尾を出すのを待つのがいいかな……」
先ほどとは打って変わって、悲しげな顔で束は呟く。心配した凌馬が何事かと声を掛ける。
「浮かない顔しているけど、どうしたんだい?」
「うん……もし背後に何者かが居るとして、何ではるくんは道を外れるようなことをしちゃったんだろうって……」
「……そうだね。だからこそ止めなければならない。彼がこれからやろうとすることを全て」
「ええ」
「だな」
新たに決まった目標を確認し、4人は再び目の前の食事に手をつけた。
Prrrrrrrrr!!
人気の無いIS学園の海岸で、春也は電話をかけていた。少しして相手が電話に出て彼は爽やかに対応する。
『もしもし?』
「あ、会長さん? 僕だけど」
『あら春也君。何か用……って言うのは野暮ね。どう? 送り込むタイミングはばっちりだった?』
「タイミングは良かったんだけど、僕の前に現れた奴も他の奴らも、僕以外の連中に倒されちゃってさ」
『あら、そうなの? やっぱり全機にジャミング装置つけた方が良かったかしら』
「
彼が話している女性は、女性権利団体のトップの人間だ。春也が団体と繋がりを持ったのは、小学校6年生の時。織斑千冬の弟ということで接近してきた彼女達を上手く説き伏せ、協力関係を結んだのだ。
『でもその様子だと、装置の識別機能は正常に働いていたみたいね』
「うん。白式は除外されてたよ」
『となると、次の行動までに準備が必要ね。今後のスケジュールはどうなってるの?』
「それは今度改めて話すけど、今度は数を増やして欲しいな。僕が渡した設計図で、コアなら幾らでも作れるんだから」
『任せて。……それにしても、貴方には脱帽するわ。コアの作り方だけじゃなく、無人機の設計図や篠ノ之博士が中止にしたスケジュールなんかも知っているなんて……』
「怪しんでいるの? 目的はとっくに話したと思うけど」
『ええ、わかっているわ。貴方と私達が世界を支配する、全てはその為の行動だって』
「そういうこと。じゃ、またかけるから」
ピッと電話を切った春也の顔は、さっきの爽やかなものとは違いニヤリとした悪意を含んだ笑みになっていた。
「ふん。せいぜい僕の為に動いてくれればいいさ」
本編中に出てきた言葉のちょっとした解説。
篠ノ之博士が中止にしたスケジュール→織斑春也の嘘で本当は彼の原作知識。