インフィニット・ストラトス―失われた未来― 作:レイブラスト
「え? 一夏さんのご友人の家へ……ですか?」
数日後。自室にてセシリアは一夏の言葉に思わず聞き返した。
「うん。折角の休みだし、最近落ち着いてきたから顔を合わせておこうかなって」
「どんな方達なんですの?」
「私が中学の頃にできた数少ない男友達で、鈴と一緒に他のクラスメイトから私を守ってくれたんだ」
「一夏さんにとっての恩人ということなんですね。そういうことでしたら、私も会ってみたいですわ」
「そうなの? じゃ、一緒に行こうか。向こうには内緒にしてさ」
「ええ」
話が纏まると、財布等の貴重品を持って2人は部屋を出た。
「よっ、一夏! 久しぶり!」
目的の家につくと、玄関前に当人の五反田弾と彼から連絡を受けた御手洗数馬が立っていた。
「久しぶり。弾、数馬」
「辛いことがあったって聞いたけど、元気そうで何よりだ。ん? そっちの子は……」
「紹介するね。彼女は―――」
「ああ、言わなくてもわかってる。恋人のセシリア・オルコットさんだろ」
「「え?」」
顔を見合わせる一夏とセシリア。自分達の関係はまだ話していないと言うのに、どうして知っているのか。
「兎に角家に上がって。詳しい話はそれからだ」
弾に促され、2人は首を傾げながら勝手口から入って行った。
「それで、どうしてセシリアのことを知っていたの?」
二階の弾の部屋に入って腰を降ろした後、一夏は真っ先に尋ねた。弾と数馬は一瞬顔を見合わせると、真剣な面持ちで言った。
「これを見れば、きっとわかる筈だぜ」
服の裏側にあるポケットをまさぐり、2人はあるものを取り出す。それを見た一夏とセシリアは仰天して声を上げた。
「これって、戦極ドライバー!? 何で!?」
「あ、貴方達は、もしかして……!?」
「そう。アーマードライダーだ。ただしレイドワイルドっていう、セカンドチームに所属してるけどな」
「凌馬さんが言ってたのって、このことだったんだ……」
何時ぞやの凌馬の言葉を思い出し、一夏は驚きつつも納得していた。
「では織斑春也のことも知っているのですか?」
「ああ。気さくな奴だと思ってたんだが、どうもその気さくさが上っ面っぽくてな。一夏を虐めてる現場を見て確信したんだ。コイツは信用できねぇって」
「打ち明けられなかったのは、悪かったと思ってる。アイツが何しでかすかわかんなくて……」
「謝らなくていいよ。私の味方になってくれたのは事実だし、心の支えになったから」
「そっか…それを聞いてやっと安心できたぜ」
ホッと胸を撫で下ろす弾と数馬。彼らは一夏に対して親身になれなかったことを今の今まで悔いていたが、彼女の言葉と笑顔でようやくその重荷を降ろすことができたのだ。
「……オルコットさん。これからも一夏のことを頼みます。俺達も、微力ながら応援しますから」
「……任せて下さい。一夏さんのことは、私が責任を持って支え続けますから」
「お、大げさだよぉ……」
頭を下げて頼み込む弾達の姿に強い決意を以て応えるセシリアの姿に、一夏は嬉しさと照れくささが混じった気持ちになった。
「そ、それより、弾達がレイドワイルドの一員ってことは、箒達も知っているの?」
気恥ずかしさから別の話をすると、弾と数馬は少し考えてから述べた。
「多分知らないんじゃないか? セカンドチームの面は基本的に秘密だし、知ってるのは鈴とラウラ・ボーデヴィッヒって子ぐらいだったと思うぞ」
「そういえば、更識楯無って人も感付いてるような話を聞いたけど……」
「では私達がいない内に、話しているかもしれませんわね」
「あー、あるかも。どうせ会いに行ってるから知る筈だって言ってさ」
何となく刀奈がやりそうだと思い、一夏は苦笑いした。
「くしゅんっ!」
「どうしたのお姉ちゃん?」
「うーん、何だろ……誰か噂しているのかしら? ってそんなことより、もっと話して欲しいんだけど」
「そんな気になります? 弾と数馬の話」
「そりゃね。みんなもそうでしょ?」
「まあ一夏の支えになってくれたのであるとのことだから、気にならないと言うのは嘘になるな」
腕を組んで言う箒に他のメンバーも頷く。彼女達は鈴から一夏が弾達のところへ行ったという話を聞き、興味本意で生徒会室に集まって詳しい話を聞くことにしたのだ。
「と言ってもレイドワイルドの件も含めて粗方話したし……強いて言うなら、今まで一度も彼女ができたことが無いことかな?」
「本当なのか? 写真を見たが2人とも顔は良い方だし、性格だって鈴が言った通りなら多少なりともモテてもおかしくは無い筈だが」
「それについては、運が無かったとしか言いようがないのよ。2人が好きになった女子は悉く女尊男卑思想抱えてるわ、その他の女子は織斑春也の方ばかりに行くわで」
「女難の相でもついてるのかソイツ等は……」
良い奴なのに報われてないことを知ったマドカは、写真の中の弾と数馬に憐憫の視線を向けた。
「いい出会いがあって欲しいと願う他ないな」
「あ、出会いと言えば虚ちゃんも気にしてることを言ってたような……」
「ふむ。そう考えてみると、相川も男子との出会いが欲しいと最近愚痴ってたな」
「ここ女子校みたいなもんだし、難しいよね」
「せいぜい文化祭でしか切っ掛けが無いよな……」
思わず揃ってため息が出てしまう鈴達であった。
その頃、織斑春也は。
「……何だよ弾の奴。行っていいか聞いたらダメだと即答してきて……あーあ! 虐め指示してたの見られるんじゃなかった!」
完璧さを欠いたことを悔やみながら、1人寂しく部屋でゲームをしていた。