インフィニット・ストラトス―失われた未来― 作:レイブラスト
「…………はぁ……」
彼女は、自身が作った移動式のラボの中で無数のモニターを見ながらため息をついていた。そこに映るのはISの登場によって行われている、男性の迫害や違法研究施設の映像……そして親友の弟が誰かを嗾けている様子だ。
「こんなことの為にISを作った訳じゃないんだけどな……って、大本の原因は束さんにあるんだろうけどね」
頬杖をつき、空いた手で髪の毛をくるくると巻きながらボーッとモニターを見続けている。と、突然モニターの1つがどこかから通信が来たことを告げた。
「? この移動式ラボに通信して来るなんて、一体誰が? ちーちゃんか箒ちゃん……は携帯にかけてくるか」
訝しみながらも通信機能をオンにする。果たして誰がこちらに連絡を寄越して来たのか? その結果は意外な者からだった。
『あー、もしもし? 篠ノ之束さんのお宅でしょうか?』
「んーそうだけど何か用? 私も忙しいから、つまらない内容だったら切るよ」
『まあまあそう仰らずに。簡単なことです。私が推し進めているプロジェクトに必要不可欠な、ISのコアを新造・提供して頂きたいのです』
「ふうん……それってさ、私にとって有益になるのかな? 今までテレビ越しだけど業務提携したいって言ってきた企業は、どれも私に匹敵する技術力を持って無かったし」
『その点でしたらご心配なく。現にこうして貴女のラボに直接通信しているのが、何よりの証明になると思いますが』
「むっ」
悔しいが正論だった。今まで彼女のラボに直接、通信をしてきた人間や組織は身内や親友以外誰1人としていない。彼女は通信機越しに会話しているこの男に、興味を持った。
「……いいよ。でもまずは実際に会ってどんなプロジェクトなのか見せて貰わないと。そっちの場所と企業名を教えてくれない?」
『承知しました。場所はそちらの画面に表示させますが、企業名は……
「…………へぇ」
益々興味が沸いた。
(久々に現れたかも。私を満足させてくれる相手が)
画面に映る座標をチラ見すると、彼女はすぐに支度をしてラボを出た。
「……ふぅ。心臓止まるかと思ったよ」
「でもお陰で篠ノ之束博士がこちらに来てくれるんでしょう?」
「とは言うけどさぁ、スコール。こっちとしては気が気じゃないんだよ。何というか、寿命が二、三年縮まる感じで」
「……それは大変だったわね。お疲れ様」
通信を切って額の汗を拭いながら言う男に、秘書であるスコール・ミューゼルが労いの言葉をかける。
「ま、成功したからいいけど」
言いながら、彼は服の胸ポケットに付けたネームプレートをついと掴む。
(それにしても未だに思うけど、もうちょっと名前どうにかならなかったのかなぁ)
戦極凌馬―――そう書かれたプレートを見つめながらため息をつく。何を隠そう、彼こそが運転手をしていた青年の転生した姿なのだ。
(いくらなんでもそのまま過ぎるよ。まあ響きとか字面とかカッコイイからいいけど…………ん?)
ネームプレートから視線を外してモニターを一瞬見た時、こちらに近づく未確認物体の存在に気がついた。無性に嫌な予感がし、席を立とうとした瞬間―――壁を突き破って人参型ロケットが突っ込んできた。
「……早過ぎやしませんか? 篠ノ之束博士」
「ふふん! 遅すぎよりは遙かにマシなのだよ!」
土煙を払いながら、凌馬はロケットから降りて腕を腰に当て、ドヤッと決め顔をしている女性―――篠ノ之束を見つめた。
「それでどんなプロジェクトなの? 折角来てやったんだから、さっさと見せてよ」
「ええ、わかってますとも。こちらに」
早歩きでデスクに近づいてくる束に、凌馬は引き出しからあるものを2つ取り出して見せた。片方は右側に刀のようなものが付いた黒いバックル。もう片方はカラフルな錠前のようなものだ。
「何これ?」
「こちらはロックシードと言い、ISコアを加工・変化させたものです。こっちは戦極ドライバー。ロックシードの力を引き出すツールです。……論より証拠、実際にお見せしましょう」
席から立ち上がり、戦極ドライバーを腰に当てるとそこから黄色のフォールディングバンドというベルトが伸張し固定される。
『レモン!』
手に持ったレモンロックシードを解錠すると、頭上にレモンを模したレモンアームズが出現する。
「変身!」
『ロック・オン!』
即座に戦極ドライバーに装着・ロックするとトランペットによるファンファーレの音が鳴り響き、凌馬はカッティングブレードと呼ばれる右側の刀を倒し、レモンロックシードを輪切りにする。
『カモン! レモンアームズ! Pierce of Rapier!!』
流れ出る音声と共に全身が青と黒のアンダースーツ・ライドウェアで覆われ、レモンアームズが頭に被さる。そして展開・装着され凌馬の姿は仮面ライダーデューク レモンアームズになった。
「これが私の開発した、アーマードライダーシステム。その試作機のデュークです」
「……す……」
「「す?」」
「凄い凄い! まさかISコアを改良してこんなものを作るなんて! ねえどんな機能があるの!? どんなことができるの!? 教えて教えて!!」
「わ、わかりましたから落ち着いて下さい!」
予想以上の食いつきぶりに圧倒されながら、デュークは宥めると一つ一つ説明し始めた。
「まずアーマードライダーの性能についてですが、ライドウェアやアームズで装着者を保護する為、既存のISとは異なりシールドエネルギーや絶対防御を必要とせず、エネルギー切れの概念がありません」
「へぇ~! でもそれだと、試合の時とかでワンサイドゲームになっちゃうね」
「心配ご無用。ドライバー横に取り付けたスイッチを押すことで擬似的にシールドエネルギーを発生、攻撃力を第3世代型IS並にダウンさせ同じ土俵に立つことができます。そして用途ですが、基本的には人命救助や宇宙での活動等に用いようと考えていますが、量産の暁には違法研究所の制圧及び破壊も視野に入れています」
「……面白いね。うん、気に入った! 束さん、君達をジャンジャン援助するよ~!」
ご機嫌な笑みで手を振って言う彼女に、マスクの下で凌馬はふぅと息を吐いた。篠ノ之束が興味を持ち、援助を行ってくれるかは一種の賭けに等しかった。
(まずは一段落ってとこか)
「あ、そうだ。君達の名前を教えて貰ってなかったね。役職と一緒に教えてよ」
「私の名前は戦極凌馬。
「私はスコール・ミューゼル。プロフェッサー凌馬の秘書を務めています」
「戦極凌馬に、スコール・ミューゼルか……よし! これからはりょーくんとすーちゃんと呼ぼう!」
「す、すーちゃん?」
(案外まともなので良かった……)
妙な渾名を決められたスコールは唖然とし、デュークは内心ホッとしながら変身を解除した。
「ああそれと、私のことは束なり束っちなり好きに呼んでくれて構わないよ。後、敬語も無しね~」
「……了解した。束……これでいいかな?」
「オッケ~!」
楽しそうにスキップをする束を見た後、凌馬は椅子に腰掛けいよいよこれからだと決意を新たにした。
如何でしたでしょうか? 戦極ドライバーデュークの変身音は意図的に違うものに変更してあります。オリジナルの戦極凌馬と違って、彼の感性は至って普通ですので……。