インフィニット・ストラトス―失われた未来― 作:レイブラスト
生徒会室へ連れて来られたシャルルは刀奈に身体検査を行われてUSBを取られ、更に男装道具も取っ払われて元の女子としての姿で椅子に座っていた。その周りには一夏やセシリア、箒達が座っている。
「それじゃあちょっとした尋問をさせて貰うわよ、シャルル……いえ、シャルロット・デュノアさん」
「え……どうしてその名を……?」
「私の家はその手の筋に通じてるの。ハッキング事件が起きた時、平行して貴女のことを調べたのよ」
前置きしてから、刀奈はシャルロットに関しての調査記録を読み上げていった。その内容は、彼女が春也に語ったものの他、つい先ほどのハッキングの件まで含まれてた。
「……で、憶測になるけど貴女は織斑春也に保身として利用され、罪を背負わされた。何か間違っているところはあるかしら?」
「……いえ。全て更識先輩の言った通りです…………もういいでしょう? どうせ春也がやった痕跡はないだろうし、煮るなり焼くなり好きにして下さいよ」
自暴自棄になりながら言う。女であることを否定され、味方になると言った男に裏切られ、彼女の精神はボロボロだった。そんな姿を見て、ラウラはたまらず刀奈に進言した。
「楯無会長。このままではいくら何でもデュノアが不憫だ。何とか助けることはできないのか?」
「勿論そのつもりだけど―――貴女からそんなこと言うなんて、珍しいじゃない」
「それは……」
「いいよもう。何もしなくて。どうせ君達も、春也と同じように掌を返すに決まって「違う!!」!?」
「私は、私達はそんなことはしない!」
「じゃあ何? 君達は僕を助けてくれるって言うの? 今まで君達を騙していたって言うのに!?」
「そうだ。信じてくれ!」
「なら、他の誰にも言えない秘密を教えてよ! どうせできないだろうけど!」
「……いいだろう」
懐に手を入れたラウラは一度全員を見渡しシャルロットにはわからないよう、戦極ドライバーをチラッと見せる。それがこれから明かすことの同意を求めることだと、皆はすぐ気づいた。
「私は…良いと思うよ」
「信用して頂けるのなら、構いませんわ」
「私も同意見だ。……デュノアをこのまま放っておくなどできない」
「いいんじゃない? 根っからの悪い奴とは考えられないし、重度の疑心暗鬼になってるみたいだしさ」
「コイツの素性と、アイツのしでかしたことを考えると見過ごせはしないからな」
「私も、助けてあげたい。その為に必要なことなら教えてもいい」
「だそうですよ、織斑先生」
「全くお前達は、アイツ等のいないところで……まあいい。向こうで連絡入れるから、先に話を進めておけ」
部屋の隅に移動した千冬はスマホを使い通信する。ラウラは改めてシャルロットに向き直ると、戦極ドライバーとドリアンロックシードを取り出した。
「それ、一夏とセシリアが持ってるのと同じ、イレイザーのIS―――」
「ISとは違う。これはアーマードライダーシステムと呼ばれるものだ。それだけではない。ここに居る全員が、これやパワーアップ版のドライバーを持って同じ組織に所属している。だがイレイザーではない。それは架空の存在だ」
(あ、それも言っちゃうんだ)
「………………」
「これで……信じてくれるか?」
「そ、そりゃあ、ホントに教えて貰ったし……でも、なんでそこまで?」
「私達は単純に助けたいって思ったからだけど、ラウラちゃんはそうじゃないみたいよ」
「え?」
一度目を閉じて深く息を吐き、再び開けるとラウラはシャルロットの瞳をしっかり見据えて語り出した。
「……今のお前は、以前の私と似ている。だから放っておけなかった」
「似てるって……」
「かつて私は軍内で居場所をなくして、孤立し、掌を返され、誰かに頼ることも、変わることもできず……荒れに荒れた。だが組織に部隊ごと接収され、変われる機会を与えられた。お前にも、シャルロットにも変わろうとする意志があるなら、チャンスはある」
「変わろうとする意志……」
「教えてくれ。お前の意志を、お前の望むことを……頼む」
「ラウラ………………僕は…………僕は、もう実家と関わりたくない……! お願い……助けて……!!」
「……お前の望み、確かに聞いたぞ」
泣いて縋り付くシャルロットを優しく抱き締めながら千冬を見ると、通信していたスマホをスピーカーモードにして画面を向けた。結果、相手の顔と声が千冬以外の全員に届くようになった。
『やれやれ……まだ渋るようなら私からも説得するつもりでいたんだけど、必要なくなったみたいだね』
「!? だ、誰!?」
『初めましてになるかな、シャルロット・デュノアちゃん。私は戦極凌馬。アーマードライダーの開発者で、イレイザー……元い、
「貴方が、あのベルトを……」
『君のことは楯無ちゃんや千冬からの報告で存じている。で、単刀直入に聞くけど、さっきの助けて欲しいって言葉が君の本音で良いのかい?』
「……はい。実家にも、春也にも利用されたまま終わりたくなんかない……僕は、ここに残りたいんです」
『なら決まりだ。それで助ける方法だけど、君のデータをデュノア社から抹消し、我々の元に所属させるよう手続きするのが手っ取り早い』
「そ、そんな事が可能なんですか?」
『当然さ。ただまずはデュノア社を文字通りぶっ潰す必要があるから、手続きはちょっとの間待って貰うけど』
「ぶ、ぶっ潰っ!?」
穏やかな口調の中に出てきた物騒な言葉に思わず声に出すが、凌馬は気にせず続ける。
『では、早速準備に取りかかるのでそろそろ失礼する。吉報を待っていてくれたまえ』
電話が切れて画面が暗くなると、傍にいたラウラは真っ直ぐシャルロットを見て言った。
「そういうことだ、シャルロット。もうお前が苦しむ必要は、無いんだ」
「……ありがとう、ラウラ……それと、ごめんね。色々と言っちゃって」
「気にするな。職業柄こういうのには慣れている。それに溜まっていたものが吐き出せて、スッキリしただろ?」
若干申し訳ない表情になるシャルロットに、ラウラは微笑んだまま返す。と、シャルロットは気になったことを尋ねた。
「でもラウラ達が所属している、
「ざっくり言えば、アーマードライダーの部隊を率いてテロリストを鎮圧することが目的だな。まあ詳しいことはプロフェッサーに直接会った時に聞けばいい」
「(会った時? てことは何れ会いに行くことになるのかな)そうしてみるよ」
事態が収まり落ち着いてきたところで、セシリアがシャルロットに素朴な疑問を投げかけた。
「そういえば、性別を明かすまでシャルロットさんのことは何て呼べばいいんですの?」
「確かに。もうシャルルと呼ぶのはアレだしな。一夏姉さん、良い案はないか?」
「うーん……箒は何かある?」
「だったら、シャルって呼ぶのはどうだろうか。その方がしっくりくる」
「中々いい渾名じゃない。で、当のアンタはどうなの?」
「シャル、かぁ―――良いよ。今度からはそう呼んで欲しいな」
新しい自分の愛称を決めて貰ったシャルロットは満面の笑みを浮かべ、最後にそれぞれ解散して部屋へと戻って行った。
一方その頃、
「んで、具体的にどうやってあの子を助けるの? 私が人肌脱いじゃう?」
「手っ取り早くて助かるけど、今の情勢で君の力を借りることは大きな混乱を招くことになる」
「貴方の言い方からして、別な方法があるんでしょう? 一体どんなことをするつもり?」
「どうせお得意の電子戦で一泡噴かすんだろ」
「おっ。珍しく正解だよ、オータム」
「マジでやんのかよ……デュノア社の規模的に、アンタがやっても世界は混乱するぜ、きっと」
「束がやるよかマシさ」
「ひ、酷い言い分だね……! 事実だけど」
やることを決めた凌馬は頭の中でプランを練りながら、右手に持った『E.L.S.-01』と書かれたエナジーロックシードを見つめた。
再びIS学園に戻り、春也の自室の窓際。部屋の主の春也は、再び女性権利団体会長と連絡を取っていた。
「データの方、ちゃんと送れてますか?」
『ええ、破損もないわ。回線をいくつも経由させているのに、さすがね……白式のデータだけ入ってないのが気になるけど』
「それについては追々。何分不可思議な機体でして」
『そう、わかったわ。……にしても、貴方も相当悪い男ね。デュノア社の傀儡と化した少女を助けると言いつつ、データを盗んだことがバレた時の保険に仕立て上げ、渡したデータそのものも大本からコピーしたもので、事情聴取の隙に大本を私に送りつけてくるなんて』
「正直言うと、本当はそっちに圧力を掛けて貰うことを考えてたんです。でも彼女は僕のことを好きに……理解者になってはくれなかった。だから切り捨てたまでです」
『自分本位な考えね。嫌いじゃないけど』
「じゃあそろそろ切ります。……ああ最後に1つ。送ってくれた製作途中のプロトタイプのデータ、ありがとうございます」
『どういたしまして』
そこで春也は電話を切った。
(僕自身もびっくりだよ。まさかISの
彼は端末を操作して先ほど話題に出していたプロトタイプと思われる、大型トラックとスーパーカーの画像が映し出されていた。
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