インフィニット・ストラトス―失われた未来―   作:レイブラスト

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第20話 心機一転

「さてと……作業を始めるとしよう」

 

その日の夜から、凌馬は戦極ドライバーのデュークを元にゲネシスドライバーによる次世代型アーマードライダーとして作った、仮面ライダーデューク レモンエナジーアームズに変身した。この新デュークには、ネットワーク接続及び高性能演算能力が搭載されている為、これらと自身の能力を駆使してハッキングを行うのだ。

 

デュークは手始めに、デュノア社のメインコンピューターに侵入。過去の犯罪履歴のコピーやそれに関わっている人物達のリストアップ等、数々の黒い所業を洗い出していく。

次に、シャルロット・デュノアの戸籍・登録情報を抹消し、彼女に亡くなった母親の名字のフランソワを与えて別の経歴とシナリオを作成。それは以下の通りになった。

 

 

 

 

第一に、シャルロット・デュノアという人物は存在しない。

第二に、シャルロット・フランソワは母親が亡くなり生活難になった際、デュノア社社長に拾われテストパイロットとして登録。そして織斑春也が世間に認知された後、「シャルル・デュノア」と名前と性別を偽った上で養子縁組をし、広告塔としてIS学園に送り込まれた。

第三に、そのことに心を痛めたシャルロットはイレイザー社に助けを求め、イレイザー社は彼女を保護。犯罪行為をしたデュノア社に対し然るべき処置を行った。

 

 

 

 

問題があるとするならばイレイザーという会社が架空のものであるということだが、そこは抜かりなく、公式ホームページを束と凌馬で事前に製作してある。ハッキングの件については春也が証拠を残してなかったこともあり、一夏達の間で黙っておくことにした。

 

そして上記の準備が整ったところで、デュークはデュノア社の黒い部分を世界中に公開。ここまでかかった時間は僅か三日という驚異的な速度であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突然の情報公開にフランス政府は大いに戸惑ったが、すぐさま状況を判断し、インターポールの協力を受けて特殊部隊を投入。リストに上がった人達(中には国会議員や大臣も居た)を次々と逮捕していき、更にデュノア社にも制圧部隊が向かった。

 

この緊急事態にデュノア社社長のレオポルド・デュノアは大いに焦った。何とかしようとパソコンは起動させてあるが、最早どうすることもできずパニックに陥る。その時、パソコンのモニターにノイズが走り、仮面ライダーデュークの姿が映し出された。

 

『やあ初めまして、レオポルド・デュノア社長』

 

「!? な、何だ貴様は! 男? だがその格好はIS……!?」

 

『名乗る義務も、答える義務もないね。ただ1つ言えることは……今の状況的に、君はもう終わりだってことぐらいかな。ま、自業自得だけど』

 

彼の言葉から、レオポルドは情報を公開したのが今映し出されている仮面の人物の仕業だと直感した。

 

「そうか……! 全て貴様の仕業だな!? 何の恨みがあってこのような!!」

 

『恨みは別にないよ。ただ、君に利用された女の子が我が社に告発して来てね。それを暴く手伝いをしてあげたんだ』

 

(っ! シャルロットの奴、よくも……!! だがこうなった以上、お前もどうなるかはわかっている筈だ!)

 

レオポルドはデュノア社の悪事が暴かれた以上、スパイ活動をしている娘のシャルロットもただでは済まないと考えていた。だがデュークはその思考を読んだのか、こう話を続けた。

 

『そうそう。その女の子たけど、少々経歴を変えさせて貰ったよ。君とは赤の他人で、性別偽装も広告塔扱いにする為だって』

 

「………………は?」

 

『簡単に言えば、シャルロット・デュノアという人物は存在しないことになってるんだよ。じゃ、後は獄中で反省なりなんなりしたまえ』

 

モニターが真っ暗になると同時に、部屋に特殊部隊がなだれ込み、呆然とするレオポルドを拘束した。

取り調べの中でレオポルドは、娘のシャルロット・デュノアをシャルル・デュノアとしてスパイ目的で潜入させたことを語ったが、そんな人物は存在せず、変装したのはシャルロット・フランソワという別人で、目的も広告塔だと語られた。

経歴を変えた―――その意味を理解すると同時に、道連れが不可能となったことに絶望したレオポルドは、半ば抜け殻のような状態で自らの罪を受け入れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……とまあ、そんな感じでデュノア社は一新され、お前はイレイザーに保護された身になった訳だ」

 

「……まさか三日ほどでそうなるなんて思わなかったよ……でも、ありがとう」

 

凌馬による報復が終わり、一段落着いたところで1人部屋に移動したシャルロットの元に朝早くマドカとラウラが訪れ、報告をした。本当に少ししか日にちが経ってないことに驚きつつも、感極まり感謝の言葉を述べた。

 

「ただ名字が変わってしまうことが気になるとこだが……」

 

「いいよ別に。デュノアに拘ってる訳でもないし、むしろお母さんの名字に戻って嬉しいよ」

 

やや済まなさそうに言うマドカに、気にしないでとシャルロットは手を振る。説明を終えたマドカに代わり、ラウラが前に出て次の説明を始めた。

 

「一段落ついたところで悪いが、プロフェッサーがシャルに会いたがっている。すぐにでも連れて来て欲しいとのことだ」

 

「すぐにって、こんな朝早く? HR始まっちゃうよ」

 

「それなんだが、ラウラとシャルが行ってる間に千冬姉さんが山田先生を通してシャルのことを説明するらしくてな。ちょっとした時間潰しと思えばいい」

 

「ならいいけど……戻って来た後が怖いなぁ」

 

「皆良い奴らだから、問題ないだろう。それより行くぞ」

 

「わっ、急かさないでっ」

 

慌ただしく支度を整えると、シャルロットはラウラに引っ張られつつ部屋を出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

校舎裏に着いた2人は、周りに誰もいないことを確認。ラウラが薔薇を模したロックシードのような錠前を取り出した。

 

「何それ?」

 

「見てればわかる」

 

ガチャンッと錠前を解錠して放り投げると、空中でガチャガチャと変形しつつ量産バイク・ローズアタッカーに変形、着地した。

 

「バイクになった! こんなものも作ってるの?」

 

「他にも色々あるが、まずは私の後ろに跨ってくれ」

 

言われるがまま、ローズアタッカーに跨ったラウラの後ろに跨り、彼女の腰をぎゅっと掴む。掴まっていることをラウラは確かめると、ローズアタッカーを発進させディメンション・インジケーターが出るまで加速し、メーターの値を一定まで伸ばす。そのまま加速し続けると、周囲に薔薇の花びらのようなものが無数に舞い始める。

 

「は、花びら? 何で!?」

 

「喋ると舌を噛むぞ!」

 

更にスピードを上げ続けると、機体が宙に浮いて錐揉み状に回転。前方に空間の裂け目が出現する。

 

「うひゃあああああああああああああああああああああ!!??」

 

突然の出来事に変な悲鳴を上げながら、シャルロットとラウラはIS学園から姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

空間の裂け目を通った2人が到着した場所は、とても広い部屋のような所だった。ローズアタッカーのエンジンを切って降りると、ラウラが先導を切る。

 

「こっちだ、着いてきてくれ」

 

「うん」

 

初めて来る場所に戸惑いながらシャルロットはついて行き、やがて『社長室』と書かれた部屋の前に辿り着く。ラウラがコンコンとノックすると「入っていいよ」と男性の声が聞こえ、「失礼する」とドアを開けて入った。

 

「よく来てくれたね、シャルロットちゃん。亡国機業(ファントム・タスク)へようこそ」

 

「朝早くから呼び出してごめんね~」

 

デスクに座る凌馬が笑みを浮かべて言い、次いで近くに座っている束がのんびりと言う。が、シャルは世界的に有名な篠ノ之束が目の前に居ることに目を大きく見開きラウラにひそひそと問い質した。

 

(ち、ちょっとラウラ! 篠ノ之博士がなんでこんなところに!?)

 

(協力者としてプロフェッサーと共に行動しているそうだ。シャルロットに対しても好意的に思ってくれているから、気にする必要はないぞ)

 

(気にするよ!!)

 

2人の様子を見ていた凌馬は、苦笑しつつも穏やかな口調で言った。

 

「まあ落ち着いて。気持ちはわかるけど、本題に入らないと」

 

「は、はい。……あの、僕を呼び出した理由はどういったものでしょうか?」

 

「2つある。まず1つ目に、君がここに所属する以上、ラウラちゃん達と共にアーマードライダーとして戦って貰う必要がある」

 

「戦い……ですか。具体的には?」

 

「反政府組織…特に過激派の鎮圧だったり、違法研究所の制圧だったり、色々さ。何れにせよ、実戦に出るから場合によっては誰かを殺すことがあるかもしれないが……覚悟はあるかい?」

 

人殺しをする―――凌馬の問いかけにシャルロットは少し迷うも、深呼吸をして彼の目を見て答えた。

 

「はい。ISに乗った時から、いつ実戦に出ても良いよう精神面も鍛えさせられましたし。それに……僕みたいな人間を増やしたくありません。その為なら、僕は……」

 

「……愚問だったか。では早速これを受け取ってくれたまえ」

 

隣に立っている女性―――スコールに目で合図を送ると、アタッシュケースを持ってシャルロットの前まで歩き、中身を開ける。そこには戦極ドライバーとクルミを模し『L.S.-02』と書かれたロックシードのセットが入っていた。

 

「鎧武と同型のドライバー……」

 

「量産型の戦極ドライバーにクルミロックシードだ。組織の一員として戦う場合や、ISが使えない時に使うといい。勿論、普段から使ってもいいけど」

 

「………………………」

 

ドライバーとロックシードを持ったシャルロットは、自分が亡国機業(ファントム・タスク)の一員として真の戦いに身を投じることを実感していた。

 

「あとりょーくんが言ってた2つ目だけど、君のISを私に貸してくれる?」

 

「へ?」

 

頃合いを見計らって言った束に面食らうシャルロット。首を傾げながら、彼女は待機形態の専用IS『ラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡ』を渡した。

 

「さんきゅ~! むふふっ。さぁて、どんな魔改造しよっかな~?」

 

「ま、魔改造っ!?」

 

「機動性をグンバツにしようか、それとも武器の搭載数を増やすか……うーん、夢が広がるや!」

 

「ぼ、僕のISに何する気ですか!?」

 

目をキラキラと輝かせてISを持ち歩く束に慌てるが、ラウラがポンと肩を叩いて告げた。

 

「安心しろ。悪い方に改造する訳ではない。良い方に改造しすぎるだけなんだ、あの方は」

 

「最もらしいように聞こえるけど、遠い目してる時点でむしろ嫌な予感しかしないよ!!」

 

やいのやいの言っていると、部屋を出ようとした束が振り返って言った。

 

「そういやりょーくん。あのことについても話しておかなきゃ」

 

「っと私としたことが。すっかり忘れてたよ」

 

今度は何だろう?と不思議に思うシャルロットに、凌馬は自分達が活動している『真の目的』を語り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「織斑春也の悪事を公にする、か……」

 

IS学園の廊下を歩きながら、シャルロットは噛み締めるように凌馬が語った目的を呟く。

 

「個人的で信じられないか?」

 

隣を歩くラウラが聞くと、首を横に振って言う。

 

「彼の悪行を知った今なら納得できるよ。僕も利用されかけたし、それに……女として、一夏にしでかしたことも許せないから。しかも自分の手を汚すことなく……!」

 

「……そうだな。だからこそ私達が奴の悪行を暴くんだ。今はまだその時ではないが」

 

強い憤りを感じるシャルロットを宥めながら歩くと、教室の前で立っている千冬と目が合った。

 

「お待たせしました、千冬お姉様」

 

「お、お姉様?」

 

「あー……それについては気にするな。コイツが勝手に言っているだけだ。それより良いタイミングで来てくれた。もうすぐ山田先生の説明が終わるから、指示があったら入ってくれ」

 

「はい。……ああでも、緊張してきた。みんな受け入れてくれるかな……」

 

「受け入れるさ。だから心配せずに、楽な気持ちで行け」

 

不安げな顔をする彼女をラウラが励ました時、真耶がシャルロットに入ってくるよう促してきた。覚悟を決めたシャルロットはドアを開けて教室に入り、壇上へ上り改めて自己紹介をしたが、クラスメイト達はニュースを見ていたり真耶の説明を聞いたりして身の回りのことを伺っていた為、皆一様に同情し温かく迎えてくれた。そのことに感激して涙を流しながら、笑顔で述べた。

 

「ありがとうみんな……! 改めて、これからよろしく!」

 

(ふん……)

 

周りに受け入れられているシャルロットを、春也だけは何の感傷もなく一瞥した。

 

(やっぱりね。僕が見捨てても彼女は救われた。アイツならそうせずには居られないだろうし、きっと生徒会長達も手伝っている筈。彼女を保険に使ったのは間違いじゃなかった)

 

悪びれる様子もなくチラッとシャルロットを見ると偶然にも目が合う。キッとこちらを睨み付けて来るが、「ふん」と鼻で笑うと適当にスマホを操作した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夕方の食堂。シャルロットを入れた面々が食事を摂っていると、不意にマドカが思い出したように告げた。

 

「そういえば千冬姉さんから伝言を頼まれてたんだった。今回の学年別トーナメントは二人一組のタッグマッチ制になったんだと」

 

「タッグマッチかぁ。てことは誰をペアにするかが鍵になるかな」

 

食べながらうーんと思案する。少しして何かしら閃いたセシリアが鈴を見て言った。

 

「そうですわね。でしたら私は……鈴さんとペアを組みますわ」

 

「私と? アンタは一夏と組むと思ってたのに」

 

「遠距離担当のブルー・ティアーズと中距離担当の甲龍は相性がかなり良い。だからセシリアは、お前と組もうと言い出したんだろう」

 

「確実に勝ちにいく考えか……いいわ。セシリア、一緒に勝ち抜きましょう!」

 

「ありがとうごさいます、鈴さん!」

 

テーブルを挟んで向かい合わせになっている2人がガッチリと握手を交わす。一夏や箒達も、誰とペアを組むか話し始める。

 

「ラウラ、私とペアを組まないか?」

 

「箒とか。わかった、いいぞ」

 

「じゃあ……シャル、私と組んでくれる?」

 

「勿論だよ一夏」

 

「となると私は簪と組むことになるな…頼むぞ」

 

「うん、任せて」

 

特に揉めることなくすんなりとペアを作ると、共に戦う者同士で握手をする。勝利の女神はどのペアに微笑むのか。それはまだ、誰にもわからない―――

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