インフィニット・ストラトス―失われた未来― 作:レイブラスト
臨海学校2日目。この日は一日を丸ごと使ってISの非限定空間使用の訓練が行われる。パッケージと呼ばれる換装武器を機体に装備し、それらのデータをとる為だ。実習は一般生徒と専用機持ちとで分かれて行い、専用機持ち達は岩場で囲まれた場所に千冬と共に集まっていた。
「全員揃ったな。よし、これより実稼働試験を行う。まずはパッケージの換装だ」
号令を掛けられ
「暇だな」
「うん。何してようか?」
「さてな……そうだ。確かまだ使ってないエナジーロックシードがあっただろ? 効果を見てみたいんだが」
「言われてみればまだ残ってたっけ。うーん…私も効果を確かめたいから、いいよ」
ゲネシスコアを取り付けた戦極ドライバーを装着し、オレンジロックシードとピーチエナジーロックシードを取り出して解錠させる。
『オレンジ!』 『ピーチエナジー!』
それら2つをドライバーにセットしてロックをかけると、カッティングブレードを倒してロックシードを輪切りにしたりカバーを開いたりした。
『ロック・オン!』
『ソイヤッ! ミックス! オレンジアームズ! 花道・オンステージ!! ジンバーピーチ! ハハーッ!!』
出現したオレンジアームズとピーチエナジーアームズが融合して一夏の全身を覆ったライドウェアの上に被さって展開し、桃の断面が描かれたジンバーピーチアームズに変身させた。
「……あれ?」
だがこれといって突出したような感覚はない。ジンバーレモンよりパワーは落ちているし、ジンバーチェリーのようなスピードが出せる訳でもない。戦闘向きではないと聞いたが……そう思った時だった。
『あーあ。こんなにたくさんあると、何だか嫌になっちゃう』
『文句言わないの。ほら運ぶの手伝って』
「? みんなの声だ……」
ここには専用機持ちしかいない。しかし他のクラスメイト達の声は確かに聞こえてくる。
「箒、この姿だと聴力が強化されるみたい。相川さん達の声が聞こえるもの」
「私にはわからないから何とも言えんが、それは凄いな。だが使い所はあるのか?」
「それ言われると―――」
キィィィィィン……
「ん?」
海の方からスラスターのような音が聞こえる。姿が見えないことからかなり遠くにいるのがわかるが、音が近づいてくるような感覚を鎧武は覚えた。
「何の音だろう?」
気になって音を良く聞き取ろうと意識を集中した―――そこへ。
「空間を超えて、私参上!」
「ついでに束さんも、お呼びとあらば即参上!」
響いて来た声の方向を見ると、量産バイクのローズアタッカーに乗った凌馬と束がそこに居た。
「「「束さん(姉さん)!?」」」
「「「「プロフェッサー!?」」」」
(な、何だこの男は!? 何で束さんと一緒に!?)
いきなりの訪問者に作業する手を止め、一夏は変身を解いた。代表して千冬が何があったのか問いかけた。
「何故ここに? 何か急ぎの用事でも?」
「実は―――」
「お、織斑先生! 大変です!!」
凌馬の声を遮る形で真耶が大慌てで走ってきて千冬に端末を渡す。
「特命任務レベルA、現時刻より対策を始められたし…………了解した。全員注目! これより私の後に続け。山田先生は他の生徒達に屋内待機を指示してくれ」
「私達も行っていい、ちーちゃん? 手伝えることがあるかもしんないし」
「ああ、頼む。状況が状況だからな。……ところで、先ほど伝えようとしていたのはこのことか?」
「ご名答だよ」
肩を竦めながら言う凌馬に、千冬は改めて所属する組織の情報収集能力の高さに感嘆しながら移動をした。
一番奥の大広間に機材等を運び込んだ臨時作戦室に到着すると、そこは証明が落とされて多数の大型の空中投影ディスプレイが浮かんでいた。
「2時間前、ハワイ沖で試験稼働にあったアメリカ・イスラエル共同開発の第3世代型軍用ISである、『
情報を聞いて一夏は、先ほど変身した時に聞こえたスラスター音のことを思い浮かべていた。
(あれはISが移動している音だったんだ……)
「衛星による追跡の結果、福音はここから4キロ先の空域を通過することが分かった。時間にして80分後になる。学園上層部からの通達により、我々がこの事態に対処することになった。教員は学園の訓練機を使用して、空域及び海域の封鎖を行う。何か意見のある者は?」
「はい。正確な機体情報の開示を求めます」
「わかった。ただし、これらは二ヵ国の最重要軍事機密だ。決して口外はするな。情報が漏洩した場合、査問委員会での裁判と最低でも二年の監視がつくことになるぞ」
「覚悟の上ですわ」
セシリアの発言に千冬がデータを表示させる。それを見た専用機持ち達は話し合いながら作戦を練っていく。
「広域殲滅戦用IS……オールレンジ攻撃が可能のようですわね。範囲はビット兵器の何倍もの広さですから、火力制圧は不可能ですわ」
「何なのよこの特殊兵装は……36門の砲口なんて厄介すぎるでしょ。他の兵装が霞んで見えるわ」
「この火力じゃリヴァイヴのシールドでも防ぎようがないか。防御特化パッケージを使ってギリギリって感じ」
「それよりマルチスラスターが最も厄介。並のISじゃ追いつくことさえ困難な代物だよ」
「格闘性能が未知数なのもな。下手に接近すれば手痛いしっぺ返しを受けるかもしれん」
「何よりフィールドが海上なのが嫌らしいな。アーマードライダーは通常だと飛行不能だし、ISモードだと攻撃力が落ちてしまう」
だが中々確実性のある作戦を出すことができない。そこでラウラが千冬に尋ねた。
「偵察は可能ですか?」
「無理だな。奴は現在時速2450キロの超音速で飛行中だ。アプローチは一回が限界だろう」
「となると、僕の白式が役に立ちますね。零落白夜なら一撃で落とすことができます」
自ら進言したのは春也だ。周りの目つきが厳しくなるが、確かに対IS用の最強武器である零落白夜なら確実性は高い。
「移動手段はどうするつもりだ? 移動にエネルギーを消費しすぎると零落白夜は使えないぞ」
「箒の紅椿に運んで貰えばいい。専用ISの中で最も速く飛べるし、シールドエネルギーも回復できるから零落白夜を連続して使える。どうかな?」
「私が運ぶのか? ……まあ任務と割り切ればできないこともないが」
「待った。一撃で決められなかった場合にもう一機随伴させた方がいい。私としては鎧武がオススメだ。切り替えられるアームズの種類が最も多いからね」
「え、私ですか? わ、わかりました」
割り込んだ凌馬の指名に面食らう一夏だが、表情を引き締めて戦う覚悟を決める。だが疑問に思うところもあったので、春也に聞こえないよう凌馬に近寄り質問する。
「アーマードライダーは通常モードでは空を飛べない筈でしたよね? どうやって戦えばいいんですか?」
「このスイカロックシードを使うといい。訓練で説明だけならしたから覚えていると思うけど、ジャイロモードには単独での飛行能力があるしヨロイモードで組み付いて技を発動すれば文字通りイチコロさ。ただ活動時間に制限があるから、移動はこのダンデライナーを使ってくれたまえ。これはロックビークルの中で唯一飛行可能なマシンだから」
そう言って『L.S.-10』と書かれ表面がスイカを象ったスイカロックシードとタンポポを模した錠前形態のビークル、ダンデライナーを渡した。
「あの織斑先生、1ついいですか? あの男性は一体何者なんですか? 束さんと親しいようですけど……」
突如現れた謎の男の正体が気になり、千冬に尋ねる。千冬は少し考える素振りを見せながら予め用意していた答えを言う。
「イレイザー社社長の戦極凌馬だ。一夏の鎧武を作った人物でもある」
(戦極凌馬だと!? 言われてみれば、奴の顔は間違いなく仮面ライダー鎧武の戦極凌馬だ。何故ISに奴が? いや待てよ……そうか! ここに来てから姿を見ないと思っていたが、アイツだとすれば全て辻褄が合う!!)
凌馬を見つめる目が疑問から驚愕、そして憎しみに変わった。だが当の本人はそれに気づいていない。
「あ、私からも言わせて貰うけど、絶対に無理しちゃダメだよ? いっちゃんと箒ちゃんに何かあったら、みんな心配するからね!」
「「はい」」
一緒に頷くといよいよ本格的に作戦の準備に取りかかった。
出撃5分前。
「変身!」
『オレンジ!』
『ロック・オン!』
『ソイヤッ! オレンジアームズ! 花道・オンステージ!!』
砂浜に出た箒と春也はISを展開。一夏は鎧武に変身してホバーバイクに変形したダンデライナーに跨り、紅椿に掴まる春也の様子を眺めていた。
(何か変なこと考えてないといいけど、どうも不安な感じがするなぁ)
『作戦開始時刻1分前だ。各員、気を引き締めろ』
通信で告げる千冬に、3人の緊張感が高まる。深呼吸をして心を落ち着かせると水平線をじっと見据えて肩の力を抜く。
『時間だ。作戦開始!!』
その言葉を皮切りに、箒と鎧武は海上へと飛び立つ。そのまましばらく進んで行くと、銀色に輝く機影が見えてくる。
「あれが福音か……だが何故動きを止めている?」
「理由なんかどうだっていい。アイツを倒せる絶好のチャンスだ!」
「!? おい! 勝手に突っ込むな!!」
ある程度近づいたところで春也は箒から離れ、
(焦るな。声を出すな。十分近づいたところで……今だ!!)
彼にとって絶好のタイミングで、零落白夜を発動した雪片弐型で斬りかかる。が、福音は当たる直前に気づいたらしくダメージは与えたものの倒すには至らなかった。
「クソッ、避けられた!(想定内だけどね)」
「ええい、言わんこっちゃない! 一夏、さっき渡されたスイカを!」
「言われなくても!」
『スイカ!』
『ロック・オン!』
先ほど受け取ったスイカロックシードを解錠して戦極ドライバーにロックすると、鎧武の倍以上の大きさの、スイカを模したスイカアームズが頭上に出現する。
「えぇぇぇえええええええええええ!? な、何これぇええええええええええええええ!?」
あまりの大きさに鎧武は絶叫し、箒と春也と福音までもが驚きのあまり動きを止めていた。しかし気を取り直した箒が鎧武を叱咤激励する。
「しっかりしろ、一夏! ここまで来たら後へは引けないぞ!」
「……ようし! 一か八か、やってみる!!」
やるしかないと覚悟を決め、鎧武はホラ貝の音が鳴り響く中カッティングブレードを倒して、スイカロックシードを輪切りにした。
『ソイヤッ! スイカアームズ! 大玉・ビッグバン!!』
『ジャイロモード!』
スイカアームズが鎧武を完全に覆い隠すと続けて鳴った別の音声と共に、腕を前に突き出したような巨大飛行形態に変形し空中に浮かぶ。
「っとと……じゃあ早速!」
指部分に装備されたガトリング砲を放って福音に攻撃する。福音もそれに応戦し、搭載ユニット「
「どんどん行くよ!!」
エネルギー弾を避けて上昇し福音の真上に移動する。そこへ全砲門を向けた福音が強力なエネルギー砲を放つ。
『大玉モード!』
再びスイカの形に戻ると堅固な装甲で攻撃を弾き、重力に任せて落下していく。
『ヨロイモード!』
音声と共に今度は人型に変形し薙刀型巨大武器、スイカ双刃刀を右手に握り福音に組み付く。
「はあっ! このぉっ!!」
拳やスイカ双刃刀で殴りかかり福音に一方的にダメージを与える。ただやられている訳にはいかないと福音がパンチを繰り出すが、当たる前に高くジャンプをする。
「これでトドメだよ! 輪切りにしてやるんだから!!」
『ソイヤッ! スイカスカッシュ!!』
カッティングブレードを一回倒した鎧武は、スイカ双刃刀を持つ手首を高速回転させてスイカ状のエネルギーを撃ち出し福音を拘束する。
「セイハァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」
落下しながら擦れ違い様にエネルギーを溜めたスイカ双刃刀で福音を切り裂くと、オレンジアームズに戻り真下に来たダンデライナーに飛び乗る。
「箒!」
「わかっている!」
シールドエネルギーが無くなった
「La……」
(フッ。こんなこともあろうかとハッキングでコアを弄っておいたのさ。倒された相手のデータを元に同等のレベルにまで進化でき、無人でも動けるようにね。……まさかここまでスペックが上がるとは思ってなかったけど)
「無人なのに動いている!? それに
「そんな……! どうしよう!?」
「こんなことになるとは想定外だ……! 仕方ない、一時撤退だ。奴の能力は完全に未知数になったし、生身のパイロットを抱えている分余計不利だ」
「……そうだね。退くことも勇気って言うし。そうと決まれば!」
『レモンエナジー!』
鎧武はゲネシスコアを戦極ドライバーに嵌め込み、レモンエナジーロックシードを解錠してそこに装着して施錠した後、カッティングブレードを倒した。
『ソイヤッ! ミックス! オレンジアームズ! 花道・オンステージ!! ジンバーレモン! ハハーッ!!』
陣羽織型のアームズが被さって展開され鎧となり、ジンバーレモンアームズに変わるとソニックアローを構えて福音に放つ。
「私が殿をやるから、2人は早く!」
「無茶はするなよ! ……ほら、お前も来るんだ!」
春也を促しながら箒は背を向ける。だが……彼と鎧武の距離が近かったことがまずかった。
(今こそ最大の好機だ!)
ザシュッ!
「うっ、何っ!?」
背中から鎧武に近づくと、春也は雪片弐型で斬りかかり混乱した隙に戦極ドライバーに手を伸ばして、ロックシードのカバーを閉じ変身を無理矢理解除させた上でダンデライナーから突き落とした。
「え……きゃああああああああああああああっ!?」
(後は念のために……)
素早く表示したモニターを操作し何かの電波を送ると、福音が放ったビームやガトリングを敢えて受け、白式が解除された状態で海へと落ちて行った。
箒がそれに気づいたのは、一夏の悲鳴が聞こえて振り向いた時だった。
「!? なん……だと……! 一夏ぁあああああああああああ!!」
海面へ叩き付けられた2人を沈む前に拾い上げどうにか担ぐと、ダンデライナーを回収しどういう訳か棒立ちになっている
という訳で、福音を超強化しました。そうしないと味方がピンチになる場面が想像できなかったので……。