インフィニット・ストラトス―失われた未来― 作:レイブラスト
帰還した後、一夏と春也と福音のパイロットは医務室へと運ばれ、箒は千冬達に事の顛末を話した。
「
「一夏さんはどうなっているのですか?」
「命に別状はない。気絶しているだけだが、海面に身体を打ち付けているのでしばらくは目を覚まさないだろう」
「そう、ですか……」
ホッと胸を撫で下ろすセシリア。他の面々も一夏がとりあえずは無事だと知って一安心する。そんな中、凌馬が怪訝そうな顔で呟いた。
「どうにも解せないねぇ」
「何がですか?」
「観測結果からパワーレベルがアーマードライダー並に上がっているのは紛れもない事実だ。それなら許容量を超えたダメージで変身が解除されてもおかしくはない…が、持ち帰ったダンデライナーを調べたらちょっとした汚れぐらいしかなかった……おかしいとは思わないかい? なあ束」
「だね。攻撃に巻き込まれて破壊されているか、せめてダメージを負っている筈だよ」
「では何故変身が?」
「他に変身が解除される可能性と言えば……ベルトを破壊されるか、自分で変身を解くかしかないよ」
「ま、誰かにロックシードの蓋を閉じられたという可能性もあるけどね」
最後にポロッと言った凌馬に全員が「まさか……」と1つの考えに至る。
「アイツ……! 起きたらただじゃ済まないわよ!!」
「待て。まだ奴がやったという確証はない。せめて尋問するべきだ」
「尋問か。何をするべきか……」
「私に任せろ。軍に居た頃色んな手段を叩き込まれたからな」
「じゃあ私も。実家が実家だけに、少しは知ってるから」
「僕もやってみようかな。一応スキル自体は身につけてるし」
やたらと物騒なことを言うマドカ達に凌馬達が内心冷や汗をかいていると、作戦室のアラートが鳴り響いた。何事かと千冬がディスプレイを操作する。
『警告、
表示された文字に全員が息を詰まらせる。その中で束が小型の端末を操作して細かな情報を調べていく。
「未確認機のパターンは前回や前々回の無人機と同じ……反応は全部で8機だよ」
「福音を含めて9機か……お前等、戦れそうか?」
「勿論ですわ。私を誰だと思っていますの?」
「全部ぶっ壊す勢いでやってやるわよ!」
「ここでじっとしていても解決しないしね」
「リベンジを果たさねばな」
「襲って来るというなら、倒す以外に方法はない」
「背水の陣という奴か……いいさ。やれるだけのことはやってやる」
揃って戦う意志を見せるその姿に、千冬は半ば呆れながらも笑みを浮かべて告げた。
「全員、ドライバーとロックシードを持って私に続け。連中を食い止めに行くぞ!」
「「「「「「「はい!!」」」」」」」
力強く声を張り上げ部屋を出て行く。が、凌馬は思い出したように慌ててセシリアを呼び止めた。
「あ、待ってくれセシリアちゃん!」
「プロフェッサー?」
「君用に作っておいたこれを渡しておくよ。本当なら事件が一段落してからと思ってたけど、
そう言って彼はゲネシスドライバーとレモンエナジーロックシードをセシリアに手渡した。
「……ありがとうございます、プロフェッサー!」
礼の言葉を述べて頭を下げると、セシリアは皆の後を追いかけた。
「さて。こちらも作業を始めよう」
「腕が鳴るとはこのことだね! やっちゃうよ~!」
海岸の前の歩道に辿り着くと丁度砂浜の上に無人機らが浮かんでいたが、
「福音の姿が見えない? 捜索は……させてくれないか」
「どうでもいいが、今回のはガトリング持ってる奴ばっかりだな」
「遠距離から一方的に攻撃するつもりなんだと思う。それで勝てたら御の字で、負けたら―――」
「どこかに潜んでいる福音が、撃破後の隙を狙って不意打ちという算段か……上等だ!」
真っ先にマドカがゲネシスドライバーを装着したのを皮切りに、箒、鈴、シャルロット、ラウラ、簪が戦極ドライバーを、千冬、セシリアがゲネシスドライバーを腰に装着し、それぞれロックシードとエナジーロックシードを解錠する。
「「「「「「「「変身!」」」」」」」」
『レモンエナジー!』
『シルバー!』
『ブドウ!』
『クルミ!』
『ドリアン!』
『ドングリ!』
『メロンエナジー!』
『ピーチエナジー!』
セシリア達の頭上にレモンエナジーアームズを始めとしたアームズが形成される。即座にロックシードをドライバーにセットしてハンガーを閉じると、カッティングブレードを倒してロックシードを輪切りにし、シーボルコンプレッサーを押し込んでエナジーロックシードのカバーを開く。
『『『『『『『ロック・オン!』』』』』』』
『ソーダ! レモンエナジーアームズ! ファイトパワー! ファイトパワー! ファイファイファイファイファファファファファイト!!』
『ソイヤッ! シルバーアームズ! 白銀・ニューステージ!!』
『ハイーッ! ブドウアームズ! 龍・砲・ハッハッハッ!!』
『クルミアームズ! ミスターナックルマン!!』
『ドリアンアームズ! ミスターデンジャラス!!』
『カモン! ドングリアームズ! Never Give up!!』
『ソーダ! メロンエナジーアームズ!!』
『ソーダ! ピーチエナジーアームズ!!』
音声と同時にライドウェアやゲネティックライドウェアが全身を覆い、各アームズが頭部に被さって展開。鎧になって上半身に装着され、セシリアは仮面ライダーバロン レモンエナジーアームズに、箒は冠に、鈴は龍玄に、シャルロットはナックルに、ラウラはブラーボに、簪はグリドンに、千冬は斬月・真に、マドカはマリカの姿に変身する。
「行くぞ! 戦闘を開始せよ!!」
「「「「「「「「了解っ!!」」」」」」」」
斬月・真の掛け声により、8人のアーマードライダーはガトリングを構える無人機に向けて走り出した。
「う…ん……あれ、ここは……?」
一夏は見覚えのない場所にいた。どこかの海岸らしい場所だが、旅館は見当たらない。一体どこに居るのだろうと一夏は思っていた。
そんな時、ふと背を向けて立っている1人の男が居るのに気がついた。話しかけてみようと一歩踏み出すと、それがわかったのか男は振り向き一夏を見て笑みを浮かべた。
『ようやく君と会うことができたよ』
「え?」
『ディケイドや鳴滝さんじゃないから直接は出向けないし、こういう形じゃないと意識を飛ばすことができないからな……苦労したぜ』
「あの、どういうことですか? それに貴方は一体……」
『あ、悪い。まだ名乗ってなかったっけ。……俺は葛葉紘汰。君と同じ力を持っている男だ』
「同じ力って?」
男―――葛葉紘汰に一夏は尋ねる。紘汰は一度俯くと真っ直ぐ一夏を見て、こう述べた。
『極ロックシード……黄金の果実の欠片。神に等しい存在になる為の鍵だ』
説明しながら紘汰は自らの姿を金髪で右目が赤のオッドアイに、銀色の鎧と白のマントを纏った格好へと変化させた。
「神……じゃあ貴方は神様なんですか? 私も何れ、貴方と同じようになってしまうと?」
『いや……君の持つ鍵はそこまでの力は持っていない。でも、君の思いには応えてくれる筈だ』
「私の思い……私が、何をしたいか……」
今までの人生を振り返りながら一夏はこれからのことについて思う。自分は何をしたいのか。春也への復讐? 否、もう言いなりにならないと本人の目の前で宣言したのだから、そんなことをする意味はない。
「私は、春也を止めたい。もうこれ以上、悪いことに荷担して欲しくないから。それと、止めた後は理由が知りたい。春也が何を目指しているのか、どこへ行こうとしているのか―――」
『止めたい、か……だったら早く起きないとな』
呟いた後、2人の真横に無人機らと戦うバロン達の姿が映し出された。
「みんな!……うっ!?」
身を乗り出した一夏は、自分の右手から放たれる強い輝きに目を細める。収まったところで見てみると、それは彼女が初めて変身した時に使った橙色のロックシード―――カチドキロックシードだった。
「このロックシードは……」
『やり遂げるんだ、君がやろうとしていることを。俺も遠くから応援してるぜ』
言いながら紘汰は仮面ライダー鎧武 極アームズに姿を再び変えると、一夏に背を向けて歩き出す……と、その途中で足を止めた。
『そういえば、まだ君の名前を聞いてなかった。何て言うんだ?』
「……一夏。織斑一夏です」
『一夏か……良い名前だな』
暖かみのある言葉を掛けると鎧武は歩き始め、一夏は目の前がホワイトアウトしていった。
「…………っ……ぁっ……」
目を覚ますと一夏は布団で寝ていた。起き上がってふと左手を見ると点滴が打たれている。隣には春也が同じようにされて眠っており、その隣にいる
「夢じゃ無かった……」
手に取り窓の外を見つめる。離れてはいるが戦闘の様子が見える。
「行かなくちゃ」
「織斑さん……?」
聞こえてきた声に振り向くと、真耶が心配げに立ち尽くしていた。その表情を見て一夏が頷くと真耶もまた頷いた。
「気をつけて下さい」
「……はい!」
戦極ドライバーを装着し、一夏は皆の元へと急いだ―――
時を同じくして海岸では、先の失敗を踏まえてプログラムが書き換えられたのか、各個撃破の要領で中距離から狙い撃ってくる無人機に対しバロン達は挑んでいた。
「行きますわよ!」
バロンは逆手持ちしたソニックアローから光矢を穿ち、無人機に当てる。刺さった矢は爆発するが敵はそんなことは意に介さずガトリングを撃ってくる。しかし、ゲネシスドライバーによってパワーアップしたバロンにとって、この程度のISの武装は豆鉄砲のようなものであった。
「これがゲネシスドライバーの性能……戦極ドライバーとは段違いですわ!」
更に一発矢を放って片方のガトリングを破損させると、レモンエナジーロックシードをドライバーから外してソニックアローに取り付ける。
『ロック・オン!』
「セシリア・オルコット、狙い撃ちますわよ!」
『レモンエナジー!!』
音声と共にソニックボレーが発動し強化された光矢が無人機に発射され、ボディに突き刺さると無人機を爆発四散させた。
冠は連射される弾丸を裁きながら、常に距離を取っている無人機を見る。
「距離と飛行能力で優位に立ったつもりか…………はあっ!」
一度しゃがんで斜め前に大きく跳躍した冠は、無人機に蒼銀杖で一撃入れつつ地面に着地する。
「見通しが甘かったな」
『ソイヤッ! シルバースパーキング!!』
戦極ドライバーのカッティングブレードを三回倒し、蒼銀杖の先端にエネルギーを集約させるとそれを勢いよく投げる。背面まで貫通し火花を上げるところに、冠はキックを放って蒼銀杖を押し込んで突き抜ける。蒼銀杖をキャッチして着地すると共に無人機は爆発した。
龍玄と戦う無人機は、元々遠距離戦を得意とするブドウアームズに遠距離戦で挑んだのが失敗だった。
「そらそら、どうしたの!? 私に遠距離で挑んで来たってことは、勝つつもりなんでしょ!」
挑発を交えながら弾丸を避けたり防御しながらブドウ龍砲を撃ちまくる。無人機も回避行動に移るが、避けきれずに何発かガトリングに当たり爆発した。
「(それともやっぱり、元から勝つ気がないのかしら……ま、考えるのは後にしといて!)悪いけど、今ね!」
『ハイーッ! ブドウスカッシュ!!』
カッティングブレードを一回倒してブドウ龍砲のレバーを引き砲身にエネルギーをチャージする。そして無人機が視界を取り戻したタイミングでトリガーを引き、必殺のドラゴンショットを発射。無人機を爆破、撃墜した。
ナックルはクルミボンバーを楯にして弾丸を防ぎつつ無人機の真下まで一気に駆け抜ける。
「そんなに大きなガトリングじゃ、真下はすぐに狙えないでしょ!」
『クルミオーレ!』
「何もできずに終わっちゃえ!!」
クルミボンバーからクルミ状のエネルギー弾をパンチと共に真上に打ち出す。対応も何もできないままナックルの言うとおり、爆発四散した。
連射される弾丸をドリノコで弾き飛ばしながら、ブラーボは接近戦のアームズでどう攻めるか考える。
「ここはこうするのが一番だな!」
ドリノコの柄同士を連結させると、ブラーボはそれを投擲し無人機に攻撃を加え、ブーメランの要領で戻ってきたところを受け止め再び分割する。
『ドリアンオーレ!!』
「締めはコイツだ! 食らっておけ!!」
続けざまに戦極ドライバーのカッティングブレードを二回倒すとドリノコを何度も振るい、ドリアンの実を模した光弾を連続発射。無人機を蜂の巣にして撃墜した。
『カモン! ドングリスパーキング!!』
「やあああああああっ!!」
弾丸が降ってくる中素早くカッティングブレードを三回倒したグリドンは、ドンカチを思い切り振ってドングリ型の衝撃波を飛ばし、片方のガトリングを早々に破壊。
『カモン! ドングリオーレ!!』
「そこっ! たぁぁあああああああああ!!」
無人機のAIが処理を行う間にグリドンは敵より高くジャンプし、落下しながらドンカチで叩き付ける。一撃ではなく二発、三発と続き、フレームが耐えきれずに無人機は爆発。生じた炎の中からグリドンが現れ、砂浜に着地した。
斬月・真はソニックアローを連続して放つ。無人機はダメージを受けつつも攻撃を続行するが、それは失策だった。
「私に勝つ気があるのか? 常に攻撃し続ければいいと言うものではないぞ!」
ソニックアローで両方のガトリングを撃ち抜き破壊する。それにより攻撃指令から切り替える為にAIが一時的に静止したのを斬月・真は見逃さず、ソニックアローにメロンエナジーロックシードをセットした。
『ロック・オン!』
「いや……そもそも私達に勝つことが目的ではなかったな」
『メロンエナジー!』
必殺技、ソニックボレーが無人機を貫く。空いた穴から連鎖的に爆発していく無人機に、斬月・真は背を向けた。
「ガトリングの雨あられか……バカの一つ覚えみたいにっ!」
マリカはソニックアローで頭部のカメラアイを破壊する。狙いがつけられず滅茶苦茶に乱射する無人機を前に、マリカはシーボルコンプレッサーを一回押し込む。
『ピーチエナジースカッシュ!!』
「これで終わりだっ!!」
ソニックアローを振り抜き、放たれた斬撃が無人機を両断。破壊した。
全ての無人機をほぼ同時に撃破し、全員が現れるであろう
ドガァァァァンッ!
「ぐあああああああっ! な、何っ!?」
広範囲に放たれた強烈なエネルギー砲を食らい、そのダメージに吹き飛ばされ膝をつき、又は倒れる。
「地中に潜っていただと……!」
「小癪な真似してくれるじゃない……てかISの癖にアーマードライダーに膝をつかせる程のダメージを与えるなんて、どんな威力してんのよ!?」
「スイカアームズの攻撃を学習して、アーマードライダー並のスペックに進化したとは聞いていたが……!」
「余裕綽々なのも頷けますわね……厄介な!」
空中に浮遊し見下ろしてくる
「みんな! 大丈夫!?」
「一夏さん! もう平気なんですの?」
「うん。それより、一体何が?」
「
(次世代アーマードライダーをもダウンさせる程の威力……ジンバーアームズやスイカアームズでも危ないかも)
しかし一夏には確信があった。その攻撃を防ぐだけの力を、新たに手に入れたロックシードが持ってるということを。
「……アイツは私が倒す」
「1人でか!? 無茶だ!」
「私を信じて」
困惑するマリカに微笑みながら言う。マリカは何か確信めいたものを感じて一夏を信じ見守ることにした。
一夏は一歩前に出て入手したばかりのカチドキロックシードを解錠した。
『カチドキ!』
普段使うロックシードよりも力強い音声と共に、頭上に初めて変身した時と同じアームズ―――カチドキアームズが現れた。
「あのアームズは、あの時の……!」
「変身!」
初めて一夏が変身した時の出来事を思い出すバロンの前で、カチドキロックシードを戦極ドライバーにセットして施錠すると、すぐにカッティングブレードを倒した。
『ロック・オン!』
『ソイヤッ! カチドキアームズ! いざ・出陣! エイエイオー!!』
雄叫びのようなサウンドが周囲に響き渡り、アームズが頭に被さって上半身のみならず下半身まで覆うように展開される。普通のアームズやジンバーアームズ、エナジーアームズとも違う重装甲の鎧の胸部には普段頭部に飾り付けられている三日月のシンボルが描かれており、代わりに今頭部にあるシンボルは鋏のような左右対称のものに変化していた。背中にはカチドキ旗と呼ばれる二本の旗がある。
今ここに、一夏の新たなる変身―――仮面ライダー鎧武 カチドキアームズが爆誕した。