インフィニット・ストラトス―失われた未来―   作:レイブラスト

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第28話 斬月の裏切り?

夏休みに入り数日が過ぎた。千冬の行方は未だに掴めず、心配が増すばかりの一夏をセシリアは気分転換にとデートに誘った。現在はとあるレストランに来てメニューを見ていた。

 

「どれにします?」

 

「とろけるチーズピザにしようかなって思ってる。セシリアは?」

 

「この本格イタリアン風パスタにしますわ」

 

「じゃあ店員さん呼ぶね」

 

テーブルの端に置いてあるボタンを押して店員を呼び、注文をする。そして店員が去り料理を持ってくるまでの間に、一夏はセシリアを見て言った。

 

「セシリア、今日はデートに誘ってくれてありがとう。凄く嬉しいよ」

 

「喜んで頂けて幸いですわ」

 

「でもどうして急に、デートに行こうって言い出したの?」

 

「日本でデートらしいデートをしたことがありませんでしたから。……それに、一夏さんの笑顔が見たかったですし」

 

最後にボソッと付け加えるセシリアだが、それを一夏はちゃんと聞いていた。同時に今回のデートが、最近千冬のことで思い悩んでいた自分への計らいだということに気づいた。

 

(ありがとう。貴女が私の恋人でいてくれて……)

 

破顔し心の中で礼を言うと、丁度良いタイミングで料理が届きそれをセシリアと共に食べる。

 

 

 

 

 

食事の後、2人は会計を済ませようと席を立った。直後、一夏の携帯がメールの受信音を鳴らした。

 

「? 誰からだろう?」

 

携帯を操作してメールの内容を見た一夏は、送信者の名前と内容文に目を見開いた。

 

「これって……!」

 

「何て書いてありましたの?」

 

覗き込んだセシリアもまた、表情を一変させた。

何故ならメールの送信者の名義は千冬で、付近にある廃工場のマップと『この場所に来てくれ。話がしたい』という文が書かれていたからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一時間前―――

 

春也は女性権利団体の会長と共にとある施設に居た。机に座りハンバーガーを食べながら、春也はこう尋ねた。

 

「それで、わざわざ呼び出したってことはついに例の兵器の試作機が完成したってことで良いんですか?」

 

「ええそうよ。かなり時間と金が掛かっちゃったけど……優秀なスタッフのお陰でね」

 

「その割には1人以外は詳細すら知らされていない、手駒同然の存在だと聞きましたが?」

 

「今の世界…と言うか、織斑千冬に心酔しきっているもの。作業が終わったら始末しないと、邪魔でしかないわ」

 

「まあそっちの事情ですし何でもいいんですけど。ところでその1人は誰なんです? 紹介されてないんですが」

 

「しばらく缶詰状態で電話にすら出られない状況だったから、しようにも出来なかったのよ。でも今日やっと紹介できるわ。……優陽(ゆうひ)ー! ちょっとこっちに来なさい!」

 

「はい、美咲会長!」

 

会長―――美咲に呼ばれて元気よく返事をして登場したのは、研究者らしく白衣を着たショートヘアーの女性だった。

 

「この人が?」

 

「兵器開発部の責任者である横山優陽よ」

 

「初めまして。織斑春也君ですね? 美咲会長から話は聞いています」

 

「どうも。……あの、さっき会長さんが試作機が完成したと言ってたんですが、それは今どちらに?」

 

「今モニターに映します」

 

そう言うとモニターと接続してあるパソコンの前に座り、キーボードを操作する。すると格納庫のようなものに鎮座するトラックとスポーツカーが映し出された。

 

「では起動させますね」

 

キーボードを更に操作すると、二台の車が粒子状に分解し、それぞれ銀のロボットと赤いロボットとなって再実体化した。

ちなみにモニターには両機の識別番号と名称が以下の通りに表示されていた。

 

 

 

『TF-00 スティンガー』 『TF-01 ガルバトロン』

 

 

 

「どう? ISが待機形態から戦闘形態に変化する機能を応用した、ISとは一線を画す新兵器―――TFシリーズの出来は」

 

「(元々は僕が出したアイデアだと言うのに、自分達の成果みたいに言うなぁ)最高です。これはもう戦闘に出せるレベルなんですか?」

 

「ええ。いつでも出すことができますよ」

 

「それは有り難いですね。……ところでお願いがあるんですが」

 

「何でしょうか?」

 

「TFシリーズの量産体制が整ってからでいいんですが、これらの物を作るのに必要な材料を揃えて欲しいんです。それと、こちらのマシンの設計図にある空間転移装置を量産してTFシリーズに搭載してくださると有り難いんですが」

 

机の上に置いてあった大きな封筒を開けると、春也は戦極ドライバーとゲネシスドライバー、サクラハリケーンの設計図を渡した。

 

「どれどれ……ああ、これなら材料を揃えるぐらいはできますよ。何人分集めればいいんでしょうか?」

 

「こっちが4人分で、こっちが1人分あれば十分です」

 

「了解。転移装置の方は……これも頑張ればすぐ量産できます」

 

「本当ですか。ありがとうございます。では僕はここで失礼します」

 

「どこへ行くんですか?」

 

「ん……ちょっと不出来な姉の始末に。ここらで消えて貰った方が良いと思いまして」

 

その後春也は千冬の端末を用いて一夏の携帯にメールを送信し、廃工場に呼び出す算段を立てた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……本当に、ここに千冬お姉ちゃんが居るのかな?」

 

指定された廃工場に、一夏は1人訪れていた。

 

(セシリアは怪しいって言ってたけど、それでも何か手掛かりが掴めれば……!)

 

ガタンッ

 

「!?」

 

物音が聞こえ振り向く。そこにはソニックアローを持った斬月・真の姿があった。

 

「千冬お姉ちゃん、なの……?」

 

「…………はぁっ!」

 

一夏の問いに答えず、斬月・真は接近するとソニックアローで斬りかかる。

 

「うわっ!? い、いきなり何を!?」

 

辛くも避けた一夏は何故攻撃したか尋ねるも、斬月・真は何も口にせず再びソニックアローを振り翳してきた。

 

「うっ! くうっ……変身!」

 

『オレンジ!』

 

戦極ドライバーを腰に装着しオレンジロックシードを解錠すると、素早くドライバーにセットしてロックを掛け、カッティングブレードを倒して輪切りにした。

 

『ロック・オン!』

 

『ソイヤッ! オレンジアームズ! 花道・オンステージ!!』

 

鎧武に変身すると大橙丸を構え、斬月・真の攻撃を防いだ。

 

「どうしてなの、千冬お姉ちゃん!? 何でこんな!」

 

「はぁあああっ!!」

 

困惑する鎧武に一切手加減することもなく、斬月・真は膝蹴りを放つとソニックアローを横一文字に振り抜いた。

 

「きゃあっ……! ほ、本気だって言うの……」

 

「……………………………」

 

膝をついて戸惑う鎧武。そんな鎧武に斬月・真はソニックアローの弓を引いてエネルギーを溜める。そして放とうとした―――その時。

 

『カモン! バナナアームズ! Knight of Spear!!』

 

「やぁああああああああああっ!」

 

「っ!?」

 

突如としてバロンが死角から乱入し、そちらにソニックアローを向けるがその前にバナスピアーによって突き飛ばされた。

 

「セシリア!」

 

「心配で後をつけてみましたが、案の定でしたわね……!」

 

呆然とする鎧武の前でバロンは斬月・真と激しい接近戦を繰り広げる。その光景を見た鎧武は拳を握り締めながら立ち上がる。

 

「何で千冬お姉ちゃんがこんな真似をするのかはわからない……でも! 私だって黙ってやられる気はない!!」

 

『レモンエナジー!』

 

ゲネシスコアを戦極ドライバーに取り付けレモンエナジーロックシードを解錠すると、ゲネシスコアに装着してカッティングブレードを倒して輪切りにしたりカバーを開いたりした。

 

『ロック・オン!』

 

『ソイヤッ! ミックス! オレンジアームズ! 花道・オンステージ!! ジンバーレモン! ハハーッ!!』

 

「はあっ!!」

 

ジンバーレモンアームズに姿を変えた鎧武は、ソニックアローを持ってバロンに加勢した。

 

「っ!」

 

内心で驚きながらも斬月・真はソニックアローを振るう。しかし鎧武に受け止められるとバロンのバナスピアーで攻撃され、更に鎧武のソニックアローで斬りつけられる。予期せぬ援軍と連携に、斬月・真は攻撃された痕を手で押さえながら後ろに下がった。

するとバロンがある違和感に気づいた。

 

「……おかしいですわ。本物の千冬義姉様なら、この程度は余裕で防げそうなものですのに」

 

「! 言われてみれば、千冬お姉ちゃんの力がこんなものの筈がない……じゃあアイツは何者なの!?」

 

マスクの下で強く睨みながら言う。相変わらず無言のままの斬月・真は動揺を隠すようにソニックアローを強く握り締めた。

 

「っ……!」

 

目の前の斬月・真が千冬でなければ、本物の千冬はどこに居て誰が斬月・真に変身しているのか―――駆け巡る焦燥感を掻き消すように、鎧武はドライバーからロックシードを全て外すとカチドキロックシードを手に持った。それを見たバロンも、戦極ドライバーを外してゲネシスドライバーに付け替えるとレモンエナジーロックシードを取り出した。

 

『カチドキ!』

 

『レモンエナジー!』

 

解錠し各々のドライバーにロックシードをセットして施錠するとカッティングブレードを倒して輪切りにしたり、シーボルコンプレッサーを押し込んでカバーを開いた。

 

『『ロック・オン!』』

 

『ソイヤッ! カチドキアームズ! いざ・出陣! エイエイオー!!』

 

『ソーダ! レモンエナジーアームズ! ファイトパワー! ファイトパワー! ファイファイファイファイファファファファファイト!!』

 

カチドキアームズとレモンエナジーアームズが鎧武とバロンに被さって展開し鎧になると、鎧武は無双セイバーを、バロンはソニックアローを持って斬月・真に向けて走り出した。

 

「「はぁああああっ!!」」

 

「ぐっ!」

 

同時攻撃をソニックアローと鎧で受け止めようとする斬月・真だが、パワーが増したことによって防ぐことができず競り負けてダメージを負う。斬月・真は負けじとソニックアローから光矢を放つが、カチドキアームズの装甲で掻き消した上で逆にバロンの光矢と火縄大橙DJ銃に持ち替えた鎧武の砲撃を食らい吹き飛ばされた。

 

「ぐあっ……!!」

 

必死で痛みを堪えると、何やら端末を操作する。するとどこからかブレード装備型の無人ISが二機現れ、それに紛れる形で斬月・真はその場から撤退した。

 

「あっ! 待て!」

 

「一夏さん! 無人機を倒すのが先ですわ!」

 

「っ、わかってる!」

 

鎧武はDJ銃の銃口部分にあるジョイントを展開すると無双セイバーの切っ先を差し込む。奥まで入れるとグリップ部分から刃がせり上がり、巨大な剣が出来上がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、斬月・真は少し離れた場所からデータを観測しつつ動揺している心を落ち着かせた。

 

(まさかセシリアが乱入するばかりか、戦闘パターンから偽物とバレるとは……さすがは代表候補生といったところか。仕方ない、始末するのは後の楽しみにしておこう)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やあっ! せえいっ!」

 

「はぁあああっ! えぇぇぇぇぇいっ!」

 

鎧武とバロンは襲いかかってきた無人機を逆に追い詰め、時間を掛けてられないとすぐに戦極ドライバーから外したカチドキロックシードを火縄大橙DJ銃にセットしたり、ゲネシスドライバーのシーボルコンプレッサーを一回押し込んだりした。

 

『ロック・オン!! イチ・ジュウ・ヒャク・セン・マン・オク・チョウ! 無量大数!!』

 

「セイハァァァァァァアアアアアアアアアアアッ!!」

 

『カチドキチャージ!!』

 

『レモンエナジースカッシュ!!』

 

「ぜぇえええええええええい!!」

 

必殺の火縄大橙無双斬による一閃とソニックアローによる斬撃が決まり、無人機を返り討ちにして破壊。変身を解除すると斬月・真が逃げた方へ走るが、既に姿を消していた。

 

「逃げられた……」

 

「捕まえて情報を聞こうと思ってましたのに」

 

「とりあえずプロフェッサーやみんなには報告しとかないと」

 

どうにか気持ちを切り替えようとする2人だったが、その後ろを変身を解除した斬月・真―――春也が通り過ぎたことに気がつかなかった。

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