インフィニット・ストラトス―失われた未来―   作:レイブラスト

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第30話 幕開け!恋の訪れる学園祭!

学園祭前日。一夏とマドカと真白は亡国機業(ファントム・タスク)の医療機関を訪れ、千冬が居る病室の前に来ていた。

 

コンコン

 

『どうぞ』

 

「……失礼します」

 

軽くノックをして入ると、ベッドに横になっている千冬と丸椅子に座る凌馬と束がいた。

 

「具合はどうなんだ?」

 

「悪化はしてないが、良くもなっていない。ずっと眠り続けているよ」

 

「お姉ちゃん……」

 

千冬の傍に歩み寄ると、一夏は手を彼女の手に重ねる。意識の無い姉の姿を見て涙が溢れそうになるが、それを必死で堪える。

 

「……我慢しなくてもいいよ、いっちゃん。悲しい時は泣いても「泣きません」え?」

 

「春也のしでかしたことのせいで泣きたくなんかない。泣くのは千冬お姉ちゃんが目を覚まして、春也に証言突き付けて土下座で謝らせてからです」

 

涙を堪えて決意を固める一夏に、束は彼女なりの強さを感じ取った。そんな時、束に話しかける者が居た。

 

「あの……」

 

「? 確か君は白式が変化した……真白ちゃんだったっけ?」

 

「はい」

 

「こうして見ると人間にしか見えないね。束さんもびっくりだよ……まあそれは置いといて、これからはしろちゃんって呼ぶけど、私に何か用?」

 

「これをお渡ししようと」

 

真白は懐から学園祭の招待券を二枚出すと、一枚を束に渡しもう一枚を凌馬に渡した。

 

「これ、IS学園の……どうして?」

 

「最近千冬お姉ちゃんのことで根を詰めてるって聞いたから、息抜きにと思って」

 

「提案したのは箒だけどな。ちなみにスコールとオータムにも渡しておいたぞ」

 

「そういうことなら、お言葉に甘えさせて貰うよ。束も行くだろ?」

 

「でもちーちゃんが……」

 

「千冬の看病も大切だが、今は気持ちをリフレッシュさせた方がいい。寝不足のせいで結構酷い顔してるからね」

 

「……そんなに酷い?」

 

「相当なもんだ。もし千冬が見たらきっと気絶してしまうよ」

 

「ええっ!? そ、それは嫌ぁーっ!!」

 

「(お、思ったより本気にされてしまった……)じゃあ息抜きするかい? ストレスが抜けたら少しはマシになるかもよ?」

 

「するする! させて下さい!」

 

渋る束に凌馬は冗談のつもりで言ったが、意外と本気でとられてしまい、内心戸惑いながらもポーカーフェイスで続行し束の首を縦に振らせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして一晩明けた学園祭当日。一組のメイド喫茶では開店前の準備を行っていた。

 

「よく似合ってますわ、一夏さん」

 

「そうかなぁ? イマイチ自信ないけど……」

 

オルコット邸で着ていた物とは違い、可愛らしい装飾が施されたメイド服姿を褒めてくれるセシリアに一夏は首を傾げる。こんなに可愛い服が果たして自分に似合うのだろうか疑問だったが、セシリアが言うのだから似合っているんだろうと完結させた。そこへ同じく着替えを終わらせた箒、マドカ、シャルロット、ラウラがやってきた。

 

「着替え終わったみたいだな。……ふむ。中々似合ってるじゃないか」

 

「そう言う箒達も凄く似合ってるよ」

 

箒は特注の和服メイド服を、シャルロットはオレンジのオーソドックスなメイド服を、マドカとラウラはゴスロリ風のメイド服を着込んでおり、そのどれもがマッチしていた。

 

「それは良かった。私としては、やはり和服の方が落ち着くのでな」

 

「褒められるのは嬉しいが、どうも複雑だなぁ」

 

「え、何で? 可愛いのに」

 

「そんなに好きじゃないんだ、ゴスロリは。周りに子供っぽく見られるし。ラウラも嫌だろ?」

 

「別にそんなことはないが。体型を気にしても変えられるようなものでもないし。まあ似合ってなければ話は別だが」

 

「そんなことないよ。今のラウラ、すっごく似合ってて可愛いから」

 

「そ、そうか。そう言うシャルロットも、似合っているぞ」

 

「……準備前にイチャつくな」

 

互いに頬を赤くしたラウラとシャルロットにジト目を向けながらぼやくマドカ。呆れ半分羨ましさ半分といったところだ。

 

「(やはりIS学園に居る以上、異性との出会いは無きに等しいしなぁ。かと言って私は同性愛の方ではないし…………今考えても仕方ないか)……っと、そろそろ開店の時間だ。みんな行くぞ!」

 

時計を見て気持ちを切り替えると、マドカは入り口を開ける。店先にはかなりの客が列を作って並んでいた。若干気圧されるものの、気を持ち直すとすぐさま接客に取りかかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

開店から30分後。

 

「織斑さん! 二番テーブルにこれ持ってって!」

 

「わかった!」

 

「オルコットさん! 十番テーブルの注文とってきてくんない!?」

 

「お任せ下さい!」

 

「フランソワさん! お客様を十一番テーブルに案内して頂戴!」

 

「任せて!」

 

店は客足が途絶えること無く繁盛しており、厨房班も接客班も休む暇もなく大忙しで働いていた。

 

「織斑さん、三番テーブルにお客様を案内して」

 

「はーい!」

 

そんな中で案内を頼まれた一夏が入り口に向かうと……。

 

「一夏ぁー、お邪魔しに来たわよ~」

 

「はぁー、本格的とは聞いてたがここまでとは驚いたぜ」

 

「メイド服似合ってるわよ、一夏ちゃん」

 

「他の皆も中々様になってるねぇ」

 

「おお、箒ちゃんは和メイドなのかー。眼福眼福~♪」

 

中華喫茶の出し物で赤いチャイナドレスに身を包んだ鈴を先頭に、感心した様子のオータムと優しく笑みを浮かべたスコール、全体を見渡す凌馬とパッと見別人に見えるレベルで変装をした束がいた。

 

「(変装が本格的すぎて一瞬誰かわからなかったけど……束さん……だよね?)あの、プロフェッサーの隣に居る人って……」

 

「……言いたいことはあると思うけどとりあえず今は虹野アリスって名前になってるから、店外ではそう呼んであげて」

 

「は、はあ……わかりました。それではご主人様、お嬢様、こちらへどうぞ」

 

困惑しかけるが束の事情的に仕方ないと納得すると、鈴達をテーブルへと案内した。

 

「ご注文は何になさいますか?」

 

「んじゃ私は、アイスティーにするわ」

 

「俺はブラックコーヒーの濃いめの奴な」

 

「私にもオータムと同じのをお願い」

 

「私はそうだな……アイスコーヒーを1つ頼むよ」

 

「アリスさんにはカフェオレをプリーズ!」

 

注文を承ると、一夏は厨房へ移動し少しして注文した飲み物を乗せたトレイを持って戻ってきた。

 

「お待たせしました、ご主人様、お嬢様」

 

「ありがと」

 

「この濃さ、やっぱコーヒーはこれに限るぜ!」

 

「そうね(思ってたより濃いわね……)」

 

「どうもありがとう」

 

「そんじゃ早速、頂いちゃうよ!」

 

凌馬らは渡された飲み物に様々な反応を示しながら飲み始める。それを一夏は見守っていたが、セシリアが近くに寄って来てトントンと肩を叩いた。

 

「一夏さん、そろそろ休憩のお時間ですわよ」

 

「そっか。じゃあ早く行かないと、弾達と行き違っちゃうね」

 

「ええ」

 

「ん? 一夏はともかくセシリアまで弾達の迎えに行くの?」

 

「折角蘭さんに招待券を渡しましたのに、出迎えないのは失礼ですもの」

 

「ああ、あれってセシリアだったんだ……道理で電話越しに嬉しそうにしてた訳だ」

 

「では行きましょうか。……そうですわ、プロフェッサー達も一緒に行きますか?」

 

「いや、私達はもう少しここにいるよ」

 

凌馬からの返答を聞いた一夏とセシリアと鈴は一組の外へ出る。いざIS学園のゲートへ向かおうとするが、何かを思い出した一夏が足を止めた。

 

「そうだ、真白を出してあげなきゃ」

 

人目のつかないところに行き人間の姿になった真白を連れてくる。だが真白はどこか疲れているような顔をしていた。

 

「どうしたのよ。歩く前から疲れちゃって」

 

「一夏の腰にぶら下がっていたら、目を回してしまいまして……」

 

「……ご愁傷様ですわ」

 

「だ、大丈夫?」

 

「行動に支障を来す程ではないので、特に問題はありません」

 

「ならいいけど、やばかったらちゃんと言ってね」

 

真白を気遣いながら(結局本当に問題はなかった)受付のある方向へと一夏達は歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時を同じくしてゲート付近では弾、数馬、蘭の3人が目の前のIS学園を立ち止まって見上げていた。

 

「これがIS学園かぁ。やっぱテレビと資料で見るのじゃ迫力が違うな」

 

「僕は未だに衝撃が抜けきらないぞ。普通じゃ来られないところに来てる訳だし……やっぱ持つべきものは友達だよな」

 

「おう。……蘭も感謝しろよ? 余ってた招待券貰えたお陰で、お前も来ることができたんだから」

 

「お兄に言われなくてもわかってるわよ。……それにしても、外に並べてあった自動車やトラックは何だったのかしら?」

 

「スポンサーの宣伝じゃないかな? シボレーが4台ある上にパガーニとか置いてあったし。そんなことよりかは受付に行こう。じゃないと話が始まらない」

 

「そうだな。えっと受付は……お、あれだな」

 

時間的に減ってはいるが、まだ列になって招待券を順番に見せているのを目敏く発見すると最後尾に並ぶ。弾達の番が来るのはすぐだった。

 

「次の方、どうぞ」

 

「ああはい」

 

一番に弾が招待券を渡す。受付をしていた生徒―――虚はそれが本物であるかどうかを確認すると名簿を指しながら顔を上げた。

 

「ではこちらにお名前……を……」

 

「あ……」

 

見上げる虚と見下ろす弾の視線が合った瞬間、2人に電撃のようなものが走った。そのまま硬直したかのように見つめ合う。

 

「ちょっと何やってんのよお兄。早く名前書いてよ」

 

「っ! そ、そうだった。えと、名前名前……」

 

「え、えっと、こちらのペンをお使い下さい」

 

妹に注意されて慌てて名前を記入する。それを終えると虚が書かれた名前を確認した。

 

「五反田弾さん……って言うんですね……」

 

「は、はい。……あ、あの…貴女の名前は……?」

 

「わ、私ですか!? 私は、その……の、布仏虚といいます!」

 

やたらと辿辿しい2人の様子に、数馬と蘭は何が起きたのかを把握し同時に呆気に取られた。

 

「……あり得ない……お兄に一目惚れするだなんて……」

 

「弾が一目惚れするならいつものことだけど……世界が滅ぶ前触れか……?」

 

言いながら名簿に名前を記入した、その時であった。

 

「あ。いたいたって、何があったの?」

 

「い、一夏。それに鈴とオルコットさんも……」

 

「何やら虚さんの顔が真っ赤ですが……」

 

「っ! まさか弾! アンタ、初対面の癖してセクハラ発言したんじゃないでしょうね!?」

 

「言いがかりだ! 俺がそんなことをする奴に見えるか!?」

 

「「「「見える」」」」

 

「ひでぇ!!」

 

セシリアと真白を除く4人にハモられたことでショックを受ける。一連の会話を聞いていた虚は釈明すべく立ち上がった。

 

「ち、違います! 私が勝手に一目惚れしただけで、彼は何も………………あ」

 

「え……?」

 

「「嘘ぉ!?」」

 

「まあ……」

 

「え、あ、い、今のはあの! その、えっと……」

 

意外すぎると驚く一夏と鈴に、目を見開いて口元を手で隠すセシリア。そして混乱しあたふたとする虚の姿を見ていた真白はある疑問を口にした。

 

「一夏。ひとめぼれとは、一体何なんですか?」

 

「え? うーん……初対面の相手を一目見ただけで好きになる、かな?」

 

「ん……? なあ、その子は一体誰なんだ?」

 

首を傾げる真白の姿を見て、どうにか場の空気を変えようとしていた弾がこれ幸いにと尋ねた。

 

「ああ、この子は真白。私の遠い親戚にあたる子なんだ」

 

「初めまして。よろしくお願いします」

 

「こっちこそよろしく。……てか一夏に親戚なんていたとは初耳だな」

 

腕組みしながら言う弾に、事情を知る一夏達は顔を見合わせ苦笑する。

 

「って! 話逸らそうとしても無駄よ」

 

「ギクッ!? ば、バレた?」

 

「全く……んで、事情は何であれ虚さんは弾に惚れちゃったと。弾、アンタはそれにどう応える気?」

 

「ど、どうって……」

 

「や、やっぱりさっきのは忘れて下さい! 初対面の人にこんなこと言われたところで、迷惑でしかありませんし……」

 

「め、迷惑だなんて、そんなこと! お、俺は……っ、俺も、布仏さんに一目惚れしましたから! だから全然、迷惑なんかじゃない!!」

 

「ふぇっ!? …あ、ぁぅ……」

 

「……到着早々、お兄の春到来を見られるなんて思わなかったわ……」

 

「しかも人が大勢居る中でな。……マジで世界滅ぶんじゃないか、これ?」

 

周りからの注目を集めてしまっていることに数馬がツッコみ、「あっ」と気づいた弾と虚が恥ずかしそうに頬をかく。もう苦笑するしかないと一夏は思わず周りを見渡した。

 

(……あれ?)

 

その中に後ろ姿だがある人物が学園内を歩いているのに気づいた。見間違いかと目を擦るが、確かに彼はそこにいた。

 

(間違いない……でもどうして今頃?)

 

「……か。一夏!」

 

「……鈴? どうしたの?」

 

「どうしたのじゃないわよ。急に黙り込んじゃって……何かあったの?」

 

「ううん、何でもないよ。……あ! 悪いけど用事思い出したから、ちょっと行ってくるね!」

 

「用事って、ちょっと一夏!」

 

引き留めるより早く、一夏は走り去ってしまった。後に残された鈴や真白達は怪訝そうに彼女を眺めていた。

 

「一夏の奴、どうしたんだ?」

 

「さあ?」

 

「(何だか嫌な予感がしますわ……)私が見てきますわ。皆さんはご自由に見て回って下さいな」

 

不安を感じたセシリアは一夏に気づかれないよう、人混みに紛れながら後をつけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(私服だったけどあの後ろ姿は間違いない。でもどうして今になって……?)

 

思考を張り巡らしながら一夏は歩く。しばらくして追いかけていた人物は通路の途中で立ち止まり、一夏もそれに合わせて足を止める。気がつけばゲート付近から離れたところに来てしまっていたが、今更後には引けない。すぐに目の前の人物に問いかける。

 

「……春也……だよね?」

 

「……よくわかったね。やっぱ姉弟ってことかな」

 

振り向きながら言う人物―――春也はいつものように爽やかな笑みを浮かべていた。

 

「まあね……1つ質問してもいい? 何で千冬お姉ちゃんをあんな目に遭わせたの……!?」

 

「あんな目?」

 

「臨海学校の時、千冬お姉ちゃんのゲネシスドライバーを奪って変身して、海に落としたことだよ。言っとくけどしらを切ろうとしても無駄よ。何もかも全部知っているんだから」

 

「(目撃者がいたのか? 確認した筈だが……まあいい。どうせ今更取り繕う必要もない)今は言えない。ただ別のことで謝らないといけないことがある」

 

「別のことですって?」

 

「うん。なんせここはもうじき戦場となるからね。折角の文化祭を台無しにしちゃってごめん……って」

 

言い終えるとゲネシスドライバーを腰に装着し、メロンエナジーロックシードを持った右手を掲げる。

 

「貴方まさか……! ここで戦えばどんなことになるのか、わかっているの!?」

 

2人の周りには一般の招待客や生徒等が行き来しており、何人かは足を止めて「喧嘩か?」と見守ってもいた。

 

「わかってるさ。でも僕と関わりの無い人達のことなんて―――知ったことじゃない。変身」

 

『メロンエナジー!』

 

メロンエナジーロックシードを解錠した春也はゲネシスドライバーにセットして施錠すると、シーボルコンプレッサーを力強く押し込んでロックシードのカバーを展開させた。

 

『ロック・オン!』

 

『ソーダ! メロンエナジーアームズ!!』

 

頭上に出現したアームズが頭に被さりゲネティックライドウェアで全身を包まれると共に開いてアーマーになって固着し、春也は斬月・真に姿を変えた。

 

「はぁっ!!」

 

「っ!」

 

変身してすぐに一夏に接近してソニックアローを振るう。咄嗟に左に転がって回避するが斬月・真は続けざまにソニックアローを振るってくる。巻き添えを食らった柱が破壊され、周りの客達が悲鳴を上げて逃げ始める。

 

「くっ、このままじゃ!」

 

「何やってるの姉さん? 早く変身しなきゃ。でないと被害がもっと広がるよ?」

 

「貴方、よくもぬけぬけと……!」

 

平然と周りを巻き込んだ斬月・真の行動に怒りを震わせると、戦極ドライバーを腰に装着してカチドキロックシードのロックを解除した。

 

「変身!」

 

『カチドキ!』

 

すぐに戦極ドライバーに取り付けて鍵を掛け、カッティングブレードを倒してカチドキロックシードを輪切りにした。

 

『ロック・オン!』

 

『ソイヤッ! カチドキアームズ! いざ・出陣! エイエイオー!!』

 

巨大なカチドキアームズが一夏の全身を包むように展開し、鎧武に変わると無双セイバーを持ってソニックアローと斬り合い火花を散らした。

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