インフィニット・ストラトス―失われた未来― 作:レイブラスト
一瞬の隙を突かれ、虚達を人質に取られてしまった鎧武達。危機感を募らせる彼女達を余所に、ガルバトロンとスティンガーは人質を手に春也の元へと歩き近づいた。
「よくやったガルバトロン、スティンガー。さあ2人とも、一度退却しますよ」
「待って春也!」
「……何だい一夏姉さん?」
立ち去ろうとする春也を鎧武が止める。心底鬱陶しそうに聞くと鎧武は一歩前に出て春也に問うた。
「貴方は一体何がしたいの!? 女性権利団体なんかと手を組んで、千冬お姉ちゃんをあんな目に遭わせて、挙げ句の果てに学園祭を滅茶苦茶にして!!」
「それだけではありませんわ! 貴方は昔、周りを扇動して一夏さんを虐めていましたわよね!? 何故そのようなことをしたのですか!」
続けてバロンが問いかけ、そんなに一気に言うなよと内心思いながらも春也は少し間を置いて答えた。
「まず一夏姉さんの件から言うよ。……僕以外に世界を支配できる人間を排除したかったからさ」
「? それはどういう意味?」
「僕達の姉である千冬姉さんは、世界最強という肩書きを得てその弟妹という肩書きを僕達にくれた。これを権力としてうまく使えば、千冬姉さんの後継者として世界をひれ伏させることができるんだよ。実際、学校では誰も僕に逆らおうとはしなかった。一夏姉さんは落ちこぼれだったけど、一応はその権利を持ってるから居なくなってくれた方が良いと思ったんだ」
「それだけ……? たったそれだけの理由で、アンタは一夏を傷つけたって言うの!?」
「いいや。僕達織斑家の汚点だったから、も理由としてはあるよ」
激怒する龍玄に涼しい顔をして言う。それが龍玄の怒りに更に火をつけたが、殴りかかる衝動を必死で堪えた。
「一夏姉さんが誘拐されて、以降行方不明になったと聞いた時は喜んだよ。ようやく消えてくれたかってね」
「だが生憎、一夏ちゃんは私達が助けたことで生き延びていた。それが君にとって誤算だった訳だ」
変身を解除した凌馬が言うと、春也は彼を憎々しげに見つめ、怒りにも似た感情を込めながら問いかけた。
「……お前はそうやっていつも僕の邪魔をしてくれたな。一々一々……せめてここでは好き放題させろよ!!」
「お前の欲望塗れな願望なんか、邪魔するに決まっているだろ。それがダチとして、俺がお前にできるせめてものことなんだからよ」
「! 戦極…凌馬ァァァァッ!!」
睨み合う凌馬と春也。その光景、特に一人称が変化しダチという単語を使った凌馬に皆の視線が集中していた。
「プロフェッサー。今の話は……?」
「気にしないでくれ。少々プライベートなことなものだからね。それより一夏ちゃんの問いに答えて貰おうか」
「……わかっている、最初の3つのやつでしょ。まず女性権利団体と手を組んだことだけど、それは僕を高みへと至らせる為に必要な駒を用意したり、僕にとってまずいことをもみ消してくれる存在がいた方が得だからだ」
「駒って、度々現れた無人機のことを言ってるの?」
「そうだ。次は……千冬姉さんのことだったか。何、簡単な理由だよ。あの人が会見を開いて白騎士事件の真相を世に明かそうとしたからさ」
「白騎士事件の真相? 一体何なんだ?」
「後で束さんにでも聞くといいさ。兎に角、そんなことをされては千冬姉さんの権威や僕の評判も地に落ちてしまうから、始末したんだ。全くバカな人だよ。会見なんて開こうとしなければ、手を下さなくて済んだのに。それにあの人、僕にトドメを指す絶好のチャンスで躊躇いを見せたんだよ。それさえなければ、今僕がここに居ることは無かったのかもしれないのにさ」
壊れた戦極ドライバーとメロンロックシードを取り出しながら笑うと、それらを鎧武の足下へと放り投げた。鎧武は戦極ドライバーとメロンロックシードを見下ろすと、怒りに肩を震わせながら再び顔を上げた。
「後は……ああここを襲った理由か。僕がコピーしたドライバーとロックシードと、このトランスフォーマーという新型兵器の性能テスト。それとIS学園への決別の意志を示す為だよ。……しかし、トランスフォーマーがこんなに早く倒されるとは思わなかったよ。アーマードライダーにも引けを取らない性能だと自負してたんだけどね」
「性能テストに決別……たったそれだけの為に……! 春也、アンタだけは絶対に許さない!!」
あまりにも勝手な理由をいけしゃあしゃあと述べる春也に、ついに鎧武の怒りが頂点に達した。その時、鎧武の右手から金色の光が突如として溢れ出た。
「うわっ!? な、何だこれは! 眩しい!」
「この光は……!」
やがて光は収まり、鎧武の手の中には初めて変身した際に用いた、あの極ロックシードが握られていた。
「! 一夏さん、それは!」
「これはあの時の………………よし!」
『フルーツバスケット!』
極ロックシードの側面にあるスイッチを押すと下から鍵がせり出し、オレンジアームズ、バナナアームズ、ブドウアームズ、ドングリアームズ、マツボックリアームズ、ドリアンアームズ、クルミアームズ、メロンエナジーアームズ、レモンエナジーアームズ、チェリーエナジーアームズ、ピーチエナジーアームズが一度に出現し鎧武の頭上をくるくると回る。
そして戦極ドライバーに接続用ソケットができ、鎧武はすぐさまそこに差し込むと極ロックシードを回した。
『ロック・オープン! 極アームズ! 大・大・大・大・大将軍!!』
カチドキロックシードと極ロックシードのカバーが展開し力強い音声と共に、全てのアームズが鎧武に集まり吸収され、カチドキアームズの鎧が弾け飛ぶ。中から現れたのは胸部にオレンジ・イチゴ・スイカ・バナナ・ブドウ・メロンの絵が描かれた白銀の南蛮胴で全身を包み、大きなマントを羽織った鎧武者。最初に鎧武が変身した極アームズだ。
「カチドキアームズの中から、新たなアームズが!?」
「だ、大将軍……?」
「やはりこの姿でしたのね。これを見ているとあの日のことを思い出しますわ」
「ようやくお出ましか。長かったねぇ」
「!? 極アームズだと……くっ、トラックス04! 起動して一夏姉さんを殺せ!!」
腕に装着した端末に指示を送ると展示されていた場所に唯一残っていたシボレー・トラックスが走り出し、人にぶつかる直前で粒子化し鎧武と春也の間にロボットに変形して割って入った。
そしてクローを展開しながら鎧武に近づくが、鎧武は落ち着いて極ロックシードを回す。
『ドリノコ!』
音声と共にブラーボの武器であるドリノコが召喚され、回転しながら自動でトラックスをガリガリと攻撃。怯ませると鎧武の手に収まった。
「! あれは私の武器……!」
驚きを隠せないブラーボの前で鎧武はトラックスの胸元へジャンプすると、ドリノコを何度も振るい火花を散らして後退らせた。
「集団戦じゃないのに押されているだと!? こうなったら!」
『メロンエナジー!』
『ロック・オン!』
他のアーマードライダー達が、短時間とは言えトラックスを数人がかりで仕留めたことを考えると状況的にまずいと春也は判断し、即座にメロンエナジーロックシードをゲネシスドライバーにセットした。
『ソーダ! メロンエナジーアームズ!!』
再び斬月・真に変身するとソニックアローを持ってトラックスの横に並び立つ。
「2人がかりで来ようって訳? なら!」
『無双セイバー!』
今度は無双セイバーを召喚し逆に斬月・真らに向かっていく。そしてまず斬月・真の攻撃を防ぐと腹部を斬りつけ、すかさずトラックスの左腕によるパンチを防いで押し退けると取り出したイチゴロックシードをソケットに装填した。
『ロック・オン! イチ・ジュウ・ヒャク! イチゴチャージ!!』
「はぁぁぁあああああああ!!」
無双セイバーを上に向けて振り抜き斬撃を飛ばす。斬撃は空中でイチゴクナイ型の大量のエネルギー刃に変化しトラックスに降り注ぎダメージを与えた。
「まだまだ!」
『影松!』
左手に影松、右手に影松・真を召喚させるとまだ怯んでいるトラックスの顔面に影松を投げる。先端部がカメラアイに突き刺さり混乱したところで、鎧武は影松・真を斬月・真に振るう。初撃はソニックアローで防御されるも反対側の刃を使った二撃目で膝を狙い、膝を付かせると蹴りを放って斬月・真を転ばせた。
『大橙丸!』
次に大橙丸を呼び出すと、無双セイバーと柄同士を連結させてナギナタモードにする。斬月・真からトラックスに方向を変えると既に起き上がっていたトラックスは、右腕からデタラメにロケット弾を発射していた。
『メロンディフェンダー!』
だが鎧武は走りながら極ロックシードを回し、メロンディフェンダーで一部向かってくるそれを弾いて一気に懐に飛び込むと勢いよく斬りつけ、大橙丸の刀身から出たオレンジ色の斬撃で右腕を切り落とすと、そのまま無双セイバーの刀身で左腕を切り落とした。
『火縄大橙DJ銃!』
息つく間もなく火縄大橙DJ銃を召喚。側面のソケットにパインロックシードをセットする。
『ロック・オン!!』
DJ銃から『フルーツバスケット!!』という音声が和風ミュージックに混じってリピートされ、銃口に果実の幻像が浮かびエネルギーが溜まっていく。
「はぁぁああああ……はあっ!!」
『パインチャージ!!』
トリガーを引き強力なエネルギー弾を発射しトラックスを飲み込む。無数の果実がトラックスを覆うような光景の中で、装甲が耐えきれなくなり爆発が始まる。やがて限界を迎えたトラックスは放たれたエネルギー弾と共に跡形もなく消え去ってしまった。
「こ、こんなことが……! ガルバトロン、スティンガー! 変形しろ! 人質を連れて退却だ!!」
「おっと、その前にそれだけは返して貰うよ! キルプロセス!!」
逃げようと踵を返したところに凌馬が懐から出したリモコンを向けてスイッチを押す。途端に斬月・真のゲネシスドライバーからバチバチと小さな爆発が起きる。
『メロンエ、メロンエナ、メ、メ、メロンエナジー……』
ゲネシスドライバーが斬月・真から外れてエラーのように音声が繰り返され、変身を維持できなくなり春也へと戻る。
「クソッ! 覚えていろ!!」
捨て台詞を吐いて春也はビークルモードに変形したガルバトロンに乗り込み、スティンガーと共に発進させた。
「ちょっと、急ぐあまり忘れてるものがあるわよ!」
「お、置いてかないで下さい~!」
美咲と優陽も慌てて飛び乗ると、ガルバトロンとスティンガーはサクラハリケーンやローズアタッカーのようにこの場から消えた。
「スコール、今の」
「どうやら連中、ロックビークルの技術まで盗んでいたらしいわね」
「全く以て抜け目が無いというか何というか……ところでりょーくん。さっきのキルプロセスって何?」
「ああ、万が一敵に盗まれた時の為に、組み込んでおいたヒューズを飛ばすシステムだ。危険度の高いゲネシスドライバーにしか施してないけどね」
言いながらメロンエナジーロックシードと壊れたゲネシスドライバーを拾い上げる。
戦いが終わり、皆が変身を解除する。だがその表情は決して晴れやかなものではなく、むしろ悲壮感の漂うものであった。
「……学園祭は滅茶苦茶にされた上に、虚さん達が攫われた。こんなの、勝利だなんて呼べないよ……」
一夏の呟きに、セシリア達も黙って俯くのであった。
一方、拠点に戻った春也達は。
「痛た……思った以上に反撃食らっちゃったわね」
「死ぬかと思いました……おまけに身体も怠いです」
「私も、変身を解いてから何だか調子が変なのよ。ダメージ受けすぎたのかしら」
「今の内にちゃんと休んでいた方がいいですよ(僕が施した仕込みはちゃんと効いているみたいだな)」
倦怠感を訴える優陽と美咲に内心ほくそ笑みながら声を掛けると、「さてと」と格納庫に移動し、ロボットモードに変形させたガルバトロンとスティンガーの前に居る虚達と対面した。
「やあ。気分はどうかな?」
「……最悪もいいところよ。突然こんなところに連れてきて、目的は何なの? 私達をどうするつもり?」
「目的はそうだな……世界の全てを僕のものにする、と言えばわかるかな」
「世界征服ってことっスか!?」
「その通りだよ。だけど成し遂げても後を継ぐ奴が居ないと、僕が死んだ後の支配は終わってしまう。だから君達には僕の子孫を産んで貰うよ」
「!? し、子孫って……そんな……」
「冗談でしょ……」
「ふざけないでよ! 私は男は嫌いなの! 子供なんか産まないわよ!!」
連れてこられた4人目の女教師が怒りを剥き出しにして叫ぶ。これに対し春也は目を細めながら肩をすくめた。
「やれやれ、よりによって同性愛者を連れて来ちゃったか。まあ付近の女性を適当にって言ったから仕方ないけど……でも考え直さない? 同性同士の恋愛なんて子孫を残せない、非効率的なものなんだよ」
「確かにそうかもしれないけど、アンタなんかの子を産むぐらいなら死ぬ方がマシよ!!」
「……わかったよ。そこまで言うなら、望み通りにしてあげる。ガルバトロン」
命令を送られたガルバトロンは教師をひょいと掴み上げると、胸部に存在する円形のシュレッダーを回転させた。
「な、何をするつもり!?」
「死ぬ方がマシなんだろ? だからそうさせてあげるのさ」
身体を反らせたガルバトロンは教師をシュレッダーの上へと持っていく。
「ま、待って! わ、私が悪かったわ! 貴方の言うとおりにするからお願い助けて!」
「もう遅い! それに他の3人への良い見せしめになるからね。さあやってしまえ!」
命じられるまま手を離し教師をシュレッダーへと落とす。ガリガリと肉と骨を裂く音と夥しい量の血飛沫が舞う。
「ぎゃあああああああああああああああああーっ!! だ、だずげぇ……」
「はははははは! 僕に逆らう者は皆こうなるんだ。君達も理解したかな!?」
凄惨な光景にフォルテは胃の中の物を吐き出し、真耶はショックで気絶し虚はどうにか持ち堪えると顔を青ざめながら必死で頷いた。
「それじゃ僕は美咲さん達を呼びに行くから。死体の処理を急いでやっておいて」
ガルバトロンとスティンガーをビークルモードに変形、待機させるとミンチよりも酷い状態になった死体処理を虚達に丸投げし去って行った。
その後、何とか掃除を済ませたガレージに春也は美咲と優陽を連れてきた。
「で、今後どうするつもりなの?」
「どうするも何もIS学園に喧嘩を売ったんだ。このままの流れで例の作戦を実施するんだ」
「今すぐですか?」
「ああ、今すぐだ。連中はIS学園での救助及び復興作業に忙しい筈だから、すぐには対処できないだろう」
「虚を突くってことね。いいわ、私好みの作戦よ」
「そりゃどうも。んじゃ、早速作戦開始といきますか」
ガルバトロン、スティンガー、その他大量に保管されてある量産型トランスフォーマーと、それらとはどこか雰囲気の違う10台のトランスフォーマーを起動させながら春也は邪悪な笑みを浮かべた。