インフィニット・ストラトス―失われた未来―   作:レイブラスト

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最終話 愚者の末路/それぞれの未来へ

春也の野望を挫いてから一週間。IS学園は男性IS操縦者が世界征服を目論んだことと、もう1つとあるビッグニュースに大騒ぎしていた。

 

 

 

 

 

 

 

「いや、本当に今日も騒がしいわね……私達以外誰も居ないのに、なんでここまで声が聞こえるんだか」

 

一夏とセシリアの部屋に集まったアーマードライダーの面々の内、鈴が「ある意味凄い」と呆れ半分感心半分で言った。

 

「仕方あるまい。私達とて大層驚いたものだ。何せ、かの『白騎士事件』の真相が千冬お姉様と篠ノ之博士による、壮大なマッチポンプだと言うからな……織斑春也が言っていたのはこのことだったんだな」

 

驚き過ぎて疲れたという表情のラウラの通り、千冬と束は緊急会見を開いて白騎士事件の真相を明らかにしたのだ。

 

「もう開いた口が塞がらないとかのレベルじゃないよ。現に大騒ぎになってるし」

 

「お2人とも各方面から連日攻められ続けて、見るに堪えませんでしたわ」

 

「ネットとかの書き込みも凄まじかったわ。しかもここの生徒達まで、まるで掌を返したみたいに罵詈雑言を言い放ってたわよ。……女尊男卑社会に染まってた人もね」

 

「ほんと自分勝手だと思う。周りに流されてコロコロ意見を変えて……怒る気も失せるよ」

 

「それがある意味人間らしいと言えば、らしいかもしれないけど。…ていうか一夏、さっきから黙り込んでるけど、何考えてるの?」

 

話に参加せず、「うーん」と唸っている一夏に鈴がふと尋ねると、我に返ったのか周りを見渡して言った。

 

「ああ、うん……ちょっと気になってて。春也は何を原動力にして世界征服に乗り出したのかとか、色々……」

 

「何でってそりゃあ……何でかしら?」

 

「今更理由などどうだっていい。どうせ碌なものではない」

 

「それもそうか……」

 

「あの」

 

とここで、今まで黙っていた真白が手を挙げた。

 

「織斑春也は今後、どうなるのでしょうか?」

 

「気になるの?」

 

「一応は前のマスターですし」

 

「ま、死刑は確定だろうな。それ以外に奴に掛けられる刑があるとは思えん」

 

「そっか」

 

「……顔色1つ変えませんのね」

 

「あれだけのことをしたんだもの。可哀想だとか、そういう類のものは一切沸かないんだ。不思議なことに」

 

「当然のことだとは思うよ。でも彼のことだから、納得はせずに脱獄すると思うけど」

 

「そうなったらプロフェッサーが何とかするらしい(間違いなくその場での殺害だろうが)。それより千冬お姉様達が今どうしてるのか気になるぞ」

 

「さっき会見を終えて職員室で突っ伏していたのを見たわ。相当きていたみたい」

 

「そっとして置いた方が良さそうかも」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へっくしゅっ! ……風邪でも引いたか?」

 

一夏達が千冬の身を案じていた頃、当の本人はマドカの付き添いで凌馬が取り調べをしている部屋へと向かっていた。

 

「姉さんが風邪を引くとは思えないな。誰かが噂しているんだろう、きっと」

 

「全世界に及ぶな、それは」

 

「これが終わったらしばし静養しているといいよ。……ところで、救助された3人の様子なんだが」

 

「ああ、どうなった?」

 

「フォルテ先輩は身体的、精神的な面双方で特に問題なし。むしろレインとより親密な関係になっている。が、虚先輩と山田先生は……」

 

「どうした?」

 

「確か救助に当たったトルーパー隊の…そう、五反田と御手洗と付き合いを始めたらしい。先生曰く、助けに来た王子様に一目惚れしてしまった、だそうだ」

 

「話に聞いてた布仏のみならず、真耶までもか……」

 

互いに羨ましく思いながら取調室のドアをノックして入る。そこには千冬とマドカを振り向いて見る凌馬と項垂れたままの春也の姿があった。IS学園に入学していた為、便宜上ここに連れてくることにしたのだ。

 

「やあ。疲れているだろうに悪いね」

 

「長姉として会っておかなければな。で、様子は?」

 

「目を覚まして状況を伝えた時から項垂れてばかりだったけど、裁判無しの死刑が確定したのを伝えたらもう余計に。いくら聞いても何にも答えてくれなくなっちゃって」

 

「そうか……」

 

千冬は凌馬と席を代わると春也の顔を上げる。その目は虚ろだったが千冬を見て焦点を合わせた。

 

「千冬姉さんか……何か用?」

 

「刑が確定したと聞いてな。日取りが決まる前に面会しておこうと思ったんだ。それで単刀直入に聞くが、今の心境はどうなんだ?」

 

「心境だって? 決まってるじゃないか。……今も腸が煮えくりかえる思いだよ」

 

「……………………」

 

「僕が、僕こそが千冬姉さんの跡を継いで世界の全てを支配するに相応しい存在だったんだ。なのに邪魔されたばかりか死刑だって? ふざけるな……僕はまだ死ぬわけには……!!」

 

会話の途中で半ば錯乱して頭を抱える春也の姿に、千冬は彼が反省も何も全くしていないことを理解し、同時に姉として抱いていた弟への想いも完全に消え去った。それを察したのかマドカが声を掛けた。

 

「もう行こう、千冬姉さん。コイツはもう……どうしようもない」

 

「……ああ」

 

促される形で席を立ち、部屋を去って行く。凌馬も最後に春也を一瞥すると何も言わずに部屋を出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……という話だった訳だけども、どう?』

 

「うーん、『あっそう』って感じ。今更アイツに興味も同情もないし」

 

ラボにて凌馬と通信をしていた束は春也について素っ気なく答えた。彼女の中で織斑春也への感心はついに失われたのだ。

 

『そうか。それより、戦極ドライバーとロックシードの、正式な発表の準備はどうだい?』

 

「問題ナッシングだよ~。でもいつ発表して配るの?」

 

『ある程度落ち着いてからだね。ISを大量に失ったという傷跡は大きいし、何より各地の復興に力を注いでいる現状だから』

 

「オッケ~」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の夜のこと。懲罰房にて春也はブツブツと呟いていた。

 

「……こんなところで死んでたまるか……世界は僕のものだ、僕が支配するんだ……!」

 

やがて口の中に手を入れると歯の1つを取り外して出した。それは本物ではなく精巧にできた差し歯で、彼が力を込めて上下から押さえると小さな光と共にゲネシスコア付き戦極ドライバーとザクロロックシード、金のリンゴロックシードが現れた。

 

「万が一の為に、予備のドライバー一式をISの拡張領域(バススロット)を応用して作っといたコレに隠しておいて良かった。後は……」

 

素早く戦極ドライバーを腰に宛がうと各ロックシードを持つ。だが金のリンゴロックシードは春也が所持した瞬間メッキが剥がれたかのように色が黒くなり、『L.S.-DARK』と書かれた黒のリンゴロックシードに変化した。しかし必死になっている春也は気づかず、ザクロロックシードと黒のリンゴロックシードを解錠し、それぞれ本体側とゲネシスコア側に取り付けた。

 

『ザクロ!』 『ダークネス!』

 

『ロック・オン!』

 

そしてカッティングブレードを倒して2つのロックシードを輪切りにした。

 

『ソイヤッ! ブラッドザクロアームズ! 狂い咲き・サクリファイス!!

                   黒! ダークネスアームズ! 黄金の果実!!』

 

音声と共にブラッドザクロアームズと同様の方法でアームズが装着され、春也はブラッドオレンジアームズだった部分が黒く染まったリンゴアームズに似たものに変わった、仮面ライダーセイヴァー ダークネスアームズに変身した。

 

「さてと……」

 

両手に持ったセイヴァーアローと刀身がマゼンタ色になっているダーク大橙丸を握り締めると、そのまま壁を破壊して外に出た。

 

 

 

 

 

 

 

けたたましく警報が鳴る最中、夜の中を走るセイヴァーは海岸に辿り着いたところで足を止めた。暗闇の中で懐中電灯の光を照らされたからだ。

 

「やっぱり予備の装備を持っていると思っていたよ。こういうことには抜け目が無いからね、君は。無理言って束に怪我を治して貰って正解だったよ」

 

懐中電灯で自らを下から照らすと、凌馬は戯けたように語りかける。

 

「戦極凌馬……! 僕を止めに来たのか?」

 

「勿論。いくら何でも、このまま逃がす訳にはいかないからね。……と言うか、ここから逃げた後君はどうするつもりだい? 後ろ盾は無いんだよ?」

 

「僕の後ろ盾が女性権利団体だけかと思ったか? 残念だったな。使ってないだけで、連絡を取り合っていた場所はいくつかあるのさ。僕はそのどれかに逃げて、ISとトランスフォーマーを再生産し、今度こそ世界を僕の前に跪かせるんだ!!」

 

「なるほど……よーくわかった。尚更君を逃がす訳にいかないってことが!」

 

白衣の内側に手を入れた凌馬は、タイラントが使っていたのと同型だが型式番号が『E.L.S-HEX』になっているドラゴンフルーツエナジーロックシードを出して解錠した。

 

『ドラゴンフルーツエナジー!』

 

頭上にドラゴンエナジーアームズが出現し、予め装着していたゲネシスドライバーにセットするとシーボルコンプレッサーを押し込む。

 

『ロック・オン!』

 

『ソーダァ! ドラゴンエナジーアームズ!!』

 

最初の以外タイラントのと同じ音声が流れるとアームズが被さり、全身を包んだゲネティックライドウェアの上に展開。タイラントのそれとは違い左右非対称で胸にデュークの紋章が描かれたドラゴンエナジーアームズに変身した。

 

「やれるものならやってみろ! 戦極凌馬ァァァ!!」

 

「っ!」

 

一気に接近したセイヴァーとデュークは互いの獲物を振るう。セイヴァーアローとソニックアローがぶつかって火花を散らし、ダーク大橙丸による不意打ちを身を捻って避けると装甲にソニックアローを突き立てる。

 

「一夏ちゃんはお前を殺す価値の無い男と言ったらしい。全くその通りだと思うよ……だが、彼女はこうも言ったそうだ。このまま生かしておけばまた悲劇が起きると!」

 

「所詮一夏姉さんは極悪人を殺す勇気もない、ただの腰抜けだったのさ! 僕を生かせたらこうなることぐらい、わかっていた筈なのに!」

 

「だが正直なところ、私は安心している。理由がどうであれ、一夏ちゃんのような優しい子に人殺しの十字架を背負わせたくは無かったからね。それと同時に彼女には感謝もしている。こうして俺自身の手で、お前に対するケジメをつけられるからな!!」

 

「本気で殺すと言うのか、僕を! できるものか、お前も犯罪者になるんだぞ!!」

 

「心配ご無用! 政府や学園側には、万が一の時は自分で始末をつけると通してある!」

 

「!? ……それは一夏姉さん達も!?」

 

「知ってるさ、当然!」

 

強引に振り払って距離を取ると、膝立ちの状態でソニックアローとセイヴァーアローの弦を引いて光矢を放つ。1発目は互いに躱し、続けて放った2発目は肩に直撃して転倒する。急ぎ立ち上がると移動しながら撃ち合い、攻防を続ける。

 

そしてとある一発が2人に当たり仰け反らせると、それぞれのロックシードをドライバーからアローに装填し直した。

 

『『ロック・オン!』』

 

力強くグリップを引き、照準を合わせてほぼ同じタイミングで彼らはソニックボレーを放った。

 

『ドラゴンフルーツエナジー!!』

 

『ザクロチャージ!!』

 

発射された光矢は軌道上で衝突。一瞬の拮抗の後にデューク側がセイヴァー側を消し去り、セイヴァーの戦極ドライバーに直撃しスパークを散らさせる。

 

「ぐあっ……! バ、バカな……! 僕が、この僕がこんなところで!」

 

「とっくに剥がれ落ちているんだよ、お前が表面に貼り付けた金メッキは。その醜悪なリンゴのアームズが証拠だ。……それじゃあ、トドメだ」

 

『ドラゴンフルーツエナジースカッシュ!!』

 

シーボルコンプレッサーを押し込みソニックアローのアークリムにエネルギーをチャージする。

 

「黙れ! 何もかもお前に邪魔されたままでたまるか!」

 

対するセイヴァーもカッティングブレードを倒しダーク大橙丸を握る。

 

『ソイヤッ! ザクロスカッシュ!! ダークネススカッシュ!!』

 

「はあああああああああっ!!」

 

「うあああああああああああっ!!」

 

ソニックアローとダーク大橙丸が激突して爆発音が上がる。デュークはダーク大橙丸の刀身を膝蹴りでへし折ると、折れた刃を握り締めてセイヴァーに突き刺した。

 

「うぐっ!?」

 

「うらぁぁぁぁああああああああああ!!」

 

怯んだ隙にソニックアローによる一閃で、ついにセイヴァーのボディに決めの一撃を食らわせた。

 

「い、嫌だ……僕は、僕は世界の王になるんだ! 世界は……僕のものだぁぁぁぁ!!」

 

死への恐怖に取り憑かれながらセイヴァーは爆死し跡形もなくなった。

 

「……最後まで君の性格を直せなかったのは本当に残念だよ」

 

何れやってくるであろうIS学園の教員らへの説明内容を考えながら、凌馬は悲しげな面持ちで闇夜を眺めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから時は流れ、束と凌馬はISに代わる物としてアーマードライダーシステムを正式に発表。それに伴い、女尊男卑で今まで虐げられてきた世の男性達が暴動を起こすなどの混乱が世界各国で起きたが、やがて収束し平和な世界へと進んだ。

IS学園は名を変え、アーマードライダーの変身者を育成する機関になり必然的に男子生徒も続々と入学し始めた。

尚、IS学園に配備されていたが為に生き残った僅かなISは廃棄するか否かで議論されたが、最終的に忌むべき歴史として忘れることが無い様、ISコアと分離した状態でそれぞれ博物館に展示されることになった。

 

 

 

そして一夏達一年生が進級し、卒業を迎えるのもほぼ同じ時期であった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日でもう卒業か……長い様で短かったなぁ」

 

「ええ。あっという間でしたわ」

 

卒業式を終え、三年間の学園生活に思いを馳せる一夏。そんな彼女にセシリアは寄り添うと、そっと手を握った。いつもなら一夏も微笑み返すが、今日はそれでも何か考え込んだ表情のままだった。

 

「一夏さん? どうしましたの?」

 

「うん……もし私がセシリアと出会ってなかったらって思って。セシリアを好きになることも、春也への恐怖心を払うことも出来なかったんじゃないかなぁって」

 

「そうですわね……私も一夏さんと出会ってなければ、アーマードライダーになることも、プロフェッサー達と出会うことも無かったかもしれません……」

 

しみじみと語りながら、初めて一夏と出会った日のことを思い出す。

 

「やっと見つけました」

 

そこへ式の間、一般席に座っていた真白が駆け寄ってくる。

 

「あ、ごめん真白。ほったらかしにしちゃって……」

 

「気にしてませんので大丈夫です。それより、向こうで皆さんが待っていますよ?」

 

真白が向けた視線の先を見やると、やや遠くに凌馬や箒等の面々が立ち並んでおり代表するかのように鈴が手を振っていた。

 

「なら早く行きませんと。これ以上待たせる訳にはいきませんわ」

 

「うん。行こう、2人とも」

 

一夏はセシリアと真白と共に、平和を守る為に命を掛けた仲間達の元へ走った―――




これにてインフィニット・ストラトス―失われた未来―は完結となります。失われたのは春也の未来だった……という。タイトルからしてネタバレだったんですw
結局春也は死にましたが、だったら何で前回見逃したのかと気になる人も居るでしょう。
実は初期のプロットでは一夏がそのまま春也を殺害し、最終話は単なる後日談の予定でした。しかし一夏の心情が描写しにくかった(極悪人とは言え弟を手に掛ける訳ですから平然としていてはおかしいし、かと言って重くし過ぎるのも後味悪いし)のと、凌馬の台詞にある通り彼女に殺人をして欲しくなかったのと、決着は彼の手でつけさせたかったので急遽結末を書き換えました。前回でゴールデンアームズを出したのも、金メッキが剥がれたダークネスアームズを出すのに極力違和感を無くす為です。

こんな最終回ではございますが、ここまで続けられたのは偏に読み続けて下さった皆様のお陰です。ご愛読ありがとうございました! 次回作でもまたお会いしましょう! では!!
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