インフィニット・ストラトス―失われた未来―   作:レイブラスト

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番外編2-2 GhostReverse

一週間後。信吾はどこか気怠い様子で教室の席に座り、HR前の時間を過ごしていた。

 

「……大丈夫か信吾?」

 

「ダメかもしれん……」

 

ため息と共に机に突っ伏す信吾。2日目から彼は原因不明の倦怠感に悩まされており、日に日に症状は悪くなっていた。今来たばかりの真白とドロシーも顔を見合わせる。

 

「黒樹君、まだ良くならないの?」

 

「ああ。せやから悪いけど、ホームルーム始まるまで寝かしといてやってや」

 

「そうですか……わかりました」

 

その後HR開始時間まで眠っていた信吾だったが、眼が覚めた後も倦怠感は依然拭えなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結局倦怠感は昼休みになってもなくならず、信吾は俯きながら祐介と共に廊下を歩いていた。

 

「……今はどうなん?」

 

「全然ダメ……授業の内容とかノートに写せても、ちっとも頭に入らない……」

 

「やっぱ何かしらの病気なんやないか? もう一回保健室行くか?」

 

「そうしてみる……午後からのノートもお願いしていい?」

 

「勿論や。気ぃつけてな」

 

祐介に見送られて、信吾は保健室へと向かう。だが数歩足を進めた瞬間―――

 

(今だ!)

 

「うっ……!?」

 

ポケットの中に忍び込んだザクロロックシードの残骸が淡く光り、同時に頭痛が信吾を襲う。だがそれも数秒のことで、やがて彼の目が赤く光ると再び歩を進めた。

 

「ん? なんや今の……?」

 

後ろから見ていた祐介はその様子に違和感を抱いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………あれ?」

 

気がつくと信吾は、保健室の前に立ち尽くしていた。

 

「いつの間にか保健室に着いている……無意識でここに来たのか? マジでヤバイかも、俺……」

 

頭を抱えつつ、彼は保健室のドアを開けた。だが考えてたが故に自分の制服の内ポケットに入っていた物に、彼は気づくことができなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜。信吾は祐介と共に寝間着に着替えて布団に潜っていた。

 

「体調はもうええんか?」

 

「うん。今のところは問題ないよ」

 

「ならええんや。ほな、おやすみ」

 

「おやすみ」

 

電気を消してベッドに身体を預けると祐介はすぐに眠った。が……信吾は身を起こした。否、信吾自身は既に眠っている。彼を動かしているのは別の『何か』だ。

 

『さあ……始めようか』

 

その何かは信吾の身体を用いて、制服に仕舞っていたものをベッドの上に並べ、なるべく音を立てないように作業し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う…うぅん……」

 

翌朝、信吾はいつもより早い時間に目が覚めた。隣を見れば、祐介はまだ寝ている。

 

「もっかい寝よっかな……」

 

二度寝を決め込もうとした時、ベッドの脇に何かが置かれているのに気づいた。近づいてその正体を確認した瞬間―――眠気は一瞬で吹き飛んだ。

 

(せ、戦極ドライバー!? しかもゲネシスコア付きの……なんでここに!?)

 

昨日まで無かったものが存在していることに動揺しつつ、戦極ドライバーを手に取る。するとその陰に隠れて見えなかったものが見えた。

 

(ロックシードまで……それも3つも、一体どうなってるんだ!)

 

混乱しながら2つのロックシードを手元に寄せる。

 

(これ、よく見たら5年前の戦いで織斑春也が使っていたものじゃないか。確かブラッドオレンジとザクロと……最後の1つは見たことない奴だ。でも誰が作ったんだ? そして誰が俺の部屋に!?)

 

「ん…むにゃ……」

 

「っ!?」

 

声に驚いてビクッと身体を震わせ、咄嗟に戦極ドライバー等を枕の下に隠す。振り向いてみれば祐介が寝返りを打っていた。信吾はホッと一息つくと、早めの朝支度を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ……」

 

信吾は第二アリーナの観戦席に座り、変身して訓練している生徒の様子を見ていた。この日は午前授業のみなので、昼からは自由時間になりこうして自主練に励むこともできるのだ。

 

(何となく部屋に置きっ放しにするのもまずいから、持って来ちゃったけど……これどうしよう……)

 

制服の内ポケットに閉まってある戦極ドライバーを見て、思わずぼやく。

 

「黒樹さん? どうしたんですか、1人で?」

 

声を掛けられて顔を上げると、運動直後らしくタオルで汗を拭いている真白の姿があった。

 

「ああ、うん。ちょっと、悩み事がね……」

 

「……宜しければ、相談に乗りましょうか?」

 

そう言って真白は隣に腰掛けてくる。

 

(参ったな。気持ちは嬉しいけど、なんて言えばいいんだろう。気がついたら戦極ドライバーとロックシードが枕元に置いてあったって? 誰も信用しないよ、そんなこと)

 

(だったら、信用させればいいだけの話じゃないか。こんな風に、ね……!)

 

「え? ……がっ!?」

 

頭の中に聞こえてきた謎の声に一瞬呆けた直後、強烈な頭痛が信吾を襲った。

 

「ど、どうしたんですか!?」

 

いきなり苦しみだした信吾に慌てる真白。すると信吾の目が赤く光り、顔を上げると真白の制服の首元を思い切り掴み上げた。

 

「うっ……! な、何を……!?」

 

『久しぶりだね、白式……いや、真白・オルコット。と言っても、こうして実際に対面したのは極僅かかな?』

 

「! そ、その声は……!」

 

『ここ一週間の調べによると、あの戦い以降一夏姉さんの養子になったそうじゃないか。フフフ……つまり、君を殺せば一夏姉さんは少なからず悲しむと言う訳だ。復讐の一歩としては上々の獲物だね!』

 

掴んでいた手を離すと、懐から戦極ドライバーを取り出して腰に装着し、ザクロロックシードとブラッドオレンジロックシードを出して解錠した。

 

『ザクロ!』 『ブラッドオレンジ!』

 

ザクロロックシードをベルトの本体側に、ブラッドオレンジロックシードをゲネシスコア側にセットして施錠をし、カッティングブレードを倒して2つ纏めて輪切りにした。

 

『ロック・オン!』

 

『ソイヤッ! ブラッドザクロアームズ! 狂い咲き・サクリファイス!!

                     ハッ! ブラッドオレンジアームズ! 邪ノ道・オンステージ!!』

 

信吾の周りに展開済みのアームズが現れ、ライドウェアが全身を包むのと同時に装着。彼の姿を仮面ライダーセイヴァー ブラッドザクロアームズへと変えた。

 

『さあ……リベンジの始まりだ!!』

 

「くっ……!」

 

言うが早いか、大橙丸で真白に斬りかかる。間一髪避けると、真白は懐から出したポケベル型アイテムを取り出し、スイッチを押した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

亡国機業(ファントム・タスク)本部

 

ピピピッ! ピピピッ!

 

「! りょーくんりょーくん! 真白ちゃんからの緊急コールだよ!」

 

「ブッ! な、何だって!?」

 

パソコンに表示されたメッセージと鳴り響く警告音に、凌馬はあり得ないと思いつつも確認する。

 

「本当だ……場所は学園の第二アリーナか。よし、行ってくる!」

 

「気をつけてね!」

 

机の上に置いてあった装備を掴むと、凌馬は発進場へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『あははは。どうしたんだい? 避けてばかりじゃないか』

 

「っ……!」

 

挑発しながら攻撃してくるセイヴァーから真白は必死で逃げ続ける。観戦席で繰り広げられている攻防は、既に模擬戦をしている面々にも注目されていた。当然、彼らにも。

 

「真白はん!」

 

「真白お姉ちゃん!」

 

真白の元へ祐介とドロシーが駆け寄って来た。自主練を終えて一息ついたところで今回の騒ぎを目撃し、急いで駆けつけたのである。

 

「菊池さん、ドロシー!」

 

『新手か……でも丸腰なら僕の敵じゃないな』

 

「遠目で見てまさかと思うたけど、セイヴァーやないかこれ……!!」

 

「誰が変身しているの!?」

 

「っ、それは……」

 

まさか信吾が変身しているとは言えず、言い淀む。その隙にセイヴァーは大橙丸とセイヴァーアローを振り下ろすが―――

 

「はぁっ!!」

 

横から飛び蹴りを放たれ、よろめいて数歩下がった。

 

「緊急コールを受けて駆けつけてみれば、こんな状況になっているとは……もう少し早く来た方が良かったかな?」

 

「いえ。良いタイミングでした、プロフェッサー」

 

構えを取りながら真白達を庇う様に立つ男……戦極凌馬。当然だが祐介はその姿を見て驚愕する。

 

「せ、戦極凌馬……! 亡国機業(ファントム・タスク)の社長はんが、なしてここに!?」

 

「真白お姉ちゃんの緊急コールのお陰だよ。それを使うと、いつでもどこでもプロフェッサーが駆けつけてくれるんだって。私も持ってるよ」

 

「マジで!? 君ら何者なん!?」

 

2人の会話を余所に、凌馬はゲネシスドライバーを腰に巻き付けセイヴァーを見据える。

 

『また会えて嬉しいよ、戦極凌馬』

 

「……本当に君なのかい? 確かに死んだと思ったんだが、一体どんなトリックを使ったんだ?」

 

『知る必要はない。どうせアンタは僕に殺されるんだから』

 

「言うじゃないか。……変身!」

 

『レモンエナジー!』

 

レモンエナジーロックシードを解錠すると、ゲネシスドライバーにセットしてシーボルコンプレッサーを押し込み、ロックシードのカバーを開く。

 

『ソーダ! レモンエナジーアームズ! ファイトパワー! ファイトパワー! ファイファイファイファイファファファファファイト!!』

 

出現したレモンエナジーアームズが凌馬の頭に被さり、ゲネティックライドウェアで包まれた身体に鎧となって固着、仮面ライダーデューク レモンエナジーアームズに変身した。

 

「はあっ!」

 

『たあっ!』

 

互いに接近し、ソニックアローとセイヴァーアローを振るい刃がぶつかって火花を散らす。数度斬り合った末鍔迫り合いとなり、セイヴァーは大橙丸を用いて不意打ちを狙うが……。

 

「そうはいかない!」

 

大橙丸の刀身をデュークが掴み、強引に攻撃を止めた。

 

『へぇ……やるじゃないか』

 

「君に進歩が無いだけだよ。前にも同じことをやられたからね。あの時は避けたけど」

 

『減らず口を。でも、そう余裕ぶってられるのもここまでだ!』

 

大橙丸を放して後ろに下がって距離をとると、セイヴァーはデュークを真っ直ぐ見据えた。

 

『今の僕には誰にも負けない力があるんだ。それを披露してあげるよ』

 

そう言い懐へ手を伸ばそうとするが……

 

『ぐっ……!?』

 

突然頭を押さえて苦しみ始める。

 

『チッ! 完全に同調できてはいなかったか……まあいい。今は引っ込んでおいてやるよ』

 

そこまで言ったところで変身が解除され信吾の姿に戻り、更にロックシードと戦極ドライバーが彼の身体に取り込まれていった。

 

「! 君は……」

 

「信吾!?」

 

全く関係無い人物が現れたことに驚いたデュークは、彼の名前を呼んだ祐介の声に振り向く。直後、信吾の身体がぐらつく。

 

「おっと」

 

素早く受け止めると床に寝かせ、ロックシードのカバーを閉じて変身を解除する。

 

「おい、大丈夫か信吾! しっかりせい!」

 

「大丈夫、気絶しているだけだ」

 

信吾を揺さぶり必死で声を掛ける祐介に安心させる様に言うと、凌馬は真白とドロシーと顔を合わせて頷き合った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『お、おい……それで何をする気だ? まさか、僕を殺すつもりじゃないだろうな!?』

 

『だとしたら……どうする?』

 

『ま、待て! 考え直すんだ、一夏姉さん! 束さんを超える偉大な頭脳を、この世界から消す気か!? それに僕は世界で唯一の男性IS操縦者だぞ! それを殺したらどうなるか……!!』

 

『心配無いんじゃない? ISコアは学園にあるもの以外は貴方が壊しちゃったし、私達のはロックシードに変化したし……何より束さん本人にコアを作る気が無いみたいなんだって。知らなかった?』

 

『ソイヤッ! 極オーレ!!』

 

『やめろ! 落ち着け、落ち着くんだ! 過去に一夏姉さんにしたことは全て謝る! それに一夏姉さんも、僕と同じ人殺しにはなりたくないだろ!?』

 

『……確かに人殺しをしたくはないし、する気もなかった。今までは……だけど、貴方だけは別。貴方は超えてはならない一線を超えた。にも関わらず今こうしている間も反省の色が全く見えてこない……そんな奴に生き延びられたら、また悲劇が起きる』

 

『待て、待ってくれ! わかった、反省する! 罪を償う! だから頼む、い、命だけは!』

 

『それと一番最初の質問に答えてあげる。……いくら天才的な頭脳を持っていても、人間性が最悪なら―――価値なんて無いに等しいんだよ!!』

 

『あ、あああ……! や、やめてくれぇぇぇええええええ!!』

 

『………………………』

 

『うあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ! い、今のは……? ていうか、ここどこだ?」

 

周りに何もない真っ白な空間で目を覚ました信吾は周りを見渡す。

 

「今のは僕の記憶だよ。出来損ないの一夏姉さんに負けた、忌々しい過去のね」

 

背後から聞こえた声に振り返ると、そこには自分と同じAR学園の制服を着た青年が立っていた。彼の顔に、信吾は大いに見覚えがあった。

 

「お、お前は……織斑春也!?」

 

「そう、その通り。僕は織斑春也。志半ばで倒れた、世界で唯一の男性IS操縦者さ」

 

「何故お前がここに!? お前は…死んだ筈じゃ!」

 

「死んでいたさ。でも僕が死んだ場所に落ちてたロックシードの欠片……ソレに宿っていた僕の残留思念が、落雷のエネルギーを利用して復活したのさ。と言っても、肉体は無いから君の身体を使っているけどね」

 

「俺の身体を!? そうか……道理で最近調子が悪かった訳だ」

 

これまでの状況に合点がいったところで、信吾は春也をキッと睨み付けた。

 

「お前の目的はなんだ? 俺に取り憑いて何がしたい?」

 

「そんなの決まってるじゃないか。僕を蹴落とした一夏姉さんや、僕を殺した戦極凌馬に復讐を果たし、トランスフォーマー軍団を再結成してこの世界の王として世に返り咲くことさ」

 

「な、何だって! お前は、5年前の戦いを繰り返す気なのか!? ふざけるな! あの戦いでどれだけの人が死んだと思っている!? 俺の姉さんも、夢半ばにしてトランスフォーマーに殺されたんだぞ!!」

 

「知らないよそんなの。逆に聞くけど、君は地球の裏側で起きたテロに巻き込まれて、死んだ子供達のニュースに一々悲しんでいるのかい?」

 

「なっ……!!」

 

「まあそんなくだらない問答は置いといて。君にはしばらくこの空間でじっとしておいて貰うよ。下手に動かれても困るからね」

 

「待て!」

 

次第に春也の姿が消え、信吾は手を伸ばすが寸前で姿が消え空を切ってしまった。

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