インフィニット・ストラトス―失われた未来― 作:レイブラスト
世界は1つではない。次元の壁を超えた向こう側には似て非なる世界がある。その向こうには別の世界、更にその向こうにはまた別の世界が、本のページの様に幾つも折り重なっている。
一般的にそれらは並列世界と呼ばれている。
基本的に並列世界は互いに干渉することはおろか、観測することもできない。故に並列世界間を移動するには相応の手段が必要になる。
「それが今、アタシ達が乗っている列車って訳♪」
「薫義姉さん、誰に話しているの?」
どこか得意気な少女に、隣に座る別の少女が疑問符を浮かべる。彼女達の名は兵鬼
「気にしないで。大したことじゃないから。それよりもうすぐ次の世界に着くから、降りる準備をしといてね」
「はーい」
(情報が正しければ……ふふっ、早く会いたいわ♪)
「?」
嬉しそうに笑みを浮かべる薫に夏煉は再び不思議そうな顔をするのであった。
イギリス
(降りろと言われて降りた先がイギリスなんだけど、本当にここに居るのかな?)
「さて、まずは情報集めをしましょうか」
「例によって雑誌を買うんだよね。でも私、英語はそんなに自信ないんだけど……」
「大丈夫。有名人だから多分、表紙見ただけですぐにわかるわ」
義姉の言葉に半信半疑ながらも、一緒にコンビニに入って雑誌コーナーへと歩を進める。
(表紙ってことは、モデルか何かをやっている人だと思うけど……)
考えながら雑誌売り場を一瞥する……と、とある雑誌の表紙が目に止まった。思わずそれを手に取り、表紙を飾る黒髪と金髪の女性2人を見る。
「……凄いわね。本当にすぐわかっちゃうなんて」
「え? じゃあこの人達が……?」
「そう、今回の貴女の相手。そこんとこに名前が書いてあるけど、一夏・オルコットとセシリア・オルコットって言うのよ。あ、実際に戦うのはこっちの1人だけどね」
言いながら黒髪の女性……一夏を指す。
「(見た目と名前からだと明らかに人種が違う筈なのに、なんで同じ名字なんだろ?)わかったのはいいけど、会えるの? 仕事中で無理ですってなりそうな気が……」
「それこそ大丈夫。今日は祝日だから仕事も休みの日。ちゃんと調べて来たんだから」
「ふうん(薫義姉さんがここまで徹底してるなんて珍しい。もしかして、薫義姉さんもこの2人に会いたいのかな?)」
物珍しさを感じながら、夏煉は雑誌を購入し薫と共にコンビニを出た。
数分後
「中々見つからないわね……この辺に居ると思ったんだけどなぁ」
「そう思ったのなら、なんでレストランに来ている訳?」
「あはは……ちょっとお腹すいちゃって……」
呆れながら言う夏煉に薫は苦笑で返す。2人は今、とあるレストランのカウンター席に並んで座っていた。
「まあ腹拵えには丁度良い時間帯だけど」
言いながら目の前に置かれたパスタを一口頬張る。
「っ、おいしい……! 薫義姉さん、このパスタ凄くおいしいよ!」
「え? どれどれ……ホントだ、おいしい! イギリスにしては珍しいわね」
料理に対する感想を言い合いながら食べ続けていると、夏煉の反対側の席から何やら話し声が聞こえてきた。
「ふふ。褒められてますわよ、一夏さん」
「嬉しいけど、直に聞くと照れちゃうなぁ」
「?」
何だろうと思い隣を見てみる。そこには見覚えのある黒髪の女性と金髪の女性が座っていた。
(一夏・オルコットとセシリア・オルコット……! こんなところで出会うなんてっ)
驚いて固まっていると、視線に気づいた黒髪の女性……一夏が夏煉を向いた。
「ああ、ごめんなさい。盗み聞くつもりじゃなかったの」
「あ、いえ、その……それより、褒められてるとか照れているとか、話してましたけど……」
「うーん、話せば長くなるんだけど……」
「アタシは長くても平気よ。夏煉は?」
「問題ないよ」
「では僭越ながら、私が説明致しますわ」
金髪の女性……セシリアが語る話によるとこの店は、以前セシリアの屋敷で働いていた料理人が彼女達の卒業後に独立して構えたもので、その際に一夏が記念にと自身が考えたオリジナルイタリアンパスタの調理法を書いた紙を渡したと言う。
「じゃあそのパスタって、もしかして」
「これのことだよ」
そう言って夏煉達が食べていたパスタの皿を指す。
「凄い……自分が考えた料理がメニューの1つに加わるなんて」
「あの時は自分でも驚いたなぁ。本当に使われるなんて思ってなかったから」
「素人の意見だけど、プロとしてもやっていけるんじゃないかしら?」
「ええ。実際に世界的に有名なシェフから太鼓判を貰っていますの。でも一夏さんたら、私と同じ仕事がしたいからって、モデルをやってますのよ」
「えー! もったいないわね」
「あはは……」
4人はすっかり意気投合して会話を続け、しばらく経ったところで揃って席を立った。
「ありがとうごさいます。私達の話に付き合って下さいまして」
「いえ、お構いなく。ところで、最後に1つお願いがあるんですが」
「お願い? サインなら幾らでも書いてあげるけど」
「そういうのではなくて。―――一夏・オルコットさん、貴女と手合わせを願いたいんです。『仮面ライダー』として」
その言葉に一夏とセシリアは表情を強ばらせるのあった。
オルコット邸
「……要約すると、貴女達……夏煉と薫は異世界のライダーで、夏煉を心身共に強くする為に色んな世界を巡っていると?」
あの後、オルコット邸に移動した一夏達は薫と夏煉から自分達の正体や目的等を聞き目を丸くした。
「俄には信じ難い話ですが……一夏さんはどう思いますの?」
「私は本当だと思うけど」
「えっ? どうして……って、話した本人が言うのもなんだけど」
「うーん……上手く言えないけど、こう、直感めいたものが働いたっていうか……」
「はあ……」
いまいち釈然としないセシリアであったが、一夏が言うのなら正しいのだろうと思いそれ以上は言わなかった。
「結構アバウトだね」
「いいんじゃない、それで? ともかく、信じてくれたんなら次はどこで戦うか決めないと。模擬戦とは言っても被害が出ないとは限らないんだし」
「それでしたらここの地下にご案内しますわ。とっておきの場所がありますのよ」
「地下があるんだ……凄いなぁ。あ、戦う前に1個聞いてもいい?」
「どうしたの?」
「ずっと気になってたんだけど、どうして2人とも同じ名字なの? 義理の姉妹って感じじゃあ無さそうだし……」
「ああ、それは私達が結婚しているからだよ」
「…………………………へ? 結婚!?」
「そうですわ。私と一夏さんは、将来を誓い合った仲なんですの。ねえ、一夏さん♪」
「うん♪」
(やっぱり良いわぁ~。女の子同士のカップルって♪ 凄く癒やされる……けどちょっと羨ましい。あーあ、私もイチャイチャできる可愛い恋人が欲しいな~)
(薫義姉さんが陽太義兄さんの代わりについてきた理由って、これだったんだ……そりゃ来たくなる筈だよね、薫義姉さんなら)
イチャイチャする2人を見て薫は目をキラキラと輝かせ、その様子に夏煉は納得がいき半ば呆れていた。
地下戦闘ルーム
ややあって、4人は地下にある戦闘ルームに来ていた。ここは一夏達が
「えっと、改めてよろしくね、夏煉」
「よろしくお願いします、一夏さん」
「審判役はアタシ達がやるけど、遠慮せずに戦ってね~!」
「バトルフィールドは市街地Aに設定しますが、よろしいですか?」
「私はいいけど、貴女は?」
「その市街地Aってのがどんな感じかわからないから、何とも……」
「ん~……東京の新宿をモデルにしてるって言えばわかるかな?」
「あ、はい。納得しました」
「それでは……」
セシリアが所持しているリモコンのスイッチを押すと、周囲の景色が新宿の町並みへと変わっていく。
その光景に最初こそ夏煉は興味深そうにキョロキョロとしていたが、やがて臨戦態勢を取ると前腰部に両手を翳して変身ベルト『ゴーストドライバー』を出現させ、黒紫色の変身アイテム『ヘレナ眼魂』を取り出した。
一連の流れに一夏は面食らったが、自身も戦極ドライバーを取り出し腰に装着。オレンジロックシードを取り出して翳す。
少しの間の後、夏煉はゴーストドライバー前面のカバーを開いて眼魂側面のスイッチを押して起動。ドライバーに装填してカバーを閉じ、右側のレバーを引く。一方の一夏はオレンジロックシードを解錠して戦極ドライバーにセット、施錠する。
『アーイ! バッチリミトケー! バッチリミトケー!』
『オレンジ!』
『ロック・オン!』
互いのベルトから待機音声が流れると同時に、オレンジアームズと黒地に紫の縁取りのパーカーが出現する。
「「変身!」」
夏煉はレバーを掴んでぐいっと押し込み、一夏はカッティングブレードを倒してロックシードを輪切りにした。
『カイガン! ヘレナ! デットゴー! 覚悟! キ・ラ・メ・キ! ゴースト!!』
『ソイヤッ! オレンジアームズ! 花道・オンステージ!!』
素体であるトランジェント状態に一度変化した後、パーカーを羽織った夏煉は紫と黒の顔が描かれ、額には紫色の炎を模した二本の角を持つ『仮面ライダーヘレナ』に、一夏はライドウェアに全身を包まれてオレンジロックシードを被り、上半身に展開して鎧となった仮面ライダー鎧武 オレンジアームズに変身した。
「仮面ライダーヘレナ……」
「(ヘレナ…それが今の貴女の名前なのね)仮面ライダー鎧武……」
ヘレナはゴーストドライバーに手を翳すことで専用武器『ガンガンセイバー』を取り出し構え、鎧武は大橙丸の切っ先をヘレナに向ける。
「私の生き様、たっぷりと見せてあげる!」
「ここからは私のステージなんだから!」
同時に駆け出し、ガンガンセイバーと大橙丸で斬りかかる。互いの刀身が激しくぶつかり火花を上げた。
「はあっ! せやっ!」
「はっ! てりゃぁっ!」
一度刀を離して再び斬りかかる。武器や装甲の一部で火花が散り何度かよろめくが、その度に体勢を立て直し攻撃を続行する。一度でも付け入る隙を与えれば、一方的な流れに繋がるからだ。
やがて何度目かの鍔迫り合いが起き、鎧武は右手を腰の無双セイバーに伸ばし、後部のスライドを引いて弾を装填しながら引き抜くと同時にトリガーを引いた。
「うっ!?」
「はあああああっ!!」
銃口から放たれた弾丸を受けて後退するヘレナ。そこへ鎧武は大橙丸と無双セイバーの二刀流で攻め込むが……
「そうはいかない!」
ガンガンセイバーから小太刀を分離して同じく二刀流にすると、ヘレナは鎧武の一撃をそれぞれの剣で受け止めた。
「小太刀……!?」
「はああっ!」
面食らっている隙に押し返して距離を空けると、小太刀を反転状態で合体させ更に柄を折り曲げてガンモードに変形。トリガーを引いて弾丸を放った。
「ぐぅっ!? くっ、それなら!」
攻撃を防ぐ為に鎧武は無双セイバーと大橙丸の柄同士を合体、ナギナタモードにすると自分の身体の前でクルクル回転させて弾を弾く。
「だったらこっちも!」
一度攻撃を止めたヘレナは、柄を戻して小太刀を分離させると今度は柄同士で合体。ナギナタモードに変形させると鍔に描かれた目玉模様をゴーストドライバーに翳した。。
『ダイカイガン! ガンガンミイヤー! ガンガンミイヤー!』
対する鎧武もオレンジロックシードを戦極ドライバーから無双セイバーに付け替える。
『ロック・オン! イチ・ジュウ・ヒャク・セン・マン!』
腰を落とした後睨み合い武器を強く握る。
『オメガストリーム!!』
『オレンジチャージ!!』
「「はああああああああああああっ!!」」
背後に浮かび上がった目玉型の紋章をエネルギーとして纏った刀身と、オレンジ色の果汁の様なエネルギーを纏った刀身がぶつかり合う。しばらくは拮抗していたが、やがて間で爆発が起きた。
「「っ……!」」
幸いにも爆発する直前に後ろに飛び退くことで、双方共に大きなダメージを負うことはなかった。
「強い……!」
ヘレナはD05とナンバーが書かれた眼魂を取り出すと、ゴーストドライバーのカバーを開けた。
「行くよ、チンクさん!」
『ああ! 私達の力を見せよう!』
眼魂からも力強い少女の声が発せられ、ヘレナはその眼魂―――『チンク眼魂』のスイッチを押し、バックルにセットして閉じた。
『アーイ! バッチリミトケー! バッチリミトケー!』
現在羽織っているパーカーが消え、バックルから胸元にⅤと刻まれた灰色のロングコートが現れ頭上を旋回し始める中、ゴーストドライバーのレバーを引いてすぐさま押し込む。
『カイガン! チンク! 投げる刃! 相手を爆破!!』
現れたパーカーを羽織り、ヘレナは『チンク』の力を宿した『チンク魂』にゴーストチェンジした。
(気のせいかな? 今、目玉みたいなアイテムが喋った様な……)
「仮面ライダーヘレナ、チンク魂」
『戦闘開始だ!』
コートの内側から投げナイフ『スティンガー』を幾つか取り出し、鎧武に向かって一斉に投げる。
「(気のせいじゃない。やっぱり喋っている!)はっ!」
一投目を避けた後、次のナイフは無双セイバーナギナタモードで切り払っていき、最後のナイフも切り払おうとする。だが……
カチッ ドガンッ!
「うっ! な、何? 爆発した!?」
「はぁああああああああっ!!」
突如とてナイフが爆発。混乱したところにヘレナがナイフを手に接近戦を挑んでくる。咄嗟に無双セイバーで対応するが、先ほどの様にナイフが爆発しないか戦々恐々としている。
『良い戦い方だ。相手の意識はナイフに集中している。やるなら今だ!』
「うん!」
ヘレナは一度攻撃を中断し、バックステップで鎧武から離れる。
カチッ ドガンッ!
「きゃあっ!?」
今度は鎧武の装甲から爆発が起き、よろめいて後ろに下がる。
「い、今のでわかった。爆発するナイフを投げてるんじゃない。物を爆弾化する能力なんだ……!!」
「さすがにバレちゃったか……」
『なら一気に畳み掛けるまでだ!』
ここで決めるべくヘレナはゴーストドライバーのレバーに再び手を伸ばした。
「それならこっちも!」
『イチゴ!』
その隙に鎧武はイチゴロックシードを取り出して解錠し、オレンジロックシードと交換して戦極ドライバーに嵌め、カッティングブレードを倒して輪切りにした。
『ロック・オン!』
『ソイヤッ! イチゴアームズ! シュシュッと・スパーク!!』
頭上に現れたイチゴアームズが消えたオレンジアームズの代わりに被さり、鎧武は派生形態のイチゴアームズに変化した。
『ダイカイガン! チンク! オメガドライブ!!』
レバーを変身時と同様に引いて押し込むことでオメガドライブを発動し、自身の周囲に大量のスティンガーを発生、滞空させる。
『ロック・オン! イチ・ジュウ・ヒャク!』
鎧武はイチゴロックシードを無双セイバーの柄に装填する。
「行って!!」
『イチゴチャージ!!』
「せぇえええええいっ!!」
滞空していたスティンガーと、無双セイバーを横一文字に振り抜いたことで発生した大量のイチゴクナイ型エネルギー刃が同時に発射され、空中でぶつかり大爆発を起こした。
「うわっ!?」
爆風に視界を遮られてヘレナはたじろぐ。
『オレンジ!』 『チェリーエナジー!』
『ロック・オン!』
『ソイヤッ! ミックス! オレンジアームズ! 花道・オンステージ!! ジンバーチェリー! ハハーッ!!』
「てやあっ!」
「っ!?」
音声と共に赤い残像を纏った鎧武が、ソニックアローでヘレナを何度も切り裂く。ジンバーチェリーアームズの持つ高速移動能力によるもの。
「せいっ! たああああああっ!!」
「がはっ……! っ、動きが見えない……!」
『高速移動か、厄介な!!』
『チンク、私と交代して! このままじゃ負けるわ!』
『カズラ……わかった、後は頼む!』
「お願い、カズラちゃん!」
新たに出てきたD13と書かれた眼魂―――『カズラ眼魂』のスイッチを押すとドライバーからチンク眼魂を抜いて代わりに装填する。
『アーイ! バッチリミトケー! バッチリミトケー!』
今度はフードの左端に黒髪のサイドテールが着いた、黒と薄紫を基調としたパーカーが出現して旋回する。
『カイガン! カズラ! 縛って読み取る! 万能な触手!!』
パーカーを纏い、ヘレナは『玉置カズラ』の力を宿した『カズラ魂』に変化した。そのまま周囲に意識を集中していると、鎧武がソニックアローで斬りかかってくる。
「そこねっ!!」
パーカーの一部が触手となり、鎧武を縛り上げて身動きを封じる。
「うわっ! こ、今度は触手?」
「さっきのお返しよ! ええいっ!!」
もう1つの武器である『ガンガンハンド』のロッドモードを構えると、鎧武に次々と打撃を与える。
「ぐっ! がっ! がふっ!」
「最後はこれで!」
ガンガンハンドの砲身を伸ばして鎧武を突き、縛ったままやや遠くに飛ばす。
『今よ! 必殺技を使って!』
「うん!」
『ダイカイガン! カズラ! オメガドライブ!!』
「はっ!」
ゴーストドライバーのレバーを操作した後、高くジャンプして右足を触手に変化。更にそこから螺旋状の錐に変化し、勢いよく回転させる。
「とりゃああああああああああああっ!!」
必殺のドリルキックが鎧武に向かい、見事命中する。ヘレナとカズラ眼魂は一瞬勝利を確信したが、右足に違和感を持った。
「っ!? 手応えはあるのに、倒れていない?」
直後、衝撃で発生した煙が晴れていく。
『カチドキアームズ! いざ・出陣! エイエイオー!!』
そこにはカチドキアームズになり拘束を脱した鎧武が、装甲で受け止めた右足を左手で掴み、火縄大橙DJ銃の砲身を向けて立っていた。
『いけない! 相手はまだ健在よ!』
カズラ眼魂が警告した直後にDJ銃が火を噴き、ヘレナを大きく吹っ飛ばした。
「うぐっ……!」
その隙に鎧武はDJ銃の円盤を回してホラ貝のメロディとビートを流すと、ピッチを右に回して再び円盤を回し、トリガーを引いた。
「おりゃあああああああっ!!」
銃口から小さい弾丸がガトリングの様に連続で放たれる。ヘレナは複数の触手で弾を弾き、何発かは抜けて当たってしまうもののダメージを極力防いでいた。
「このままじゃジリ貧だよ……!」
『夏煉、カズラと私を交代させて! 状況を打破するにはそれしかないわ!!』
『そうね…任せたわよ、パティ!』
「力を借りるね、パティ!」
触手で防御しながらD07と書かれた眼魂―――『パティ眼魂』のスイッチを押してゴーストドライバーにセットする。
『アーイ! バッチリミトケー! バッチリミトケー!』
頭に青いカチューシャをつけた緑の長袖パーカーが現れ、それを見た鎧武は急ぎカチドキロックシードをDJ銃の窪みに装填する。
『ロック・オン!!』
「はぁぁあああああああああああああああああ!!」
『カチドキチャージ!!』
トリガーを引き、強力な砲撃を銃口から放った。
『カイガン! パティ! 粒子と変化し! 不思議な女子!!』
だが間一髪ゴーストチェンジが完了すると、ヘレナは身体を粒子化させて砲撃を回避した。
「消えた……!? がっ!?」
戸惑ったその瞬間、鎧武は背中に衝撃を感じた。振り向けばいつの間にかヘレナが立っている。無双セイバーに武器を持ち替えて斬りかかるが、またもや粒子化すると背後に回り紫のオーラを纏ったガンガンセイバー・ナギナタモードで攻撃する。これこそが『パティ・クルー』の力を宿す『パティ魂』の能力だ。
『ダイカイガン! ガンガンミイヤー! ガンガンミイヤー!』
ガンガンセイバーをバックルに翳し、身体を再度粒子化させて鎧武を包囲。死角からナギナタモードによる連続斬りで翻弄し、正面に現れるとガンガンセイバーを回転させて粒子竜巻を発生。鎧武の身を拘束する。
「さっきの手はもう使えない筈! これで決めるよ!!」
『やってしまいなさい!!』
「てやぁあああああああああああ!!」
鎧武に向かいヘレナは勢いよく突進する。
『フルーツバスケット!』
『ロック・オープン! 極アームズ! 大・大・大・大・大将軍!!』
「きゃああああっ!?」
しかしそれは、音声と共に弾け飛んだカチドキアームズの装甲によって止められた。起き上がったヘレナが正面に見たもの。それは……
「私の全力、見せてあげる……!」
白銀の鎧武者、極アームズだ。
『凄い威圧感だわ……』
『パティよ、妾と変わろうぞ』
「『羽衣狐』さん?」
『主も気づいているのであろう? アレを相手にするのはちと荷が重い、と』
『……残念ながらね。それじゃあ、貴女に任せるわよ』
『うむ、任された。では行こうか、娘』
「はい、羽衣狐さん!」
D02と書かれた眼魂―――『ハゴロモギツネ眼魂』を出してスイッチを押し、パティ眼魂と交換してゴーストドライバーに入れる。
『アーイ! バッチリミトケー! バッチリミトケー!』
裾の部分に、九つの白銀に煌めく狐の尻尾がついた漆黒のセーラー服のパーカーが現れると同時にレバーを引くと、すぐに押し込んだ。
『カイガン! ハゴロモギツネ! 魅惑の妖狐! 統べるは漆黒!!』
パーカーを羽織り、ヘレナは『羽衣狐』の力を宿した『ハゴロモギツネ魂』に変化した。
「「……………………………」」
『ソニックアロー!』
鎧武はソニックアロー二本を、ヘレナはガンガンセイバーとガンガンハンドを持ち睨み合う。
「「はぁあああああああああああああっ!!」」
走り出し、互いの得物で斬り合う。それぞれの武器が相手の装甲や武器を斬りつけ、火花を散らす。少しして、鎧武が不意に膝蹴りを食らわせヘレナをよろめかせる。
「せぇいっ!」
そこに追い打ちを仕掛けるが―――裾から分離した尻尾『ミスティックナインテール』が盾となり防御すると同時に、鎧武に体当たりし突き飛ばす。
「きゃっ! 今度はビット兵器って訳?」
「うーん……どちらかと言うとファンネル?」
『言うとる場合か』
ツッコミを入れられつつも、ヘレナはミスティックナインテールから出てきた扇と太刀の形をした2つの武器、『二尾の鉄扇』と『三尾の太刀』をガンガンセイバーとガンガンハンドの代わりに手にした。
「はっ!」
「うっ!?」
二尾の鉄扇を一振りして突風を浴びせた後、三尾の太刀に炎と雷を纏わせて振り下ろす。
『メロンディフェンダー!』 『ブドウ龍砲!』
だが鎧武はメロンディフェンダーを召喚してこれを防ぐと、ブドウ龍砲のトリガーを引いて紫色のエネルギー弾を連射した。
「わっ! やったわね!」
少し食らうもミスティックナインテールで防ぐと、新たに十字槍型武器の『四尾の槍』を持ち、突きを放つ。鎧武は避けようとするが、槍が伸びたことで躱しきることができず食らってしまう。
「槍が伸びた? だったらこれで!」
『影松!』
「てやぁあああああっ!!」
目には目をと影松・真を召喚して構えると、伸縮して攻撃してくる四尾の槍をいなしつつ攻撃を仕掛けていく。
「凄い戦いですわ……どちらが勝ってもおかしくはありませんわね」
「そうね。でも義姉の身としてはここは夏煉に…………ん?」
観戦していた薫は所持していた端末が反応したことに気づき、何に反応したのかをすぐに確かめた。
「(ついに動き出したみたいね。それにしても、往生際が悪いこと……何にせよ回収に行かなくちゃ)ごめんなさい、急用ができたわ。判定は貴女に任せるわね」
「えっ?」
戸惑うセシリアを余所に、薫は何処かへと走り去った。
一方全力で攻防を繰り広げていたヘレナと鎧武は肩で息をしていた。体力の限界が近づいているのだ。
「はぁ……はぁ……あの、つ、次で、最後に、しません?」
「ぜぇ……ぜぇ……そ、そう、だね。ちょっと、張り切りすぎちゃった、からね……」
「あ、ありがとう、ございます……」
『しっかりせい娘! もう一踏ん張りじゃ!』
「は、はい……!!」
『ダイカイガン! ハゴロモギツネ! オメガドライブ!!』
レバーを動かしてオメガドライブを発動させると、鉄扇、太刀、槍、そして4つに増殖しそれぞれブレード・ガン・ナギナタ・二刀流モードとなったガンガンセイバーと、2つに増殖しロッド・ガンモードにそれぞれ変化したガンガンハンドが現れ、内ガンガンセイバーとガンガンハンドのガンモードを両手に1つずつ所持し、後は周囲で滞空する。
『火縄大橙DJ銃!』
対する鎧武は火縄大橙DJ銃を取り出し、窪みにオレンジロックシードをセットしてロックを掛けた。
『ロック・オン!!』
更に極ロックシードを回して次々と武器を召喚し始める。
『大橙丸!』 『バナスピアー!』 『ドンカチ!』 『クルミボンバー!』 『キウイ撃輪!』 『マンゴパニッシャー!』 『メロンディフェンダー!』
『ソイヤッ! 極スカッシュ!!』
呼び出した武器を周囲に滞空させた後、カッティングブレードを一回倒して黄金のオーラを纏わせる。ヘレナの方も武器に漆黒のオーラが纏われる。
「いっけぇぇぇええええええええええええええ!!」
「セイハァァァァァアアアアアアアアアアアアッ!!」
『オレンジチャージ!!』
放たれた黄金の奔流と漆黒の奔流が激しくぶつかり合う。衝撃で頑丈な筈の戦闘ルームが軋み始める中、2人は退こうともせず全力を出した。
その結果―――双方のエネルギーが臨界点を超えて大爆発が起き、ヘレナと鎧武を巻き込み吹っ飛ばした。
「「きゃあああああああああっ!!」」
「うっ……!?」
離れた場所に居るセシリアすら腕で顔を覆う程の余波が届き、収まったところで見てみれば2人はどうにか立ち続けていた。が、すぐに同時に膝をつき同時に変身が解除された。
「お2人とも、大丈夫ですか!?」
慌てて駆け寄ったセシリアは、先に一夏を、次に夏煉に肩を貸す。
「な、何とか、ね……」
「勝負は……ど、どうなり、ました……?」
「……同時に変身が解かれましたので、引き分けと判断させて頂きますわ」
「そう、ですか……でも、引き分けに持ち込めたのはラッキーだったかも……一夏さん、凄く強かったから……」
「それを言ったら……夏煉ちゃんも相当強かったよ。途中、何度負けると思ったことか……」
「それ以上喋ってはいけませんわ。一夏さんも夏煉さんも、まずはゆっくり休みませんと」
「そうだね…ごめん」
「ところで、薫義姉さんは? さっきから姿が見えないけど……」
「それが……急用が出来たと言ってどこかに行ってしまいましたの」
「急用?(薫義姉さんのことだから重要なことなんだろうけど、何があったんだろ?)」
その頃、薫はクライナー・ナイルカスタムを用いてAR学園に赴いていた。
「ここの筈だけど……」
端末を用いて周囲を探る。するとやや離れたところにホログラム状態の春也が確認できた。
(居た。さっきやられたのは確認済みだけど、それでも消えてないなんて、しぶといにも程があるわ)
ため息をつきながら歩を進める。
『はぁ……はぁ……リベンジャーロックシードが破壊されるなんて……何故だ! 一夏姉さん達が使っていた時は、トランスフォーマーを圧倒していたのに!!』
ホログラム状態でノイズを走らせながら、春也は這々の体で海岸を歩いていた。リベンジャーロックシードを犠牲にしたものの、爆発に紛れて辛うじて逃げていたのだ。
「力を力としか捉えてないようじゃ、負けるに決まっているわよ」
『! 誰だ!?』
「アタシは兵鬼薫。織斑春也……貴方の魂を回収しに来た者よ」
『回収だと? 君も戦極凌馬の仲間か!?』
「違うわ。ただ……少なくとも貴方の味方じゃないことは確かよ」
『何だっていい。僕の邪魔をするなら……変身!』
『ブラッドザクロアームズ! 狂い咲き・サクリファイス!!
ハッ! ブラッドオレンジアームズ! 邪ノ道・オンステージ!!』
ホログラム状態から直接セイヴァーに変身すると、大橙丸とセイヴァーアローを構えた。
「乱暴ね……そこまでして世界を支配したい理由は何なの?」
『僕の存在を認めさせる為だ! どいつもこいつも、僕がオタクだからってバカにしやがって! アイツだってそうだ! 親友面して僕のことを庇ってたけど、結局はそんな自分に酔ってただけなんだ!』
「小さい理由……そんなくだらないことで、実の姉の処女を散らせたと言うの? それも自分の手を全く汚さずに……」
『それぐらいしなきゃ壊れないと思ったからさ。文句あるのか?』
「あるわよ。同じ女性として、貴方が……テメェが彼女にやったことだけは絶対に許せないんだ!! 変身!!」
そう言うと電王ベルトに似た『煉王ベルト』を腰に巻き、ライダーパスを翳した。
『DRAGON FROM!!』
彼女の身体が素体のプラットフォームになり、次いで黒いオーラアーマーが出現。各部に装着していき、薫の姿を『仮面ライダー煉王 ドラゴンフォーム』に変えた。
「仮面ライダー煉王……兵鬼薫!!」
『電王系ライダー!? この世界のライダーは鎧武系列の筈じゃ……』
「テメェが知る必要はない。ここでアタシに倒されるからな」
『ふざけたことを!』
『ロック・オフ!』
セイヴァーはザクロロックシードを外してセイヴァーアローにセットしようとする―――が、その前に接近した煉王によって腹パンを受け、腕を掴まれ阻止された。
『は、離せ! 必殺技を邪魔するなんて、卑怯だぞ!』
「散々好き勝手してきた奴に言われたくはねぇな」
強引にザクロロックシードを奪い取ると、それを潰さんばかりに握り締める。
『ぐあああああああああああっ!! や、やめろ……お願いだ、それを壊さないでくれ!!』
「断る。そうしないと、テメェの魂を回収できないんでね」
『ぐわあああああああああああああああああああ!!』
ザクロロックシードが限界を超えて砕け散り、セイヴァーの姿がノイズとなって消える。煉王はすぐさま変身を解くと、ガシャコンバグヴァイザーを取り出して彼の魂を回収した。
「ふう。もう1つのミッションも完了っと。さて、勝負の結果を見に行きますか」
AR学園に背を向け、薫は歩を進めた。
という訳で、この様な話が裏で起きていた訳です。コラボして下さった悪維持さん、ありがとうございます。
自分の文才が乏しいせいで上手く書けたかどうか自信がありませんが、これで良かったでしょうか……?