インフィニット・ストラトス―失われた未来―   作:レイブラスト

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第5話 集結する意志

「う…ううん……」

 

目を覚ました一夏は、どこかの病室のベッドに横たわっていた。周りにはセシリアとチェルシーがおり、それ以外にも千冬や束、ラウラや凌馬にスコールやオータム、桃色のアーマードライダーといった面々が揃っており、更に束の妹である篠ノ之箒まで居た。

 

「気がつきましたか?」

 

「セシリア……ここはどこなの? それにどうして箒や千冬お姉ちゃん達が……」

 

「私にもよくわからないんだ。いきなり姉さんが現れて、バイクに乗せられるまま連れてこられたんだが……」

 

「君達の疑問には私がお答えしよう」

 

頃合いを見計らい、凌馬が前に出て来て言う。

 

「貴方は?」

 

「私は戦極凌馬。今現在君達が居る亡国機業(ファントム・タスク)のトップだ」

 

亡国機業(ファントム・タスク)? 聞いたことがありませんわ。どんな組織なんですの?」

 

「簡単に言えば、アーマードライダー部隊を所有する秘密結社で、主に人知れず悪を滅ぼすことをやっている所さ。ちなみにアーマードライダーと言うのはISを根本から改良したもので、オルコットちゃんが見た斬月やブラーボ、それにここに居るマリカのことだよ」

 

チラリと傍に立つ桃色のライダー―――仮面ライダーマリカを見やる。同時に千冬とラウラは戦極ドライバーを一夏達に見せた。

 

「千冬お姉ちゃん、ここに所属してたんだ」

 

「ああ。黙っていて済まなかったな」

 

「それはいいんだけど、どうしてまた? 何か理由があるんでしょ?」

 

「それに、織斑さんだけではなくボーデヴィッヒさんが居るのも不思議ですわ。彼女、ドイツ軍特殊部隊の隊長ではなくて?」

 

「これも私が説明するよ。織斑千冬をここに所属させたのは、単に戦力に加えたかったのと、いざという時に君達を助けに行けるようにする為さ。ただドイツ政府が色々と煩かったから、ちょいと交渉してね」

 

「その結果が、彼女がここに居る理由ですか?」

 

「部隊ごと接収したんだ。まあ話すと長くなりすぎるから、あまり深くは聞かないでくれ」

 

人に言えないようなこともやったしね、と心の中で付け加える。

織斑千冬を所属させるに至って懸念となったのは、ドイツ政府が情報をリークしたことを貸しにしてドイツ側に来るよう迫ることだった。だから凌馬はアーマードライダー等極一部の技術を提供することを条件に交渉をするつもりだった……だがここで予想外の事実を偶然知ることになる。

ドイツ政府と一夏を誘拐した連中は裏で繋がっており、全ては織斑千冬をドイツ軍に迎え入れる為の壮大な自作自演であったのだ。このことが彼女に知れたら激怒しかねないと思いつつも、これ以上ない有効なカードとして凌馬はこれを利用。ドイツ政府をほぼ言いなり同然にした上で交渉を優位に行い、向こうが出してきた特殊部隊「シュヴァルツェ・ハーゼ」の特殊訓練についても「緊急時にはそちらを優先させるから、こっちに接収して訓練させる」という条件を飲み込ませ解決させた。

 

「それより、少し一夏ちゃんに言わなければならないことがある。そこの机にあるバックルのことは覚えているかな?」

 

彼はベッドの隣にある机の上を視線で指す。一夏がその先を見ると、戦極ドライバーに色取り取りなロックシードが幾つか置いてあった。

 

「えっと…はい。確か必死で変身したような……でも、あの時使った錠前と鍵が無いような……」

 

「このバックルは戦極ドライバーという名前で、これらの錠前…ロックシードの力を引き出す為の道具だ。ロックシードと言うのはISコアを改良した全く新しい発明品のことだよ。……それで君が初変身で使ったロックシード―――錠前の方がカチドキロックシードで鍵の方が極ロックシードって言うんだけど、精密検査の結果極ロックシードの方にカチドキが吸収されて、しかも君の心臓と一体化しているみたいなんだ」

 

「えっ」

 

現実味が沸かない言葉だった。あの鍵が、心臓と一体化している? それはどういう状況なんだろうか。そしてどんな変化が自分の身体に起きるのか―――

 

「まあ身体機能に異常は無いみたいだから特に心配する必要はないと思うけど、何かあったら連絡して。電話番号渡すから」

 

「……あの、それって普通の生活に戻ることを前提に言ってるんですか? だとしたら、無理だと思います。こんなことに巻き込まれてしまったんですし」

 

「じゃあどうすると言うんだい? 君の意見を聞かせて欲しいな」

 

「…………………」

 

しばし全員の顔と戦極ドライバー、ロックシードを見ながら一夏は考え、そして答えを出した。

 

「私も……ここで千冬お姉ちゃん達と一緒にここで戦います。こんな私でも何かの役に立てるなら、そうしたいんです。貴方もそう考えて、こんなにロックシードを用意してくれたんでしょう?」

 

「え? あ、うん…ま、まあね」

 

つい声に詰まった。実はそのロックシードらは極アームズから生成されたものなのだが、到底信じられる話ではなく、また余計ややこしくしてしまうので黙っていることにした。

 

するとセシリアが決意を秘めた顔で凌馬を見つめた。

 

「待って下さい。それでしたら、私もここで戦いますわ」

 

「お嬢様!?」

 

「セシリア!? でも……」

 

「今回のことで、私は自分の実力不足を痛い程感じましたわ。それに私、既に決めていますの。どんなことがあっても一夏さんを守ってみせるって。なのに当人から守られているのでは格好がつきませんもの。ですから一夏さんと同じ力を得て、今度こそ一夏さんを守れるようになりたいんですの!」

 

「セシリア……」

 

拳を強く握り締めながら言う彼女を見て、一夏は頬を赤く染める。セシリアの強い信念を感じ取った凌馬は、これは参ったと言わんばかりに手を上げて言った。

 

「相当な覚悟のようだね。わかった。一応イニシャライズ前の戦極ドライバーもあるし、ロックシードはそこから好きなものを持っていけばいい。ただ訓練はこれまで以上に厳しいものになる上に、場合によっては人殺しの十字架を背負うことにもなるが……」

 

「承知の上です。構いませんわ」

 

即答したセシリアに凌馬はフッと笑うと、戦極ドライバーを懐から取り出して投げ渡す。受け取ったセシリアは机を見ると目についたロックシード2個を手に取った。

 

「それにしても、君は随分と一夏ちゃんに入れ込んでいるようだ。さっきの宣言も、まるで恋人同士みたいな雰囲気だったよ」

 

「いやですわ、雰囲気だなんて。私達は実際に恋人同士なんですよ?」

 

「ふぇっ!? な、何言ってるのセシリア!?」

 

「なっ…そ、それは本当なのか一夏!?」

 

顔を真っ赤にして慌てる一夏と、彼女に詰め寄る箒。しかし周りは思った以上に冷静で驚きの声も上がらない。

 

「……? 自分で言うのはアレだけど、何でみんな驚いてないの?」

 

「ああ、監視する過程で知っちゃってさ……」

 

「さすがに私も大層驚いた。が……正直なところ、私は2人を応援しているぞ。なあ束?」

 

「そうそう! 私なんて2人の百合百合な時間をコレクションにしているくらいだし」

 

「ちょっと待て! それは初耳だぞ!?」

 

流れるようにぶっ込んだ束の発言に凌馬が耳を疑い、一夏とセシリアが顔を赤くして俯いていると、スコールとオータムが前に出て述べた。

 

「私とオータムも貴女達と同じような関係だから、何か困ったことがあったら言ってね」

 

「おう。遠慮する必要はねぇからな!」

 

「「は、はい」」

 

「そ、それはそうと姉さんが私を呼んだ理由は何なんですか?」

 

混乱してしまった流れを変えようと箒が尋ねる。すると束は待ってましたと言わんばかりに笑顔で箒を見た。

 

「ふふふ。そんなこと言って、箒ちゃんも薄々感付いてるんじゃなぁい?」

 

「……まさか、私にもアーマードライダーになれと?」

 

「うん! その方がいっちゃんを守れる人が多くなるし、いいでしょ」

 

「へ?」

 

一夏は間抜けな声を出した。何故そこで自分のことが出てくるんだろうか。そう思っていると束が察したのかこう続けた。

 

「いっちゃん。ここに居るみんなはね、いっちゃんがはるくんから受けた仕打ちのことを知ってるんだ。だけど、今の今まで知らなかったり何かやってる程度でしかわからなかったから、何も出来なかった……その償いをする為に、私達はいっちゃんの味方になる人達を集めているんだ」

 

「そ、そうだったんですか!? それじゃ、千冬お姉ちゃんをここに所属させた理由も……」

 

「言っただろう? 君達を助ける為だって」

 

「っ……!」

 

次の瞬間、一夏はポロポロと涙を流した。ここまで親身になってくれる人が居るとは思っていなかったのだ。

 

「一夏……」

 

「箒ちゃんも、一緒に戦ってくれる?」

 

「……この状況で無理と言える訳がないでしょう? それが私にできる唯一のことなら、覚悟を決めます」

 

「いいご友人を持ちましたのね、一夏さんは……ところで、あのアーマードライダーは一体誰なんですか?」

 

「ん? ああ彼女は―――」

 

笑みを浮かべたセシリアがふと疑問に思ったことを尋ねて凌馬が答えようとした時、マリカが前に出て変身を解除した。

そしてその姿に、箒とセシリアと一夏は驚愕した。

 

「ち、千冬お姉ちゃんに似ている……?」

 

「お前は何者なんだ?」

 

「私は、織斑マドカ。千冬姉さんのDNAをベースに生み出されたハイパーソルジャー……所謂人造人間だ」

 

「じ、人造人間!?」

 

「とある研究所に囚われていたところを、私が助けたんだ。一夏の話を聞いて、妹として力を貸したいと言うんだが……いいか?」

 

「私は別にいいけど…いいの? こんな私が姉で」

 

「いい悪いとかじゃない。私は一夏姉さんの妹になりたいんだ」

 

「! あ、ありがとう……マドカ……!」

 

妹になりたい―――双子の弟に拒絶されてきた一夏にとって、これ以上に救いの言葉はなく、止まっていた涙が再び溢れ出す。

 

一夏とセシリア、箒等を加えて凌馬率いる亡国機業(ファントム・タスク)はいよいよ本格的に始動し始めた。

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