Notes of Synchro Smile 作:*Mia*
拙い文章ですが、どうかよろしくお願いいたします。
「なあ、突然だけど俺……東京に行くことになった」
中三の卒業式の日。俺――
「……どうして?」
「親が転勤するから。それだけだ」
「そういうことを言ってるんじゃないしっ!」
ただ、簡潔に、事実だけを述べようとする俺に、幼馴染の片方が迫ってきた。だから言いたくなかったのに。
「……どうしてこんなこと、もっと早くにっ……!」
それ以上は、続かなかった。卒業式の時にも流していたであろう涙が、その子から溢れだしてきたからだ。泣きはらし、それでも笑顔だったその顔が、怒りで酷く歪んでいたように見えた。
「イブ……」
「どうしてっ……どうしてぇっ……」
そこから先は、意味のある言葉とはならなかった。ただただ少女の慟哭が、空に響いていた。
「まり花……」
「……大丈夫だよ、絶対大丈夫だよ。だって、今までずっと一緒だったもん。だから、また、一緒に……なれる、もん……」
徐々に力を無くしていくもう一人の少女の言葉。いつものふわふわした姿とは程遠い、明らかに無理をしている姿だった。
「本当にごめんな。だが、今は電話もあるしインターネットもある……会うことは難しいかもしれないけど、話すだけならいつでも出来る。……だから、そんな顔をしないで、顔を上げてくれ」
彼女の茶髪を、右手でそっと撫でる。ふわっと甘い匂いのする、女の子らしい髪だった。
「イブ、お前はまり花を見てやってくれ。お前なら任せられる」
左手で、もう一人の少女も撫でる。一年前に
「それじゃあ、まり花、イブ」
これで一旦お別れだ。
そう言って、俺は長い間過ごしていた幼馴染との別れを告げた。目の前がぼやけたのは体調が悪いからだと、誰に向けたのかも分からない言い訳をした。
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「……朝か」
そう呟きながら、玄は寝起き特有のだるさに包まれた体を起こした。目覚めは最悪。少し前まで一緒だった幼馴染の夢を見て、軽く自己嫌悪に陥る。今思えば、もっとマシな別れ方があったはずだ。別れる時に悲しませるのは仕方ないにしても、少なくとも、今よりは遥かにマシな方法が。
「よりにもよって、こんな日にな……」
今日は始業式の日。始業式の日に卒業式の夢を見るとは、運命の悪戯とでもいうのだろうか。
「いい加減、準備しないといけないな……」
しかし、そうはいっても時間は待ってはくれない。すぐに始業式の準備を整え、その足で玄が通うべき高校に向かう。その胸に、わずかな不安を抱きながら。
だがしかし、なんといってもその最大の特徴は、同じ秋葉原の伝統校であり女子校、「
必要となれば天音から音ノ木坂へ、音ノ木坂から天音へ、というように教師が派遣されてきたり、職員会議を合同で行ったりと、双方共に結び付きは強いらしい。
そのような趣旨の話を入学式にされたようだが、生憎堅苦しい話は昔から苦手で聞いていなかった、とは玄の談。
「やれやれ、どうしてこう偉い立場の人の話は長いのか、俺にはよくわからんな」
「まあ、同意はするけど……少しは聞いていた方が身のためなんじゃないか?」
「それにしても、まさかまた同じクラスだとはな」
「まあ、今年もよろしく頼むよ」
始業式の後、友人と適当に喋っていると、すぐに担任と思しき先生が来る。
「おい、お前ら座れー……。よし、今日からこのクラスの担任になった山中だ。まあよろしく頼むわ」
入ってきたのはブラジルから来たのか、と思わせるほどに背が高くて色黒の先生だった。とにかくデカい。おまけに筋肉質。とりあえず「あぁ、体育会系なんだな」と思うのに5秒もいらないほどにはインパクトの塊だった。
「アドンかな?」
「何だ、それは?」
「いや、こっちの話。……知ってる人いるのかな、これ」
そのようなよく分からない会話を繰り広げていると、その先生が言う。
「まあ、始業式だしあんま連絡とかねぇわ。あ、それと後で青山は集合な」
「えっ」
どうやら、今年の担任は相当自由なようだ。
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「……」
帰り道。玄は何も喋らず、ただ「告げられたこと」について考えていた。担任から告げられた、ただ一つの事実。
「(天音が、廃校になる……)」
いくら古くから続く伝統校だろうと、少子高齢化の波には勝てない。ましてや最近秋葉原周辺に出来た「UTX学院」の存在もある。近未来的ともいえる程の最新技術を取り揃えたUTXか、よく言えば伝統的、悪く言えば古臭い天音か。受験生がどちらに魅力を感じるかなど、もはや比べるまでもない。
そう、天音学院は遂に入学希望者激減による廃校の危機を迎えているのである。
「……おーい」
「(だからといってあれはないだろ……)」
しかし、天音学園の提携先である音ノ木坂学院も状況は似ているらしく、双方共に苦しい状況であるということは変わりない。そこで出した苦肉の策。それが、天音と音ノ木坂を一つにすることだった。
だからといって、いきなりというわけにはいかない。統廃合にはそれなりの準備や資金が要る。何より生徒自身、急に決定した統廃合という事実についていけはしない。
「……ねぇ、ちょっと」
「(だとしてもな……)」
そこで、天音学園と音ノ木坂学園は幾度にも及ぶ合同会議を開き、そしてある一つの決断をする。それが――。
「あーもうっ! 話聞きなさいよっ!」
「うおっ!?」
玄が考え事に耽っていると、右足に衝撃と鈍い痛み。どうやら自分は蹴られたようだ。
「もうっ! せっかく私が話しかけてるっていうのに無視するなんて良い度胸じゃない!」
「いたた……って、何だ、夏陽か」
「全く……女の子が人を蹴るな。俺じゃなかったら何されてるか分からないぞ?」
「あんたが気付かないのが悪いのよ」
「何だその理論は……」
だからといって脛を蹴られても困る。
「ダイジョブ……【(。・ω・。)】」
「ん、心菜か。大丈夫って、何がだ?」
「なっちゃん、照れてるだけ……素直に、言えないから……どうしたらいいのか、分からないだけ……」
「ちょっ!? 違うわよ、ここなぁ……」
後ろの方からひょっこり出てきた青色の頭。東雲
ちなみに、心菜が絡むと夏陽はとてつもなく弱くなる。それほどまでに想っていると言えるのかもしれないが、ここまでになると逆に心配になってくる。主に将来が。
「そういえば、そっちの方も今日は始業式か」
「ええ。まあ、今年もどうなるか分からないけどね」
「練習……忙しい……【(′・ω・`)】」
「……そうか」
夏陽と心菜の二人は、アイドルを目指している。中学の頃からその手の方面の人からは既に話題に上っていたらしく、玄も何度かスカウトされているのを見たことがある。
……そういえば、山中先生並みに図体のデカい人が名刺渡していたような。
しかし、この二人はその勧誘を尽く断っている。何故トップアイドルへの道を自ら閉ざすのかと聞いてみても、
『……は? いいでしょ、別に。あんたには関係ないんだから』
と、一蹴される。その言葉の裏に何が秘められているのか、未だ玄には分からない。
「それよりどうしたのよ、大分暗い顔してたじゃない」
「あぁ……」
思い出してしまった。せめてこの二人と話している間は忘れようと思ったのに。
「いや、それがな……」
「……? くろ、遠い目……」
「本当に何があったのよ……。ほら、言ってみなさい」
「笑わないか?」
「よほどのことがない限りは、ね」
額に汗を浮かべながら、黒は観念したという風に言った。
「俺は、どうやら
「何言ってんの? 冗談ならもっとマシな冗談言いなさいよ」
笑われた。鼻で。
「割と冗談じゃないんだけどな……」
「もし本当だとしても信じるわけないじゃない、そんなの」
ごもっともである。普通は信じられないであろう。しかし、残念ながら真実なのだから仕方ない。少なくとも玄はそれ以上のことは言えない。
そう、天音と音ノ木坂の統廃合に先立ち、テスト生として一名ずつ、互いの生徒を交換するということになったのだ。無論、互いの心身の安全は確保され、学園生活上でのあらゆるサポートが用意される。
「俺だってこんなことになるとは思わなかったんだよ」
「はいはい、大変ね」
あ、これ絶対に信じてないやつや。
「くろ……ファイト……【(。・ω・。)】」
「すまん、心菜……お前は本当にいい子だよ……」
心菜の優しさが沁みる。ああ、今なら夏陽の気持ちも分かるな、と思いつつ。
「ちょっと、何いきなり心菜を口説いてんのよ!」
「口説いてるつもりはなかったんだが!?」
「ま、心菜がいい子ってのは認めるけどね。にゃははは!」
その直後にこれである。大事に思ってるのはよく理解できるが、流石に行き過ぎではないだろうか。
「心菜は世界一可愛いんだから! あんたにだって渡すつもりはないわよ!」
「いや、そもそも奪おうとも思ってないんだが!?」
「それは心菜が可愛くないって意味!?」
「これどう返せば正解だったんだ!?」
人目も憚らず騒ぎ始める玄と夏陽。そこに。
「くろ……元気になった」
「なっ……!」
「なっちゃんと、一緒だと、二人とも、元気……【(*´︶`*)】」
心菜の言葉で、少し考えるようになった。これは、二人なりに元気づけようとした結果なのだろうか。
そう思って感謝の一つでも述べようかと夏陽の方を見ると、その髪の色と同じ位に真っ赤になっていた。
「べっ、べべっ、別に、私はこんなのなんてどうだっていいし」
「いくらなんでも反応が分かりやすすぎるだろ……」
確か、あの時はこういうのを何て言ってたんだったか。ああ、確か――。
「ゆでゆでだこさん?」
「っ――!」
「ゆでゆでだこさん……? 照れて真っ赤ななっちゃんも、可愛い……【(*´︶`*)】」
「ここなぁ~っ!」
もう、色々な感情が混ざりすぎて表情がとてもよく分からないことになっている。あえて説明するのであれば、「顔を真っ赤にしながら慌てて周りの声を否定しようとして、でも可愛い妹のことだから否定できず四苦八苦している表情」とでも言えばいいのだろうか。うん、とてもよく分からない。
「もうっ! 私たち、もう行くからっ! バイバイっ!」
あ、限界に達した。
「くろ……バイバイ……【(。・ω・)ノシ】」
「ああ、また会おうな」
そう言いながら二人は背を向けて歩いて行った。
「……」
一人残された玄は、ふと考える。
このことを、「あの二人」に言ったら、どうなるだろうか……?
「……いや」
今は、まだいい。もう少し落ち着いてから連絡しよう。流石に今連絡するのは、精神的にきついものがある。少し時間をおいてからでもいいだろう。そう考え、玄はいつの間にか手に取っていた携帯をしまった。
この選択が間違いであったことに気付くのは、もう少し後の話。
いきなりの原作詐欺。
ちゃんと次回からラブライブキャラ出しますから許してくださいお願いします。