ハイスクールD×D ~九つの尾を持つ妖怪~ 作:ちょこ0720
更新できなかった分多めに書きました。
失踪はしませんのでご安心を
いい匂いがした。
しばらく嗅ぐことがなかった優しい匂いが鼻腔をくすぐった。
朝ごはんの匂いだろうか。
意識がまだ朦朧とする中、その程度のことはわかった。
「...ん?」
目を開けると、そこには見知らぬ天井が広がった。
徐々に意識が覚醒しだし、次第に昨日のことを思い出す。
...確か姉様と再会して...。
恐らく、あの後寝てしまい、姉様か天狐さんに運ばれたのだろう。
次第に顔が熱くなるのを感じた。
自分の中で昨日のことを整理していると、ドンドンと元気の良い足音がこちらへ近づいてくる。
そして、トントンとふすまをノックする音が聞こえる。
「...はい」
と、短く返事するとガラッとふすまが開き、天狐さんが顔を出した。
「なんじゃ、起きておったのか」
どうやら、起こしに来てくれたみたいだ。
「着替えじゃ」
そう言うと天狐さんは手に持っていた私の制服を差し出して部屋の外へ出ていった。
...なぜ天狐さんが私の制服を持っているかは考えないでおこう。
着替え終え、ふすまを開けると天狐さんが待っていてくれた。
そして、手招きして私を案内してくれた。
昨日、私が寝てしまった場所だろうか。
居間に案内されると、そこには既に姉様が座っていた。
「し、白音、おはよう」
私の顔を見ると、気まずそうにそう言った。
「...おはようございます......姉様」
私も気恥ずかしかったが返事をした。
最後の方は小さくなってしまったが。
だが、姉様にはしっかりと聞こえていたようで、目尻に涙を溜めていた。
「ね、姉様、泣かないでください!」
「ひっ...ぐすっ...ごめんね、こうやって会話するのがずっと夢だったから...」
重くなった空気だったが、天狐さんのお腹の音で少し和んだ気がした。
「すまんの、腹が減ってしまっての...早く食べなくちゃ遅刻してしまうからの」
遅刻してしまう、という言葉に反応して時計を見ると、猶予は既に二十分を切っていた。
「た、大変です。このままじゃ遅刻ですよ」
だが、焦る私とは対照的に、二人は呑気に席に着くと、早くしろと言わんばかりに私を見てきた。
「「いただきまーす」」
私も天狐さんと姉様に少し遅れて
「...いただきます」
と、小さく呟いた。
食事は、白米に焼き鮭、味噌汁と質素なものだったが、みんなで食べる朝食はとても美味しかった。
結果だけ言うと学校には遅刻しなかった。
スキマというものは、実に便利なものだと思った。
放課後、いつも通り部室に向かう途中で天狐さんと姉様と会った。
イッセー先輩とアーシアさんは先に行っているようだ。
「なんで姉様がいるんですか!」
と言ったら
「転入したにゃん♪」
と返されたので、もう気にしないことにした。
というか、このまま姉様を部室に連れて行っていいのだろうか。
仮にもSS級のはぐれ悪魔である姉様を。
まあ、天狐さんもいることだし、大事にはならないだろうけど...。
「いい加減にして頂戴!!ライザー、あなたとは結婚なんてしないわ!!婚約者だって自分で決めるもの!!」
天狐がドアノブに手を掛けると中からはリアスの怒鳴り声が聞こえてきた。
「...部長が怒鳴るなんて珍しいです...なにかあったんでしょうか」
「そうじゃの、とっとと中に入るかの」
そう言って天狐はドアを開ける。
「すまんの、遅れたのじゃ」
「...遅れました」
「はじめましてにゃ!」
上から天狐、小猫、黒歌の順に部屋に入っていく。
三人が部室に入るとそこには部員以外に金髪のガラのわるそうな男とメイド服を着た銀髪の女性がいた。
メイド服を着た女性は天狐が部屋に入ってきたのを見ると軽く頭を下げる。
が、天狐は
「そのままでよい」
と、声を出す。
今度は金髪の男が天狐と黒歌を見て驚き、声を出す。
「なんで悪魔でもないやつが...しかも、子供がこんなところにいるんだ!?おい、リアス、ここの管理はどうなっているんだ!...しかも、そこにいるのはSS級のはぐれ悪魔の黒歌じゃないか!」
はぐれ悪魔の黒歌がここにいるということに今気づいたイッセーとアーシア、そして、銀髪の女性と後から入ってきた天狐と小猫を除く全員が身構え、緊迫した空気が漂う。
それを見て、天狐が口を開く。
「わしは、悪魔ではないが、一応この部の部員じゃからな、ここにいる資格はあると思うがの。そして、黒歌のことなんじゃが...」
と、天狐が続けようとした時、銀髪の女性がそれを阻む。
「ここからは、私が話しましょう」
「確かに、そっちの方が信用されるかの。よろしく頼むぞ、グレイフィア」
銀髪の女性もといグレイフィアは首を縦に振ると続ける。
「以前よりサーゼクス様は他の現魔王様方にはぐれ悪魔である黒歌さんの手配書を解除するように訴えてきました。それは、大妖怪である天狐様の頼みであり、わしがいるから大丈夫じゃ、とのことでしたが、それだけでは信用できないと他の現魔王様方から言われてしまい、条件として、天狐様をこの駒王学園に通わせるということで考えは一致しました。ちなみに、手配書が解除されたのは、昨日の真夜中でしたので、知らない方がいても無理はないかと」
グレイフィアの話を聞くうちにライザーの顔がみるみるうちに青くなっていく。
「...つまり、ここにいる、この背の低いのが、天狐様なのか?」
「そうじゃ!」
手を腰に当ててエッヘンと言わんばかりに胸を張る。
その天狐の様子とは対照的にライザーの顔は、ますます青くなる。
「あ、あの、申し訳ございませんでした!」
さっきまでの偉そうな様子とは打って変わって、天狐に頭を下げる。
その場にいた者は改めて天狐の偉さを実感した。
「そんなことは置いておいて」
と、まるで気にしていないかのように続ける。
「先ほど、リアスが怒鳴っておったが、なにがあったんじゃ?」
この場にいた全員が、そんなこともあったなというように顔を見合わせる。
「それは、私が話すわ」
リアスが口を開き、今までの経緯を説明する。
「なるほどのう。それで、結局どうするんじゃ?」
リアスの説明を聞き、天狐はリアスとライザーの顔を交互に見るとそう言った。
「私は結婚なんてしたくないわ!」
「あのなぁ、リアス、俺もな、フェニックス家の看板を背負ってるんだよ。純潔な貴族であるフェニックス家の看板に泥を塗るなんて真似、させるわけにはいかないんだ」
双方の意見は全く逆のものだった。
再びそれを聞いたグレイフィアははぁっとため息をつき口を開く。
「こうなることはあらかじめ予想はできていました。なので、ここは、レーティングゲーム決着をつけてはいかがでしょうか?」
「「なっ!?」」
この提案に王の駒を持つリアスとライザーが反応する。
「本来、公式のレーティングゲームは成熟した悪魔しかできません。しかし、非公式の純潔悪魔同士のゲームならば、半人前の悪魔でも参加できます。この場合ならばレーティングゲームを執り行うことは可能です」
リアスの体がピクピクと小刻みに震えている。
恐らく怒っているのだろう。
「では、お嬢様はゲームも拒否すると?」
「いいえ、こんな好機はないわ。...ライザー、レーティングゲームで決着をつけましょう」
「わかりました。ご両家には私からお伝えしておきます。ゲームは十日後に行います」
そう言うと、グレイフィアとライザーは魔法陣の中に消えていった。
「十日後...朱乃、今すぐ作戦会議をするわよ、時間を無駄にはできないわ」
「なんか、すごい話じゃったな。というか、このままじゃお主達に勝ち目はないぞ」
衝撃の告白。
だが、リアスはそんなこと言われなくても百も承知である。
「...そんなこと、知ってるわよ。だから、今は時間を無駄にはできないの。だから、話しかけないで頂戴」
と、うつむいて喋る。
「だから、わしがお主達を鍛えてやろう」
この一言で物語はほんの少しだけ変化する。
恐らく今年最後の更新です。
皆さん、よいお年を!