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八月十八日、夜。
「……はぁ」
人気の無い路地裏で一人、御坂から逃げ出した少年は濡れたアスファルトに座り込んでいた。今はもう雨は止んだが、じめじめとした空気は未だ残っている。
「くっそぉ……一体なんなんだよ……何が起きたっていうんだよ……」
再確認しよう。
僕は……生粋の
能力なんて……ない。ない、はずだ。
それなのにさっき、右手で触れたモノが吹き飛んだ。ぶっ壊れた。
皐月は分からない。皐月は、無能力者
能力というものは、そんな突然発現するものなのか?突如として出てくるものなのか?
分からない。
頭の中がこんがらがる。混乱する。いやそれよりも。まず先に、この状況をどうにかしなくてはならない。なんせ、逃げてしまったのだ。多分、話せば分かってくれたかもしれない。一応幼馴染みである。それぐらいの良識は……いや、あるのか?
皐月は黒一色に染まる空を見上げ、考える。そして右手を天にかざし、何回も開いて握ってを繰り返した。
蘇るのは、頭と手が吹き飛んだ酷い死体と、幼馴染みの冷たい表情。ことの発端である右手を壁に当ててみるが、今度は何も起こらない。
「……どうなってるんだよ」
そのまま頭を抱え込むが、答えが出るわけではない。
「とりあえず、学園都市を離れよう」
皐月は、逃げることを選んだ。自分の意思ではないとしても、人を殺してしまったことに変わりはない。その事実だけは取り消せない。例えば、これからノコノコと姿を現して事情を説明したとしよう。そして仮に、
いや、待て。
もしかしたら。
もしかしたら、もう、僕は人間ではないから、当たり前の処置を受けるだけなのか?
考え出したらキリがない。
皐月の意思はもう固まったのだ。
サッ、と。その場から立ち上がり、歩き始めようとした。
その時だった。
嫌な寒気がした。
ゾワッッッッッッと。全身の毛が逆立つ。
何かが……近づいてくる。
足音が、こちらへと。
「……ったく。俺の計画を邪魔してくれやがってよォ」
姿がハッキリと見える。
真っ白な髪に、真っ赤な瞳。顔は整っていて、身体は細く、そして灰色を基調とした衣服が目立っていた。
皐月は、目の前の少年が誰だか分からなかった。だが、これだけは分かった。
『この男は本当にヤバイ』と。
身体がそう告げている。
「何でてめェみたいなヤツの始末を俺がやンなきゃいけないンだよ……クソ」
気づいた時には、
「けっ……この学園都市第一位様から逃げようだなンていい度胸してンじゃン。まァ、ほどよく楽しませてくれよおォォ!!??」