新世紀エヴァンゲリオン IF   作:芳香族

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注意事項
 テレビ版準拠でできるだけいきます


2001年 春 某日

 白い病室、何も飾りのない無機質な部屋で、一人の少女が茫洋とした眼差しを宙に向けている。

 歳は10代半ばだろうか。まだまだ幼い顔立ちには、表情というものが浮かんでいない。

『おはよう、ミサトちゃん。気分はどうかな』

 にこやかな笑顔を浮かべた優しそうな男性が少女に話しかけた。

『………………』

 しかし少女は男性に一瞥もやらず、沈黙を貫いている。

 男性は根気強く少女の反応を待ってみたが、一向にそれは与えられる様子は無かった。

『…やはり、まだダメか』

 男性はため息をつきつつ苦笑を浮かべた。

 少女がこの状態、失声症になってからおよそ半年。一向に改善される様子のない現状だが、男性はそれも仕方のないことであると理解していた。

 記憶に新しい未曾有の大災害。世界中を混乱に陥れ、この地球の環境を一変させた事件。

 

 セカンドインパクト。

 

 少女はそれに巻き込まれ、生き残った、たった2人の生存者のうちの一人なのだ。事件のさなかに肉親を亡くしたらしいということも聞く。その精神的外傷たるや、どれほど大きいものだろうか。

 こればっかりは長い時間をかけて治していくしかあるまい、男性はそう心得ていた。

 しばらく他愛のない話を少女に振っていた男性は、そういえば、と声を弾ませた。

『今日この病院に、君と同じくあの大事件を生き残った子が来るんだよ』

 ぴくり、と少女の肩が揺れる。やがて、緩慢な動作で少女の眼が男性の方を向いた。

 ここ半年、ほとんど外からの呼びかけに反応を示さなかった彼女にしては、とても大きな反応である。

 男性は何かの刺激になればと持ち出した話題へと、ことのほか食いついた少女の様子に喜色を浮かべた。

『彼はあの事件以降、身寄りを無くしていてね。今までは別の病院に預けられていたんだが、事件の後に起こった騒動によってその病院が使えなくなってしまい、ここに移ってくることになったんだ』

 男性の説明にじっと耳を傾けていた少女は、じっと男性を見つめた。

 目は口ほどに物を語る。言葉にせずとも伝わってくる思いに、男性は微笑んだ。

『彼に、会ってみたいかい?』

 少女は長い沈黙の後、小さく頷いた。

 

 

 

 

 引き合わされた少年は、子供というよりも幼子だった。

 齢は3~5歳程。まだまだ大人の庇護の元生きているはずだった子供は、その年齢に見合わない無表情で少女を見た。

 身寄りのない天涯孤独。事件によって両親という圧倒的な味方をなくした少年の瞳に、怯えや不安は見当たらない。

 そこにあるのは戸惑いだった。自分を取り巻く環境や自分のことがよくわからない。そのような迷子のような表情であった。

 彼は幼すぎた故に、両親の消失、それ自体を理解できていないのであろう。

 不安定な空気をまとう少年と目と目が合った瞬間、少女はふらりと彼に近寄った。

 近寄り、その手に触れる。

『………………』

『………………』

 お互いに無言。

 いくらか戸惑いの色を濃くした少年を、少女はゆっくりと抱き寄せた。

 それは同情や憐憫、あるいは同じ境遇の存在に出会えた喜びや共感故の行動だったのか、少女本人にしかわからない。もしくは少女本人にさえもわからないかもしれない。

 抱き寄せられた少年は戸惑いの表情をしばらく浮かべていたが、幾ばくかの後、おずおずと小さな手を少女の背中に回した。

 

 これが後に葛城ミサトと呼ばれる少女と、その弟となり葛城ハジメと呼ばれる少年の最初の出会いであった。




ここまで読んでいただきありがとうございます。
エヴァンゲリオンの世界の設定は複雑なため、なにか間違いがございましたらご指摘いただけると有難いです。
次は原作主人公登場できれば良いな。

主人公の名前を、壱からハジメに変更しました。漢字からカタカナに変更しただけです。
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