<鏖殺公>を片手に持った士道は、それでもこの女性には勝てそうもないと感じた。
それでも、俺はみんなを守りたい。
だから、力を貸してくれ、<鏖殺公>!
俺は、フェルトに助けを呼ぶように促し、行くのを確認して、戦いの地へと向かおうとして。
「何が起きてるの....?」
声が、聞こえた。
その声の主は、エミリア。
肩にはパックが、まだ眠っていない状態で乗っている。
「持ち主まで来てしまうとはね」
殺人女性がそう呟いた。
それを聞いて、俺は再び狂三と女性の方を見ると、狂三を抜いた女性がこっちに走って来ている。
この先には、エミリアがいる。
迷うまでもなかった。
この先は、行かせない!
「うおおおおおぉぉぉぉおおおおッ‼︎」
<鏖殺公>を振り下ろす。
斬撃が飛んだ。
「ーーーー!」
斬撃は、女性に吸い込まれるように向かっていき、
爆音がなった。
煙が晴れていき、その光景に俺は目を疑った。
女性が、平然と立っていたから。
「斬撃を飛ばすとは思わなかったわ。てっきり、百名一太刀だけかと思って」
女性がこっちに歩いてくる。
どうする?
どうすればいい?
渾身の一撃が効かなかった。
攻撃方法を知られたから、もう一度放っても効くとは思えない。
じゃあ?.....逃げるのか?
そうした考えが、ぐるぐると頭の中で渦を巻いている。
「士道!」
鞠亜の声が聞こえた。
「まだ諦めてはいけませんよ。それは、士道には似合いません。どれだけ難しいことでも絶対に諦めないのが士道で、みんなが好きな士道なんですから」
目が覚めた気がした。
「ああ。ありがとな、鞠亜」
そうだ。
俺は諦めない、絶対に!
だけど、俺だけじゃダメだ。
エミリアの方を見ると、スバルが何か説明していた。
.....しまった、よそ見してる場合じゃない!
急いで女性の方を見ると、女性は......。
すぐ目と鼻の先にいた。
「よそ見はしたらダメよ?」
やばい。
腹には、ククリナイフが突きつけられている。
その関係で、下手に動けない。
「悪いけど」
後ろから声が聞こえた。
「リアを助けようとしてくれた人は殺らせないよ」
氷の礫が降って来た。女性は一度下がった。
と思ったら。
.......腹が、熱い?
俺の腹には、横に一閃の傷があった。
気づいた瞬間、痛みが広がった。
「がああああああああああああッ⁉︎」
腹の傷が炎に包まれていく。
そして、治った。
「君、変な能力持ってるね」
どうやら、今のを魔法ではないと、パックは感じたようだ。
「ああ、何か、は言えないっていうか、説明しづらいっていうか」
「うん、大丈夫だよ。僕はパック。さっきは、状況がわからなかった僕とリアを助けてくれてありがとね」
「あれぐらいなんともないさ。それより」
「うん。あの人だよね。全く、困っちゃうよね。なんで徽章を狙っているのかは知らないけどさ」
フェルトがまだ戻って来てないってことは、エミリアたちが助けってわけではないようだ。
ただ巻き込まれただけ。
狂三が、<一の弾>を使って、こっちに来た。
「大丈夫ですの?士道さん」
「ああ。大丈夫だ。フェルトが助けを呼びに行ったから、もう少しで来るはずだ。だから、それまで耐えるぞ!」
「ええ」
「わかったよ。いいよね、リア」
「そうね」
え?
後ろを見ると、いつの間にかエミリアがいた。
「さっきはありがとう」
「リア、それさっき僕が言ったよ」
「いいでしょ!自分で言いたいのよ」
「喋ってる場合じゃねぇ!あの女......エルザが来てる!」
スバルの声で、女性(エルザっていうのか。初めて知った)の方を見た。
「精霊はまだ殺したことはないわね」
どうやら、パックをロックオンしたようだ。
「うーん...困ったな。眠くなって来ちゃったよ......」
「いきなり退場はやめてくれよ?冗談抜きで無理なんだ」
「パック、もう少し頑張って?」
「リアに言われちゃ、しょうがないね。さっきの話だと、助けが来るみたいだから、それまでは頑張ってみるよ」
作戦なんてない。
ただ味方に当たらないように攻撃するだけだ。
狂三が、銃をエルザに向けて、撃った。
それが再戦のスタートとなった。
エルザは銃弾を避けて、着々とこちらに向かって来ている。
俺たちはバラバラに別れた。
エルザは迷わずエミリアとパックの方に行った。
エミリアの周囲に氷が浮かぶ。
それが、一斉にエルザの方に飛んでいく。
エルザは横に飛び、それを回避してさらに弾丸のような速さでエミリアたちに迫る。
狂三が<七の弾>をエルザに向けて撃ち、自身も<一の弾>で加速した。
エルザは銃弾を避けきれず、動きが止まった。
そんな好機を逃すはずはなく、俺は<鏖殺公>を降って斬撃を繰り出した。
パックも、氷柱による砲撃を。狂三は、<刻々帝>で銃弾をばらまいた。
だが、<七の弾>の着弾が甘かったためか、すぐに停止は解けて、動き出したエルザは、すんでのところで全ての攻撃を、上へと飛ぶことで回避した。
強すぎる。
パックも苦い顔をしている。
エルザは、一度エミリアたちを狙うのをやめて、俺の方へと来た。
俺は、横に<鏖殺公>を振り、横向きに斬撃を放った。
「ッ⁉︎がぁぁぁあああ⁉︎」
<鏖殺公>は、天使。そして、士道は人間なのだ。
何度も斬撃を放っただけでも、奇跡に近い。
とっくに、士道の体はボロボロだった。
エルザは斬撃を上に飛んで避けて、俺に急接近して、ククリナイフを振るった。
俺は咄嗟に<鏖殺公>を上に持ち上げて、その攻撃を防ぐが、踏ん張りがきかないせいで、吹っ飛ばされてしまった。
体が動かない。
その間にも、エルザは近づいている。
狂三とパックが助けようとしているけど、間に合いそうもない。
ちくしょう......。
まだ、終わりたくない....!
その思い虚しく、エルザがククリナイフを振るった。
それが、俺に当たることはなかった。
代わりに、キィィィンという快音が聞こえた。
見てみるとそこには。
「少し遅れてしまったようだね」
赤毛の少年が、ククリナイフを鞘に入った剣で受け止めていた。
はい、ラインハルトが出て来ました。
大幅に原作をカットしてますが、いいですよね?
次回も読んでくれると嬉しいです。