デートから始める異世界生活   作:シークレット/K

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また、遅くなってすみません。
次いつ投稿出来るかは分かりませんが、気長に待ってくれたらなぁ、としか.....
見直ししてないので、おかしい所とか、矛盾点とか、あるかも知れませんが、その時は優しく教えてくれると嬉しいです。

読んでくれる方に感謝です。
それでは、どうぞ.....



第四十一話 情報収集

-二亜side-

 

まずい。

 

そう思いながら、反転した耶倶矢から発せられた闇色の風を避けて、夕弦の天使が黒に染まったような形状の魔王.....ペンデュラムの先端の刃を、自身の天使である<囁告篇帙>で盾にしてゴリ押しで防ぐ。

 

現在、二亜と背負われているエミリア、ラムの2人、そして神無月の4人は窮地に立たされていた。

上空で様子見しているところを反転精霊達に気づかれたのだ。

神無月は四糸乃と折紙相手に奮闘している。

 

今は避けることを重点において何とかなっているが、それも時間の問題である。

 

「ぐっ!?」

 

耶倶矢の槍が脇腹をかする。

エミリアとラムを真上に持ち上げて何とか傷付けずに済んだが、このままでは押し切られる。

 

「ね、ねぇ!だいじょうぶなの!?」

 

エミリアの心配する声が上がる。

しかし、それに応える余裕もなかった。

 

後ろに下がると、背中に何かが当たった。

横目で見れば、神無月と背中合わせになっていた。

 

その瞬間に名案が浮かぶ。

 

「合図で上に飛ぶよ!」

「はい、了解です!」

 

すぐに応えたのを考えるに、神無月も同じことを思いついたらしい。

向かってくる耶倶矢と夕弦。

反対側の神無月に迫る、四糸乃と折紙。

 

「今ッ!!」

 

真上に飛ぶ2人。

反転精霊同士で勢いを止めずにぶつかっていく。

.....すると、耶倶矢と夕弦は四糸乃と折紙の2人と戦い始めた。

これでしばらくは安全ではないが、危険もないだろう。

 

「ほんと、戦うのは苦手だわ〜.....」

 

独り言を呟く余裕も出てきたのだった。

 

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-スバルside-

 

「おいおい、どうやってエミリアたん達に近づくよ?無理くね!?」

「いちいち分かりきったことを言わないで下さいまし。気づかれたら厄介ですわ」

「お、おう.....」

 

現在、スバルたちは廃墟と化したロズワール邸の残骸に隠れて立ち往生していた。

理由は言うまでもなく、反転精霊である。

反転精霊同士で争い始めてから、余波が酷くなり、これ以上近づけないのだ。

 

スバルとしては、死に戻りした後のために出来るだけ情報を集めておきたいのだが、戦いの様子は常人では視認出来ないため、目の頑張りも虚しく情報を集めることが出来ていない。

 

「っていうか、勢いでここまで来たけど、次の事考えたら士道を殺した相手について考えたりしておくべきだったのか.....?」

 

小声で呟くも、時すでに遅しである。

まあ、魔女教の狙いがエミリアならば、士道を殺した相手とも必然的に会うことにはなるのだろうが。

 

そうして、スバルは再びこの状況をどう打破するのかを考え始める。

戦うなんてもってのほか、話しかけるのは死に直結しそうなので論外。

だからといって、このまま突き進んでも巻き込まれて死ぬ未来しか見えない。

 

だが、ここで退くことはしない。

今回のスバルの行動は失敗だった。

だからこそ、死に戻りした後のスバルが最良の選択が出来るように、判断材料を出来るだけ集めておきたいのだ。

 

スバルだって、死にたい訳じゃないのだから。

 

「.....行こう、狂三」

「正気ですの?あの戦いの中を進むなんて」

「ああ」

 

それで死んだなら、戻ってコンティニュー。

死に戻りがちゃんと発動するかどうかはわからないが、その可能性にかけるしか、士道を助ける道がない。

 

スバルがこの世界に来て初めて出来た友達であり、同じ境遇を辿ってここに来た同士を救う。

元の世界では引きこもりだったスバルには、理由なんてそれだけで十分だった。

 

「問題は、士道が死ななければ精霊達は反転することは無かったんだし、士道を助けるにあたって反転精霊の情報はあまり役に立たないってことだな。.....あれ?マジで俺何しにここまで来たんだ?」

 

疑問に思うスバルだが、全くの無駄という事でもない。

魔女教の覆面を被った、おそらくは下っ端兵士達は未だうじゃうじゃいる。

 

どういう理由があって、その場から一瞬にして消えたと認識してしまうほどの速度を出しているのか。

魔法によるバフか、単純な身体能力か、それとも実体がないのか。

 

それに、ここまで来たのはエミリアがその先にいたからであり、後先考えずのことだったので、今更疑問に思っても仕方が無いだろう。

 

そこまで考えて、スバルは再び走り始めようとする。

だが、それは叶わなかった。

 

「スバルさん!!」

「なんだ.....って、うおあ!?」

 

分身体の狂三の一人がスバルの足を引っ掛けて、転倒させる。

予想外の出来事に反応が追いつかなくて、スバルは地面に思いっきり顎をぶつけて悶える。

 

「何すんだ、よ.....。ッ!?」

 

思わず抗議をするスバルだが、その声は途中で勢いを失くす。

 

数人の分身体が身体を腰の辺りで真っ二つにされていた。

 

「どうなってんだ!?」

 

スバルを守るようにして、残りの分身体たちが今までで走っていた方向とは真逆.....つまり、士道の亡骸や子供達が隠れている小屋の方向に立ちはだかる。

 

奥に見えるのは、反転十香、狂三本体、そして、色白のおかっぱ頭の男の三人が戦っている様子。

 

さらに、男からはスバルは見たことがある、紫色の手が無数に出現していた。

死に戻りを明かそうとした時に、何もかもが止まった世界で見たものと同じものだ。

それだけで、魔女教に関連した人物であることが分かる。

 

狂三を真っ二つにしたのは、おそらく反転十香だが。

 

「んで、あの手、一体何なんだ.....?」

 

狂三に護られてる中、スバルは思考する。

 

もしもあの紫色の手が、見た目通りのただの"手"だったなら、いくらでも対処出来るだろう。

だが、反転十香や狂三本体が二人がかりで攻めきれていない以上、二人にはスバルにはわからない何かしらの力を感じ取っていると考えた方がいい。

 

であれば、それは何なのか?

その答えは、狂三の分身体の一人の、スバルへの問いかけで判明した。

 

「.....手、と言いましたわね、スバルさん。あなたには、わたくしや十香さん、色白の男以外に、誰の手が見えてますの?」

「.....は?いや、見えてないのか?あんなに無数に紫色の手がうようよしてんのに?」

 

狂三は驚いたような表情をしていた。

 

「紫色の手、ですの?わたくしたちには全く見えませんわ。そこに何かがある、という漠然とした気配は感じますけれど」

 

これでほぼ確定した。

スバルには見えるが、相手が操るのは"見えない手"。

死に戻りを一緒に体験している士道にも見えるかもしれないが、となると、対処出来るのはスバルと士道、そして、気配で分かるとかいうチートな精霊達だけとなる。

この世界の最強であるラインハルトでも対処できるだろうが。

 

ともあれ、これが分かっただけで十分な収穫だ。

 

(.....で、多分ここで俺に出来ることはもう無いけど、どうしようか)

 

情報もある程度揃った。

であれば、スバルがこれ以上ここに居る理由は、あまり無い。

 

エミリアを助けたいという理由はあるが、助けようが助けまいがスバルはここにはいられない。

"死に戻り"していつの時間に戻るかわからない以上、長居すれば最悪"士道が死んだ後"に戻ってしまう可能性すらある。

 

「.....戻るか」

「.....何か仰いまして?」

「いや、何でもねえよ。それより、狂三達は狂三.....本物の方の手伝いでもしに行ったらどうだ?別に、このまま俺と一緒に来てくれるってなら、それでもいいけど」

 

これで一人になれたなら、死にやすくなる。

そう思っての提案だったが、分身体の一人が答えを出す前に再び異変が訪れた。

 

急激にあたりに霧が立ち込めてくる。

ゾッとするように冷たい雰囲気がその場の者達を襲う。

 

「なんだ.....?」

「この、気配。.....どうやら、本命が来たようですわね」

「本命.....!?」

 

この期に及んでまだ来るのか、とスバルは戦慄する。

同時に、狂三達が一斉に空を見上げた。

 

「ッ!?伏せて下さいましっ!!」

 

そんな声が聞こえて咄嗟に地面にダイブする。

その直後、真っ白な霧の風が、スバルの真上すれすれを通り抜けていく。

そして、スバルは顔を上げた。

そこに居たのは。

 

ーーーー真っ白で馬鹿でかい、宙に浮く鯨だった。

 

「なんだよ、これ.....!?」

 

目が、合った。

 

「う、おああぁぁぁぁぁ!?」

 

そしてスバルは、鯨に潰されて、圧死した。

予想外の形で、スバルが成そうとしたこと(=死に戻り)が達成された瞬間だった。


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