デートから始める異世界生活   作:シークレット/K

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第六話 ロム爺

 

盗品蔵に行く道中、あの三人の男に遭遇したり、鞠亜のナビがあると言っているのに聞かずに前を行くスバルについて行って迷ったりもしながら、やっとの事で到着した。

 

「やっとついたぁー」

「こんなに時間かかってるし......」

「いやー全くだ。なんでだろうな!」

「お前のせいだぞ」

「う...。さっき行ったばかりだし、行けると思ったんだよ...」

 

流石に歩き疲れた。

喉が渇いたな。

...あ、そうだ。この世界に来る前に買った、ジュースがあるんだったな。

俺は、ペットボトルを開けて、がぶ飲みをする。

...うまい。

スバルは、コーンポタージュのスナック菓子を食べている。

狂三には持ち合わせがないらしく、食べたり飲んだりしている俺たちを眺めていた。

 

「じゃあ、行こうスバル」

「あ...ああ」

 

スバルには珍しく、歯切れの悪い返事だったから、どうしたのか、とスバルを見ると、震えていた。

 

「びびんな...。びびんなよ、俺...」

 

びびってるのか。

この盗品蔵の中になにかあったのだろうか?

スバルに聞いてみると、蔵主と思しき老人の死体を見つけたらしい。

あの俺たちを殺した女性が言っていた死体なのだろうと、理解した。

それでも行かないと、そもそもの目的である、エミリアの徽章を取り戻すということを達成できない。

 

「とりあえず、行こうスバル」

「ああ」

 

扉に近づき、ノックをする。

 

「誰かいますか?」

 

返事はない。

まさか、もう死んでいる⁉︎

ここまで来るのに時間をかけすぎたとか...?

 

「頼む!誰か......誰かいるんだろ⁉︎返事をしてくれ!」

 

スバルが必死に扉を叩きながら懇願する。

それが功を奏したのか、

 

「やっかましいわぁ!合図と合言葉も知らんで、扉をぶっ壊す気か!」

 

突然扉が開き、スバルが吹っ飛ばされるのを見送り、俺は声の主を見る。

 

そこには、とても元気そうな、禿頭の大柄な爺さんがいた。

よかった。まだ生きていたらしい。

この人の死体をスバルは見たのか。

 

「どうやってここを知った!誰の紹介じゃ!」

 

そう、まくし立てる老人に、スバルは、

 

「ーーーお近づきの印に、おひとつどうぞ」

 

と、コーンポタージュ味のスナック菓子を差し出した。

 

===================================

 

あの後、俺たちは盗品蔵の中に招き入れられた。

狂三には、あの殺人女性が来ないように見張ってもらっている。

入ってすぐのカウンターの席に座り、ロムと名乗った老人(ロム爺と呼べと言っていた)が、そのカウンターの向こう側に座った。

...このイスささくれ立って痛い。

 

「なぁ、菓子袋返せよ。全部やるとは言ってねぇぞ」

「なんじゃケチ臭いこんなうまいもんを独り占めなんぞ、地獄に落ちるぞい」

「人のものを勝手に食べてる奴は地獄に落ちないのかよ」

「うまうま」

「食うなってーの!」

 

スバルがロム爺から菓子袋を取り上げた。

 

「じゃあ、これのんでみますか?」

 

そう言って、俺はペットボトルを差し出す。

 

「ふむ」

 

一口。

 

「これもうまい!パチパチきてるのが、新感覚じゃ」

 

ペットボトルの中身は、ジンジャーエールだ。

嫌いな人もいるから、ちょっと心配だったが、口に合ったようでよかった。

 

「って、こんなことしてる場合じゃねぇ!」

 

スバルのその声で、本来の目的を思い出した。

 

===================================

 

「で、小僧達。盗品に興味があるのか?」

「ああ。それも目的の一つだ」

「ふむ。もう一つ違う目的があるってことじゃの?」

 

スバルが意を決したように、言った。

 

「馬鹿げた話なんだが。じいさん。最近、死んだことあるか?」

 

すこしの沈黙の後、ロム爺が、

 

「がははは、何を言い出すのかと思いきや。確かにこの通り老骨じゃが、まだまだ死にはせんわい」

 

これで、死に戻り、という線が強まったな。

 

「いや、冗談だ」

「で、用は二つじゃったな。どの盗品に興味があるんじゃ?」

「えーっと、宝石がはめ込まれた徽章なんですけど...」

「......宝石がはめ込まれた徽章?悪いがそんなもの持ち込まれとらんぞ」

「......本当ですか?」

「ああ。......いや、だが、今日は大口の持ち込みがある。宝石がはめ込まれた徽章ならば、十分可能性があるじゃろう」

 

ロム爺は、にやりと笑った。

 

「その人って、金髪で八重歯な女の子か?」

「知っとるのか?フェルトって言うんじゃが」

 

あの子、フェルトって名前なのか。

 

「じゃが、それを買い取れるかどうかは微妙なところじゃぞ。宝石のはめ込まれた徽章なら、それなりの値で捌けるじゃろうしな」

 

ここで、スバルがガラケーを取り出し、披露した。

 

「....確かに....これなら....ううむ。......初めて見たが、これが話に聞く『魔法器』というやつか」

 

魔法器....?

ロム爺によると、魔法器というのは、魔法が使えない人でも魔法を使うことができる...という、便利グッズらしい。

...だとしたら、俺のスマホは『魔法器』というものの中でも一番の代物になっちゃわないか?何故かネットも使えるわけだし。

ゲームは無理だけど。

 

「こいつの価値は計り知れん。じゃが、宝石がはめ込まれた徽章なんぞよりも、遥かに価値は高いじゃろう。それはわしが保証する。それだけに、物々交換にこれを出すのは、お前さんに損が大きすぎる。何故、そこまでして徽章を?」

 

最もな疑問だ。

だが、スバルにとってそれは、考えるまでもないことだった。

 

「約束、したからだ」

 

ただ、それだけ。

 

「......本気のようじゃな。そうか。約束か」

 

ロム爺が遠い目をする。

なにか思うことがあるのだろうか?

 

「お前さん達、バカじゃのう」

 

そう言って、ロム爺は笑った。





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