あの後、フェルトがきて一悶着あったが、それはいいとして。
「じゃあ、交渉しよう。フェルト。徽章は持っているか?」
俺がそう切り出した。
「ああ。持ってるぜ」
フェルトが懐から徽章を取り出した。
徽章は、なんていうか、綺麗なものだった。
具体的な描写?うーん。龍が赤い宝石を加えている形だ。
「さあ、そっちは何を差し出すんだ?」
そんなフェルトの言葉に返すのは、スバルだ。
「俺は一文無しだから、出すのはこれだ!」
携帯を取り出したスバルは、そのカメラをフェルトに向けて、
「NATUKIフラッシュ‼︎」
と言ってシャッターを切った。
そんなスバルに文句を言おうとしたフェルトだったが、画面を見て固まった。
「これって...!」
「そう!フェルトだよ。これは、時間を切り取って映像を残す魔法器だ!」
「それで、この魔法器とその徽章を物々交換を申し込む。どうだ?」
俺とスバルが一気に話すが、フェルトは流れに惑わされなかった。
「そりゃあスゲェな。で、ロム爺。これは売ったらどのくらいの金になるんだ?」
「数字でいくらになるかは分からんが、少なくともこの徽章よりかは高価じゃろうな」
「ん、ならいいんじゃねーかな」
勝手に話が進んでる気がしないでもないが、ロム爺の太鼓判でフェルトが気を良くしたようだし、俺たちも安心出来たから、いいだろう。
「じゃあ、互いのカードは切ったようだな。まあ、それでもあたしはさらに吹っかけるけどな」
「さらに?もう俺に切れるカードはないぞ」
「そこまで悪じゃねーよ。爺さんがこんだけ言ってんだし、それはこの徽章よりも価値は上。それは認める。あんたが切れるカードがないってーのは嘘だろうけど」
...嘘だって見抜かれたようだ。
まあ、確かにそうだ。
まだカードはある。流石に鞠亜を差し出すつもりはないけどな。
「じゃあ、吹っかけがまだ終わらないってどういうことなんだ?」
「簡単な話、交渉相手が兄さんらだけじゃないってことだよ」
先約があるってことか......。
「ロム爺。この魔法器は、一体いくらくらいになるんだ?」
フェルトがそうロム爺に聞いた。
「最低でも聖金貨二十枚、もっと出す好事家もいるじゃろうな」
「へぇー。そりゃあスゲェな。もう一人の方は聖金貨十枚だったから、今の時点では兄さんらが有利だぜ」
今の時点では...という事は。
「相手が聖金貨二十枚以上出してきたら、俺たちがまた上乗せしないといけないってことか...」
「そういうことだよ」
「じゃあ、そのもう一人は、いつ、どこに来るんだ?」
「ここに来るはずだよ。時間は......日も落ちたし、そろそろ来るんじゃね?」
その時。
コンコン、と、ノックが響いた。
「お、来たか。ちょっと見てくるわ」
そう言って、フェルトは扉の方へと進む。
もしものために、ロム爺が蔵の奥から棍棒を取り出した。
「やっぱアタシの客だったよ」
そう言って、その人物をここまで連れて来た。
「⁈」
驚愕した。
俺が一度目に死んだ時の原因の女性がそこにいた。
こいつが、もう一人...だと⁉︎
どうする⁉︎俺は、どうしたらいい⁉︎
何も思い浮かばない。
そういえば、狂三は⁉︎ロム爺に断りを入れて、俺は外に出た。
変な目で見られたが、気にしないでおこう。
「狂三!いるか!」
「いますわよ、士道さん」
「やはり、あの女性が?」
「ああ。殺人鬼だ」
狂三が出て来て安心した俺は、鞠亜の問いにも余裕をもって答えた。
「どうしようか.....。あそこには、スバルも、フェルトやロム爺だっているんだ」
「見捨てればいいではありませんか」
「そんな事出来るわけないだろ!一度でも親しくしたんだ!俺は、絶対に見捨てる事はしない!」
そう、決めてるんだよ!
十香の霊力を封印した時も、四糸乃の霊力を封印した時も。
数々の精霊の霊力を封印するたびに、俺は、俺が知ってる人だけは絶対に見捨てないって決めたんだよ!
そういう気持ちで狂三と鞠亜を見ると、
「キ、ヒヒヒヒ。やはり、士道さんは変わりませんのね」
「そんな士道に、みんな惹かれていくのでしょう」
そんな事を言われた。
「力を貸してくれるか?」
「「当たり前です(わ)」」
そう、団結した直後。ドタバタという音が聞こえた。