雷狼竜が超帯電状態に移行してから、狩猟は難航していた。
殆どの攻撃に雷属性が付与され、その雷に耐性の無いミツネsシリーズはダメージを受けやすい。イジスはガード、ナギはジャスト回避で幾らか避けられていたが、タマモは被弾する事もあり苦戦していた。
「くっ…ここで一つ、決めねばっ…」
ここでタマモは何を思ったか、シビレ罠を仕掛け始める。しかし超帯電状態となった雷狼竜にシビレ罠が効くはずもなく、足止めしようとした事が、逆鱗に触れた。
雷狼竜は、罠を仕掛けるべくその場に屈んでいたタマモに狙いを定める。
そして脚力を利用して飛び上がり、雷光虫を纏っている背中を下にして落下した。雷狼竜の巨大な体躯が、雷撃と共に一点に集中する。
「っ!」
ナギが叫ぼうとしたが間に合わず、タマモは雷狼竜のプレスをモロに食らい吹き飛ばされた。岩壁に叩きつけられ、糸が切れた操り人形のように動かなくなる。
「タマモっ!」
矢も盾も堪らずにナギは駆け出す。辿り着いたときには、彼女は雷狼竜の大技を食らって力尽きてしまっていた。ナギと同じようにしてイジスも雷狼竜の目を盗み駆け寄ってくる。
「大丈夫なのか?」
「……イジス、ちょっとの間、ジンオウガを引き付ける事は出来るか?一人じゃ難しいとは思うが、頼む。」
「…もちろんだ。早い復帰を信じてるぜっ」
そう言い残すと、彼は雷狼竜に向かって駆け出した。両者の攻防が繰り広げられている最中、ナギはイジスに感謝しつつベースキャンプに向かうのだった。
◆◆◆
「ん、ん…」
毛布が擦れる音がし、ベッドの方から唸り声が聞こえる。ナギは容体を案じ、彼女の元へ駆け寄った。
「大丈夫か?痛い所はないか?」
「だ、大丈夫だ…」
そう言うタマモの声は消え入りそうな程細く、膝を抱えて震えている。呼吸も不規則だし、何よりナギを見つめるその双眸が、何か恐ろしい目に遭ったかのような恐怖で満たされていた。
そして少し沈黙した後、耳の上で結わえられているサイドテールを揺らしながらこんな事を呟く。
「やはり、私では無理だったのだ…雷狼竜に挑むなど…」
「な、何言ってるんだよタマモ!そんな事ないって!」
「貴様も見ただろう!?あの雷を!私にも…モンスターにだって、怖い物はある!」
「タマモ…」
今のタマモは完全に恐怖に打ちひしがれ、勝てる自信などないと雷狼竜を恐れている。もちろん、モンスターにも、それを狩るハンターだって怖い物はあるだろう。
実際ナギも駆け出しの頃ランポスにすら恐れを抱いていた始末だ。しかし、そういった「恐怖」を克服していかなければ今のナギは此処にはいない。
ナギは自分が昔から貫き通している信念を、強く言うのではなく優しく、タマモに語りかけるように説いた。
「なぁタマモ。もちろん、今の俺にだって怖い物はいっぱいある。だけど、それを一つずつでもいいから、克服していかなくちゃいけないんだ。」
「……克服?」
「うん。だから俺は怖い事とかがある時、いつも自分にこう言い聞かせてるんだ。『怖いときこそ楽しめ』ってね。」
「怖いときこそ、楽しめ…?」
「そうだよ、タマモ。…いや、タマミツネからしてみれば、ジンオウガなんて何ともないだろ?適当にいなして、泡で絡めて終わりだろ?」
「……」
「お前は、いつも通りの戦い方をしていればいいんだよ。そうすりゃ、雷だって怖くなくなるって。」
「……いつも、通り…」
そう呟くと、タマモの目は徐々に元の紫色を取り戻してゆく。何とか自信は取り戻せたようだ。
が。
…先程からエリア5の方角から打ち上げタル爆弾の爆発音がボンボン聞こえてくる。察するに、イジスはそろそろ持たないという事だろう。
「おっと、向こうは結構マズそうだな…じゃあ、決心がついてからでいい。できればでいいから、参戦してくれ。」
「…少し、考えさせてくれ。」
「…そうか。じゃあ、またな。」
そう言い残し、ナギはベースキャンプを後にした。
タマモが来てくれることを、固く信じて。
◆◆◆
駆けつけたエリア5に、雷狼竜の姿は無かった。どうやら自分と入れ違いになって隣のエリアへと移動したらしい。しかし後を追うような事はしないで、とりあえずイジスと合流する。
「悪い、待たせて悪かった。大丈夫だったか?」
「おお、思ったよりは追い込んだと思うぞ。でも角折ったら逃げてっちまったけどな~…」
イジスは少し悔しそうにぼやきながら極星銃槍ストリゲーツを研いでいる。ガンランスは砲撃で斬れ味が落ちやすいので、こまめに研ぐ必要があるのだ。
そんなイジスを見ていると、自分もかなり消耗していた事に気付く。同じように武器を研ぎ直し、防具の帯を締める。こんがり肉の持ち合わせが無かったので、肉屋きセットで焼く事にした。例によってあの歌を脳内再生しながら焼き加減を見ていると、突然イジスが話しかけてきた。
「なぁナギ。俺がなんで一足先にベースキャンプを出たか分かるか?」
タマモの一件で忘れていたが、そういえばそんな事もあったな。焼きあがるまでにもう少し掛かりそうなので、理由をを訊く事にする。
「いや、分からん。あの後、作戦を立てようと思ってたんだけどな…」
「そいつは悪かったな。でもこれを手に入れないと、この依頼は失敗になっちまうだろ?」
そう言ってイジスは手に持っていた物を差し出す。それは細長い棒状の柄を持ち、先には網が付いていた。
「これ、虫あみか?」
「おう。あの依頼主さ、超電雷光虫も捕ってきてって言ってただろ?お前忘れてただろうしも俺も忘れてたから、急いで現地で生産したんだ。骨の入手に苦労したから合流すんのが遅れちまったけどな。」
確かにイジスの言うとおり、あの時自分は虫あみを持ってくるのを失念していた。それを道中気が付いたから調合で製作した、と言うのか。全く、細かい所で機転が利く奴だ。有難くて笑みが零れる。
「あー…忘れてたのは自分の責任だし、ありがとな。」
「いいって事よ!それより肝心の雷光虫を捕まえる方法なんだがな、俺が乗りを狙ってダウンを奪う。その隙にお前はジンオウガの背中から雷光虫を捕まえてくれ。」
エリアルスタイルを使用しているイジスなら、乗る事など造作もないだろう。それを見越して彼も言っているだろうから、ここは任せる事にした。
「うん、その作戦乗った。お前にしてはやるじゃんか。」
「『お前にしては』は余計だっての。行くぞ、ナギ。」
「おう。」
作戦が成功する事を祈りながら、ナギ達はエリア5を後にした。
エリア5に隣接しているエリア2。雷狼竜はそこに居た。あちらも消耗したスタミナを回復すべく、アプトノスを捕食している。しかしこの好機を逃す自分達ではなく、イジスが雷狼竜に向かって走り出す。堅殻に覆われている前脚を踏みエアステップを繰り出し、その背中に極星銃槍ストリゲーツを叩きつけた。
いきなりの衝撃に耐えきれなかったか、雷狼竜は横倒しになる。イジスは未だ帯電している背中に飛び乗り、ナイフを突き立て始めた。
自分も加勢すべくたまのをの絶刀の斬振を用いて斬り付けていくと、やがて耐えられなくなったか雷狼竜はその背中を無防備に晒け出した。
「ナギ、頼むぞっ!」
「了解だ!」
超電雷光虫が集まっている背中に向かって虫あみを振り下ろす。網に絡まった虫が何匹か零れ落ち、採集できる状態になった。素早くポーチに収め、これで超電雷光虫の採集は完了。
「よしっ。イジス、3、4匹ぐらい捕れたぞー!」
「え?なんだってぇー!?」
どうやら周囲の音が大きく、よく聞こえていないようだ。
「だから、捕れたってー!」
「りょうかいだぁぁぁーーー!」
イジスは自分より大きな声で叫び返しながら雷狼竜の頭に竜撃砲を撃ち込む。肉と鉄の焦げる臭いが仄かにしたが、それでも雷狼竜は立ち上がった。
「まだ来るのか!?」
かなり消耗しているだろうとは思ったが、まだ立ち上がるタフさに目を見張る。背中は更に輝きを増し、雷狼竜は怒り状態に突入した。アイテムも残り少なくなってきているし、もうここまでか。
一旦退いて体制を立て直そうかと思った矢先、紫色の禍々しいオーラを纏った影がナギ達と雷狼竜の間に割って入った。
「はぁ、こんなのに苦戦するなど、お前らしくないぞ。」
そう言うが早いか、その影は雷狼竜に向かって
何度続いたか分からない斬撃の奔流を雷狼竜はまともに受けボロボロになっていた。太く逞しい前脚の爪は削れ、今までその威厳を示していた角は両方共折れている。
そうしてその場から逃げるようにして脚を引きずりながらエリア3の方向へと移動していった。
一方、その影は去っていく雷狼竜の背中を黙って見つめている。そしてこちらに向き直り、こう言った。
「待たせたな、二人共。足を引っ張ってしまい、すまなかった。」
陽光を受けサイドテールが鈍く輝く。そこに立っていたのは紛れもなく、タマモだった。
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